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デザインは、間を繋ぐこと。

グラフィックデザイナー 佐藤 卓

巻頭言

デザインの仕事を長く続けてきて、つくづく思います。それは、デザインとは「間を適切に繋ぐこと」であるということ。この歳になって迷わず言えるようになりました。新しい“繋ぎ方”を見つける仕事と言っても過言ではありません。新しいものを生み出していると誤解されがちですが、生み出すことと繋ぐことは異なります。よく「いつも新しいものを生み出すのは大変じゃないですか?」と質問を受けますが、自分は何も新しいものなど生み出してはいません。すでに存在する価値と人をデザインによって繋いでいるだけなのです。

例えば牛乳のパッケージデザインは、中身の牛乳と人を間で繋いでいます。紙のパックに入った牛乳は、外から中身が見えないので、パッケージの表面で中身を的確に伝えないといけないわけです。そして他社の牛乳との違いや特徴、そしてそもそも口に入れるものなので牛乳として美味しそうな印象にもしなければいけません。清潔感や安心感、メーカーらしさも必要です。もちろん限られたコストの中にも収めなければいけない。このように牛乳のパッケージとしてあらゆる方向から検証を重ね、中身の牛乳と生活者を繋ぐのが牛乳パッケージデザインの仕事なのです。

また、例えば皆さんが座っている椅子についてはどうでしょう。よく椅子のデザインといえば、見た目の形や素材や機能、そして新しい考え方が語られ、デザインが主役のように伝えられますが、椅子は座るコトと人を間で繋いでいるモノなのです。間にあって座り心地を提供しているので椅子が主役ではありません。デザインされたすべてのモノの向こう側には必ずコトがあるのです。ここでもデザインが間にあることに気づけることでしょう。

デザインはカッコいいもの、シンプルなもの、現代的なもの、お洒落なものだけに施されていると多くの人がいまだに誤解しています。そしてここでデザインを大きく誤解に導いてしまうもっとも厄介な言葉をご紹介しましょう。それは「付加価値」という言葉です。この言葉がなぜか悪性のウイルスのように世間に蔓延してしまいました。私は、価値は付け足すことではなくすでにあるもの、あるいは関係の中から“見出すこと”であると確信しています。成功した仕事は、一見付け加えているように見えるものでも、実はそもそも人との関係性の中でそのポテンシャルが見出されたものであることがほとんどなのです。付加価値などという思考で、すでにある物事に外部から安易なアイデアを付け加えるから余計なものが生み出され、資源を使い大量の廃棄物も出る。つまり物事をよく見もしないで外から付け足す。それが付加価値という言葉で助長されてしまう。そしてそこにデザインが求められてしまうのです。すると、デザインは表層を覆うカッコいい飾りのようなものというイメージになってしまいます。人の営みにデザインと関わりのない物事は何ひとつありません。目立つものだけにデザインが施されているわけではなく、ほとんどのデザインが無意識の中に存在しているのです。

現代のような資本主義社会では経済効率が最優先され、即数字に出ることが求められます。ゆえに表層的な飾りを付け加えて、一見新しく見えるものを大量につくって売る。そこにデザインが便利な道具として使われる。これが実は残念ながら世間のデザインに対する印象なのではないでしょうか。つまりデザインの本質がいまだに誤解され続けています。

日常はあらゆるデザインが複合的に絡み合い、当たり前の生活が成り立っています。これを読んでいらっしゃるあなたも必ず何かと何かを繋いでいることでしょう。それが実は大切なデザインであり、繋いでいるあなたもある意味デザイナーであると自覚することで、それが少しでも励みになれば幸いです。