財務省関税局・税関では、国民生活の安全・安心を脅かす麻薬・覚醒剤等の不正薬物等や、内国消費税の納税を回避するための金地金の密輸入を水際で阻止するため、取締りを実施している。本特集では、令和7年の全国の税関における関税法違反事件の取締り状況を紹介する。
取材・文 向山勇
不正薬物等
押収量は6年ぶりに3トンを超え過去2番目を記録する深刻な状況に
令和7年における全国の税関の不正薬物全体の摘発件数は1,000件と前年(1,012件)よりもわずかに減少したものの、押収量は約3,211kgと増加(前年比15%増)した。不正薬物全体の押収量は、令和元年に約3,339kgに達したものの、その後は2トンを下回る状況が続いていた。ところが令和5年に再び2トンを上回り約2,741kgを記録、令和6年も約2,794kgと2年連続で2トンを超えた。そして、令和7年は令和元年以来6年ぶりに3トンを超えた。これは過去2番目の押収量で、引き続き極めて深刻な状況が続いている。この背景には、航空機旅客や海上貨物による大口の摘発があったことや、大麻の押収量が大幅に増加したこと等がある。
不正薬物の摘発件数と押収量の推移

覚醒剤
摘発件数、押収量ともに減少するも、航空機旅客による密輸が急増
不正薬物等のうち、覚醒剤の摘発件数は126件(前年比10%減)、押収量は約840kg(同53%減)と共に減少し、特に押収量については約半減となる大幅な減少傾向が見られ、総じて減少基調にある。押収した覚醒剤を薬物乱用者の通常使用量に換算すると約2,799万回分、末端価格では約487億円に相当する。
覚醒剤の押収量を密輸形態別に見ると、航空機旅客による密輸が73件(同22%増)、約664kg(同93%増)と共に増加しており、特に押収量では全体の約8割を占めている。一方で、国際郵便物の押収量が約18kg(同66%減)、航空貨物が約153kg(同62%減)、海上貨物が約5kg(同99.5%減)と、大幅に減少した。
覚醒剤の密輸を仕出地別に見ると、摘発件数の割合はアジアが37%(46件)と最多となった。また、押収量の割合については、北米が58%(約488kg)と最大となっている。
密輸形態別の押収量

覚醒剤・仕出地域別件数の割合

覚醒剤・仕出地域別押収量の割合

覚醒剤の摘発事例
大麻
摘発件数は減少するも、押収量は約3.5倍の大幅増加
大麻(大麻草・THC類製品)の摘発件数は316件と減少(前年比17%減)した一方で、押収量は約1,531kgと大幅に増加(同約3.5倍)した。大麻草の押収量は約1,213kgと増加(同約4.5倍)し、THC類製品の押収量は約318kg*となった。大麻草の押収量が大幅に増加した要因として、令和7年6月に東京税関が摘発した大麻草約1トンの事件が挙げられる。
*法改正により令和6年12月12日以降の摘発分から計上されているため、前年比を示すことはできない。
大麻の摘発件数を仕出地別に見ると、その割合は米国が43%、タイが27%、ベトナムが8%となり、北米及びアジアで約9割を占めた。
摘発件数と押収量の推移

仕出地別摘発件数の割合

大麻の摘発事例
麻薬 指定薬物 銃砲等
麻薬全体の押収量は増加、指定薬物や銃砲等は増加基調に
麻薬(ヘロイン、コカイン、MDMA等)の摘発件数は311件と減少(前年比3%減)した一方で、押収量は約798kgと増加(同49%増)した。コカインの摘発件数は85件と増加(同57%増)し、押収量は約238kgと減少(同12%減)しており、小口化の傾向が見られる。MDMA等の摘発件数は64件と減少(同29%減)した一方で、押収量は約202kgと増加(同9%増)し、大口化の傾向が見られる。
指定薬物の摘発件数は239件(同46%増)、押収量は約41kg(同約3.8倍)と共に増加していることから、総じて増加基調にある。
銃砲の摘発件数は34件(同26%増)、押収丁数は37丁(同32%増)と共に増加していることから、こちらも総じて増加傾向が見られる。
麻薬の摘発事例
指定薬物の摘発事例
金地金
摘発件数、押収量ともに大幅に減少。航空貨物による密輸が全体の押収量の約7割を占める
金地金(金塊に加え、一部加工された金製品を含む)の密輸入事件では、摘発件数が192件(前年比61%減)、押収量は約425kg(同68%減)と減少した。摘発実績を密輸形態別に見ると、摘発件数192件のうち、航空機旅客によるものが158件となり、全体の約82%を占めた。また、押収量約425kgのうち、航空貨物によるものが約283kgと全体の約66%を占めた。
密輸仕出地別の摘発実績では、アジアからの摘発件数が大宗を占め、香港からの摘発が75件と最も多く、全体の約40%を占めた。
密輸形態別の摘発状況

金地金の過去10年間の摘発状況

密輸仕出地別の摘発件数

金地金の摘発事例
密輸情報提供のお願い
財務省関税局・税関では不正薬物等の押収量が6年ぶりに3トンを超えたことを受けて、関係機関との連携をさらに深め、厳正な水際取締りを実施していく。また、国民においては、密輸に加担してしまうことにもなりかねないことから、海外旅行先などで安易に荷物を預かることがないように呼び掛けていく。身の回りで「何かおかしな光景」を目にした際には、税関密輸情報窓口に連絡をされたい。
こんなことはありませんか?
街でこんなことに出会った
あまり親しくない人に、外国から荷物が着くので、名前と住所を貸して欲しいと依頼された。
暴力団員風の者や普段見なれない人がひんぱんに出入りし、何か物を出し入れしている倉庫などを発見した。
海外旅行に行った時
海外旅行先で見知らぬ人から中身の良く分からない荷物を預かった。
飛行機内で寒くもないのにコートなどで厚着をして汗をかいている旅客、機内食を全く食べず落ち着きのない旅客を見かけた。
港でこんなことがあったら
何か貨物の入っているような漂流物・漂着物を発見した。
漁具を積まず出港したり、しけの日や夜間に出入りするなど、おかしな行動をとる船を見かけた。


