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平成13年3月30日
財理第1266


改正平成21年6月29日財理第2877号

21年12月15日同5426号

27年4月1日同1626号

令和元年6月28日同2319号

2年1月31日同325号

2年2月25日同第325-1号

2年12月18日同4097号

3年9月21日同3258号

5年12月22日同3436号

財務省理財局長から各財務(支)局長、沖縄総合事務局長宛

財務省所管普通財産のうち不法占拠されている不動産の取扱いについては、下記によることとしたから通知する。

おって、昭和41年10月20日付蔵国有第2674号「不法占拠等処理を要する普通財産の処理について」は廃止する。

目次

第1定義

1.不法占拠財産

2.使用者

第2取扱方針

第3具体的措置

1.不法占拠財産の返還及び損害金の請求手続

2.損害金の算定及び請求期間等

3.履行延期の特約

4.損害金に対する異議申立等があった場合の措置

5.留意事項

第4その他

1.債権の種類及び歳入科目

2.進行管理

3.報告

第5本省承認

第6書面等の作成等・徴求等の方法

1.電子ファイルによる作成等

2.電子メール等による徴求等

3.適用除外

別添不法占拠財産の損害金算定要領

第1定義

1.不法占拠財産

この通達において不法占拠財産とは、自己の権原に基づかない者により不法に使用されている不動産であって、平成13年3月30日付財理第1267号「誤信使用財産取扱要領」通達第1に定義する使用者等により使用されている誤信使用財産に該当しないものをいう。

2.使用者

この通達において使用者とは、不法占拠財産を使用している者をいう。

第2取扱方針

財務局長、福岡財務支局長及び沖縄総合事務局長(以下「財務局長」という。)は、原則として、所有権に基づく所有物返還請求権を行使するとともに、不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を行使するものとし、これに応じない場合においては、実情に応じて訴訟により解決を図るものとする。

第3具体的措置

1.不法占拠財産の返還及び損害金の請求手続

(1)使用者に対し、「国有財産の返還請求及び損害金の支払いについて」(別紙第1号様式)により、通知の日から2か月以内の期限を指定して不法占拠財産の返還請求を行うとともに(内容証明郵便)、「国有財産の返還及び損害金の支払債務確認書」(以下「返還等確認書」という。)を徴するものとする。

返還等確認書の提出があった場合

返還等確認書の提出があった場合においては、指定期間内において速やかに不法占拠財産の返還を受けられるよう一層努力するとともに、損害金は遅滞なく調査決定するものとする。

返還等確認書の提出がない場合

使用者が返還等確認書を提出しない場合においては、1か月以内に再度「国有財産の返還及び損害金債務の督促について」(別紙第2号様式)をもって督促し、これにも応諾しない場合においては、次の措置を行うものとする。

(イ)損害金の調査決定を行うこと。

(ロ)不法占拠財産を近く公用又は公共の用に供する必要があるものについては、速やかに訴訟に移行すること。

(ハ)前記(ロ)以外については、文書により出頭を求め不法占拠財産の返還意思の有無を確認することとし、また出頭しない場合においては、現地調査(ドローン等のデジタル技術を活用した調査を含む。)を行うほか、不法占拠財産の返還意思の有無を確認すること。

(2)損害金について使用者から異議がある旨の申出等があり返還等確認書を徴することができない場合においては、国有財産を占有していることを確認する旨の文書を徴するものとする。

2.損害金の算定及び請求期間等

(1)損害金の算定

損害金は、原則として、不法占拠財産の不法占拠期間に対応する使用料相当額、各日分の使用料相当額に対する民法第404条所定の利率により計算した利息相当額の延滞金及びその他の損害がある場合にはその額を加算した金額とする。なお、使用料相当額及び延滞金の算定については、別添「不法占拠財産の損害金算定要領」によるものとする。

(2)損害金の請求期間等

不法行為に基づく損害金を請求すべき期間は、民法第724条の規定により20年間(不法占拠期間に限る。)となるが、財務省所管となる以前の不法占拠期間に係る損害金については財務局等から請求しないものとする。

なお、国が当該不法行為による損害及び加害者を知ったときから3年を経過している場合においては、不法行為に基づく損害賠償の請求によらず、不当利得返還請求によらなければならないので留意すること。

(3)不法行為の挙証責任

不法行為(又は不当利得)の挙証責任は国にあることから、使用始期、期間、使用状況、故意過失の有無等について十分調査し確証を得るよう努力するものとするが、やむを得ない場合においては、立証しうる時点以後に係る請求にとどめる。

3.履行延期の特約

使用者が損害金を一時に支払うことが困難であり、かつ、支払いについて誠意を有すると認められる場合においては、「国の債権の管理等に関する法律」(昭和31年法律第114号)の規定に基づく履行延期の特約を行うことができる。

(注)履行延期の特約を行うに当たっては、昭和38年10月14日付蔵会第2899号「財務省所管債権に係る国の債権の管理等に関する法律第21条第1項の措置及び履行延期の特約又は処分に関する実施基準について」通達を参照すること。

4.損害金に対する異議申立等があった場合の措置

使用者から損害金に対する異議申立があった場合等については、次の措置をとり、措置未了のまま放置することのないよう努めるものとする。

損害金の金額又は請求期間等について異議申立があった場合において、直ちに訴訟移行することなく、その具体的な実情を聴取し使用者を説得する等適切な措置をとること。

不法占拠財産を返還する意思はあるが移転先がないため猶予期間が必要な場合については、原則として、3か月以内で必要な猶予期間を認めることができるが、猶予期間が経過しても当該財産を返還しない場合においては、その実情に応じ訴訟移行等適切な措置を速やかにとること。

不法占拠財産の返還及び損害金の支払いに応ずる意思が全く認められない場合においては、遅滞なく訴訟に移行すること。

使用者が前記1(1)の返還請求を受けた後、損害金を支払わないまま何等の通知なく転居した場合には、住民票を調査する等の方法により転居先を調査して損害金の請求を行うものとし、これに応じない場合においては速やかに訴訟を提起すること。

5.留意事項

(1)使用料相当額の不受領

前記1の規定により不法占拠財産の返還等を請求(通知)する前に、使用者から使用料相当額について納付申出があった場合において、これを受領することは当該財産の使用収益を容認したものと誤解される恐れがあるから、当該請求前の申出には応じないものとする。

(2)使用収益の非容認

不法占拠財産の返還が実現するまでの間は、当該財産の使用収益を容認したものと誤解されることを防ぐため、原則として、文書により少なくとも3か月ごとに当該財産の返還督促を行うものとする。この場合において、督促文書には「国はいかなる場合においても不法占拠財産の使用を容認しない」旨を付記するものとする。

第4その他

1.債権の種類及び歳入科目

損害金の債権管理上の債権の種類及び歳入徴収上の歳入科目は、次表に掲げるところによる。

損害金の種 債権の種 歳入科
損害賠償額 使用料相当額 (目)損害賠償金債権 (目)弁償及び違約金
延滞金 (目)延滞金債 (目)延滞
不当利得額 使用料相当額 (目)利得償還金債権 (目)弁償及び違約金
延滞金 (目)延滞金債 (目)延滞

2.進行管理

(1)財務局長は、不法占拠財産の現況等を把握するため「不法占拠財産整理カード」(別紙第3号様式)(以下「整理カード」という。)を作成し、担当課に備え付けるものとする。

(2)整理カードには所要事項を記載整理すると共に、損害金等の請求、時効の更新又は完成猶予に関する措置及び相手方と交渉等を行った記録を漏れなく記載し、整理しておくものとする。

ただし、既に別紙第3号様式にかわる整理カードを作成している場合においては、従来のものを活用して差し支えない。

3.報告

財務局長は、不法占拠財産の処理計画について、別紙第4号様式により作成し、年度当初4月末日までに理財局長に提出するものとする。

第5本省承認

財務局長は、財産の状況又は使用に至る経緯等から止むを得ない特殊事情があり本通達の定めにより処理することが著しく困難と判断する場合において、処理案に詳細な理由を付して理財局長の承認を得たうえで、例外的な措置をとることができる。

第6書面等の作成等・徴求等の方法

1.電子ファイルによる作成等

本通達に基づき、作成等を行う書面等(書面その他文字、図形その他の人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。以下同じ。)については、電子ファイルにより作成等を行うことができる。

2.電子メール等による徴求等

(1)本通達に基づく徴求等の手続のうち、書面等により行うこととしているものについては、電子メール等の方法により行うことができる。

(2)上記(1)の方法により徴求等を行うときは、電子ファイルをもって行うものとする。

3.適用除外

上記1及び2の措置は、本通達に規定する手続のうち、次に掲げる場合については適用しないものとする。

(1)記第3-1.-(1)に規定する手続のうち、不法占拠財産の返還請求及び「国有財産の返還及び損害金の支払債務確認書」を徴する場合

(2)記第3-1.-(2)に規定する手続のうち、国有財産を占有していることを確認する旨の書面を徴する場合


不法占拠財産の損害金算定要領

1.通則

(1)不法占拠財産取扱要領の第3の2の(1)に定める損害金(損害賠償額又は不当利得額)の算定については、原則としてこの要領に定めるところによる。

(2)損害金は、不法行為継続期間中における使用料相当額とこれに対する延滞金とをそれぞれ別個に算定のうえ、これを合計した額とする。

(3)不法行為継続期間中に使用面積が変更しているときは、同一面積を使用した期間ごとに損害金を算定するものとする。

(4)損害金は、不法行為継続期間中の日数を基準として算定するものとし、この場合において、使用開始日及び期間末日はそれぞれ1日として計算し、期間中の1年度は365日として計算するものとする。

(5)この要領に定める「相続税評価額」等の用語の意義は、平成13年3月30日付財理第1308号「普通財産貸付事務処理要領」通達(以下「貸付事務要領」という。)による。

(6)財産の特殊事情又は地方の実情によりこの要領によることが著しく不適当と認められるときは、個別に算定することができるものとする。

2.使用料相当額の算定方法

使用料相当額は、不法行為継続期間中の各年度ごとに算定のうえ、これを合計した額とする。この場合の使用料相当年額は、次により算定した額とする。

(1)土地(農地を除く。)

(算式)当該年度の前年分の相続税評価額(注)×次表の年度区分に応じた乗率

不法行為継続
期間中の年度
昭和61年度まで 5 (住宅用又は非営利用の場合は、 3
100 100
昭和62年度以降
平成元年度まで
4.8 (住宅用又は非営利用の場合は、 2.8
100 100
平成2年度以降
平成4年度まで
4 (住宅用又は非営利用の場合は、 2.5
100 100
平成5年度以降
平成7年度まで
2.3 (住宅用又は非営利用の場合は、 1.3
100 100
平成8年度以降
平成10年度まで
2.6 (住宅用又は非営利用の場合は、 1.5
100 100
平成11年度以降
平成13年度まで
3.05 (住宅用又は非営利用の場合は、 1.75
100 100
平成14年度以降 貸付事務要領による新規貸付の算定方法に準ずる。

(注)請求期間中の各年度(X年)に係る「その年度の前年分の相続税評価額」は、次の算式により算出した額によることができる。

請求期間の末日の属する年度の前年分の相続税評価額 × X年度の前年の9月末現在の価格推移指数
請求期間の末日に属する年度の前年の9月末現在の価格推移指数

なお、「価格推移指数」とは、(財)日本不動産研究所発行の「市街地価格指数」の地域別・用途別指数をいう。

(2)建物

(算式)その年度の4月1日現在の建物評価額(注) × 12
100

(注)請求期間中の各年度(X年)に係る「その年度の4月1日現在の建物評価額」は次の算式により算出した額によることができる。

(算式)A× ×

A:請求期間の末日の属する年度の4月1日現在の建物評価額

B:請求期間の末日に属する年度の前年度末現在の建築費推移指数

C:X年度の前年度末現在の建築費推移指数

D:請求期間の末日に属する年度の4月1日現在の建物の経年減価後の残価率

E:X年度の4月1日現在の建物の経年減価後の残価率

(注1)「建築費推移指数」とは、(財)日本不動産研究所発行の「全国木造建築費指数」をいう。

(注2)「建物の経年減価後の残価率」は、次の算式により求める。

建物の経年減価後の残価率=1-

 

1-建物残存割合

× 経過年数

 

建物耐用年数

なお、建物耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭40.3.31大蔵省令第15号)の別表第一(機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表)に掲げる建物の耐用年数によるものとし、建物残存割合は同省令の別表第10(減価償却資産の残存割合表)に掲げる建物の残存割合による。

また、建物の経過年数は、当該建物の建設年月日から価格時点までの期間について、月数計算により求めるものとし、この場合の月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数を生じたときは、これを1か月として求める。

(3)農地(田及び畑)の使用料相当年額(単位面積(10アール)当りの使用料額)

(算式)田、畑ごとの使用面積×不法占拠している農地が所在する地域を管轄する農業委員会が情報提供する農地の賃借料の平均額

(注)不法占拠されている農地が所在する地域の賃借料の情報が提供されていない場合には、農業委員会により情報提供されている近隣農地賃借料の平均額に比準して算定した額又は民間精通者の意見価格等をもって各年次の使用料相当額年額とする。

なお、民間精通者の意見価格等については、賃借料に係る民間調査機関の統計資料等によっても差し支えないものとする。

3.延滞金の算定方法

延滞金は、不法行為継続期間(使用料相当額を徴する期間)中の各日分の使用料相当日額について、それぞれの翌日から不法行為継続期間の末日までの日数に応じて民法第404条所定の利率により計算した金額の合計額とする。

(注)詳細は、昭和33年10月3日付蔵計第2862号「継続的不法行為による損害賠償金債権に係る納入告知の方法について」通達を参照。

別紙第1号様式~別紙第4号様式