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「日本の所得分配・再分配に関する研究会」セミナー
概要

  • 開催日時 令和8年6月24日(水)13:00〜14:00
  • 場  所 中央合同庁舎4号館会議室+オンライン開催
  • 出  席  者 
(座長)
 楡井  誠 東京大学大学院経済学研究科教授/財務総合政策研究所特別研究官
(委員)※50音順
 宇南山 卓 京都大学経済研究所教授/財務総合政策研究所特別研究官
 北尾  早霧 アジア開発銀行研究所シニアエコノミスト
 近藤  絢子 東京大学社会科学研究所教授
 森口  千晶 一橋大学経済研究所教授
 安田  洋祐 政策研究大学院大学教授
(財務総合政策研究所)
 木村秀美所長、上田淳二副所長、林田雅秀副所長、湯下敦史副所長等
(その他)
 財務省職員等、シンクタンク関係者等



    • 議事の概要

 上田副所長より資料(PDF:1979KB)に基づき研究会報告書の概要を説明した。
 座長および各委員から研究会報告書のポイントや研究会全体を通じての感想などについてコメントを伺った。

(楡井誠座長)
 本研究会では、予断を持たず事実に基づいて日本の所得分配・再分配の実態を検証し、税務データを用いた推計により、日本では米国
 のような急速な所得集中は確認されないことを示すことができた。また、キャピタルゲインを含めた所得格差や世帯構造の変化に伴う
 課題も明らかとなった。しかし、このような成果は研究者や行政担当者の個人的な努力に支えられており、持続可能な体制とは言えな
 い。今後は、政府の中に継続的なデータ基盤と分析能力を整備し、国際的な研究コミュニティとも連携しながら所得分配に関する統計
 を継続的に作成・発信していくことが重要である。

(宇南山卓委員)
 「資源配分」と「所得分配」は、いずれも「誰が経済資源を使うか」という共通の問題意識を持ちながら、それぞれ効率性と公平性とい
 う異なる視点から議論される。本研究会では、公平性の観点からは、日本の所得分配は国際的にも過去と比較しても極端に悪い状況で
 はないことが確認されたと認識している。一方で、効率性の観点からは、賃金の伸び悩みや女性の所得、企業と家計の間の付加価値配
 分などの課題が残されていることが明らかになった。そのため、所得分配という視点ではなく、誰が経済資源を保有し、それがどのよ
 うな経済活動や付加価値の創出につながっているのかという資源配分の視点からも議論を深めることが重要である。

(北尾早霧委員)
 格差の問題は、経済学のあらゆる分野に関わるテーマであり、その実態把握にはミクロ実証研究・ミクロ経済理論や歴史的な背景の理
 解だけでなく、マクロ経済学やモデル分析も不可欠
である。また、格差の要因や政策効果を適切に分析するためには、個人を継続的に
 追跡できるパネルデータなどの統計基盤の整備
エビデンスに基づく政策立案を支えるデータへの投資が一層重要になる。さらに、制
 度改革の効果を検証するためには、ミクロ
経済学及びマクロ経済学の双方の視点から分析を深めていくことが求められる。

(近藤絢子委員)
 「年収の壁」に関する分析では、103万円及び130万円付近で就業調整が確認され、特に103万円付近で調整する人が多いことが明らかと
 なった。こうした就業調整は、長期的な所得形成や人的資本の蓄積を阻害する可能性があるほか、人々が税制・社会保障制度を十分に
 理解していないことも示唆している。そのため、制度設計に当たっては、多様な就業形態及び家族形態に対応するとともに、制度を過
 度に複雑化させず、分かりやすい仕組みとすることが重要である。また、今後の政策立案に向けては、個人所得を的確に把握できるデ
 ータ基盤の整備が不可欠である。

(森口千晶委員)
 日本では、所得格差が極端に拡大し超富裕層への所得集中が経済や社会に深刻な影響を及ぼしている状況は確認されなかった。一方、
 その裏返しとして、なぜ日本では億万長者やイノベーションの担い手が生まれていないのかという視点や、経済成長の源泉となる新た
 な価値創造や効率的な資源配分が実現されているのかという観点については、今後の検討が必要である。また、近年の株価上昇を背景
 に、キャピタルゲインの帰属や社会的移動の実態を把握するためのデータ整備も重要であろう。最後に、研究者とメディアとの関係に
 おいては、速報性を重視した分析と時間をかけた精緻な分析を適切に組み合わせながら、成果を社会へ発信していくことが重要であ
 る。

(安田洋祐委員)
 日本では、格差が拡大しているとの認識を持つ人が少なくない一方で、所得指標からみた「結果の平等」は比較的維持されている状況
 がある。この認識と実態のギャップの解明は今後の重要な研究課題である。また、金融所得・資産を含めた経済力については、さらな
 る詳細なデータ分析が必要であろう。次に、「機会の平等」の観点からは、ひとり親世帯や出産・育児後の女性の所得、世代間・地域間
 の資産格差などについても課題があるとの指摘があった。さらに、制度設計や政策のあり方については、実証分析に加え、「今後はどの
 ような制度が望ましいのか」という規範的な議論を深めることや、制度への理解や認知を考慮した制度設計・情報提供について、行動
 経済学の視点も取り入れながら研究を深めていくことが重要であろう。

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