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国際市場での販路拡大へ
日本産酒類輸出促進コンソーシアムを活用した事業者の海外進出事例

日本産酒類の国内市場は少子高齢化や人口減少、消費者の低価格志向、ライフスタイルの変化、嗜好の多様化等により、全体として縮小傾向にある。一方で日本産酒類の輸出は、清酒(日本酒)やウイスキー等の日本産酒類の国際的な評価の高まり等を背景に、年々増加傾向にある。しかし、独自の販路開拓や商習慣の違いなど、輸出へのハードルは決して低くはない。本特集では、国税庁の事業として設立された「日本産酒類輸出促進コンソーシアム(SAKE-CONSO)」の無料支援メニューを活用し、国際市場での販路拡大を実現した酒類製造者・卸売事業者の事例を紹介する。

取材・文 向山勇

日本産酒類輸出促進コンソーシアム1
日本産酒類輸出促進コンソーシアム2
日本産酒類輸出促進コンソーシアム3
日本産酒類輸出促進コンソーシアム4

問合せ先

令和8年度

日本産酒類輸出促進コンソーシアム 事務局

TEL:03-6633-3680

E-MAIL:sakeconso@pasona.co.jp

HP:https://sake-consortium.nta.go.jp/

営業時間:09:30~17:30/休業:土日祝日・年末年始

日本産酒類輸出促進コンソーシアム QR

日本産酒類輸出促進コンソーシアムの目的とは
海外における日本産酒類の認知度向上、国際市場における販路開拓・拡大を支援

「日本産酒類輸出促進コンソーシアム(SAKE-CONSO)」は、政府の「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」に基づき、国税庁の事業として令和2年度に設立された。

SAKE-CONSOでは、日本産酒類の輸出拡大のため、主に酒類業者を対象とした各種の支援メニューをすべて無料で提供しており、酒類の輸出を検討している事業者に応じた支援を行っている。SAKE-CONSOで提供している支援メニューは次の4つに分かれる。

1 情報提供

海外の市場動向や輸出の際のポイント等について、各分野に特化した国内外の専門家等によるオンラインセミナーの定期開催や、日本産酒類の輸出動向や各国・地域の日本産酒類市場などを伝えるメールマガジンの定期配信を行っている。オンラインセミナーはこれまでに78回実施しており、定期メールマガジンは50本以上配信されている。セミナー動画やメールマガジンのアーカイブは、SAKE-CONSOのサイトで閲覧可能となっている。

2 専門家相談

酒類の輸出に知見のある専門家(26か国・地域に対応)による、回数無制限の無料オンライン個別相談を提供している。

3 国内事業者間マッチング

酒類製造者と海外に販路を持つ輸出商社・卸売事業者とのマッチング(商談)支援をおこなっている。専門家の同席によるサポートも可能。これまでに2,200者以上の事業者が参加し、900件以上の商談に繋がったほか、輸出商社・卸売事業者を通じて100件以上の輸出に繋がっている(会員事業者へのアンケート結果による)。

4 海外バイヤーとの商談支援

多くの海外バイヤーが集まる展示会に国税庁がジャパンパビリオンを設置し、出展を希望する酒類事業者にブースを提供している。令和5~7年度合計でのべ1,100者以上の事業者が出展している。


SAKE-CONSOの登録事業者数は年々増加しており、令和8年3月末時点で2,268事業者に達するなど、多くの事業者に活用されている。

数字で見るSAKE-CONSO(令和8年3月時点)

事例1 岩瀬酒造株式会社
製品のブランディングで顧客を取り込む

岩瀬酒造株式会社

企業プロフィール

設立………1723年
所在地……千葉県夷隅郡御宿町久保1916
従業員……12名
URL……… https://www.iwanoi.com/
事業種別…酒類製造者

コロナ禍と若者の酒離れを契機に挑戦

千葉県に蔵を構える岩瀬酒造株式会社は、享保8年の創業以来、300年にわたり酒造りの伝統を受け継いできた老舗だ。長らく国内販売のみを行ってきた同社が海外市場を目指すことになったのは、若者の酒離れやコロナ禍による売上減少がきっかけだった。しかし、すでに多くの酒蔵が海外進出を進める中、後発である同社にとって自社ブランドの認知度向上は大きな課題だった。どの国に、どのようなアプローチを取るべきか──。その道筋を探るためJETROに相談したことから「SAKE-CONSO」への登録に至る。

市場理解と商談会を通じてブラッシュアップ

海外展開の第一歩として、同社が着手したのは各国の市場を理解することだった。セミナーを受講して最新トレンドを学ぶ中で、日本酒が広く浸透している地域がある一方で、まだ知名度が高くない国にこそ大きな成長が期待できると実感したという。

並行して、国内事業者間マッチング商談会に何度も参加することで、相手の視点に慣れ、資料の内容や伝え方を大きくブラッシュアップしていった。

「全てが成果に結びつくわけではありませんが、商談後のサンプル送付や丁寧なフォローを続けた結果、受注に至ったケースもあります」という。

さらに、スペイン市場に関するセミナーで現地のリアルな情報を得たことが後押しとなり、海外商談会へ思い切って参加し、現地バイヤーから高い評価を獲得することに成功した。

輸出開始から約3年の時点で、同社の商品はフランス、ベルギー、イギリス、ドイツ、米国、台湾など計11か国・地域へ届けられるようになった。中でも継続的な注文が寄せられているのがフランスをはじめとする欧州圏だ。その成功の鍵は、主力銘柄「岩の井」が持つ個性にある。硬度240度の地下水による「超硬水仕込み」で造られる日本酒は、ワインでいうフルボディに相当する深い味わいが特徴だ。

「当社の酒は欧州圏との相性が良く、料理とのペアリングを提案できる点を強みとして活かしています」

食とのペアリング文化が根付く欧州のレストランでこの味わいが高く評価され、ブランド認知が着実に広がっている。

次なる成長市場への挑戦

同社は、中南米など日本酒の認知がまだ十分に浸透していない新興市場にも関心を寄せている。

「まだ浸透していない地域だからこそ、当社の商品が受け入れられる余地もあるはずです」

これから輸出に取り組む事業者へ向けて、担当者はこうアドバイスを送る。

「自身で海外現地に赴いて得られる情報には限りがあるので、まずはSAKE-CONSOに登録し、セミナーを視聴されることをお勧めします。支援メニューを活用し、自ら積極的に発信することで、輸出への道を切り拓くことができるのではないでしょうか」

※この事例は令和7年度の取材内容をもとに作成しています。

事例2 株式会社モトックス
情報収集の徹底と戦略的活用で成功

株式会社モトックス

企業プロフィール

設立………1954年
所在地……大阪府東大阪市小阪本町1丁目6番20号
従業員……219名
URL……… https://www.mottox.co.jp/
事業種別…卸売事業者

ワインの陰で減少した地酒への「原点回帰」

大阪府東大阪市に拠点を置く株式会社モトックスは、創業初期から地酒の卸売業に携わってきた。しかし、1990年代以降にワインを中心に売上を伸ばした一方で、ピーク時には約10億円あった地酒の売上は2億円まで減少していた。

「原点に立ち返り、いま一度日本酒にも力を入れたい。その方針のもと、自社ブランド『Craft Sake』の販路を海外へ拡大するため、令和元年に輸出部門を立ち上げました」と語るのは、同部門を牽引する谷口氏だ。

しかし、同社にとって輸出は未経験の領域であり、全く知識の無かった谷口氏が1名でのスタートだった。何から始めて良いのかわからず、課題すら見つけられない状態でJETROに相談したことがきっかけで、「SAKE-CONSO」に登録することになった。

ミスマッチの苦悩と、徹底した情報収集

谷口氏はまず、SAKE-CONSOを活用して貿易実務の基礎を学び、商談会に積極的に参加した。しかし、そこで厳しい現実に直面する。

「最初は売上を伸ばすことを重視していましたが、商談相手が求める大ロットのニーズに対応できないなど、ミスマッチが多く発生しました。思うように輸出を増やすことができず、苦労しました」

そこで谷口氏はSAKE-CONSOやJETROの専門家に相談し、マーケットに関するセミナーを受講して情報収集を徹底した。そして、商談先国のニーズを踏まえた商品開発へと戦略を転換した。今まで取引のなかった酒蔵へ電話で営業をかけたり、ラベルのイメージを変えてローマ字表記を追加するほか、通常流通商品の扱いも開始したりすることで、継続的な売上へと繋げていった。ターゲット市場の徹底的な研究は、実際のビジネス現場で大きな成果を生む。タイ市場を開拓する際には、商品の価格帯や嗜好について事前に情報収集しつつ、現地のディストリビューターの動向を独自に研究した。

「その後、バンコクやチェンマイでの展示会に出展したところ、ディストリビューター2社、料飲店12社もの現地事業者と取引を開始することができました」

確かな手応えを掴んだ同社は、令和4年に輸出担当者を増員。日本語が堪能な英語ネイティブのイギリス人を採用したことで、ホームページやSNSの英語対応、海外からの問い合わせフォームの刷新を行うなど、世界へ向けたビジネス拡大の基盤を確固たるものにしている。

輸出先は3か国から17か国へ拡大

輸出開始当初は3か国だった実績も、令和6年には17か国にまで拡大した。現在注目している市場はブラジル、ベトナム、カンボジア、UAEであり、成果が出始めている韓国市場もさらに強化していく方針だ。今後はインポーターの先にいるディストリビューターとのダイレクトな関係を深め、さらなる販路拡大を見込んでいる。また、税関手続きが簡素化されるAEO認定の取得も目指しているという。

「人員も多く割けず、知識もない状況から輸出を実現するためには、信頼出来る組織に相談し、効率よく情報収集をすることが近道です。まずはSAKE-CONSOに登録することを強くお勧めします」

※取材後の令和8年4月24日にAEO特定輸出者認定を取得。

※この事例は令和7年度の取材内容をもとに作成しています。

事例3 株式会社秋田屋
卸の強みを活かす緻密なマッチング戦略

ベトナムでの商談会の様子

ベトナムでの商談会の様子

企業プロフィール

設立………1855年
所在地……愛知県名古屋市東区東外堀町60
従業員……164名
URL……… https://www.akita-ya.com/
事業種別…卸売事業者

国内消費の減少を見据えた海外への挑戦

愛知県名古屋市に拠点を置く卸売事業者の株式会社秋田屋。同社が海外販路の拡大を見据えて動き出したのは2016年頃のことだった。国内消費の減少という課題に直面する中、まずは世界的な卸売プラットフォーム「Alibaba(アリババ)」に出店し、海外バイヤーとの接点を模索し始めた。

「当時は、海外の展示会参加者リストなどからお酒を扱っている企業をリストアップし、ダイレクトメールを送って反応をみるという地道な方法で、1件1件連絡を取っていました」

しかし2020年頃、国内で主力として取引していた蔵元の多くが海外においてすでに独占契約を結んでおり、新たな展開が難しいという壁に直面する。そこで新たな接点を求め、「SAKE-CONSO」への登録を決意した。

既存・新規を問わない緻密なマッチングアプローチ

SAKE-CONSO登録後、同社は海外展開の専門チームを組織し、大学の留学生の採用などにより多言語対応の体制を整えた。商談を重ねる中で、卸売業者ならではのアプローチも見えてきた。

「マッチングで商談させていただく蔵元さんのうち、約3分の1はすでに国内で取引のあるお客様です。ただ、お互いに国内担当と海外担当が分かれているため、弊社が輸出をしていることが伝わりづらいケースがありました」

そこで同社は、既存の取引先であっても改めてマッチングを希望し、蔵元がまだ進出していない国をヒアリング。自社が持つ海外の商流へ提案することで、スムーズに輸出へ繋げることに成功している。

輸出が実現するまでの期間は、早くても3か月、長いものでは2年ほどかかることもある。同社はこれまで英国、フランス、台湾とのオンライン商談会に参加してきたが、通訳を挟む商談では時間が限られるという課題も感じていた。

「オンライン商談会はメリットがありますが、理想としては、オンラインで反応が良かったお客様に対し、実際に渡航してオフラインでの商談を実施するのが効果的だと思います」

事実、台湾との商談では、オンライン時に先方の来日タイミングを伺い、後日直接アポイントを取って対面で商談したことが大きな成果に結びついた。また、ベトナムへの渡航にあたってはSAKE-CONSOの専門家相談を活用し、現地のアルコール事情のアドバイスを事前に得たうえで商談に臨んでいる。

欧州やアジア新興国への商流拡大へ

着実にノウハウを蓄積してきた秋田屋が次に見据えるのは、よりスケールの大きな市場だ。

「最終的には、市場が大きく洋食とも親和性がある日本酒を中心に、ヨーロッパで商流を拡大していくことが目標です。ある程度日本酒が浸透しているフランスあたりを足がかりにしたいと考えています」

さらに、同社がまだ販路を持たないベトナムやインドといった、今後伸びていくであろうアジアの新興国での新規開拓にも意欲を燃やしている。

※この事例は令和6年度の取材内容をもとに作成しています。

事例4 天吹酒造合資会社
専任不在を補う現地目線とファン作り

酒蔵見学受入時の様子

酒蔵見学受入時の様子

企業プロフィール

設立………1688年~1704年
所在地……佐賀県三養基郡みやき町東尾2894
従業員……18名
URL……… https://www.amabuki.co.jp/
事業種別…酒類製造者

情熱から始まった挑戦

国内市場の縮小が予想される中、「日本酒の魅力を世界中の人々に届けたい」という強い願いを胸に、佐賀県の天吹酒造合資会社は海外輸出への一歩を踏み出した。しかし、単独での展示会出展や新規販路の開拓は、想像以上に高いハードルであったという。

「そんな時、SAKE-CONSOを知り、『ぜひお力をお借りしたい』との思いで参加を決意しました」

専任スタッフ不在を補う、徹底した「現地目線」

同社の規模では、現地に専任スタッフを常駐させて営業活動を行うことは難しい。そこで彼らが重視したのは、自ら足を運ぶ「フィールド調査」など、徹底した現地目線の戦略だった。

「現地の酒販店や飲食店を訪問し、商品の陳列状況や他社製品との比較を観察することで市場の実態を把握しています。また、販売代理店や現地スタッフから顧客の声についてヒアリングを行い、商品選定に活かしています」

さらに、ホームページの英語対応を行い、海外から気軽に連絡できる問い合わせフォームを整備。インバウンドを意識した酒蔵見学も定期的に開催し、SNSを活用してパーソナルな繋がりを作ることで、一般の消費者をもパートナーに変えていく地道なファン獲得に努めている。

開拓市場での成功と、「焦らず築く」独自哲学

令和6年11月にはトルコでの商談会に初参加し、関税の影響で大量輸出が難しいなどの課題がありながらも良いスタートを切ることができた。また、同年8月の台湾・高雄での展示会では、未開拓だった地域での新たな卸先を見つけることに成功している。商談後の連絡が途絶えることは珍しくないというが、担当者は独自の考えを持っている。

「不思議なことに、忘れた頃に突然連絡が来ることも少なくありません。急いで成約を目指そうとするとかえって上手くいかないことが多く、焦らず、長期的な視点で信頼関係を築くことが成功への鍵だと考えています」

また、日本の商品をそのまま持ち込むのではなく、「各国のニーズに寄り添ったラベルデザインの工夫など、現地のパートナーが扱いやすい商品を提供することが重要です」という。

同社は約20か国へ輸出を行っているが、今後は国ごとの売上のばらつきをなくし、均等に一定量を確保していく方針だ。

「現段階での目標としては、売上における国内と海外の割合を50:50にすることを目指しています」

海外では日本酒ブームと言われることもあるが、現地に足を運ぶと実際に飲んでいる人はまだ少ないというのが率直な印象だという。

「この状況を打開するためには、自社商品を販売することにとどまらず、日本酒業界全体が一丸となって、日本酒を飲む人口そのものを増やす取り組みが必要だと感じています」

※この事例は令和6年度の取材内容をもとに作成しています。

事例5 菊池酒造株式会社
事前アポと対面商談で掴んだ大口受注

韓国での商談会における自社PRの様子

韓国での商談会における自社PRの様子

企業プロフィール

設立………1878年
所在地……岡山県倉敷市玉島阿賀崎1212
従業員……14名+役員4名
URL……… https://kikuchishuzo.co.jp/
事業種別…酒類製造者

オーストラリアから始まった輸出への挑戦

菊池酒造の海外輸出の取り組みは2013年度にオーストラリアのメルボルンで開催されたイベントへの出展が始まりだった。この経験を活かし岡山県の酒蔵5蔵や備前焼作家、農家らで集まって協同組合を設立。中小企業庁の補助金を活用してオーストラリア、イギリス、シンガポールでイベントを開催したほか、国税庁の補助金を活用し岡山県酒造組合でフランスの「サロン・デュ・サケ」に出展するなど、実績を重ねてきた。

「こうした経験を経て海外輸出の方法を知り、渡航慣れすることによって輸出が増えていきました」という。

「SAKE-CONSO」に登録が転機に

転機となったのは2020年頃、税務署からの紹介で「SAKE-CONSO」に登録したことだ。同サービスを通じて国内事業者間マッチングを活用し、新規出荷国への商流を持つ事業者との連携を深めていった。中でも、フランス市場に強みを持つ卸問屋との出会いは大きかった。

「弊社のフランス渡航の前に、この卸問屋様を通じて現地のお客様とのアポイントをとっていただき、現地で商談をすることもできました」

単に商談会に参加するだけでなく、渡航前にあらかじめ現地での商談を組み込むという戦略的なアプローチで新たな販路開拓の可能性を広げた。

その戦略が大きく結実したのが、2024年1月に韓国・ソウルで開催された商談会だ。従来の展示会では、様々な人とは交流できるがインポーターに出会えるかはわからず、具体的な商談に進展しないことが多いとの課題を抱えていた。しかし、購入意欲の高いバイヤーがあらかじめ集められたこの商談会では状況が違った。

「韓国・ソウルの商談会では、コンテナ1本分の受注をいただき、弊社としてはとても大きなお取引に繋がりました」

現地へ赴き、対面で商談を重ねることが、新規市場開拓の壁を打破する原動力となったという。

品質へのこだわりと、海を越えた顧客との絆作り

同社は〝最低でも、今後3〜5年以内に5千万円くらいを目標として海外での出荷量を増やしていく″という明確な目標を掲げている。目標達成に向けた課題の一つが、品質管理の徹底だ。

「近年では、日本側のコンテナから現地倉庫まで、すべて冷蔵で商品を管理されている業者も増えてきている印象です。酒蔵出荷時の品質が以前にも増して重視されていると感じます」

さらに、現地を訪問したからこその気づきもあった。

「これまで反応が薄いと感じていた英語のニュースレターやSNSが、実は現地の得意先に好意的に読まれていたことが分かりました。海外のお客様も意識したSNSでの情報発信を心掛けていきたいです」

※この事例は令和6年度の取材内容をもとに作成しています。

事例6 ヤマエグローバル株式会社
独占契約の壁を越えるロジスティクス

London Wine Fair2024(ブースの様子)

London Wine Fair2024(ブースの様子)

企業プロフィール

設立………1950年
所在地……福岡県福岡市博多区博多駅東2丁目13番34号
従業員……13名
URL……… https://www.yamaehisano.co.jp/
事業種別…卸売事業者

立ちはだかった「独占契約」の壁

福岡県に拠点を置く卸売事業者、ヤマエ久野(株)(現 ヤマエグローバル(株))。同社が海外事業部を立ち上げたのは2016年のことだった。卸売という立場上、国内の酒類メーカーとは太いパイプを築いていたが、設立当初は海外の顧客が全くいない「ゼロからのスタート」だった。

「JETROなどを通じて海外のお客様を増やす努力をしていましたが、酒業界特有の『独占契約』という壁に直面しました。現地のバイヤーから新しい商品がほしいと要望を受けても、契約の都合上ご案内できないケースが多く、どうすればよいかと頭を抱えていたのです」という。

SAKE-CONSOとの出会いと緻密なロジスティクス

転機が訪れたのは2020年頃。「SAKE-CONSO」の存在を知り、登録したことが現状打破のきっかけとなった。海外販路を開拓するうえで、同社は「バッティングの回避」と「物流コストの最適化」という戦略を重視している。

「ある商品をアジアの様々なインポーターに案内すれば、必ず末端でバッティングが起き、価格競争を招いてしまいます。一方で、一社に独占させると現地の企業の力量次第で売上が大きく左右されます。だからこそ、メーカー様とは事前にどういった方向性で販売するかを綿密に打ち合わせることが不可欠なのです」

さらに、昨今の不安定な国際情勢による輸送コストの高騰にも現実的な解決策を講じている。

「すべてをリーファーコンテナ(温度を一定に保つコンテナ)で輸出するとコスト面で厳しくなります。ドライコンテナでも可能な商品、そうでない商品をメーカー様に線引きしていただくことで、現地へより幅広い提案が可能になります」

そんな中で同社は2024年5月に欧州市場の開拓を目指し、イギリスで開催された酒類展示会「London Wine Fair 2024」に参加した。日本酒だけでなく、宮崎県産の梅酒や福岡県産のリキュール(40度)など、ユニークな商材を揃えて臨んだ。現地では、既存のインポーターの全面協力を得て、3人体制でブースに立った。

「インポーターが同席してくれたことで、『在庫があれば明日から納品できる』といった具体的でスピーディな商談が実現しました。輸出側の物量を増やすという点では大成功でした」

確かな手応えを得る一方で、日本酒ならではの壁も肌で感じたという。

「イギリスのお客様に日本酒の味を言葉で伝えるのは想像以上に困難でした。10種類の日本酒を並べても、最終的には甘口か辛口かの二択での購買になってしまう。時間をかけてレクチャー資料を作り、知識を深めていただく地道な活動が必要だと痛感しました」

日本産酒類の海外展開を支援

インバウンド需要の増加に伴い、日本産酒類の認知度は世界的に高まりつつある。

「海外の方は直接貿易を好むため、日本のメーカー様に直接アプローチが来ることも増えるでしょう。しかし、実務に不慣れで戸惑うケースも多いはずです。私たちはこれまでの輸出経験から、実務上の疑問点や現地企業の与信調査にも対応できます。お声がけいただければ、必ずお力になれます」

※この事例は令和6年度の取材内容をもとに作成しています。