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令和8年度 防衛関係予算について

主計局主計官 馬場 啓明

1.令和8年度防衛関係予算の全体像

令和8年度の防衛関係予算は、令和4年(2022年)12月16日の国家安全保障会議及び閣議において決定された「防衛力整備計画」等を踏まえて編成を行った結果、全体で9兆353億円(対前年度比+3.8%)を計上している*1。このうち、SACO関係経費*2、米軍再編関係経費*3を除く防衛力整備計画対象経費については、8兆8,093億円(対前年度比+3.9%)を措置している。(図表1:防衛関係予算の推移)

また、新規契約額については、8兆8,459億円(対前年度比+0.6%)を計上しており、このうち防衛力整備計画対象経費については、8兆2,607億円(対前年度比▲2.0%)を措置している。(図表2:新規契約額の推移)

図表1 防衛関係予算の推移

図表1 防衛関係予算の推移

図表2 新規契約額の推移

図表2 新規契約額の推移

2.令和8年度予算における主要事業

令和8年度予算は、防衛力の整備等に必要な事業を着実に推進しているところ、その主な内容は以下のとおりである。*4

(1)防衛力整備計画対象経費

ア スタンド・オフ防衛能力

○ 我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して、対空ミサイル等の脅威圏外から対処するスタンド・オフ防衛能力を抜本的に強化するため、極超音速誘導弾及び地上装置等の取得等(1,927億円、うち初度費1,626億円)、潜水艦発射型誘導弾の取得(160億円)、12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)の取得(357億円)、JSM(空対艦ミサイル)(36億円)及びJASSM(空対地ミサイル)(17億円)の取得等を実施。

イ 統合防空ミサイル防衛能力

○ イージス・システム搭載艦の整備に伴い、各種試験の準備等(797億円)を実施。

○ 弾道ミサイル、巡航ミサイル、極超音速滑空兵器等の迎撃能力を強化するため、SM-3ブロックⅡA(弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル)(723億円)、SM-6(長距離艦対空ミサイル)(107億円)を取得。

○ 弾道ミサイル等への対処能力を向上させるため、ペトリオット・システムの改修(77億円、うち初度費72億円)を開始。

○ 警戒管制能力の強化のため、次世代JADGE(仮称)の整備(547億円)を実施。

ウ 無人アセット防衛能力

○ 安価かつ大量のUAV・USV・UUVを活用し、これらの組み合わせによる多層的沿岸防衛体制(SHIELD)の構築(1,001億円)。

○ 情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング機能の強化のため、UAV(広域用)の取得(111億円)及び滞空型UAV「MQ-9B(シーガーディアン)」の取得等(765億円)を実施。

エ 領域横断作戦能力

【宇宙領域における能力強化】

○ 現在運用中のⅩバンド防衛通信衛星(きらめき1号)の後継機として、抗たん性や通信能力等が向上された次期防衛通信衛星を整備するとともに、令和7年度から製造を開始する現防衛通信衛星(きらめき2号)の後継機の打上げに向けて地上器材等の整備(882億円)を実施。

【サイバー領域における能力強化】

○ サイバー攻撃等対処に係る状況把握・対処等をより迅速かつ的確に行うため、AIを活用した支援システムの整備(39億円)を実施。

【電磁波領域における能力強化】

○ 相手の通信機器やレーダーが発する電波を妨害し、相手の通信や索敵などの能力を低減または無効化する能力を強化するため、24式対空電子戦装置(2式:52億円)の取得。

○ 電子妨害や電子防護に必要となる、電磁波に関する情報を収集する能力を強化するため、電波情報収集機RC-2(1機:503億円)を取得。

【陸海空領域における能力】

○ 機動的に侵攻部隊対処を行うため、ベース車体を用いた共通戦術装輪車として24式機動120mm迫撃砲(8両:95億円)、25式偵察警戒車(18両:276億円))を取得。

○ 対潜戦能力の強化等各種海上作戦能力が向上した新型のFFM(護衛艦)(1隻:1,043億円)、探知能力等が向上した潜水艦「たいげい」型潜水艦の10番艦を建造(1隻:1,208億円)。また、水中、水上目標の探知・識別能力等を強化した能力向上型P-1(1機:460億円)や搭載システム等の能力及び飛行性能を向上させた回転翼哨戒機(SH-60L)(3機:430億円)を取得。

○ 我が国の航空戦力の質・量をさらに洗練・強化するため、戦闘機F-35A(8機:1,493億円)・戦闘機F-35B(3機:725億円)を取得するほか、戦闘機F-2の能力向上(9機:97億円)を引き続き推進。

オ 機動展開能力・国民保護

○ 南西地域等の広大な空域において戦闘機等が粘り強く戦闘を継続するために必要な空中給油・輸送機(KC-46A)(2機:877億円)を取得するとともに、南西地域の島嶼部へ部隊等を輸送する海上輸送力を補完するため、補給品等(コンテナ)の輸送に特化した民間船舶(2隻:110億円)を確保(PFI方式)。

カ 持続性・強靱性

【各種弾薬の整備】

○ 継続的な部隊運用に必要な各種弾薬を確保(9,075億円)。

【装備品等の維持整備】

○ 装備品の可動数向上や安定的かつ計画的な取得を行うために必要となる品質の検証などを含む、3Dプリンタの活用に関する調査等を実施(3億円)。

【施設の強靱化】

○ 自衛隊施設について、既存施設の更新(4,368億円)、主要司令部等の地下化(231億円)、火薬庫の整備(672億円)、部隊新編及び新規装備品導入などに伴う施設整備等(3,411億円)を行うとともに、違法ドローンの探知・識別・対処を可能とする、より能力の高いドローン対処器材を整備(78億円)。

キ 研究開発

○ 防衛イノベーションや画期的な装備品等を生み出す機能を抜本的に強化するため、大学等に革新的・萌芽的な技術についての基礎研究を委託・補助する安全保障技術研究推進制度(129億円)のほか、外部の研究者等を活用し、将来の戦い方を大きく変える機能・技術をスピード重視で創出していくブレークスルー研究(237億円)*5を実施。

○ 多様化・複雑化する経空脅威に適切に対処するため、GPI*6の日米共同開発(528億円)や高出力マイクロ波(HPM*7)に関する研究(13億円)を実施。

○ UAVとエッジAIを搭載することにより、広大かつ悪路の多い戦場で、物資輸送、偵察、攻撃支援等を自律的に行うUGVの研究(41億円)を実施。

○ 次期戦闘機に係る日英伊共同開発を推進するため、必要な資金をGCAP*8政府間機関(GIGO*9)に拠出する等し、機体及びエンジンの設計等を実施(1,602億円)するほか、次期戦闘機と連携する無人機の研究開発(48億円)を実施。

ク 防衛生産基盤

○ 国内の防衛生産・技術基盤を維持・強化する観点から、防衛装備品の安定的な調達に関する様々なリスクに対応した企業の体制を整備するための事業(304億円)を実施。

○ 装備移転を安全保障上の観点から適切なものとすることを目的とし、防衛大臣の求めに応じ、企業が移転対象装備品の仕様及び性能の調整を行うために必要な資金を助成するための基金(防衛装備移転円滑化基金)に充てる補助金(400億円)を措置。

(2)米軍再編、基地対策等の推進

ア 米軍再編等関連軽費(2,260億円)

米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県をはじめとする地元の負担軽減を図るため、在日米軍の兵力態勢の見直し等についての具体的措置を着実に実施。

○ 米軍再編関係経費[地元の負担軽減に資する措置](2,145億円)

・ 普天間飛行場の移設、空母艦載機の移駐等のための事業、嘉手納以南の土地の返還等を推進。

○ SACO関係経費(115億円)

・ 沖縄に関する特別行動委員会(SACO)の最終報告に盛り込まれた措置を着実に実施。

イ 基地対策等関連経費(5,361億円)

防衛施設と周辺地域との調和を図るため、基地周辺対策を着実に実施するとともに、在日米軍の駐留を円滑かつ効果的にするための施策を推進。

○ 基地周辺対策経費(1,466億円)

・ 自衛隊の行為や防衛施設の設置等により発生する障害の防止等を図るため、住宅防音や周辺環境整備を実施。

○ 同盟強靱化予算(在日米軍駐留経費負担)(2,191億円)

・ 特別協定等に基づき、在日米軍従業員の給与の負担、提供施設の整備、訓練資機材の調達等を実施。

○ 施設の借料、補償経費等(1,705億円)

・ 防衛施設用地等の借上や水面を利用して訓練を行うことによる漁業補償等を実施。

3.人的基盤の強化への取組

優れた自衛官を安定的に確保するため、令和6年12月に関係閣僚会議においてとりまとめられた「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」に基づき、人的基盤の抜本的強化に関する予算を計上。

(1)自衛官の処遇改善

北方の最前線の活動拠点(道北・道東の一部)に勤務する隊員が厳しい環境下で訓練等に従事した場合に支給する手当、他国軍との共同訓練における指揮統制等に長時間従事する隊員に支給する手当の新設等(22億円)を実施。

(2)生活・勤務環境の改善

糧食の魅力化、隊庁舎の建替や改修、備品や日用品等の整備、停泊艦船業務の一部部外委託、臨時託児(シッターサービスの活用)の運用等(5,713億円)を実施。

(3)新たな生涯設計の確立

若年定年退職給付金の給付水準引上げ、65歳に至るまでの再就職支援に向けた体制の整備等(36億円)を実施。

(4)その他

施策の効果検証を担う人的基盤強化検証班の新設等に必要な予算を措置(44億円)。

4.効率化・合理化への取組

令和8年度においては、防衛力整備を効率化・合理化を徹底することにより、▲3,734億円のコスト縮減を図ることとしている。

(1)装備品の計画的・安定的・効率的な取得[縮減見込額:▲234億円]

長期契約も含めた装備品のまとめ買い等により、企業の予見可能性を向上させ、効率的な生産を促し、価格低減と取得コストの削減を実現。また、維持整備に係る成果の達成に応じて対価を支払う契約方式(PBL*10)等を含む包括契約を拡大。

○ 陸自PBLを活用した特別輸送ヘリコプター(EC─225LP)の維持整備(▲35億円)

○ 海自PBLを活用した練習ヘリコプター(TH-135)の維持整備(▲27億円)

(2)工数・工程等の精査[縮減見込額:▲2,954億円]

装備品等について、工数・工程等や関連経費の精査の取組を通じ、価格を低減。

(3)自衛隊独自仕様の絞り込み[縮減見込額:▲3億円]

モジュール化・共通化や民生品の使用により、自衛隊独自仕様を絞り込み、取得に係る期限を短縮するとともに、ライフサイクルコストを削減。

○ 陸自近距離監視装置の更新(▲1億円)

(4)事業に係る見直し[縮減見込額:▲530億円]

費用対効果の低いプロジェクトを見直す他、各プロジェクトのコスト管理の徹底、民間委託等による部外力の活用を拡大。

○ 空自航空機隠蔽用施設の整備(▲96億円)

(5)装備品の運用停止・用途廃止[縮減見込額:▲13億円]

陳腐化等により重要度の低下した装備品の運用停止、用途廃止を実施。

○ 空自近代化改修に適さない戦闘機(F-15)の用途廃止(▲13億円)

5.今後の課題

本年2月20日の施政方針演説において、高市総理は「国家安全保障戦略をはじめとする「三文書」の策定以降、新しい戦い方の顕在化、長期戦への備えの必要性など、安全保障環境の変化が様々な分野で加速度的に生じています。我が国として、主体的に防衛力の抜本的強化を進めることが必要です。このため、本年中に三文書を前倒しで改定します。」との方針を示した。

今後の防衛力については、本年中の三文書改定に向け、具体的かつ現実的な議論を積み上げていく必要がある。その上で、防衛力の強化のための裏付けとなる予算を確保する上で必要な財源のあり方については、こうした議論を踏まえ、財政の持続可能性にも十分配慮しながら、安定的な財源が確保されるよう必要な対応を検討していく必要がある。

また、防衛力整備にあたっては、(1)減少が見込まれる自衛隊員数の下でも運用可能なものとなっているか、(2)防衛産業の生産能力を踏まえた現実的なものとなっているか、(3)装備品の陳腐化や枯渇リスクに備える観点から民生品の活用や自衛隊の独自仕様の見直しが十分に図られているか、といった観点から精査していく必要がある。

*1)防衛省情報システム関係経費のうちデジタル庁に計上する510億円を含む。

*2)SACO関係経費とは、沖縄に関する特別行動委員会(SACO:Special Action Committee on Okinawa)最終報告(平成8年12月2日)に盛り込まれた措置を実施するために必要な経費を指す。

*3)米軍再編関係経費とは、「在日米軍の兵力構成見直し等に関する政府の取組について」(平成18年5月30日閣議決定)及び「平成22年5月28日に日米安全保障協議委員会において承認された事項に関する当面の政府の取組について」(平成22年5月28日閣議決定)に基づく再編関連措置のうち、地元の負担軽減に資する措置を実施するために必要な経費を指す。

*4)予算額は「(2)米軍再編、基地対策等の推進」を除き契約額ベース。なお、明示されているものを除き、初度費(専用治工具費や初度設計費等)は含まない。

*5)評価手法を確立し、成果の見込みの薄い研究については、途中段階であっても早期に中止を判断できる仕組みを構築。

*6)GPI:Glide Phase Interceptor

*7)HPM:High Power Microwave

*8)GCAP:Global Combat Air Programme

*9)GIGO:GCAP International Government Organisation

*10)PBL:Performance Based Logistics