1.福島市の概要
福島市は、福島県の北部に位置し、西は吾妻連峰、東は阿武隈高地に囲まれた自然豊かな県都です。
人口およそ27万人を擁し、古くは養蚕と阿武隈川の舟運で栄えました。
夏は暑く冬は寒冷で、寒暖差が大きい盆地特有の気候により、果物の生産が盛んで、抜群の甘さとみずみずしさの桃をはじめ、サクランボ、ブドウ、梨、りんごなどの美味しい果物を年間通して楽しむことができます。
また、東京から東北新幹線で日帰り往復できるアクセスの良さに加え、鉄道や高速交通網が交差する交通の結節点として重要な位置にあり、福島県の政治・経済・文化をけん引しています。

(1)甘くておいしい自慢の桃
2.公民連携窓口「公民こねくと」
福島市では、行政の力だけでは解決できない地域課題や行政課題に関して、民間企業等が持つ独自で多様なノウハウを活用することで課題解決を目指す、公民連携の取り組みに力を入れています。
民間企業等と連携する新たな取り組みを幅広く受け付け、実現に向けて調整を図るため、公民連携のワンストップ窓口「公民こねくと」を設置し、窓口を明確化するとともに、市長をトップに実施体制を確立し、実効性のある連携のスピーディーな実現を目指しています。
ここでは、これまで成立した取り組みの中から、具体的事例を2つ紹介します。

(2)公民連携窓口「公民こねくと」
3.日本一の納豆愛をPRする新商品開発
福島市は、一世帯あたりの納豆消費額が、ここ10年間で7回日本一に輝く「納豆のまち」です。
納豆は、市民の食卓に欠かせないもので、老若男女問わず深く親しみのある食材です。
その“日本一の納豆愛”を広く市内外に発信し、「納豆のまち福島」の認知度向上と地域ブランド化につなげるため、カルビー株式会社との共創プロジェクトとして、新商品の開発を令和7年8月にスタートしました。
開発にあたっては、カルビー株式会社と福島市に加え、納豆を愛する学生や市内で納豆料理を提供している飲食店などが参加するワークショップを複数回開催し、「なぜ福島市民は納豆好きなのか」を探りながら、フレーバーやパッケージデザイン、PRなどを検討しました。
ワークショップでの試作品の投票の結果、新商品は「納豆+タレ・白菜漬物風味」のポテトチップスに決定し、令和8年7月6日から東北エリア限定で発売されました。
本プロジェクトは、企業、行政、市民が一体となって福島市の魅力を掘り下げ、地域の強みを再発見する機会となるとともに、地域資源と企業の持つ商品開発力や発信力を掛け合わせた官民共創の実践となりました。

(3)商品開発のワークショップ

(4)新商品完成発表会
4.「福島市モデル」被災者支援システム
福島市では、東日本大震災以降、令和元年度の台風19号、令和2年度及び3年度の福島県沖地震など、度重なる災害に見舞われました。
これらの災害対応の経験から、災害発生時の早期生活再建の実現を目指して、富士フイルムシステムサービス株式会社と共同研究協定を締結し、新システムの共同研究を令和6年度から開始しました。
開発にあたっては、富士フイルムシステムサービス株式会社の技術力と福島市が過去の災害で得た知見や業務効率化のノウハウを融合することで、自治体内部の煩雑な事務作業を深掘りし、現場の声を反映しながら効率化を図ることができるシステムの構築を目指しました。
令和7年8月には、発災時の自治体業務を効率化し、被災者の支援申請プロセスの迅速化を実現する被災者支援のための新システム「被災者支援ソリューション 生活再建支援ナビ」として正式に製品としてリリースされました。
製品の特長は、システム上で被災家屋と世帯情報をひも付けて、罹災証明の申請受付から交付までの作業を効率化するほか、対象世帯に向けた支援メニューを自動で一覧化し、住民へプッシュ型の通知を送ることで、被災者がスピーディーに支援を受けられる点などがあります。
いつ起こるかわからない災害に備え、今後も事前の仕組みづくりを強化していく予定です。
こうした公民連携による課題解決の取り組みをさらに推進し、持続可能なまちづくりにつなげてまいります。

(5)被災者支援DXによる業務プロセス改善
官民共創で拓く持続可能なまちづくり
地方創生コンシェルジュ
東北財務局福島財務事務所長 根本 浩之
福島市の「公民こねくと」を軸とした官民共創は、地域の強みを引き出す魅力発信と、災害に強いまちづくりを両立させる極めて先進的な取り組みです。企業と行政が対等なパートナーとして市民を巻き込み、現場の知見を形にしたポテトチップスや被災者支援システムは、まさに地方創生の理想形と言えます。
このような取り組みが、諸課題の解決や、持続可能な未来を切り拓く原動力となることを期待しています。
各地の話題
石川県
令和6年能登半島地震からの復旧・復興について
令和6年(2024年)1月1日に発生した能登半島地震から約2年半が経過しました。本地震は石川県能登地方を中心に、住宅、道路、港湾、上下水道など、地域社会の基盤に甚大な被害をもたらし、発災直後には多くの住民が避難生活を余儀なくされるなど、地域の暮らしと産業に大きな打撃となりました。
現在、石川県および関係市町では、「創造的復興」の理念のもと、被災者の生活と生業の再生を最優先に復旧・復興施策を推進しています。インフラについては、危険が高い箇所への応急対策はすでに完了するなど、機能回復や本格復旧が進展しています。また、復旧の見通しが段階的に明らかになる中で、住まいの再建や産業活動が再開するなど、地域の再生に向けた動きが本格化しています。
1.復興まちづくりの進展
石川県が策定した「創造的復興プラン」をはじめ、輪島市、珠洲市、能登町、穴水町、七尾市、志賀町、中能登町、羽咋市、かほく市、内灘町の10市町において復興計画が策定・公表されるなど、被災者が将来を見据えた生活再建を検討しやすいよう、住まい再建の見通しやまちづくりの方向性が具体化されています。さらに、地区単位での具体的な整備計画の検討や事業の着手が進められており、特に輪島市朝市周辺においては、土地区画整理事業等により、住宅や店舗の再建を段階的に進める取組が進展しています。
2.住まいの再建
住まいの確保は復興の最重要課題の一つです。応急仮設住宅の整備は完了し、現在は恒久的な住宅再建へと移行しています。復興公営住宅については、必要戸数の用地確保にめどが立ち、市町ごとに設計、施工が順次進められています。また、自力再建を目指す被災者に対しては、県が「いしかわ型復興住宅」のモデルプランを提示し、相談窓口を設置するなど、住宅再建に向けた支援体制を構築しています。住宅金融支援機構の融資制度とあわせ、多様な選択肢のもとで再建を進める環境が整備されています。
3.生活インフラの復旧
上下水道については、断水が解消され、現在は耐災害性の向上も含めた本格復旧が進められています。水道施設は令和10年度末までの復旧完了を目標に整備が進められています。また、断水に強い上下水道システムの構築に向け、家庭や小規模コミュニティ単位で水を循環利用する「小規模分散型水循環システム」の技術実証が珠洲市で進められています。この取組は、従来の集約型水道と組み合わせた新たな水インフラのモデルを構築するもので、断水時でも生活用水を確保できるほか、大きな施設を必要としないためコスト面に優れているという利点があります。
道路については、能越自動車道や国道249号などの基幹道路の通行機能が回復しつつあり、震災前と同程度の走行性の確保に向けた取組が進められています。今後は段差や急カーブの解消などを含めた本格復旧が進められ、一部区間では令和9年春頃まで、全体では令和11年春頃までの完了が見込まれています。県道も通行止め箇所が大幅に減少し、地域の交通機能は概ね回復しています。また、河川や砂防関連施設についても応急復旧は完了し、優先度の高い箇所から本格復旧と防災機能の強化が進められています。

(写真提供)石川県
4.産業・なりわいの再生
地域経済の再生に向けて、能登の基幹産業である農林水産業や観光業などにおいても復旧や復興が進められています。農業分野では、国、県、市町、JA等の関係機関が一体となった「奥能登営農復旧・復興センター」が設置され、復旧見通しの提示や相談対応などを通じて営農再開を後押ししているほか、被害の程度に応じて段階的に復旧を進めることで、地域の生産基盤の回復が図られています。水産分野では、漁港や港湾施設の応急復旧が完了し、漁業や物流機能の再開が進んでいます。観光分野においても、和倉温泉などの旅館の一部が営業を再開しているほか、国道249号など能登半島沿岸部を周回する広域観光ルート「能登半島絶景海道」を活用した創造的復興の取組が進められています。この取組では、地震により隆起した海岸など景観の変化を新たな観光資源として活用し、道路の復旧とあわせて、滞在型観光の促進や道の駅の機能強化、サイクルツーリズムの推進などにより交流の創出を図り、能登の魅力を国内外へ発信しています。地域住民や民間事業者、観光関係団体など多様な主体が連携しながら進められており、復興の担い手としての関係人口の拡大にも寄与しています。沿線地域では、復興イベントや体験型観光の企画・実施などを通じて、訪れる人々と地域との交流が生まれ、被災地への理解と共感が広がっています。こうした取組は、単なる観光振興にとどまらず、地域の誇りや活力を取り戻す契機となるとともに、将来にわたり持続可能な地域社会の形成につながるものと期待されています。

(写真提供)石川県
5.財政融資資金の活用
財政融資資金は、道路、河川、港などのインフラ施設の復旧はもとより、学校、社会福祉施設等、建物の復旧や災害廃棄物処理など、災害復旧に幅広く活用されています。石川県内自治体への貸付額は、令和6年度840億円(前年度比87.1%)、令和7年度992億円(前年度比18.1%)と地震発生前に比べ大きく増加しました。貸付額の半分以上を災害復旧事業債が占めています。
北陸財務局では、令和6年能登半島地震や奥能登豪雨等からの復旧・復興、「災害に強いまちづくり」など、今後も地域のニーズを的確に把握し、引き続き地域住民の生活を支える事業に財政融資資金の貸付けを実施していきます。
各地の話題
那覇市
生成AIを活用した自治体DXの深化
那覇市の取組
1.はじめに
那覇市は沖縄県の県都であり、沖縄本島南部に位置しています。人口は約31万人を擁し、政治・経済・文化の中心地として発展してきました。観光都市として国内外から多くの来訪者を迎える一方で、少子高齢化や行政需要の高度化などの課題にも直面しています。こうした背景のもと、本市ではデジタル技術の活用による行政サービスの高度化、いわゆるDXの推進に取り組んでいます。
2.生成AI活用の第一歩
那覇市では、市民サービスの向上と業務効率化を目的として、生成AIの活用を段階的に進めています。単なる業務支援ツールとしてではなく、行政サービスの質を高める新たな手段として、その可能性を模索してきました。
生成AI活用の第一歩として、本市は令和5年12月、庁内で利用しているコミュニケーションツール「LoGoチャット」のオプション機能である「LoGoAIアシスタント」を導入しました。
近年、自治体を取り巻く環境は大きく変化しています。住民ニーズの多様化や行政手続きの複雑化が進む一方で、限られた人員の中で質の高い行政サービスを維持していくことが求められています。こうした課題に対応するため、本市ではDX推進の一環として生成AIの活用に着手しました。
生成AIは、文章作成や情報整理、アイデア出しなどを支援する技術であり、職員の業務効率化が期待されています。一方で、誤った情報を生成する可能性や情報漏えいへの懸念もあることから、導入にあたっては生成AI活用ガイドラインを策定し、安全な利用ルールを整備しました。
3.より那覇市に特化した「回答」を目指して
「LoGoAIアシスタント」の活用を進める中で、新たな課題も明らかになりました。
一般的な生成AIはインターネットや幅広い情報をもとに回答を生成するため、自治体固有の業務や制度に関する専門的な質問には十分に対応できない場合があります。
そこで本市は、RAG(検索拡張生成)機能を備えた「exaBase 生成AI for 自治体」の検証を開始しました。RAGは、あらかじめ登録された資料やデータを検索し、その内容を参照しながら回答を生成する仕組みで、庁内のデータや指定したデータベースを参照できるため、より本市の業務に即した「回答」が期待できます。
検証では、議会答弁書や市長あいさつ文の作成支援を対象に評価を行い、必要な情報を迅速に抽出できることが確認されました。一方で、文章表現や構成については職員による確認・修正が必要であり、回答精度を高めるためにはデータ整備やプロンプト(生成AIに入力する指示文)の工夫が重要であることも明らかとなりました。
これらの検証結果を踏まえ、本市では「exaBase 生成AI for 自治体」の本格導入を決定しました。
4.ガイドラインの改訂と安全な活用環境の整備
本サービスの導入を契機に、「LoGoAIアシスタント」導入時に策定した「那覇市生成AI活用ガイドライン」を改定しました。
ガイドライン改定では、より機密性の高い情報もプロンプト入力できるようにするため、取り扱うことのできる情報資産の分類の見直し、利用条件を設定するなどの整備を行い、従来よりも幅広い業務で生成AIを活用できるようにしました。これにより、安全性を確保しながら、より実践的な業務への活用が可能となりました。
5.AI窓口の実証

デジタルヒューマンを用いたAI窓口実証
次のステップとしてアバターを活用したコミュニケーションAIによる窓口案内の実証を実施しました。
この取組は、NTTドコモビジネス株式会社(旧NTTコミュニケーションズ株式会社)との「特化型生成AIの共同実証による未来協創連携協定」に基づくものです。本協定では、(1)市民サービスの向上と行政事務の効率化に向けた特化型生成AIモデルの共同研究、(2)当該モデルを活用した事業創出、(3)生成AI利活用に関する人材育成支援の三つを柱としています。また、庁内業務の効率化から市民向けサービスの高度化へと段階的に発展させ、最終的には窓口対応のデジタル完結を目指すこととしています。
実証では、市民や職員から「案内が分かりやすい」「24時間対応への期待が高まる」といった前向きな評価が寄せられました。一方で、応答速度や回答内容の網羅性、音声認識の聞き取り精度など、改善すべき課題も明らかとなりました。
また、AIによる案内に慣れていない利用者も多く、技術面だけでなく利用環境や運用面の工夫も必要であることが分かりました。
今回の実証は、AIが窓口業務を補完する可能性と、本格運用に向けた課題の両方を確認する貴重な機会となりました。
6.各課に特化した生成AIへ
現在、本市ではRAG機能のさらなる活用拡大を検討しています。
各課が保有する業務資料やマニュアル業務資料を取り込み、業務ごとに最適化された生成AIの構築を目指しています。
生成AIの活用範囲が広がることで、職員の業務効率化だけでなく、組織全体の知識共有や業務品質の向上にもつながるものと考えています。

「特化型生成AIの共同実証による未来協創連携協定」の取り組みイメージ
7.おわりに
本市の生成AI活用は、LoGoAIアシスタントの導入から始まり、RAG機能の活用、ガイドラインの改訂、AI窓口の実証へと着実に発展してきました。その過程では多くの成果が得られる一方、新たな課題も明らかになっています。
今後も「まずやってみる」という姿勢のもと、生成AIを職員の業務支援にとどまらず、市民サービス向上につながる重要なツールとして育てながら、より便利で質の高い行政サービスの実現を目指してまいります。
自治体DXの深化への期待
沖縄総合事務局財務部 地域連携調整官 外間 史宜
沖縄県の県都として、多様な市民ニーズに応えている那覇市。業務の効率化や市民サービス充実に向け、最新の技術と「まずやってみる」の精神を掛け合わせることで、職員や多くの市民にとって、「働きやすさ」「住みやすさ」が更に向上していくことを期待しています。

