1.はじめに
2025年の米国実質GDP成長率は前期比+2.1%となり、前年(同+4.4%)からは減速したものの、底堅い個人消費や設備投資に支えられ、景気は堅調に推移し、名目GDP(四半期年率換算)で約31.5兆ドルに達している【図表1】。
また、IMFが公表する「世界経済見通し」(2026年4月)によれば、米国経済は今後も底堅い成長が見込まれており、成長率は2026年に+2.3%、2027年に+2.1%と予測されている。
こうした中、本稿では米国経済の成長を支えている設備投資に着目し、米国内におけるAIの普及状況、企業のAI・データセンター向け投資動向と電力需要、さらにデータセンター開発を巡る課題と今後の展望について整理する。
【図表1】米国のGDP需要項目別

2.米国におけるAI活用状況
はじめに、米国におけるAI活用の現状を確認する。米国センサス局が公表する「ビジネス動向と見通し調査(BTOS)」によれば、「直近2週間以内にAIを活用した」と回答した企業の割合は着実に拡大している。また、「今後6カ月以内にAIを活用する」と回答した企業の割合はこれを上回っており、今後もAI活用が拡大していくことを示唆している。【図表2】。
【図表2】米国におけるビジネスでのAI活用状況

3.データセンター投資動向と諸問題
(1)データセンター投資動向
2022年11月にOpenAI社がChatGPTを公開して以降、生成AIの利用者は急速に拡大しており、大規模な演算資源を必要とする生成AIの普及が、データセンター需要の急拡大につながっている。クラウド設備を大規模に保有する企業を中心に売上高に占める設備投資額が増加するなど、開発競争は一段と激化している可能性が窺える【図表3】。
こうした設備投資の拡大は過熱気味であるとの指摘もされているが、設備投資拡大のペースは過去のIT革新期と比較しても速いものの、現在の設備投資額の水準や推移を踏まえれば、必ずしも過大な水準に達しているとは評価しにくいとの見方*1もある【図表4】。
【図表3】クラウド設備を大規模に保有する企業の設備投資状況

【図表4】過去の投資バブルとの比較(設備投資対GDP比)

(2)データセンター拡大に伴う電力問題
設備投資の拡大に伴い、米国内のデータセンターが消費する電力量も今後大きく増加すると見込まれている。例えば、Google検索では1検索当たりの消費電力量が約0.3Whであるのに対し、生成AIへの問い合わせ1回当たりでは約2.9Whとされ、生成AIを使用する際の消費電力は従来のネット検索より約10倍に相当する。*2
こうしたAI使用に伴う電力需要の拡大を背景に、米国電力中央研究所(EPRI)はデータセンター電力消費量の将来見通しをシナリオ別に公表している。それによれば、2024年時点では米国内のデータセンターが1年間に消費する電力量は184TWhであるところ、高成長シナリオでは2030年に794TWhへ拡大すると試算している【図表5】。これは日本全体の2024年度発電電力量(992TWh)*3に近しい規模であり、米国全体の電力需要が今後さらに押し上げられる可能性を示している。
【図表5】米国におけるデータセンターの消費電力量の見通し(2024~30年)

他方、足もとの状況を確認すると、2026年3月時点では、米国内に約4,000か所を超えるデータセンターが登録されており、バージニア州、テキサス州、カリフォルニア州など特定の州への集積が進んでいる。データセンターが集積している地域においては、【図表6】に示すとおり、年間の電力消費量が他州と比べて大きいことが確認できる。
【図表6】米国データセンター登録数と年間電力消費量

さらに、データセンターの建設自体は、一般に1~3年程度で建設可能とされているのに対し、発電・送電を含むエネルギー等インフラ部分の整備には3~15年程度の期間を要する*4とされており、データセンターによる電力需要の拡大と電力供給インフラ整備の進捗との間にミスマッチが生じる可能性がある。
こうした将来見通しと足元の状況を踏まえると、電力需給のひっ迫が電力代の高騰を招くなどの問題が顕在化するとの見方もある*5。
現に、電力代の高騰による懸念を背景とした投資計画の遅延も生じている。特に、データセンターを建設する地域住民からの反対活動に加え、2026年4月15日には、メーン州において20MWを超える電力を必要とする大規模データセンターの新設を2027年10月まで停止する法案が可決*6されるなど、企業にとっては計画とおりに事業を進めることが難しくなる事例もみられる。このため、今後、こうした動きが拡大するとの指摘もある。
4.おわりに
本稿で整理したように、データセンター投資は、AI普及を背景に米国の設備投資を押し上げ、ひいては米国経済成長を牽引する重要な要素となっている一方、エネルギー関連インフラ等における制約も同時に顕在化しつつあり、2026年に入ってからデータセンター投資計画の中止や見直しを行う動きがみられるとの報道もある。
前節までに触れた課題は米政府も認識しており、2026年3月4日には「Ratepayer Protection Pledge(納税者保護誓約)」を公表した。同誓約では、主要AI企業に対し、AIデータセンターの電力需要増による電力価格上昇を抑制する観点から、誓約書への署名を求めており、データセンターに関連する電力代の負担、建設地域における雇用の促進などを企業に義務付ける措置が講じられている。
今後、こうした投資動向や米政府による政策対応が米国の成長力をどの程度支えるかは、インフラ整備の進捗やコスト動向と不可分であり、短期的な投資拡大と中長期的な持続性の双方の観点から整理していく必要があり、今後も米国経済を理解する上で注視していく必要がある。
(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見であり、誤りは全て筆者に帰する。
(参考文献、出所)
・Bureau of Economic Analysis GDP(Advance Estimate), 1st Quarter 2026(2026年4月30日)
・IMF 「World Economic Outlook」(2026年4月14日)
・US Census BTOS
・KKR「Beyond the Bubble:Why We Think AI Infrastructure Will Compound Long after the Hype」(2025年11月)
・EPRI「Data Centers Could Consume Up to 17% of U.S. Electricity by 2030」(2026年2月26日)
・資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(速報)」(2025年12月12日)
・IEEJ「Outlook 2025」(2025年1月28日)
・株式会社丸紅経済研究所「世界経済の見通しアップデート AIブームの持続性が当面のカギに」(2026年2月27日)
*1)KKR:Beyond the Bubble_ Why AI Infrastructure Will Compound Long after the Hype
*2)IEA:Electricity 2024 Analysis and forecast to 2026
*3)資源エネルギー庁:令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(速報)(2025年12月12日)
*4)株式会社丸紅経済研究所:世界経済の見通しアップデート AIブームの持続性が当面のカギに(2026年2月27日)
*5)IEEJ:Outlook 2025
*6)2026年4月27日時点、メーン州知事の拒否権行使により、法律として制定されず。

