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【PRI Open Campus】~財務総研の研究・交流活動紹介~
人口半減ショック地域の新戦略
~賢く縮み乗り越える~

明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授 財務総合政策研究所上席客員研究員 田中 秀明

(編集者)財務総合政策研究所 総務研究部研究員 伊佐 義隆

財務総合政策研究所では、財務省内外から様々な知見を有する実務家や研究者等を講師に招き、業務を遂行する上で参考になる幅広い知識や情報を得る場として「ランチミーティング」を開催しています。今月のPRI Open Campus では、2026年1月14日(水)に明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授の田中秀明様にご講演いただいた内容を、「ファイナンス」の読者の方々にご紹介します。

田中秀明

「人口半減ショック地域の新戦略
~賢く縮み乗り越える~」

田中 秀明 明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授 財務総合政策研究所上席客員研究員

1983年東京工業大学工学部卒、1985年同大学院修了。1991年ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士(社会保障政策)、2010年政策研究大学院大学博士(政策研究)。1985年、大蔵省(現財務省)に入省し、予算・財政投融資・自由貿易交渉・中央省庁等改革などに携わる一方、国税庁、内閣官房、内閣府、外務省(在マレーシア日本大使館)、厚生省(現厚生労働省)などで勤務。また、2003~05年オーストラリア国立大学、2007~10年一橋大学経済研究所で教育・研究を行う。国際協力機構(JICA)、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)などのプロジェクトなどにも参画。近著に『人口半減ショック地域の新戦略』(編著)2025年、『高等教育改革の政治経済学』2024年、『「新しい国民皆保険」構想』2023年、『官僚たちの冬』2019年等

本日お話しする内容について、概略を紹介します。はじめに、現在の人口減少の推計について述べます。現在の各都道府県の人口推計は非常に楽観的であることを申し上げます。次に、地方創生が当初の目的を達成できなかったこと、成功しなかったことについて述べた上で、なぜ成功しなかったのかについて議論します。さらに、地方が国へ財政的に依存している問題について考えます。地方の過疎化が進むなか国への財源の依存は今後も進んでいくでしょう。いずれにせよ、人口動態を変えることは難しいので、どうやって人口減少に対応するかが課題です。最後に賢く縮むための基本戦略について述べ、実際に実行している自治体を紹介します。

1.急速な人口減少

(1)人口減少の地域差

ご存じの通り、日本は急速に人口が減少しています。出生率を中位(1.36)と仮定すると、2070年には現在と比べて総人口は4000万人減少します(図表1)。現在の出生率に近い、すなわち低位(1.13)を前提とすると、4600万人減ると推計されます。

特に深刻な問題は出生率が低位の場合、現役世代(15~64歳)が3400万人減少することです。少子化対策は必要ですが、人口減少の流れを変えることは難しいと認識しています。

日本全体については上述の通りですが、当然地域によって差があります。全ての都道府県で人口は自然減となっていますが、東京都など若干の自治体は、社会増により人口は増えています。しかし、東京都も2040年ぐらいには純減に転じると予想されています。

特に人口減少が激しいのが秋田県です。2050年には秋田市以外の市町村の人口は6割減ると推計されています。これは出生率中位を前提とした推計であるため、実際にはもっと人口減少が進むと考えられます。2050年には首都圏、関西圏などの大都市圏と県庁所在地を除く地域では、人口はほぼ半減すると予想されています。

図表1 急速な人口減少

図表1 急速な人口減少

(2)人口1万人未満の市町村の増加

問題は総人口が減るだけではありません。人口1万人未満の市町村の数は現在の全体の3分の1から2050年には半分を占めると予想されています(図表2)。一般には人口が30万人程度ないと行政サービスを効率的に提供できないと言われています。人口1万人未満の市町村では、効率的に公共サービスを提供することは極めて困難です。今でも困難な職員の確保はさらに困難になるでしょう。

図表2 人口1万人未満の自治体数

図表2 人口1万人未満の自治体数

周知のように、出生率が最も低いのが東京都です。2023年には0.99となり、1を初めて切りました。東京都に人が集まると更に人口が減るといった論調があるので、補足させてください。

10年前に「人口戦略会議」が、今後の人口減少について警鐘を鳴らし、「消滅自治体」という言葉を使って人口減少を訴えました。さらに、2024年1月に、人口戦略会議は新しい人口推計に基づいて第2弾の提言を発表しました。その際、新聞等の報道で、東京都は「ブラックホール自治体」であると紹介されました。東京都は、ブラックホールのように全国から若い人たちを集めており、若い人が集まるほど子供の数が減り、ますます人口減少が加速化するとも言われましたが、この点について非常にミスリーディングであると考えています。

図表3は、都道府県別の出生率と出生数を比べています。東京都の出生率は全都道府県で最低ですが、人口当たりの出生数は愛知県と並び高くなっています。

東京都の出生率が低い理由は、出生率の算定式に起因しています。出生率の算定式は、生まれた子供の数/女性の数で表され、子供の数が多くても、それ以上に女性の数が多いと、出生率は低くなります。また、地方において若い女性が出ていくと赤ちゃんの数が同じでも出生率は増えることになります。都道府県別の出生率を議論することには注意が必要です。

図表3 都道府県別の合計特殊出生率と人口千人当たり出生数(2021年)

図表3 都道府県別の合計特殊出生率と人口千人当たり出生数(2021年)

2.地方創生の失敗

(1)東京都の一極集中の是正

地方創生は安倍政権で導入されました。従来の取り組みと異なる点がKPIの導入です。キー・パフォーマンス・インディケーター、すなわち重要成果指標です。政策の達成状況を測るものであり、取り組みとしては評価できます。当初の地方創生総合戦略では約100個のKPIがありました。

この総合戦略の最大の目的は、東京一極集中を是正することですが、その目標達成を測るKPIが図表4です。地方から東京圏への転入を6万人減らす、そして東京都から地方への転出を4万人増やすなどがあります。

図表4 「地方への新しいひとの流れをつくる」関係のKPI

図表4 「地方への新しいひとの流れをつくる」関係のKPI

しかし、途中の検証ではいずれもこの目標は達成できませんでした。コロナ禍の2020年、2021年は若干東京都への流入が減りましたが、足元では徐々に増えています。2025年の東京への転入超過数は、前年の7.9万人から減りましたが、6.5万人でした。

また、図表にはありませんがサービス産業の労働生産性の伸び率や放送コンテンツ関連海外売上高、男性の育休取得率など、東京都一極集中の是正と関係の薄いKPIも多いです。地方創生に関して各都道府県は出生率を上げようと努力していますが、日本全体の出生率は下がっています。政府は、地方創生のKPIについて全体の8割弱が成功していると説明していますがその真偽について評価したのが図表5です。東京一極集中是正と関連があるかないかという点で評価しますと、関連性がないものは半分以上となります。

図表5 地方創生のKPIの評価

図表5 地方創生のKPIの評価

各都道府県も国にならって総合戦略を作成しています。その際に重要となるのが出生率の前提です。図表6は、東北6県による地方創生計画の人口ビジョンを基に作成しました。青森県などの計画によると「我が県では全国と比べると出生率は決して低くなく、平均以上であるため今後は出生率が上昇する可能性がある」などと記載されています。しかし、それは若い女性が県外に行くなどの社会移動によって出生率が上昇している側面が大きいと考えられます。日本全体で出生率を考える、あるいは他の国と比較することにおいては意味があっても、都道府県別に出生率を比較することは非常に注意が必要です。都道府県が子供の数を増やすための努力をしても日本全体では女性の数が減少しているため、ある県で出生率が増えても他の県で減るだけであり、各県で子育てを競争させるような政策は必ずしも妥当ではないと考えます。

図表6 東北4県の人口推計

図表6 東北4県の人口推計

また、東北6県の人口推計は、国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の中位推計と比べて楽観的であり、社人研の推計と比べて人口が3割も多くなると見込んでいます。社人研の出生率の前提は中位推計のため1.36ほどですが、東北6県の出生率は2.07としています。2.07という数字は人口置換水準であり人口は今後減らないということを意味します。出生率の前提を2とするような都道府県は少ないものの、多くの県では1.8ほどです。このようなバラ色の前提で計画を作って意味があるのでしょうか。今後様々な努力によって出生率が上がるとしても1.8まで上昇するという仮定はあまりに非現実的です。

なぜ上記のような推計となるのか、問題は各都道府県の推計方法にあります。各都道府県が若い人たちに「子供を何人ぐらい持ちたいですか」とアンケートを行います。その回答結果が平均1.8人だった場合、その数字を希望水準と捉え、その達成のために計画を作成しています。希望を尊重するとしても、推計は慎重にすべきです。これは現実からの逃避です。

(2)地方創生の失敗の要因

なぜ、地方創生が重要な目標を達成できなかったのでしょうか。その要因を整理しました。

第1に、原因の分析に基づく対策がありませんでした。東京一極集中是正が妥当な目標なのかについては議論がありますが、仮にそれを目標とするのであれば、最初に、なぜ一極集中が続いているのか原因の分析が必要です。これは単純ではありませんが、女性に関連したアンコンシャスバイアスが非常に根強く残っている点が指摘されています。2019年の中間検証において、ようやく地方には若い人たちの働く場所が少ないことと女性に関連したアンコンシャスバイアスが非常に根強く残っている点が指摘されました。女性の場合、大学に行くために地元を離れても、卒業したら早く戻って来るようにと言われ、地元で子供を産み育てる、あるいは親の面倒を見てほしい、そのような隠れた圧力が女性にかかっていることが指摘されています。

第2に、出生率の推計が非現実的である点です。上述の通り、出生率の前提が2というのは余りにも非現実的です。人口減少を食い止めるという国の政策に沿うように、地方が求められていたのではないでしょうか。

第3に、原因をつきとめて、それを是正するように資源を集中的に投下しないと、問題は解決できませんが、「選択と集中」はできませんでした。地方創生交付金は地方創生を自治体に任せるものでした。それ自体は決して悪いことではありませんが、資金使途が自由であることから、費用対効果を踏まえた施策の選択は十分できませんでした。最近は、PDCA(Plan-Do-Check-Action)が提唱されています。地方創生もKPIを導入したものの、実際にはPDCAは回りませんでした。各種施策を実施し、その結果を検証して、軌道修正することはありませんでした。

3.国への財政的な依存

(1)地方交付税の2つの機能

地方創生が成功しなかった背景には、国と地方の財政関係があります。特に地方交付税です。

地方交付税の役割は2つあります。財政需要に対して財源を保障すること(財源保障機能)と、地方公共団体の財政力を均等化すること(財政調整機能)ですが、現在では、前者は過剰ではないでしょうか。戦後の日本は貧しく、各地域において病院や学校、道路などが不足していたため、国土の均衡ある発展が必要でした。そうした状況では、財源保障機能が重要でした。しかし、そのような時代は終わりましたが、地方交付税は、相変わらず供給拡大のインセンティブを有しています。過去においては全国に供給を増やす機能を果たした仕組みですが、現在では非常に複雑になっており、むしろモラルハザードを起こしていると考えます。

毎年の予算編成で地方財政計画を作成しますが、図表7は2003年度の例となります。当時は臨時財政対策債という公債を8.4兆円発行しました。

これほどまでに借金が膨らんだ理由は、法律上、国は地方の財源を保障する義務があるからです。例えば、景気が悪くなると税収が減り、地方交付税も減りますが、それでは当初予定していた行政サービスを提供できなくなるので、その不足分を国が保障をします。言い換えると、地方がこれだけ歳出が必要だということを訴えれば、国は財源保障しなければなりません。問題は、地方によって異なる行政サービスの需要をどこまで正確に把握できるかです。より高い水準を求めるインセンティブが内在しています。

図表7 地方交付税の問題:マクロ

図表7 地方交付税の問題:マクロ

ミクロで見ても問題があります。例えば、地方自治体がダムなどのインフラを建設しようとした場合、費用が100億円かかるとします。具体的には施設によって異なりますが、大まかに言うと、半分は補助金で賄うことができ、さらには4割を地方債の発行、つまり借り入れで賄うことができます。しかもその元利払いは地方交付税で補填してもらうことができるため、各自治体が自分で負担するお金は1割程度しかありません。端的に言うと、9割引きで施設をつくることができます。政治的にも、公共事業は重要です。地元企業が潤うからです。このような仕組みが、人口減少でも様々なインフラを作ろうというインセンティブを自治体に与えています。昔はインフラが足りなかったので、このような仕組みが機能しましたが、現在では違うでしょう。

(2)地方交付税の過剰な配分

都道府県別の一般財源(地方税や地方交付税等)を比較します。図表8は、人口1人当たりの一般財源です。東京都は非常に税収が高いのは事実ですが、不交付団体なので、1人当たりの一般財源は約25万円であり、全国平均(約27万円)とほぼ同じです。交付税配分後では、東京都より鳥取県や島根県、高知県などはより豊かになります。これはまさに過剰な配分ではないでしょうか。地方税は東京都を除けば、道府県による相違は小さいですが、大きな差となっているのが地方交付税です。こうした配分の理由は、鳥取県や島根県などは人口が少ないものの、面積が広いため学校や病院など公共サービスを提供するためのコストがかかるからとされています。典型的には離島です。地方交付税は原則として人口当たりで配分しますが、離島は行政サービスのコストがかかるため様々な補正をして配分しています。とはいえ、鳥取県や島根県の人口1人当たりの一般財源は愛知県の2倍ほどになり、地方交付税で比較すると3倍以上となります。コストがかかるとはいえ、そこまでの差があるとは考えられません。こうした仕組みでは、地方は自立するより、国に頼ろうとします。自ら努力して税収を増やすと、地方交付税は減額されるので、努力は意味がないのです。

図表8 人口1人当りの一般財源の額(2022年度)

図表8 人口1人当りの一般財源の額(2022年度)

(3)各国のGDPの地域格差

多くの国で地域によって税収に相違があるため、財政調整を行う制度があります。政府支出合計に対する財政調整の規模は、日本やオーストラリア、ドイツは非常に高いですが(政府支出合計に対する財政調整の割合は8~9%)、オランダ・スイス・カナダ・イタリアなど少ない国(同1~2%)もあります。ドイツは財政調整がありますが、日本のように需要と収入の差額を補填するような仕組みではなく、基本は1人当たりの税収を州の間で均等化するように配分する仕組みとなっており、私はそのほうが合理的な仕組みだと思っています。税収の地域間格差は是正するべきですが、需要面、すなわち行政サービスの水準は、地方が自らの状況に応じて決めるべきだからです。まさに地方分権です。

一般的に、日本は地方と東京都の間で1人当たりGDPもしくは所得の差が大きいと言われています。しかし、国際比較で1人当たりGDPの高いところと低いところの比率をとってみると、日本は格差が非常に小さくなっています(図表9)。トルコやポーランドなど発展途上にある国は別としても、イギリスやドイツと比べ、日本は地域格差が大きい国ではありません。それにもかかわらず、地方交付税で地方へ大きな配分を行っています。

図表9 1人当りGDPの地域差の水準

図表9 1人当りGDPの地域差の水準

4.賢く縮むための基本戦略

(1)国・都道府県・市町村の役割

地方分権の問題について考えます。この問題は国と都道府県、市町村の三者の関係が非常に曖昧であるために生じています。国は90年代以降、主に市町村に分権化する政策をとってきましたが、人口減少問題に直面し、もはやそれでは対応できないことは明らかです。政令指定都市や中核都市では可能かもしれませんが、今後人口1万人以下の自治体が全体の半分になる状況ではとても難しいです。さらに、コロナ禍を経て大規模災害対策やデジタル化については、やはり国の役割が必要だということで中央集権に向けた改革も行われております。その結果、国と都道府県と市町村の3者の関係はますます複雑になっています。人口の急速な減少を踏まえ、水道事業や医療分野などは都道府県主体に広域化を進めていますが、まだ道半ばの状況です。

国と地方の関係が非常に複雑になっているもう一つの理由は責任と財源が一致していないことです。例えば、ある事業を行おうとした場合、国が責任を負うのか、都道府県がそれに応じて財源を負担するのか、もしくは国と都道府県が共同して責任を負うのかなど、その事業ごとに責任と財源が明確になっていません。例えば、義務教育を地方が実施する場合、自らの地方税に加えて、地方交付税や補助金などがないと事業を実施できません。これまでの改革により地方に裁量が与えられ、地方交付税はその建前として使い方は自由となっています。しかし、国からの補助金をもらうためには、1教室当たり35人など国が定める基準を守る必要があります。つまり、補助金がないと事業を円滑に実施できず、また地方の裁量も狭くなっているのが現状です。現在は国や都道府県、市町村が一体的に事業を行う仕組みになっており、それぞれの責任が曖昧になるという根本的な問題があります。

(2)地方自治体職員の不足

人口減少において最大の問題は、地方の自治体職員を確保できないことです。現在、国と地方どちらも公務員の志望者は減少傾向であり、特に地方では土木など技術職の採用ができなくなっています。人手不足により民間企業とも競合するため、給料の高い民間企業に人材が集まりやすくなっています。例えば、デジタル技術を持った職員が3人以下の自治体は全体の半分であるのが現状であり、これでは行政のデジタル化の推進は非常に難しいでしょう。

政府も人口減少を受けて、何とかしなければならないということで、地方制度調査会において地方行政のデジタル化や官民連携、地方公共団体の連携のための施策を議論してきました。しかし、果たしてこれで人口半減を乗り越えることはできるでしょうか。ようやく総務省の審議会において、市町村主体の行政サービスについての見直しを始めるようですが、抜本的な対策を提案することができるでしょうか。

(3)公共施設の老朽化

人口減少に加え、公共施設の老朽化がかなり深刻な問題となっています。特に防災拠点となる公共施設については45年以上前に作った施設がすでに4割以上となっています。今後、老朽化が進んだ施設のリノベーションや建て替えが必要となりますが、また同じ規模の施設をつくるのでしょうか。補助金などの仕組みは、大きな施設をつくるとたくさんもらえます。このような状況で賢く縮むことができるのでしょうか。

(4)賢く縮むことを実践する自治体

ほとんどの自治体は真剣に縮むための対策を講じているとは思えませんが、例外があります。例えば、岡山県美咲町は賢く縮むことを実践する自治体の一つです。人口1万人足らずの町ですが、まさに縮むことを実践しています(図表10)。

図表10 岡山県美咲町の「賢く縮む戦略」

図表10 岡山県美咲町の「賢く縮む戦略」

2018年以降、青野高陽町長がリーダーシップを発揮し公共施設を集約化するなどの取り組みを行っています。美咲町は3つの町村が合併したこともあり、1人当たりの公共施設の運営化面積が全国平均の2倍以上となっていました。過去20年間は公共施設の年間平均維持費が6億円でした。調査の結果、今後は維持更新費が年間10億円以上かかることが分かり、公共施設適正配置計画を作成しました。その内容は、3つの拠点に関係施設を集約化し維持費の削減を図るものです。例えば小中学校は義務教育一貫校を作り集約させました。

役場は2階建てのプレハブで建て直しました。議場もその中に入っていますが、専用ではありません。議会を行う際に利用する机は可動式になっており、議会が行われないときは移動し、会議室の多目的利用が可能となっています。町長の部屋も集約前と比較すると半分になりました。また、役場の床をビニールタイルにして、建築費用を抑えています。

(5)賢く縮むための施策

最後に地方自治体が賢く縮むためにはどうすればよいのか考えます。

1つ目は危機意識の醸成です。前提として人口動態は変えられないと認識する必要があります。地方では公共施設がまだ増加している状況であり、人口半減を前提とした計画の策定をしていくべきだと考えます。

2つ目は、都道府県と市町村の一体化です。今後は市町村主義の分権は成り立たないため、都道府県が主体的に事業を広域化するべきであり、国のブロック機関とも連携する必要があると考えます。それぞれの役割分担を明確化すべきですが、時間がかかるため都道府県と市町村が一体的に人口半減を乗り越えるための努力が必要です。

3つ目は、地方交付税制度の改革です。税収の格差を主に調整するべきであり、基本的には1人当たり税収を地方公共団体間で均等に配分するような仕組みに改革すべきだと考えます。他方、サービス水準は地方がその実情に応じて自ら決めることです。

現実には、こうした改革を実施するのは難しいでしょう。もしそうだとすると、我々は多くの地域が自然に消滅することを受け入れなければなりません。

財務総合政策研究所

過去の「PRI Open Campus」については、
財務総合政策研究所ホームページに掲載しています。
https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.html