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円の国際化の推進「円の国際化推進研究会」座長とりまとめ(15.1.23)

円の国際化の推進

「円の国際化推進研究会」座長とりまとめ



平成15年1月23日

[ PDF版 ]


「円の国際化推進研究会」メンバー
 

座長

 吉野

 直行

  慶応義塾大学 経済学部 教授

 

 

 揚村

 康男

  野村證券株式会社 取締役

 大西

 由辰

  株式会社東京三菱銀行 常務取締役

 大村

 信明

  大和証券エスエムビーシー株式会社 常務取締役

 神谷

 一平

  日本郵船株式会社 副社長

 北山

 禎介

  株式会社三井住友銀行 常務取締役

 木下

 憲治

  株式会社小松製作所 執行役員

 黒木

 雅文

  経済産業省 貿易経済協力局 審議官

 島上

 清明

  株式会社東芝 副社長

 鈴木

 武

  トヨタ自動車株式会社 取締役

 関

 哲夫

  新日本製鐵株式会社 副社長

 武内

 英史

  三菱商事株式会社 執行役員 

 鳥原

 光憲

  東京ガス株式会社 取締役常務執行役員

 中島

 厚志

  株式会社みずほコーポレート銀行 調査部長

 中村

 芳夫

  日本経済団体連合会 専務理事

 南条

 俊二

  読売新聞社 論説副委員長

 西尾

 進路

  新日本石油株式会社 副社長 

 布野

 俊一

  東京電力株式会社 取締役経理部長 

 細見

 真

  金融庁 参事官(国際担当)

 堀井

 昭成

  日本銀行 国際局長 

 森

 佳子

  横浜国立大学 経済学部 講師


(注) 敬称略、五十音順
   

円の国際化の推進-「円の国際化推進研究会」座長とりまとめ-(要約)


1.


円の国際化の必要性と目指すべき方向

)円の国際化の必要性

.グローバルな観点(円の国際通貨としての利用の拡大による国際通貨体制のより一層の安定、国際貿易・投資の促進等)

.アジアの観点(我が国との結びつきの大きいアジア域内経済の一層の安定、我が国の貯蓄をアジアの経済発展のために活用等)

.我が国の観点(我が国企業・金融機関の為替リスクや外貨流動性リスクの減少、為替変動の影響を受けにくい経済構造への転換、我が国金融・資本市場の国際金融センターとしての活性化等)




)目指すべき方向

.経済取引の当事者が実際に、自らの意思で、円を使用するような環境を整備。

.円の基軸通貨としてのあり方を念頭においた対応が重要。

.我が国市場を低コストで効率的な使い勝手の良いものにすることによって、国際化を推進。


2.


貿易取引の円建て化に向けて取るべき方策

)現状と望まれる対応

  企業は貿易取引の円建て化の必要性を認識してはいるが、取引慣行、輸出先・輸入元の選好、円建てファイナンスの制約等の様々な事情から、円建て比率は上昇していない。個々の取引ごとに円建て化の障害を明確にして対応を検討すべき。

:欧州とのドル建て輸出入、我が国への逆輸入を目的としたアジア生産拠点との間のドル建て輸出入、円建て債務を保有している国からのドル建てエネルギー輸入等への対応




)貿易取引における円の利用拡大に向けて取るべき方策

.円建て貿易金融の円滑化(我が国との間で輸出入を行っている海外事業者への円建てファイナンスの円滑化に向けた技術協力、我が国向け円建て貿易債権の流動化等)

.個々の取引の現場における慣行にとらわれない最適な取引通貨の選定

.産油国等との円借款政府間協議等を活用した原油・LNG輸入等の円建て化

.対日直接投資の推進、貿易EDIの推進等

.官民の協力の強化(官民の意見交換、コンファレンスの開催)


3.


アジアにおける域内金融・経済協力と円の役割

)為替相場の安定等のアジア経済の安定的発展に向けた域内協力の強化

  ドルに過度に依存した為替相場制度からより安定的な為替相場制度の実現に向けて域内金融・経済協力を強化。

.ASEAN+3の場等を通じた域内金融・経済協力の強化

.地域金融取極(チェンマイ・イニシアティブ)の充実

.資本移動管理などの経済連携協議等での検討

.域内における外為決済制度の向上等




)アジアにおける債券市場の育成

  資本市場が未発達なアジアにおいては、貯蓄が欧米の国際金融センターを経由して域内に還流(「通貨」と「期間」の二重のミスマッチの発生:アジア通貨危機の要因の一つ)

→ 域内の貯蓄の域内における有効な活用、通貨の安定を含めた域内金融・資本市場の安定等を図るために、債券市場を育成。そのために以下のインフラ整備が求められる。

.債券市場のベンチマークとなる国債市場・国際金融機関債市場等の育成

.証券化・投資信託等を活用した信用・通貨変動リスクの軽減(域内通貨からなるバスケット通貨建て債券の組成等を通じて将来的にはアジア通貨建て債券へ)

.域内格付け機関の育成

.証券決済システムの整備

.保証機能の活用・域内保証メカニズムの設立

.域内各国による技術支援の提供等


4.


我が国金融・資本市場の国際金融センターとしての活性化

)短期金融市場の活性化

  国際的短期金融取引においては、信用リスク等の高まりや金融技術の向上を受けて、担保取引やデリバティブ取引が拡大。→市場の活性化を図るため、以下の取組みが必要。

.オフショア市場の拡充(デリバティブ取引や我が国国債取引を可能に)

.TB・FB市場の活性化等




)我が国国債市場の活性化

  源泉徴収不適用の特例の拡大は、国債流通市場の魅力を高める上で大きな意義がある。更なる制度面での改善が期待される。




)我が国債券市場における非居住者による資金調達・運用の円滑化

.オフショア市場の機能の拡充

  機能の拡充(海外企業発行債券の取引を新たに認める等)

  市場参加者の拡大(証券会社、生・損保の参入)等

.我が国債券市場における対応

  国内機関投資家・非居住者の市場参加の促進

  国内機関投資家・非居住者を対象とする起債を効率的かつ低コストで行い得るような制度の整備等
   


目   次

I.円の国際化の必要性と目指すべき方向

 

1.国際的な観点からの円の国際化の必要性

 

(1

)グローバルな観点からの円の国際化の必要性

(2

)アジアの観点からの円の国際化の必要性

2.日本にとっての円の国際化の必要性

 

(1

)我が国企業等にとっての為替リスクの軽減

(2

)我が国金融機関等にとっての外貨流動性リスク等の減少

(3

)我が国の金融・資本市場の国際金融センターとしての活性化

3.円の国際化に向けたこれまでの取組みと円の国際化の現状とその背景

 

(1

)円の国際化に向けたこれまでの取組み

(2

)円の国際化の現状とその背景

4.円の国際化の方向性


II.貿易取引の円建て化に向けて取るべき方策

 

1.貿易取引における現状と円建て化に向けての検討課題

2.円建て化に向けての方策

 

(1

)貿易取引において利用される国際通貨の決定要因

(2

)利用通貨の見直しに向けての慣行の見直し

(3

)産油国等との円借款政府間協議等を活用した原油・LNG輸入等の円建て化

(4

)対日直接投資の促進

(5

)貿易取引の円建て化に向けた官民間の協力

3.円の利用拡大に向けた貿易金融の役割

 

(1

)円建て貿易金融の役割と円建て貿易金融を取り巻く環境

(2

)我が国との間で輸出入を行っている海外の事業者への円建てファイナンスの円滑化

(3

)公的機関の信用リスク補完による貿易金融の推進

(4

)貿易電子データ交換の推進

(5

)民間金融機関の役割


III.アジアにおける域内金融・経済協力と円の役割

 

.アジアにおける為替相場の安定等の域内経済の安定的発展に向けた域内協力と円の役割

 

(1

)アジアにおける為替相場制度の現状と為替相場の安定等の域内経済の安定的発展に向けた域内協力の必要性

(2

)ASEAN+3の場等を通じた域内金融・経済協力の強化と地域金融取極(チェンマイ・イニシアティブ)の充実

(3

)資本移動管理等にかかる経済連携協議等での検討

(4

)域内における外為決済制度の向上

2.アジアにおける債券市場の育成

 

(1

)アジアにおける債券市場の育成の必要性

(2

)域内債券市場育成のためのインフラ整備等


IV.我が国の金融・資本市場の国際金融センターとしての活性化

 

1.我が国の金融・資本市場の活性化の必要性と市場にかかるインフラ整備

2.短期金融市場

 

(1

)短期金融市場と円の国際化

(2

)最近の国際的な短期金融取引の動向と展望

(3

)TB・FB市場の活性化

(4

)オフショア市場の拡充

3.資本市場

 

(1

)我が国の資本市場と円の国際化

(2

)我が国国債市場の活性化

(3

)我が国資本市場における非居住者による資金調達及び運用の円滑化

(4

)我が国証券決済システムの整備

(5

)我が国証券取引所等における円の国際化への取組み

目次
日米欧の経済規模と各通貨建ての内訳
主要先進国の輸出入決済における自国通貨建て比率
輸出における自国通貨建て比率と経済規模との相関関係
我が国の貿易取引における円建て比率の推移
我が国の貿易取引における建値通貨別比率(輸出)
主要品目の日本からの輸出の建値通貨別比率(平成10年3月)
円・ドル為替変動と円建て・ドル建ての違い(輸出のケース)
10%の円高が企業収益に与える影響
貿易債権に関する流動化スキーム
10我が国の貿易取引における建値通貨別比率(輸入)
11主要品目の日本への輸入の建値通貨別比率(平成10年3月)
12我が国の製品輸入比率の推移
13為替レートと輸出入数量の価格弾力性
14一般的な原油の探鉱から開発・生産までの流れについて
15海外の対日輸出事業者に対する地場金融機関等による円建てファイナンス円滑化のための技術協力
16貿易電子データ交換(TEDI)
17アジア各国の実質GDP成長率の推移
18円及びアジア通貨(対ドル)の為替変動比較
19アジア通貨と円の相関の高まり
20アジア9カ国にとっての日本・米国・EU
21日本にとってのアジア・米国・EU
22ASEAN+3域内輸出入の推移
23ASEAN+3各国貿易比率推移
24アジア及び米国・日本の資金フロー
25アジア各国の貯蓄率の推移
26アジア各国の貯蓄率、投資率及び貯蓄投資差額のGDP比率
27ASEAN諸国・日・米の銀行貸出残高のGDP比率
28ASEAN諸国・日・米の社債残高のGDP比率
29ASEAN諸国・日・米の株式時価総額のGDP比率
30ASEAN4,韓国の非金融上場企業の資金調達手段
31チェンマイ・イニシアティブに基づく通貨スワップ取極の現状
32世界の主要な地域貿易協定
33アジア主要国の格付比較
34アジアの格付機関の概要
35東京市場のインフラ(通信インフラ/コスト)
36東京市場の現状(海外取引所との比較)
37海外投資家の市場参加(現状)
38主要国の銀行の対外資産残高における建値通貨別内訳
39邦銀の対外資産の建値通貨別残高
40本邦オフショア市場の規模の推移(各年末)
41国際債の建値通貨別状況(残高ベース)
42全世界外為取引における通貨別内訳
43主要国通貨当局保有外貨の通貨別構成比
44
 
サムライ債、非居住者ユーロ円債(金額ベース)の推移
 

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