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コラム 経済トレンド 145
COFOGの紹介と政府支出構造の分析

大臣官房総合政策課 深水 健一郎/須貝 立暉

本稿では、COFOG(Classification of the Functions of Government)を用いて、政府支出構造を分析する。

COFOGとは

・COFOGとは、政府支出を「何のために使われているか(機能)」の観点から分類する国際基準であり、政府が達成しようとする社会経済的目的(socioeconomic objectives)ごとに支出を整理する枠組みである。例えば、「保健」とは、医療サービスの提供や公衆衛生の向上等を通じて、国民の健康の維持・増進を図る機能を指し、「社会保護」とは、年金、医療・介護、児童手当等の社会保障給付やサービスの提供を通じて、個人や世帯の生活の安定を図る機能を指す。

・一方で、政府支出は、COFOGとは別に「どのように支出されているか(経済性質)」の観点からも分類される。すなわち、政府支出は機能別と経済性質別という二軸で把握できる。

・経済性質別では、所得や資源を家計・企業に移転する再分配としての支出や、政府が自ら又は外部委託を通じて財・サービスを生産・供給するサービス供給に係る支出に整理される。例えば、「現物社会移転以外の社会給付」は年金等の現金給付を指し、「現物社会移転」は医療・介護等のサービスを家計に提供する支出であり、いずれも再分配の性格を有する。また、企業や家計に対する「補助金」や「移転」もこうした支出に含まれる。

・他方、「雇用者報酬」は公務員人件費、「中間投入」は物件費や委託費等に対応し、これらは政府自らが財・サービスを供給するために要する費用を示す。なお、「総固定資本形成」といった公共投資は支出とは区別されるが、支出動向の把握上、併せて整理されることが多い。

・(図表1)は、これらを整理したものであり、行に機能、列に経済性質を配置し、各分野においてどのような形で支出が行われているかを把握できる構造となっている。例えば社会保障分野では給付が中心となる一方、教育や行政サービス分野では人件費や委託費を通じたサービス供給が中心となるといった違いを明確に捉えることが可能となる。

・対象となる政府は、中央、地方、社会保障基金からなる一般政府を指し、これらを区分することで、制度や主体の違いに着目した分析も可能となる。また、OECDにおいてもCOFOGに基づくデータが整備されており、各国の政府支出構造の特徴を比較することも可能である。

・以下では、本枠組みの分析例を示す。従来のように歳出規模だけでなく、その構造に着目することで、政策分野ごとの特徴や時系列的な変化、国際的な相違などを多面的に把握することが可能となる。加えて、同様の政策目的であっても統計上の分類の違いとして現れる点にも留意しつつ、政策と統計との対応関係についても検討を行う。本稿では紙幅の制約から簡単な分析例の提示にとどめるが、読者においても本統計を用いた更なる分析を試みていただきたい。

(図表1)一般政府支出の構造(2024年度)

(図表1)一般政府支出の構造(2024年度)

経済性質別・機能別による政府支出構造

・まず、政府支出構造を経済性質別および機能別に概観する。経済性質別にみる(図表2)と、社会保障関係の支出が太宗を占めている。すなわち、「現物社会移転以外の社会給付」、「現物社会移転」は2000年代半ば以降、対GDP比で緩やかに上昇しており、高齢化等を背景とした支出の拡大を反映している。一方、「雇用者報酬」や「中間投入」は対GDP比で大きな変動がみられず、「雇用者報酬」はやや低下傾向にある。また、「総固定資本形成」の比重も相対的に小さい。2020年度以降は、「その他の経常移転」、「資本移転」、「補助金」が一時的に上昇しており、コロナ対応等に伴う支出の拡大が確認される。

・機能別にみる(図表3)と、「社会保護」及び「保健」が太宗として長期的に増加しており、経済性質別でみた社会保障関係支出の拡大と整合的である。また、2020年度以降は、「社会保護」「保健」「経済業務」が一時的に上昇しており、コロナ対応や電気ガス補助金等の危機対応支出の影響がうかがえる。

・以上を踏まえると、2000年度以降の日本の政府支出の拡大は、公共投資や政府による財・サービス供給の拡大というよりも、主として社会保障関係支出の増加によって説明される。他方、コロナ期以降の支出増加には、危機対応に伴う一時的な要因も含まれており、政府支出にはこうした恒常的な要因と一時的な要因が併存している。

(図表2)経済性質別による一般政府支出

(図表2)経済性質別による一般政府支出

(図表3)機能別による一般政府支出

(図表3)機能別による一般政府支出

(注)分析に際しては、固定資本減耗、生産・輸入品に課される税等の一部項目を除いている。
(出所)内閣府「2024年度国民経済計算(2020年基準・2008SNA)」

機能別と経済性質別のクロスによる政府支出構造

・前章では、政府支出の拡大が主として社会保障関係支出によって説明されることを確認した。ここでは、それ以外に相当する分野のうち、政府による財・サービス供給や資本形成の違いが表れやすい「一般公共サービス」、「教育」、「防衛」に着目し、機能別・経済性質別のクロスで支出形態を確認する。

・「一般公共サービス」(図表4)や「教育」(図表5)では、「雇用者報酬」や「中間投入」を通じたサービス供給の比重が大きい一方、「防衛」(図表6)では近年、「中間投入」や「総固定資本形成」の上昇がみられる。

・また、一部の分野では、「雇用者報酬」の比重低下と「中間投入」の相対的上昇がみられ、政府内部の人員によるサービス供給から、外部調達・委託を通じたサービス供給へと比重が移っている可能性がある。これは、政府支出の単なる規模の変化ではなく、行政サービスの供給方法そのものに関わる構造変化として捉え得る点で興味深い。ただし、こうした動きは、賃金と物価の相対的な伸びの違いのほか、コロナ禍における一時的な支出の増加等、複数の要因によって説明され得るものであり、直ちに構造的な変化と解釈することには慎重である必要がある。

(図表4)一般公共サービス

(図表4)一般公共サービス

(図表5)教育

(図表5)教育

(図表6)防衛

(図表6)防衛

(注)分析に際しては、固定資本減耗、生産・輸入品に課される税等の一部項目を除いている。また、図表の簡潔化のため、一部の移転支出(補助金、資本移転、その他の経常移転)を除いている。

(出所)内閣府「2024年度国民経済計算(2020年基準・2008SNA)」

政府支出構造の国際比較

・最後に、各国における政府支出構造の共通点と差異を確認する。各国とも、「社会保護」(図表7)が対GDP比で大きく、長期的な支出の中心となっている点は共通している。

・一方で、水準には国ごとの差がみられ、「社会保護」はフランスやイタリアで高く、日本やイギリスは相対的に低い水準にある。加えて、「雇用者報酬」についても国際的な差がみられ、日本は諸外国と比べて低い水準に位置している。

(図表7)社会保護

(図表7)社会保護

(図表8)雇用者報酬

(図表8)雇用者報酬

(注)「社会保護」に関して、アメリカのデータは取得できなかったため、除いている。
(出所)OECD「Annual government expenditure by function(COFOG)」

・また、コロナ期以降、「補助金」(図表9)、「その他の経常移転」、「資本移転」(図表10)が一時的に増加しており、危機対応に伴う支出の上振れが各国共通のものとして確認される。

・他方で、危機対応における支出手段には国ごとの差異もみられる。例えば、イギリス等では「補助金」の上昇が目立つ一方、日本やイタリアでは「その他の経常移転」や「資本移転」の上昇が相対的に大きい。すなわち、類似した政策目的であっても、政策の実施形態に応じて「補助金」や「その他の経常移転」、「資本移転」として計上される。このため、単一の支出項目のみから政策を評価することは、支援の実態を誤って捉えかねない。政策は一つでも、統計の上では別の顔をして現れる可能性がある。だからこそ、政策と統計の対応関係を踏まえて解釈することが重要である。

(図表9)補助金

(図表9)補助金

(図表10)その他の経常移転+資本移転

(図表10)その他の経常移転+資本移転

(出所)OECD「Annual government expenditure by function(COFOG)」

(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。