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図表でみる世界の行政改革
OECDインディケータ(2023年版)

明石書店 2025年4月 定価 本体6,800円+税

図表でみる世界の行政改革 OECDインディケータ(2023年版)

経済協力開発機構(OECD) 編著、平井 文三 訳

評者
日本政策投資銀行設備投資研究所上席主任研究員
政策研究大学院大学博士課程(政策プロフェッショナルプログラム)在籍

渡部 晶

本書は、OECDが2009年に初版を発行した『図表でみる世界の行政改革(Governmnet at a Glance)』の2023年版であり、第8回目のものとなる。

OECDは、「共通の価値」を共有する38か国が加盟し、多岐にわたる経済・社会分野において、調査、分析、政策提言を行うことから「世界最大のシンクタンク」とも呼ばれている(外務省ホームぺージ「経済協力開発機構(OECD)の概要」を参照のこと)。

平井文三・亜細亜大学法学部教授(行政学・地方自治論)は、2009年の初版から翻訳・紹介の労を取る。平井教授の筆になる「訳者あとがき」では、2023年版の特色として、OECDが公共部門に対する信頼や満足度に関するサーベイを自ら行ったことを出色とする。各年版の特色を示す巻頭の特集が2023年版では「複数の危機の時代における民主主義の強靭性─構築・強化・保護─」とされ、平井教授は、ウィストン・チャーチルの野党党首としての議会演説(1947年11月11日)の一節(「民主主義は最悪の政治形態」)に触れ、「我々は、このチャーチルの皮肉に満ちた反語を正面から受け止め、民主主義、民主主義政治体制を命がけで守っていかなければならない」と述べる。

本書の主な構成は、第1章、第2章 信頼と民主的ガバナンス、第3章 公共サービスの満足度、第4章 政策サイクルのガバナンス、第5章 規制のガバナンス、第6章 予算編成の慣行、第7章 公共調達のマネジメント、第8章 インフラストラクチャの計画立案及び提供、第9章 デジタル・ガバメントとオープン・ガバメント・データ、第10章 公共部門の歳入及び生産費用、第11章 公共支出、第12章 公共の雇用及び代表性、第13章 人材マネジメント、である。2章以下では、それぞれのテーマにそって、加盟国から収集・作成された指標が図表にされて示されている。

政府全体のインプット・アウトプット・アウトカムの測定とその間の因果関係を探求する概念枠組みとしては、「公共機関がどのような資源を用い、その資源はどのようにマネジメントされているか」(第10章~第13章)⇒「良いガバナンス慣行により結果を達成する」(第4章~第9章)⇒「公共サービスへの信頼と満足度」(第2章・第3章)としている。

第1章で、「重複する危機が、民主主義政府に対する国民の信頼の基礎となる能力と価値を損なう危険性があること」が概説され、その上で、民主主義の強靭性の方策として、1)参加と代表、社会的包摂性、イノベーション及び協力における民主的な強みを強化する(民主的な強さを構築する)、2)複数の危機の中での提供を支援するために必要な、主要なガバナンス能力を強化する(危機に対処するための主要な能力を強化する)、3)公共の清廉性さの欠如と誤情報や偽情報から生じる国民の信頼に対する積極的な脅威から保護する(民主的な諸価値に対する脅威から保護する)の3つの行動次元が示される。

このうち、1)の中で「国民は、参加型の意思決定と政治的代表を改善するには大きな余地があると考えている」(p25)や「政府が若年者のニーズを理解し支援することに特に重点を置くことが特に重要である」(コラム「若年者への焦点の強化」(p35)もおかれる)との分析が示されたのは核心だと感じる。

第2章で、日本政府や公務員への信頼は遺憾ながらあまり高いものではないことが示される。公務員への信頼のレベルは、政府の信頼性に対する認識と公共サービスの応答性と公平性に最も影響されるとされる。

「神は細部に宿る」というが、第3章以下の各指標で、日本の記載がない箇所が散見される。特に第3章の分析の目玉であるスコアカードで保険医療関連が全て空白なのはどうしてなのか、を担当任せにせず解決策を真剣に探る必要もある。

我々は、この「世界最大のシンクタンク」にもっと参画し、使い倒すぐらいの積極的な取組みが必要と痛感する。もっと広く知られてほしいOECDの優れた成果物である。