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金融経済教育を地域に根付かせるために

金融経済教育推進機構(J-FLEC)理事長 安藤 聡

巻頭言

金融経済教育推進機構(J-FLEC)は、2024年4月に設立された金融庁所管の認可法人である。官民一体で立ち上げた公的機関として、子どもからシニア層まで、幅広い世代に金融経済教育の機会を届けることを使命としている。物価上昇、働き方の多様化、人生100年時代の到来など、家計を取り巻く環境は大きく変化している。新NISAの普及により資産形成への関心も高まる一方、十分な知識を得ないまま判断を迫られる場面も増えている。金融経済教育は、誰もがよりよく生きるための基礎的な力である。

2025年12月に金融庁が公表した「地域金融力強化プラン」では、地域の人々の資産形成を支援する観点から、金融経済教育等の推進において地域金融機関が役割を発揮することの重要性が示された。あわせて、地域金融機関における金融経済教育の普及・促進を促す際に、J-FLECの講師派遣やオンライン講座等の活用の検討を促すことも盛り込まれている。これは、金融経済教育を地域の生活基盤として広げる後押しである。

J-FLECの取組みは大きく二つの柱から成る。第一は、講師派遣やイベント・セミナーである。学校、企業、官公庁、自治体、公民館や図書館などに講師を派遣し、出張授業を実施している。講義は、年齢層別に身に付けるべき金融リテラシーを整理した「金融リテラシー・マップ」に沿って構成し、家計管理、ライフプラン、資産形成、金融トラブル防止など、生活に直結するテーマを基礎から学べる内容としている。

第二は、個別相談事業である。知識を得ることは重要だが、それを自分の生活設計や将来の選択に結び付けて初めて、学びは力になる。J-FLECでは、電話やオンラインを活用した無料相談体験、電子クーポンによる有料相談の利用促進など、専門的な助言に触れられる仕組みを整えている。教育と相談を一体として提供し、家計の見直し、将来資金の準備、リスクへの備えといった行動につなげることを目指している。

こうした取組みを全国に広げるには、金融機関を含む多くの関係者との連携が欠かせない。特に地域金融機関は、地域の企業や住民との接点を有し、学びの機会を身近な場所に届けるうえで重要な存在である。他方、教育機会の提供に当たっては、教育と営業を分離し、教育と称して営業が紛れることで利用者に誤解が生じないよう留意する必要がある。そのうえで、利用者ニーズを前提に、金融機関からの具体的な情報提供等との両立も図りたい。

J-FLECとしても、金融機関、自治体、教育機関、地域団体と協力し、講師派遣やオンライン講座、J-FLEC認定アドバイザーの活用を通じて、金融経済教育の機会拡充に努めていく。また、金融庁、財務省財務局を含む関係省庁や、自治体、日本銀行等との連携も重視している。例えば鳥取県では、2026年6月11日に鳥取財務事務所が中心となり、地域内の関係者が連携して金融経済教育を広げるプロジェクトが立ち上がり、J-FLECも協力する形で参画している。

こうした地域発の取組みを各地に広げ、学びの機会格差を縮小していくことが重要である。金融経済教育は、単なる知識の伝達ではない。一人ひとりが自ら考え、選択し、将来に備えるための基盤であり、社会の持続可能性を高める取組みでもある。J-FLECは、全国に「学びの場」と「相談の場」を広げ、金融経済教育を社会の共通基盤として定着させるべく、多くの関係者のご協力のもとで、全力で取り組んでまいりたい。