令和2年12月14日 |
改正令和3年9月21日財理第3258号
同4年5月10日同 第1693号
同5年3月31日同 第1014号
同5年6月16日同 第1014-1号
同5年12月22日同 第3436号
財務省理財局長から各財務(支)局長、沖縄総合事務局長宛
民法(明治29年法律第89号)第959条等の規定により国庫に帰属する不動産等の事務処理については、下記によることとしたので通知する。
なお、本年12月14日までに、相続財産管理人又は家庭裁判所と引受けに向けた具体的な手続を進めているものについては、なお従前の例により取り扱うことができるものとする。
記
目次
第1基本方針
第2用語の定義
第3残余不動産の引受手続について
1事前協議
2現地調査
3補完・要請
4引受け
5登記嘱託
6台帳整理
7留意事項
第4国庫帰属不動産の管理及び処分について
1未利用国有地等の取扱い
2権利付財産の取扱い
3その他の財産の取扱い
4国庫帰属不動産に残置された動産の取扱い
第5その他の国庫帰属不動産等について
1民法第959条以外の規定により国庫に帰属する不動産について
2国有財産法(昭和23年法律第73号)第2条第1項第4号に規定する国有財産について
第6国庫帰属不動産の円滑な引受けに向けた体制の構築について
第7本省協議
第8書面等の作成・通知等の方法
1電子ファイルによる作成
2電子メール等による通知等
3適用除外
別添1事務フロー図
別添2引受けに当たり確認すべき事項
別添3損害保険の内容
第1号様式各種負担金報告書
第2号様式補完・要請事項への対応依頼書
第3号様式補完・要請事項に関する回答様式
第4号様式国庫帰属不動産引継書
第5号様式引継引受財産受渡証書
第6号様式国有財産管理業務委託契約書
第7号様式国有財産有償貸付契約書(一般定期借地、時価、分割納付(国庫帰属財産用))
第8号様式国有財産有償貸付契約書(事業用定期借地、時価、分割納付(国庫帰属財産用))
第1基本方針
相続人不存在による国庫帰属については、民法の所定の手続を経てもなお残余財産があれば、その優劣にかかわらず様々な状態で国庫に引き継がれるものであるが、国庫帰属不動産の管理費用は国民負担となることを踏まえ、財務局長等は、相続財産清算人に対して、管理及び処分を行うために必要な対応を依頼するものとする。
なお、国庫帰属後に多額の管理費用を要する事案、国庫帰属不動産の存在が確認できない事案等については、相続財産清算人等に事案の経緯等について十分な説明を求めることとし、財産の引受部局として、積極的に国庫帰属に係る実態把握に努めるものとする。
第2用語の定義
本通達において使用する用語の定義は以下による。
1国庫帰属不動産
民法第959条の規定により国庫に帰属した不動産(国有財産法第2条第1項第1号に規定する不動産をいい、同項第3号に規定する不動産の従物(民法第87条第1項に規定するものをいう。)を含む。以下同じ。)
2相続財産法人
民法第951条に規定する相続人のあることが明らかでない相続財産
3相続人不存在不動産
相続財産法人を構成する不動産
4残余不動産
相続人不存在不動産のうち、民法第959条の規定により国庫帰属が見込まれる不動産
5相続財産清算人
民法の規定に基づき家庭裁判所が選任した相続財産の清算人
6補完
国庫帰属関係書類の訂正や提出又は残余不動産を引き受けるために必要な措置の要求
7標準契約書式
平成13年3月30日付財理第1298号「普通財産の管理及び処分に係る標準契約書式及び同取扱要領について」通達に規定する契約書式
8財務局等
財務局、財務支局、沖縄総合事務局、財務事務所、財務局出張所、財務支局出張所、沖縄総合事務局財務出張所及び財務事務所出張所
9財務局長等
財務局長、福岡財務支局長及び沖縄総合事務局長
第3残余不動産の引受手続について
1事前協議
財務局長等は、相続財産清算人から残余不動産の引継ぎに関する相談があった場合には、相続財産清算人に対して、国庫帰属不動産の適切な管理及び処分を行うために必要な境界確定、測量、動産(不動産の従物を除く。以下同じ。)の撤去等の措置を依頼するとともに、次に掲げる資料の提出を求めるものとする。
なお、各不動産の状況により、管理及び処分を行うために必要な措置若しくは資料の提出を追加で求めること、又は管理及び処分を行うために必要としない措置若しくは資料の提出を省略することは差し支えない。
(注1)事務の手続の流れについては、別添1(事務フロー図)を参照されたい。
(注2)相続財産清算人に対する境界確定等の依頼は、土地基本法(平成元年法律第84号)において、土地の適正な利用及び管理等に関する土地所有者等の責務が規定されているとともに、土地所有者は登記手続その他の権利関係の明確化のための措置及び当該土地の所有権の境界の明確化のための措置を講ずるように努めなければならないとされていることも踏まえて行うものとする。
ただし、相続財産清算人から提出された資料等により費用支出が困難であることが確認できた場合は、管理及び処分を行うために必要な措置又は資料の提出を省略することもやむを得ないことに留意すること。
(注3)法定単純承認事由がある場合は相続人不存在にはならないため、家庭裁判所に相続放棄の申述の無効について個別に相談すること。
また、相続財産清算人との事前協議に当たり、残余不動産の存在が客観的に確認できない等、被相続人の相続財産であることに疑義が生じた場合は、必要に応じて、相続財産清算人等に対して、残余不動産であることを立証させるなどの実態把握を行うこと。
(要求資料)
①財産目録(裁判所に提出した財産目録の写し)
②位置図・案内図
③公図(写し)
④実測図(地積測量図)
⑤建物図面(建物設計図面、建物所在図等)
⑥境界線に関する確認書
⑦不動産登記事項証明書(全部事項証明書)
⑧相続財産清算人資格証明書(相続財産清算人選任審判書謄本写し又は選任公告官報写し)
⑨相続財産清算人印鑑証明書(家庭裁判所等の証明があるもの)
⑩相続財産清算人の身分証明書の写し(本人確認書類)
⑪民法第952条第2項(相続人捜索の公告に係る手続)及び第957条の手続完了を証する書類
⑫民法第958条の2の審判確定又は申立てのなかったことの裁判所の証明書
⑬固定資産税評価証明書及び納税証明書
⑭残余不動産の権利関係を証する書類
⑮相続関係説明図
⑯現況写真(事前協議から1か月以内が望ましい)
⑰各種負担金報告書(第1号様式)
⑱土地使用承諾書(電柱等による使用)
⑲賃貸借契約書(賃貸借契約等の契約関係書類)
(注)契約書がない場合については、賃料その他契約の内容が分かる資料の作成を依頼すること
⑳工作物等の越境の是正に関する確約書(残余不動産に隣地建物等が越境しているとき)
建物等の撤去及び使用料の負担等を求めない旨の確約書(残余不動産が隣地に越境しているとき)
賦課金等の債務が存在しないことの確認書
清算金等の収受に係る権利及び義務が存在しないことの確認書
2現地調査
財務局長等は、事前協議を行った後、相続財産清算人と日程調整の上、残余不動産の現地調査(ドローン等のデジタル技術を活用した調査を含む。以下同じ。)を行い、事前協議の内容及び現地調査の結果を踏まえ、別添2(引受けに当たり確認すべき事項)の内容について確認するものとする。
ただし、相続財産清算人による立会いが困難な場合は相続財産清算人の立会いを、公図混乱地域等の現地特定が困難な場合は現地調査を、それぞれ省略するものとして差し支えない。
3補完・要請
財務局長等は、相続財産清算人に対して補完・要請事項がある場合は、補完・要請事項依頼書(第2号様式)により行うものとする。
なお、可能な限り現地調査時において、補完・要請事項を具体的に伝えるように努めることとし、相続財産清算人からの補完・要請事項に関する回答については、トラブル防止の観点から、補完・要請事項に関する回答様式(第3号様式)により回答を受けるものとする。
(注1)残余不動産に残置された動産については、相続財産清算人に対して撤去を依頼すること。
なお、相続財産清算人において費用支出が困難である等やむを得ない事情により撤去することができなかった動産については、財務局等において廃棄するものとして取り扱うことを相続財産清算人に伝えること。
(注2)民法第897条第1項に規定する系譜、祭具及び墳墓の所有権は、同項の規定により、残余財産とならないことに留意すること。
(注3)残余不動産から隣接地への越境物がある場合は、相続財産清算人に対して当該越境物の撤去等を依頼することとし、当該越境物の撤去等が困難な場合は、相続財産清算人に対して隣接土地所有者から当該越境物の撤去等及び使用料の負担等を求めない旨の確約書等を徴するよう依頼すること。
また、隣接地から残余不動産への越境物がある場合は、隣接地の土地所有者又は建物所有者に当該越境物の撤去等を行うよう相続財産清算人を通じて依頼することとし、当該越境物の撤去等が困難な場合は、相続財産清算人に対して当該越境物所有者から工作物等の越境の是正に関する確約書等を徴するよう依頼すること。
(注4)残余不動産の建物が民有地上に所在している場合は、相続財産清算人に対して、残余不動産の建物を当該民有地の所有者に取得してもらうことを依頼し、併せて、従前所有者と当該民有地の所有者が締結している契約の始期及び期間、賃料の額、支払条件、特約条項等の契約内容について相続財産清算人に確認を依頼すること。
(注5)残余不動産の土地上に老朽化等により使用に堪えない建物(第三者の権利付建物を除く)又は工作物若しくは枯損木(以下「老朽建物等」という。)が存在する場合については、当該老朽建物等の撤去及び撤去後に建物滅失登記申請を行うことを相続財産清算人に依頼すること。
4引受け
財務局長等は、相続財産清算人と補完・要請事項について調整が完了した場合は、相続財産清算人から国庫帰属不動産引継書(第4号様式)及び添付資料を受領するとともに、相続財産清算人と引継引受財産受渡証書(第5号様式)の取交しを行うものとする。
5登記嘱託
財務局長等は、相続財産清算人から残余不動産の受渡しを了した場合は、速やかに所有権移転登記の嘱託を行うものとする。
6台帳整理
財務局長等は、引継引受財産受渡証書に記載された受渡日をもって国有財産台帳に登載すること。
なお、増減事由コードは、「帰属(相続人不存在)」とする。
7留意事項
(1)協力要請
相続財産清算人に対する補完・要請事項は、相続財産清算人の協力を得て行われるものであることに留意すること。
(2)清算事項
担保権が設定されたままの不動産については、担保権の抹消登記がなされるまで清算は終了していないことから、残余不動産に該当しないことに留意すること。
(3)訴訟中の不動産
相続人不存在不動産に係る帰属(所有権や借地権等)を巡って相続財産法人を当事者とする民事訴訟が係属している場合については、当該不動産が残余不動産に該当するか未確定の状態であることから、その訴訟等において残余不動産であることが確定した後に本通達第3の手続を行うことに留意すること。
(4)国庫帰属以前から権利者がいる残余不動産
イ農地法(昭和27年法律第229号)第2条に規定する農地又は採草放牧地(以下「農地等」という。)については、農業委員会の農地台帳への借受人の登録の有無及び実際に耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧(以下「耕作等」という。)を行っている者の有無を相続財産清算人に確認し、耕作等を行っている者がいる場合については、国庫帰属後は国が従前所有者の貸主としての地位を承継し、国と有償による貸付契約又は従前所有者との貸付契約の変更契約(以下「貸付契約等」という。)を締結することになる旨を相続財産清算人から借受人に伝えるように依頼すること。
なお、耕作等が行われていない場合については、農地法第18条第1項に基づく手続等を経た上で賃貸借契約を解約する等、耕作等の権利の解消を相続財産清算人に依頼すること。
ロイの場合を除き、従前所有者と賃借権者との間で賃貸借契約を締結していた場合は、国庫帰属後、国が被相続人の貸主としての地位を承継し、国と貸付契約等を締結することになる旨を相続財産清算人から賃借権者に伝えるよう依頼すること。
なお、賃貸借契約が締結されている残余不動産のうち、国有財産法、国有財産特別措置法(昭和27年法律第219号)その他法令の規定により、無償貸付又は減額譲渡若しくは減額貸付(以下「優遇措置」という。)が適用できる場合の取扱いについては、本通達第4-2-(4)により処理を行うことを相続財産清算人等に伝えること。
(注)残余不動産に地上権が設定されている場合についても、賃貸借契約を締結していた場合に準じること。
ハ使用貸借契約が締結されている残余不動産のうち、国有財産法、国有財産特別措置法その他法令の規定により無償貸付ができない不動産については、相続財産法人から取得又は相続財産法人と賃貸借契約を締結する必要がある旨を相続財産清算人及び相続財産清算人を通じて借主に伝えること。
なお、使用貸借契約が締結されている残余不動産の国庫帰属後の取扱いについては、本通達第4-2-(4)により処理を行うことを相続財産清算人等に伝えること。
第4国庫帰属不動産の管理及び処分について
1未利用国有地等の取扱い
国庫帰属不動産のうち、令和元年9月20日付財理第3206号「最適利用に向けた未利用国有地等の管理処分方針について」通達記第2-2に定める未利用国有地等の管理及び処分については、同通達により、対応するものとする。
2権利付財産の取扱い
国庫帰属不動産のうち、従前所有者と国庫帰属不動産の権利者(以下「権利者」という。)との間で賃貸借契約を締結していた財産については、国は、従前所有者の貸主としての地位を承継するものとして、従前所有者及び権利者が締結している契約の始期及び期間、賃料の額、特約条項等の契約内容を確認の上、国庫帰属後直ちに、権利者に対して次の措置を執るものとする。
(1)国庫帰属後の事務
財務局長等は、権利者に対して、国が従前所有者の地位を承継したこと、国と貸付契約等を締結する必要があること及び国庫帰属後の貸付料の額並びに納付方法を通知するものとする。
なお、国庫帰属後の貸付料については、引受日から3年間は従前の賃料の額とするが、消費税及び地方消費税の課税対象であるにもかかわらず、従前の賃料に消費税及び地方消費税が含まれていない場合については、従前所有者が定めた賃料に消費税及び地方消費税を加算した賃料をもって新たな貸付料とする。
また、通知に当たっては、当該財産について、国からの購入を勧めるとともに、購入が困難な場合には、将来、一般競争入札に付して第三者に売却する可能性があることを明示するものとする。
(2)貸付契約等の締結に係る事務
イ財務局長等は、(1)の通知後、借地契約の場合には標準契約書式に定める第14号書式、借家契約の場合には標準契約書式に定める第18号書式による貸付契約等の締結の申入れを行うものとする。
なお、標準契約書式に定める特約(貸付料に関するものを除く。以下同じ。)につき借受人との合意が得られない場合には、当該特約を従前の契約に定める内容に変更し、標準契約書式を適宜修正の上、貸付契約等を締結するものとする。
ただし、合意に至らなかった特約については、次回貸付料改定時に再度貸付契約の変更の申入れを行うものとする。
(注)平成24年5月22日付財理第2445号「普通財産の管理処分に係る契約からの暴力団排除について」通達(以下「暴排通達」という。)の記3に定める特約のうち(1)及び(2)に加え、暴排通達記1-(1)に該当する者のみを排除対象者として、暴排通達記3-(3)に定める特約を付すものとする。
ロ土地及び建物の貸付料は、(1)に定める貸付料をもって引き続き貸付料年額とし、3年間(従前所有者との契約において貸付料の改定日を定める特約があり、改定日が国と貸付契約等の締結を行った日から3年以内に到来する場合においては当該改定日までの間)据え置くものとする。
ただし、貸付料を据え置くことが一定地域の民間実例等の実情に照らして不適当と認める場合には、貸付料の改定を行うことができるものとする。
なお、貸付料の据置期間経過後の貸付料については、平成13年3月30日付財理第1308号「普通財産貸付事務処理要領」通達(以下「貸付通達」という。)記第1節-第3の規定に準じて貸付料の改定を行うものとする。
ハ借受人がイの貸付契約等の締結に応じない事案の貸付料については、ロに準じて貸付料を算定するものとする。
また、借受人がイの貸付契約等の締結に応じない事案に係る貸付料改定が諸般の事情により遅延した場合にあっては、貸付通達に準じて処理するものとする。
(3)集合住宅等の管理事務
イ管理方式
国庫帰属不動産が集合住宅等の場合において、従前の管理状況のほか、建築年次、規模、構造等を勘案しつつ各々の実態に応じ、原則として、次のいずれかの管理方式によるものとする。
(イ)一括賃貸方式
一括賃貸方式とは、国が不動産貸付業者等に対して集合住宅等を一括貸付し、当該貸付業者等が入居者の募集及び入居者への転貸並びに集合住宅等の全般的な管理を行う方法であり、財務局長等は、国庫帰属以前から従前所有者と当該貸付業者等の間で一括賃貸借契約が締結されている場合においては、当該貸付業者等を引き続き一括借受者とするものとする。
また、国庫帰属以前から一括賃貸借契約が締結されていないが当該契約を締結することが適当であると認められる場合であって、転借人になることの入居者の承諾徴求や残余不動産の引受け前に一括賃貸借契約の締結について相続財産清算人の協力が得られるときは、一括賃貸方式によるものとする。
なお、一括借受者は、原則として、次の方法により決定するものとする。
(注)一括借受者については、本通達第4-2-(6)に留意するものとする。
A財務局長等は都道府県単位に設立されている公益社団法人宅地建物取引業協会等(以下「協会等」という。)に協力を求め、一括借受者の候補者の推薦を協会等から受けた者のうちで、暴排通達記2の規定に基づき警察当局への照会手続を行い、その結果、同通達記1の排除対象者に該当しないことが確認された者の中から、相続財産清算人が適当と認めるものを一括借受者とするものとする。
Bまた、相続財産清算人により財務局長等が適当と認める一括借受者の選定が可能な場合においては、その選定した者を一括借受者とするものとする。
なお、この場合であっても、Aの場合と同様に暴排通達記2の規定に基づき警察当局への照会手続を行うものとする。
CA又はBの場合によっても、一括借受者を選定できない場合は、財務局長等において次の(ロ)の管理業務委託方式による管理を行うものとする。
(ロ)管理業務委託方式
管理業務委託方式とは、国と入居者(賃借人)とが直接貸付契約を締結し、建物の管理業務を国において別途民間管理業者に委託する方法であり、本通達第4-2-(3)-イ-(イ)の一括賃貸方式によらない場合においては、原則としてこの方式とするものとする。
また、管理受託者は、原則として、次の方法により決定するものとする。
A国庫帰属以前から民間管理業者との間で管理業務委託契約が締結されている場合で、当該管理業者が業務を確実に遂行すると認められ、かつ、財産管理上引き続き当該管理業者との間で委託契約を締結することが適当であるときは、一般競争入札等により新たな委託業者を選定するまでの間、財務局長等は当該管理業者との間で管理業務委託契約を締結するものとする。
(注)引き続き国庫帰属以前からの民間管理業者と契約する場合は、本通達第4-2-(6)に留意すること。
B国庫帰属以前に管理業務の委託がなされておらず、新たに管理業務を委託する必要が認められる場合には、財務局長等において一般競争入札等により民間管理業者を決定するものとする。
(注)管理業務委託方式による場合においては、次の管理業務を委託する。
①設備管理業務
(ⅰ)建物表層部の外観点検
(ⅱ)屋外施設の外観点検及び清掃
(ⅲ)電気設備の点検
(ⅳ)給排水設備、消防・防災設備等の外観点検及び法定点検
②賃借人への対応
(ⅰ)賃借人からの苦情等に対応(居住者間の苦情を除く。)
(ⅱ)賃借人の退去時の立会
③その他の事務
共益費の徴収及び支払業務等の具体的事例に即して必要とされる業務
ロ貸付契約等の取扱い
(イ)契約書式
A一括賃貸方式による場合
国庫帰属後に、国との間で貸付契約等を締結する場合における契約書式は標準契約書式に定める第20号書式を基にするものとし、暴排通達記3に定める特約のうち(1)及び(2)に加え、暴排通達記1-(1)に該当する者のみを排除対象者として、暴排通達記3-(3)に定める特約を付すものとする。
B管理業務委託方式による場合
(ロ)損害保険の付保
A損害保険の内容
財務局長等は、多数の居住者の生活拠点となっている集合住宅等において不測の事故が発生した場合において、施設の復旧あるいは賠償に多大な費用負担を余儀なくされる恐れがあることから、国及び管理主体のコスト負担を極力軽減するため、各々の管理方式を設定するとき、施設の内容及び規模に応じて、別添3(損害保険の内容)に定める損害保険を付保させるものとする。
B付保の方法
(A)財務局長等は、管理方式が一括賃貸方式の場合、国との貸付契約等の締結後、速やかに損害保険契約を締結するよう一括借受者に依頼するものとする。
(B)財務局長等は、本通達第4-2-(3)-イ-(ロ)により管理業務委託契約を締結する場合においては、管理受託者として管理上の過失に伴う賠償責任を担保するため、国を共同被保険者とする賠償責任保険を付保するよう依頼するものとする。
(ハ)貸付料又は委託手数料の算定方法
A一括賃貸方式による場合
財務局長等は、本通達第4-2-(2)-ロにおいて据え置くこととした貸付料が損害保険を付保させることを条件としたものとなっていなかった場合又は貸付通達に基づき貸付料を算定する場合において、民間の取引慣行に準拠して損害保険を付保させることを条件とした貸付料を算定するものとする。
B管理業務委託方式による場合
財務局長等は、管理住宅戸数に応じた民間における委託手数料(月額賃料に対する割合)の実態について、本通達第4-2-(3)-イ-(イ)-Aの協会を通して調査の上、決定するものとする。
なお、給水貯水槽の清掃点検、消防用設備点検等については、特殊な技術や資格を有する技術員が必要とされること等から、委託手数料に一律に加算することがなじまないため、別途積算の上、決定するものとする。
(4)優遇措置の取扱い
財務局長等は、国庫帰属前から優遇措置を適用することができる用途として賃貸借契約又は使用貸借契約が締結されている不動産について、国庫帰属後においても継続して地方公共団体等に貸し付ける場合においては、平成14年3月29日付財理第1169号「優遇措置の取扱いについて」通達により処理を行うものとする。
なお、使用貸借契約が締結されている場合において、契約の相手方が個人である等、優遇措置を適用することができない場合については、国は使用貸借契約を継続しない旨を伝えるとともに返還を求めることとし、相手方が返還に応じない場合については、平成13年3月30日付財理第1266号「不法占拠財産取扱要領」通達に基づき解決を図るものとする。
(注)顧問弁護士等に相談した結果、相手方に返還を求めることが権利の濫用に当たるおそれがある場合の処理については、本通達第7により本省と協議するものとする。
(5)定期借地権(借地借家法(平成3年法律第90号)第22条第1項の規定に基づく定期借地権又は同法第23条の規定に基づく事業用定期借地権)が設定されている財産の取扱い
イ基本事項
国庫帰属に伴う契約変更は、国が従前所有者の地位を承継したことに伴い、国と権利者との合意に基づき、公正証書等による原契約の一部を変更するものであり、権利者と締結する貸付契約書にその旨を明記した上、公正証書等原契約書の写しを添付するものとする。
ロ貸付期間
貸付期間は、当該契約の変更を行う日を始期とし、原契約の期間満了日をその終期とする。
ハ貸付料
(イ)貸付料基礎額は、近傍類似の民間賃貸実例又は民間精通者(不動産鑑定業者等)の意見価格等を参考として、算定するものとする。
(ロ)貸付料年額は、貸付料基礎額又は貸付通達別添 1「普通財産貸付料算定基準」(以下「貸付料算定基準」という。)の第1-1-(3)の規定を準用して求めた額とするものとする。この場合において、当該規定中「改定前の直近分として通知している貸付料」とあるのは、「契約の変更を行う前の貸付料年額」と読み替えるものとする。
ニ特約事項
(イ)定期借地契約であることに鑑み、次の特約事項を付すものとする。
A貸付期間満了後契約の更新は行われないこと。
B建物改築による貸付期間の延長は行われないこと。
C貸付期間が満了したとき又は貸付契約が解除されたときに、建物の買取り、必要費及び有益費の償還を請求できないこと。
D国の承認を得て貸付物件を第三者に転貸し又は貸付相手方が建設した建物その他工作物に賃借権その他の使用若しくは収益を目的とする権利を設定する場合には、当該第三者との間で締結する契約において、建物の敷地が定期借地権に基づくものであり、貸付期間の満了により借地権が消滅し、建物を取り壊すことを明示すること。
(ロ)借地契約の終了時の確実な返還を担保するため、次の特約事項を付すとともに、これに違反した場合は、貸付料年額(貸付料算定基準の第1-1-(3)による措置を講じているものについては第一年次の貸付料年額)を違約金(当該違約金の額が10,000円未満の場合には、10,000円とする。)として徴する旨の特約を付すものとする。
貸付期間が満了するときは貸付期間満了日まで、又は貸付契約が解除されたときは、国の指定する期日までに、貸付物件上の建物その他工作物を除去し、貸付物件を原状に回復し、国に更地で返還すること。
(ハ)事業用定期借地契約の場合は、権利者と締結する貸付契約書に事業内容を明記したうえ、次の特約条項を付すものとする。
貸付契約書に定めた事業内容を変更しようとするときは、事前に変更内容について申請し、国の承認を受けなければならないこと。
(ニ)暴力団排除に関する取組として、暴排通達記3に定める(1)及び(2)に加え、暴排通達記1-(1)に該当する者のみを排除対象者として、暴排通達記3-(3)に定める特約を付すものとする。
ホ契約書式
変更契約を締結する場合の契約書式は、第7号様式(国有財産有償貸付契約書(一般定期借地、時価、分割納付(国庫帰属財産用))又は第8号様式(国有財産有償貸付契約書(事業用定期借地、時価、分割納付(国庫帰属財産用))によるものとする。
ヘ定期借地権の譲渡及び増改築等の取扱いについて
(6)暴力団排除に関する取組み
イ国庫帰属不動産について、国庫帰属以前から被相続人が不動産業者等に管理業務を委託している場合等においては、当該管理者が暴排通達記1に規定する排除対象者に該当するか否か、暴排通達記2の規定に基づき警察当局への照会を行い、この結果、排除対象者に該当しないことが判明した場合には、一般競争入札により貸付の相手方を選定するまでの間、従前の受託者と随意契約によることとして差し支えない。
なお、警察当局への照会の結果、排除対象者であることが確認された場合には、相続財産清算人に管理者の変更の協力を依頼するものとする。
ロ一般競争入札等により管理者を選定するに当たっては、暴力団を排除するため、暴排通達に基づき必要な措置を講ずるものとする。
(7)民有地上の建物の取扱い
財務局長等は、国庫帰属された建物が民有地上にある場合は、従前所有者の借地権者としての地位を承継するので、従前所有者と当該土地所有者が締結している契約の始期、期間、賃借料の額、支払条件、特約条項等の契約条件について検討し、国に不利とならないよう適切な貸付契約等を締結するものとする。
(8)農地の取扱い
財務局長等は、国庫帰属された農地等について、当該農地等が所在する地域の都市計画上の用途区分に応じ、次に掲げる事項に留意の上、処分するものとする。
なお、当該農地等が所有権以外の権原に基づいて耕作等の事業を行う土地(所有権に基づいて耕作等の事業を行う土地を耕作等の事業を行う権利を除いて国庫帰属し所有権以外の権原に基づいて耕作の事業等を行う土地となった場合を含む。)である場合においては、権利者に対して当該農地等の売却(売却が困難である場合においては貸付け)を行うものとする。
また、権利者の同意がある場合においては、当該権利の付着した農地等として、一般競争入札により農耕適格者に売却するものとする。
イ国庫帰属された農地等を農地等として売却する場合(ただし、売却する場合の相手方は、農業委員会から買受適格者として証明された者に限られる。)においては、農地法第3条第1項に基づく許可が必要となることから、あらかじめ農業委員会その他必要な関係者と所要の調整を行うものとする。
ロ国庫帰属された農地等を転用する目的で売却する場合においては、農地法第5条第1項に基づく許可又は届出が必要となることから、あらかじめ農業委員会その他必要な関係者と所要の調整を行うものとする。
3その他の財産の取扱い
財務局長等は、本通達第4-1及び2以外の財産については、財産の現況を踏まえ、関係する通達に基づき適切に管理を行うものとする。
4国庫帰属不動産に残置された動産の取扱い
国庫帰属不動産に残置された動産については、財務局長等において廃棄することとなるが、それ以外の方法により処理することが適当と判断される場合は、財務局等所属の物品管理官又は分任物品管理官に引継ぐものとする。
第5その他の国庫帰属不動産等について
1民法第959条以外の規定により国庫に帰属する不動産について
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)等の規定により国庫帰属される不動産については、本通達第2から第4に準じて取り扱うものとする。
なお、国有財産台帳に登載する場合の増減事由コードは、「帰属(その他)」とする。
2国有財産法第2条第1項第4号に規定する国有財産について
国有財産法第2条第1項第4号に規定する地上権、地役権等については、本通達第2から第4に準じて処理を行うものとする。
第6国庫帰属不動産の円滑な引受けに向けた体制の構築について
国庫帰属不動産の円滑な引受けについては、家庭裁判所や不動産に関する専門機関と協力体制を構築することにより、相続財産清算人から財務局等に対して早期段階での相談・照会が見込まれるとともに、将来的に国庫帰属が見込まれる財産を把握できる効果も期待できるため、財務局長等は、家庭裁判所や不動産に関する専門機関との協力体制の構築に努めるものとする。
第7本省協議
財務局長等は、本通達により処理することが適当でないと認められる場合又は国有財産法第2条第1項第2号に規定する船舶、航空機等の国庫帰属に係る取扱いについて相続財産清算人から相談があった場合は、本省と協議の上、個別に処理方針を定めるものとする。
第8書面等の作成・通知等の方法
1電子ファイルによる作成
本通達に基づき、作成を行う書面等(書面その他文字、図形その他の人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。以下同じ。)については、電子ファイルにより作成を行うことができる。
2電子メール等による通知等
(1)本通達に基づく通知等の手続のうち、書面等により行うこととしているものについては、電子メール等の方法により行うことができる。
(2)上記(1)の方法により通知等を行うときは、電子ファイルをもって行うものとする。
3適用除外
上記1及び2の措置は、本通達に規定する手続のうち、次に掲げるものについては適用しないものとする。
(1)記第3-1に掲げる資料のうち⑥、⑨、⑫、⑭、⑲、⑳、、、の受領
(2)記第3-4に規定する国庫帰属不動産引継書及び添付資料(上記(1)で掲げる資料)の受領
(3)記第3-4に規定する引継引受財産受渡証書の取交し
(4)記第4-2-(1)に規定する権利者に対する通知
(5)記第4-2-(5)-イに規定する国庫帰属に伴う契約変更
別添1~別添3、第1号様式~第8号様式