本稿では、公営競技の売上高推移、およびその変動要因について考察する。
公営競技市場の全体像
・公営競技の売上高は、1990年代前半をピークに減少傾向を辿った後、2010年代以降は回復基調に転じている(図表1)。
・公営競技の売上高変動割合を名目GDPと比較すると、1990年代後半から2000年代前半はGDPの水準を下回っており、コロナショック前後には、GDPの水準を上回っていることが分かる(図表2)。
・公営競技のデジタル化は年々進んでおり、近年の売上回復に寄与している可能性がある。ボートレースは2020年以降、電話売上(スマートフォンやパソコンからのインターネット投票を含む)が急拡大しており、全体の売上高も増加している(図表3、4)。




(出所)JRA日本中央競馬会、地方競馬全国協会、公益財団法人JKA、一般社団法人 全国モーターボート競争施行者協議会、内閣府「国民経済計算」、内閣官房 ギャンブル等依存症対策推進本部
公営競技売上高に影響を与えた二度の構造変化
・他の経済指標との関係も併せてみると、公営競技の売上高は現金給与総額の動きに一定程度連動している可能性がある(図表5)一方で、家計調査における教養娯楽サービス関連の支出額と比較すると、1990年代後半から2000年代前半、およびコロナショック前後と二度の構造的乖離がみられる(図表6)。
・1990年代後半から2000年代前半における公営競技の売上高低下要因のひとつとして、パチンコ・パチスロ市場の巨大化が考えられる(図表7)。
・パチンコ・パチスロを始め、ゲームやコンテンツ課金といった娯楽の多様化という市場構造の変化により、公営競技の売上高は一時低下したが、2010年代以降は、デジタル化という構造変化により、公営競技の売上高は増加を続けている(図表8)。




(出所)JRA日本中央競馬会、地方競馬全国協会、公益財団法人JKA、一般社団法人 全国モーターボート競争施行者協議会、日本生産性本部『レジャー白書』、厚生労働省「毎月勤労統計」、総務省「家計調査」
公営競技におけるデジタル化の進展
・公営競技のデジタル化は近年急速に進展しており、スマートフォンを中心としたネット投票率は各競技で増加している(図表9)。
・ネット投票の拡大に伴い、短時間かつ場所を問わず投票可能になったことで、公営競技への参加人員は増加を続けている(図表10)。その結果、コロナショック下においても公営競技の売上高は増加を続けた(図表11)。
・公営競技におけるネット投票会員数は増加を続ける一方、一人当たりの平均掛け金は低下傾向にある(図表12)。このことは少額化によって気軽に投票参加が可能になり、参加者の裾野拡大が進みつつあることを示唆している。デジタル化の影響により、公営競技は、オンラインゲームのような日常的にアクセス可能なデジタル娯楽の一つに変化している可能性がある。




(出所)JRA日本中央競馬会、地方競馬全国協会、公益財団法人JKA、一般社団法人 全国モーターボート競争施行者協議会、経済産業省 車両競技小委員会
デジタル化時代における娯楽との競合関係
・デジタル娯楽のひとつであるオンラインゲームは、若年層中心であった市場構造から中高年にも利用が拡大したことで、利用者数が増加傾向にある(図表13)。公営競技についても、デジタル化の進展により全世代の人にとって手軽に楽しめる娯楽となったことで(図表14)、家計の支出および余暇時間の配分において、パチンコ・パチスロだけでなくオンラインゲームとの競合関係が生じている可能性がある。
・このように、コロナショック以降、現地消費型のパチンコ・パチスロは遊戯人口が減少する中でも(図表15)、公営競技は現地観戦型からネット参加型に構造転換をはかることで、利用者層を拡大し市場に柔軟に適応してきた(図表16)。




(出所)一般社団法人 日本遊戯関連事業協会『パチンコ・パチスロファンアンケート調査』『パチンコプレイヤー調査』、日本生産性本部『レジャー白書』、総務省『情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査』
(注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。

