1.はじめに
小名浜税関支署福島空港出張所が所在する福島空港は、福島県中通り地方の須賀川市と玉川村にまたがる位置にある地方空港です。周辺地域は阿武隈山地の緩やかな山々に囲まれ、標高372メートルと、税関空港としては国内で最も高い場所に位置しています。夏は比較的涼しく、冬には適度な降雪が見られるなど、内陸特有の四季がはっきりとした気候が特徴です。
福島空港は、地域の航空交通の拠点として平成5年に開港しました。県中地域における物流・観光の玄関口として発展してきた経緯があり、現在では国内線を中心に、多くの利用者に親しまれています。空港周辺には古くからの集落や史跡が点在し、地名の中には古代から続く歴史の面影を残す地域も見られます。

「航空写真」(写真提供:福島県福島空港事務所)
2.福島空港出張所の沿革
福島空港出張所は、平成5年3月に福島空港共用が開始され、平成11年6月に税関空港として指定されたことを受け、空港国際ターミナル内に小名浜税関支署福島空港分室として設置されました。同年7月には小名浜税関支署福島空港出張所へと昇格し、現在に至っています。
職員数については、設置当初は3名体制でしたが、入港機数の増加に伴い最大で5名体制となりました。東日本大震災以降は1名体制となっていましたが、平成30年から国際チャーター便の運航が開始されたことを契機に、令和元年からは2名体制となっています。
現在は、台湾からのチャーター便が週2便運航されており、季節に合わせてベトナム、モンゴル、韓国からのチャーター便も運航されることがあります。
3.福島空港とウルトラマン

福島空港がウルトラマンと深い関わりを持つ理由は、ウルトラマンの生みの親として知られる特撮監督・円谷英二氏が福島県須賀川市の出身だからです。
空港に近い須賀川市では、円谷氏の功績を称え、ウルトラマンや怪獣のモニュメントが市内各所に設置されるなど、多彩な顕彰活動が行われています。この地域文化の流れを受け、福島空港でもウルトラマンをテーマにした展示が常設されており、福島空港ビル全体がまるでウルトラマン展示会のような空間となっています。
空港の正面には、高さ約4メートルの巨大なウルトラマン立像が置かれ、空港を訪れる人々を出迎えています。また、空港内には歴代ウルトラマンが描かれた「ウルトラヒーローゲート」や、ウルトラマンカラーで彩られた特別仕様のポストがあり、このポストに投函された郵便物にはウルトラヒーローの特別な消印を押してもらうことができます。
さらに、空港敷地内には、作品中に登場する戦闘機「ジェットビートル」や「小型ビートル」のオブジェも展示されており、作品の世界観を身近に感じることができます。
このほか、東北で唯一となるウルトラマン公式ショップ「SHOT M78 福島空港店」も併設され、関連グッズや限定商品を求める多くのファンに親しまれています。


4.福島空港周辺の観光スポット
〇釈迦堂川花火大会(須賀川市)
福島県須賀川市で毎年夏に開催される、福島県内でも最大規模を誇る花火大会です。市内の学生による合唱と共演する音楽創作花火をはじめ、音楽と連動した多彩なスターマイン、全長150メートルに及ぶ巨大ナイアガラ、さらにはウルトラマンの故郷M78星雲との姉妹都市を記念した「ウルトラマン花火」など、迫力の演出を楽しむことができます。
〇須賀川牡丹園(須賀川市)
須賀川牡丹園は、「全国で唯一、国指定名勝に登録された牡丹園」です。約10ヘクタールの園内には、290種・7,000株の牡丹が咲き誇ります。その歴史は明和3年(1766年)に薬種商を営んでいた伊藤祐倫が、牡丹の根皮を薬用にするため、苗木を摂津国から持ち帰り栽培したことに始まると言われています。
牡丹の見頃は4月中旬から5月下旬ですが、11月の紅葉の時期には、モミジやカエデ、イチョウなどが色づき、異なる赴を楽しむことができます。季節ごとに、広い園内をゆっくり散策するのがおすすめです。

「須賀川牡丹園」(写真提供:公益財団法人 須賀川牡丹園保勝会)
〇三春滝桜・三春の桜まつり(三春町)
福島空港から程近い三春町は、国内屈指の桜の名所として知られています。なかでも「三春滝桜」は、樹齢千年を超えると伝えられるベニシダレザクラで、日本三大桜の一つに数えられています。薄紅色の小さな桜が、まるで滝のように流れ落ちる姿から「滝桜」と名付けられました。見頃の時期には夜間ライトアップも行われ、荘厳かつ幻想的な姿を楽しめます。春の「三春の桜まつり」期間中には、町内各所の桜や歴史的な街並みとともに、特産品や郷土文化に触れられる催しが開催され、県内外から多くの花見客が訪れます。

「三春滝桜ライトアップ」(写真提供:三春町)
〇日本酒
福島県は、令和6年酒造年度の全国新酒鑑評会において16銘柄が金賞を受賞し、金賞受賞数日本一に輝きました。福島県内には50を超える酒造があり(酒蔵数全国第4位)、浜通り、中通り、会津地方の三つの地域で、気候や風土の違いを活かした多彩な日本酒が造られています。会津地方では「飛露喜」、「冩樂」、「会津娘」、中通りでは「楽器正宗」、「廣戸川」、「一歩己」など、地域ごとに個性豊かな銘柄の日本酒を味わうことができます。
道の駅や物産館、福島空港内売店などで、地域ならではの一本に出会えるのも魅力です。

福島空港内売店
5.おわりに
福島県須賀川市とその周辺には、豊かな自然、美しい景観、神社仏閣、サイクリング、温泉地、そして数多くの農産物・特産品(さるなし)など、紙面では伝えきれない魅力がまだまだあります。
福島空港を起点とした旅や、須賀川市周辺からさらに足を延ばして会津地方の歴史ある町並みを巡る観光を通じて、この地域ならではの魅力を存分に感じていただけるはずです。ぜひ一度足を運んでいただき、ご自身の目で、福島ならではの奥深さと温かさを体感してください。
各地の話題
福岡市
博多という街
─ 魅力とストーリー 福岡県
博多税関支署の沿革と特徴
博多税関支署は、明治16年(1883年)に博多長崎税関出張所として設置されました。その後、明治32年(1899年)に博多税関支署へ改称され、博多港の国際貿易拠点としての機能を支える役割を担うようになりました。さらに、明治42年(1909年)には門司税関が長崎税関から独立し、現在の体制へと移行しました。現在、博多税関支署は福岡市を中心に11市2郡を管轄し、輸出入通関、貨物検査やクルーズ船対応など、観光と物流の両面で地域経済を支え続けています。

博多税関支署(福岡港湾合同庁舎)
博多港の貿易動向
博多港は、九州の主要な国際物流拠点として長年にわたり国内外の産業活動を支えてきました。近年はその役割がさらに拡大し、2024年の輸出額は4兆6,176億円、輸入額は1兆4,935億円となり、ともに過去最高値を記録しました。輸出超過額は3兆1,241億円と大幅に増加しており、九州経済圏の産業基盤を強く支えています。福岡市港湾統計(令和6年確定値)では、国際海上コンテナの取扱個数が約87万7千TEU、そのうち外貿コンテナが約80万7千TEUを占めています。(TEU=20フィートコンテナ1本相当)

海外への貨客船も毎日就航(写真提供:福岡市)
輸出では自動車関連貨物や半導体関連部材が、輸入では家具・衣料品・電子機器などの生活密着品が上位となり、産業と消費の双方を支える港としての役割が明確です。
博多港の強みの一つは、東アジアに近接する地理的優位性です。中国・韓国といった主要貿易相手国との距離が近く、海運航路が安定している点は、近年の輸入通販貨物(越境EC)の増加とも相まって、今後も高い競争力を生む要因となっています。
人流面での特徴(クルーズ船・フェリー船)
博多港は国際物流だけでなく、観光分野でも高い存在感を持っています。2024年の国際クルーズ船寄港数は全国1位となり、東アジアの主要航路における拠点港として選ばれています。寄港時には太宰府天満宮、櫛田神社、福岡タワー、天神エリア(天神地下街・ソラリアプラザ等)、博多駅周辺(JR博多シティ/アミュプラザ博多)をはじめとする福岡県内の地域観光や商業施設への経済効果が期待でき、地域活性化の大きな柱となっています。

博多港とクルーズ船(写真提供:福岡市)
歴史的背景と博多港の国際性
視野を広げれば、博多は古代から国際交流の中心地として機能してきた歴史があります。紀元1世紀の後漢から授与されたとされる金印「漢委奴国王印」が志賀島で発見された事実は、当時からアジア諸国との活発な交流が存在したことを示す象徴的な出来事です。現代の国際物流の活況は、長い歴史の延長線上にあるとも言えるでしょう。

志賀島「金印公園」から望む博多湾(写真提供:福岡市)
「街」としての博多
博多は福岡市の中心部に位置し、九州の玄関口として国内外から多くの観光客を迎えるとともに、アジアとの国際交流・交通の要所として重要な役割を果たしています。博多港は釜山や上海など東アジア主要都市との距離の近さを活かし、フェリーやクルーズ船の寄港地として発展し、また、福岡空港は市中心部から地下鉄で約10分という利便性を誇り、観光・ビジネス双方において高い評価を得ています。こうした交通インフラの充実は、博多の観光産業を支える大きな強みです。
【「福岡」と「博多」の違い】
九州にまったく縁がなかった私が福岡に赴任して最初に感じたのは、「福岡」と「博多」は何が違うのか?という素朴な疑問でした。
実のところ、これは明治時代に起きた市名をめぐる大論争が背景にあるとされています。
歴史の中心─博多
貿易で栄えた商人の町。「博多織」「博多美人」など文化の発祥地。
政治・城下町の中心─福岡
黒田長政が1601年に築いた城の名に由来。
そして明治23年、市名を決める市議会でまさかの展開に。博多派が優勢のはずが、投票当日に博多側3名が欠席(この欠席をめぐっては面白い逸話が伝えられている)。
結果は13対13の同数となり、最後は議長の一票によって「福岡市」に決定されました。その代わりとして、交通の要である駅名は「博多」のまま残され、今日の「市名=福岡」「文化=博多」という独特の二重構造が生まれたそうです。

博多駅のクリスマスイルミネーション(写真提供:福岡市)
伝統文化と祭り
博多祇園山笠や博多どんたく港まつりは、日本を代表する伝統行事であり、地域文化の象徴です。これらの祭りは毎年多くの観光客を集め、地域経済への貢献度も高いイベントとなっています。櫛田神社や東長寺など、歴史的価値の高い寺社も観光資源として注目されています。
さらに、これらの祭りは地域コミュニティの結束を強め、観光客に博多の歴史と文化を体感させる重要な機会となっています。

どんたくパレード(写真提供:福岡市)
食文化の魅力
博多は食の街として広く知られています。博多ラーメン、もつ鍋、水炊きなど、地元ならではの料理は観光客に高い人気を誇ります。特に屋台文化は、福岡市の夜の風物詩として国内外の旅行者に親しまれています。近年では、地元食材を活かした創作料理や、海外からの観光客向けにアレンジされたメニューも増え、食文化の多様性がさらに広がっています。

立ち並ぶ屋台(写真提供:福岡市)

博多といえば「もつ鍋」
アクセスと利便性
博多駅は九州新幹線の主要ターミナルであり、福岡空港は市中心部から地下鉄で約10分という利便性を誇ります。この交通アクセスの良さは、観光客の誘致において大きな強みとなっています。さらに、都市高速道路や港湾施設の整備により、国内外からのアクセスは今後も向上する見込みです。
芸能・文化発信拠点
博多座は歌舞伎やミュージカルなど多彩な公演を行う劇場であり、地域文化の発信拠点として機能しています。伝統芸能と現代演劇の融合により、観光客に多様な文化体験を提供しています。また、博多税関支署に隣接する「マリンメッセ福岡」や福岡ソフトバンクホークスでお馴染みの「みずほPayPayドーム福岡」では音楽フェスやアートイベントも盛んに開催され、博多は九州の文化発信地としての地位を確立しています。
おわりに
博多は、国際交流・交通の要所としての機能に加え、伝統文化・食・エンターテインメント・交通利便性のすべてを兼ね備えた都市です。今後の取り組みにより、観光資源の多様性と質の高さはさらに向上し、国内外の観光需要に応える魅力的な都市として発展し続けることが期待されています。
博多湾沿岸は、1274年の文永の役、1281年の弘安の役における蒙古襲来という国家的危機の最前線となり、外敵から国を守る「水際防衛」の歴史を持つ地域でもあります。当時の元寇防塁が今も残るように、博多湾沿岸では国を守るための防衛体制が築かれてきました。
この歴史を現在に重ね合わせると、我々博多税関支署が担う現代の水際取締りも、同じく国の安全と経済を守る最前線の任務であるといえます。輸出入貨物・出入国旅客などの国際物流と人流が急増する中、税関が果たす役割は極めて大きく、テロ・密輸・不正薬物・知的財産侵害など多様化するリスクに対し、「現代の国防」ともいえる水際取締体制を確実に機能させ、歴史、物流、観光、そして安全保障が重層的に交錯する博多において、今後も地域と国の安全・安心を支える不可欠な存在であり続けます。

元寇防塁跡(生の松原)(写真提供:福岡市)
【参考文献】
・福岡市ホームページ

