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国有財産評価基準について

平成13年3月30日
財理第1317


改正平成14年4月1日財理第1434号

14年11月20日同第4278号

15年4月1日同第1415号

16年3月25日同第1175号

17年3月31日同第1257号

18年3月30日同第1231号

18年11月22日同第4375号

19年6月25日同第2614号

23年5月13日同第2200号

25年10月31日同第4995号

30年9月18日同第3112号

令和元年9月24日同第3227号

2年12月23日同第4154号

4年9月30日同第3238号

5年6月6日同第1615号

6年8月30日同第2624号

財務省理財局長から各財務(支)局長、沖縄総合事務局長宛

標記のことについて、別紙のとおり定めたから、通知する。

国有財産評価基

第1章総則

第1目的

第2用語の定義

第3書面等の作成・提出等の方法

第2章国有財産等の評価の全体像

第1評価によって求める価格

第2評定価格の求め方

第3評定価格の有効期間

第4評価財産の区分

第5評価の分類

第3章一般評価

第1基本的事項の確定

第2処理計画の策定

第3資料の収集及び整理

第4鑑定業者等の選定

第5鑑定業者等への評価依頼

第6鑑定評価書等の審査

第7評定価格の決定

第8評価調書の作成

第4章特例評価

第1数量単位当たりの評定価格

第2評定価格の決定

第3評価調書の作成

第5章評価替等

第1評価替の対象財産

第2評価替の方法

第3評定価格の決定

第4評価調書の作成

第5改めて鑑定評価書等を徴する場合

第6章他の手法等

第1本基準に定めのない他の手法等

第2通達改正に伴う経過措置

様式

第1号様式鑑定評価依頼書

第2号様式鑑定評価請書

第3号様式審査調書

第3-2号様式審査チェックシート

第4号様式評価調書

第5-1号様式単独利用困難な土地評定価格調書【取引事例価格による場合】

第5-2号様式単独利用困難な土地評定価格調書【相続税評価額又は鑑定評価等による場合】

第5-3号様式単独利用困難な土地評定価格調書【固定資産税評価額等による場合】

第6号様式(その①)貸付中の財産等(土地)評定価格調書
鑑定評価書等を徴することに経済的合理性がない財産(土地)評定価格調書

第6号様式(その①)別紙①相続税(路線価方式)評価額算出調書

第6号様式(その①)別紙②相続税(倍率方式)評価額算出調書

第6号様式(その①)別紙③【倍率地域】「地積規模の大きな宅地の評価」算出調書

第6号様式(その②)貸付中の財産等(国有地上の建物)評定価格調書

第6号様式(その③)貸付中の財産等(借地上の建物)評定価格調書

第7号様式緊急を要する場合等(土地)評定価格調書

第8号様式建物評定価格調書

第9号様式工作物・機械・船舶・航空機評定価格調書

第10号様式地域格差率算出調書

第11号様式個別格差率算出調書

別表

別表第1木造建物種目別価格構成割合表

別表第2地域格差比較項目表

別表第3個別格差比較項目表(A)

別表第4個別格差比較項目表(B)

別表第5個別格差比較項目表

第1章総則

第1目的

本基準は、国有財産等の評価及び審査の手順等を定め、評価事務の適正を期し、かつ、統一的な運用を図ることを目的とする。

第2用語の定義

本基準において使用する用語の定義は以下による。

国有財産等国有財産法(昭和23年法律第73号)第2条第1項第1号から第4号までに規定する国有財産、第6号に規定する国有財産のうち不動産の信託の受益権、附則第4条に規定する国有財産及び国有財産となるべき財産並びにこれらに関する借地権、借家権等の権利

財務局等財務局、福岡財務支局及び沖縄総合事務局

財務局長等財務局長、福岡財務支局長及び沖縄総合事務局長

評価財産評価の対象となる国有財産等

不動産鑑定評価不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年法律第152号)第3条第1項に規定する不動産鑑定士が行う不動産の鑑定評価のうち、不動産鑑定評価基準(平成14年7月3日付国土交通事務次官通知)に則った不動産の鑑定評価

鑑定評価書不動産鑑定評価による成果物

不動産価格等調査不動産の鑑定評価に関する法律第3条第1項に規定する不動産鑑定士が行う不動産の鑑定評価のうち、不動産鑑定評価基準に則らない不動産の価格等調査

価格調査書不動産価格等調査による成果物

精通者意見不動産の鑑定評価に関する法律第3条第2項に規定する不動産鑑定士が行う調査及び不動産鑑定士以外の民間精通者が行う調査

10意見書精通者意見による成果物

11鑑定評価書等鑑定評価書、価格調査書及び意見書

12鑑定評価額等鑑定評価書、価格調査書及び意見書において求められた評価額

13鑑定業者等不動産鑑定業者及び民間精通者

14価格時点鑑定評価等において価格等判定の基準となる日

第3書面等の作成・提出等の方法

電子ファイルによる作成

本通達に基づき、作成を行う書面等(書面その他文字、図形その他の人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。以下同じ。)については、電子ファイルにより作成を行うことができる。

電子メール等による提出等

(1)本通達に基づく提出等の手続のうち、書面等により行うこととしているものについては、電子メール等の方法により行うことができる。

(2)上記(1)の方法により提出等を行うときは、電子ファイルをもって行うものとする。

第2章国有財産等の評価の全体像

第1評価によって求める価格

財務局長等は、国有財産等の評価に当たって、財政法(昭和22年法律第34号)第9条及び予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第80条第2項の趣旨を踏まえ、評価財産の適正な対価(以下「評定価格」という。)を求めることを基本とする。

第2評定価格の求め方

財務局長等は、評定価格を求めるに当たっては、下記第5の2及び第5章(第5を除く。)に規定する場合を除き、原則として鑑定評価書等を徴し、本基準に基づく審査等を経るものとする。

なお、賃料については、他の通達の定めるところにより算定を行うが、鑑定評価書等を徴する場合の評価の手順は本基準による。

第3評定価格の有効期間

評定価格の有効期間は、他の通達に定めのあるものを除き、以下のとおりとする。

なお、価格時点は、評価財産の処分等予定日を考慮して適切に確定することに留意する。

財務局長等専決事案評定価格の決定時点又は価格時点のいずれか遅い日から4か月

上記1のうち旧軍港市転換法(昭和25年法律第220号)に基づく事案評定価格の決定時点又は価格時点のいずれか遅い日から6か月

普通財産取扱規則(昭和40年大蔵省訓令第2号)第5条に規定する財務大臣の承認を受けなければならない事案評定価格の決定時点又は価格時点のいずれか遅い日から6か月

上記3のうち旧軍港市転換法に基づく事案評定価格の決定時点又は価格時点のいずれか遅い日から8か月

第4評価財産の区分

国有財産等の評価は、原則として以下の区分により行う。

土地

(1)宅地

更地

建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。

建付地

建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属し、かつ、当該所有者により使用され、その敷地の使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。

貸家建付地

建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属するが、建物が賃貸借に供されている宅地をいう。

借地権

借地借家法(平成3年法律第90号)に規定する借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいう。

底地

宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいう。

(2)宅地見込地

(3)農地(採草放牧地を含む。)

(4)林地(原野を含む。)

建物及びその敷地(土地とその定着物(建物、工作物、立木竹等)を一体で評価する場合)

(1)自用の建物及びその敷地

建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であり、その所有者による使用収益を制約する権利の付着していない場合における当該建物及びその敷地をいう。

(2)貸家及びその敷地

建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であるが、建物が賃貸借に供されている場合における当該建物及びその敷地をいう。

(3)借地権付建物

借地権を権原とする建物が存する場合における当該建物及び借地権をいう。

(4)区分所有建物及びその敷地

建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号)第2条第3項に規定する専有部分並びに当該専有部分に係る同条第4項に規定する共用部分の共有持分(区分所有建物)及び同条第6項に規定する敷地利用権をいう。

建物等

(1)建物

(2)工作物

(3)立木竹

(4)借家権

借地借家法が適用される建物の賃借権をいう。

その他の権利

(1)地上権等

地上権、地役権、鉱業権等の権利

(2)不動産の信託の受益権

機械

船舶

航空機

第5評価の分類

鑑定評価書等を徴する場合の評価

鑑定評価書等を徴する場合の評価(以下「一般評価」という。)については、以下のとおり取り扱う。

(1)不動産鑑定評価又は不動産価格等調査

上記第4の1~4の評価は、原則として不動産鑑定評価による。

ただし、不動産鑑定評価によることができない場合等は、その理由等を明らかにした上で、不動産価格等調査によることができる。

(2)精通者意見

上記第4の5~7の評価は、精通者意見による。

また、上記第4の1(3)及び3(2)の評価については、必要に応じて精通者意見によることができる。

国の職員が行う評価

以下に該当する評価財産については、上記1の規定にかかわらず、国の職員が行う簡易的な評価(以下「特例評価」という。)によることができる。

ただし、鑑定業者等の専門的な判断等が必要と認められる場合は、この限りでない。

(1)処分の促進を図る必要がある評価財産

処分の促進を図る必要がある評価財産とは、財務局長等が、当該財産の特性を考慮して処分の促進を図る必要があると認める以下の財産をいう。

なお、下記①~③の複数に該当する場合は、原則として先に規定する財産として評価するものとする。

単独利用困難な土地

単独利用困難な土地とは、無道路地、袋地又は地形狭長等のため、評価土地のみでは周辺土地利用と同様の機能を十分に発揮できない土地をいう。

単独利用困難か否かの判断に当たっては、以下の点に留意する。

評価土地が所在する地域に属する他の土地の標準的な使用方法を確認し、評価土地の規模、形状等ではこれと同一の使用方法とすることが困難と認められる場合には、単独利用困難な土地と判断する。

評価土地が無道路地及び袋地の場合には、公道からの位置並びに通行手段の確保の可能性及び経済性等を勘案して、単独利用可能と判断することができる。

土地の一部を分割して処分する場合には、分割前の画地により判断する。

堂宇敷地等

堂宇敷地等とは、堂宇敷地、墳墓地、海浜地、池沼、ゴルフ場等敷地、貸付中の軌道等敷地、鉱泉地等の特殊な現況にある土地をいう。

貸付中の財産等

貸付中の財産等とは、貸付中の財産(借地借家法第22条第1項に基づく定期借地権及び同法第23条に基づく事業用定期借地権が設定されたものを除く。)及び平成13年3月30日付財理第1267号「誤信使用財産取扱要領」通達第1に規定する誤信使用財産をいう。

宅地として評価する場合

以下のいずれの基準も満たす土地

面積基準面積が、おおむね1,000平方メートル以下

金額基準概算評価額が、おおむね5,000万円以下

宅地以外として評価する場合

金額基準概算評価額が、おおむね3,000万円以下の財産

概算評価額は、次の算式により求める。算式中の借地権等割合(借地権割合及び耕作権割合)及び評価倍率は、昭和39年4月25日付直資56、直審(資)17国税庁長官通達「財産評価基本通達」(以下「財産評価基本通達」という。)により求める。

(算式)

土地

(イ)相続税路線価が定められている地域(以下「路線価地域」という。)に所在する宅地及び宅地比準方式により評価する宅地以外の土地

概算評価額 = 相続税路線価(正面路線)×(1-借地権等割合)× 評価土地の面積

(ロ)相続税路線価が定められていない地域(以下「倍率地域」という。)に所在する宅地及び倍率方式により評価する宅地以外の土地

概算評価額 = 固定資産税路線価(正面路線)又は近傍の固定資産税評価に係る標準宅地の1m2当たりの価額 × 評価倍率 ×(1-借地権等割合)× 評価土地の面積

なお、下記第4章第1の3により求めた数量単位当たりの評定価格を用いて基準を満たすか否かを判断することを妨げない。

土地以外概算評価額国有財産台帳に登録された価格

(2)鑑定評価書等を徴することに経済的合理性がない評価財産

鑑定評価書等を徴することに経済的合理性がない評価財産とは、上記(1)に該当しない財産のうち、上記(1)③により求めた評価財産の価額が鑑定評価書等を徴するための費用を下回る財産をいう。

ただし、以下のような鑑定業者等の専門的な判断を要する財産等、特例評価をすることが適当とは認められない場合を除く。

不動産の併合による効用増又は不動産の分割による効用減が発生する可能性のある土地

物理的瑕疵(地下埋設物、土壌汚染又はアスベスト等)のある土地又は建物

老朽化した建物等が存し、解体費用等を考慮する必要のある土地

(3)管理及び処分に緊急を要する評価財産

管理及び処分に緊急を要する評価財産とは、財務局長等が特別の事情により緊急に評価を行わなければならない場合等、一般評価により処理することが適当でないと認める財産をいう。

第3章一般評価

一般評価のうち、鑑定評価書又は価格調査書を徴する場合の評価については、以下の手順により行うものとする。また、意見書を徴する場合の評価については、これに準じて行うものとする。

第1基本的事項の確定

国有財産等の管理及び処分の担当者(担当機関)から評価の依頼があった場合には、評価財産の区分に応じて、以下の基本的事項を確定する。

評価財産

不動産の評価に当たっては、まず、評価の対象となる土地又は建物等について、以下の物的事項及び権利関係(所有権及び所有権以外の権利)の態様について資料等を基に明らかにし、評価財産を確定する。

(1)土地

所在、地番、種目(地目)、地積等

(2)建物

所在、地番、家屋番号、種目、構造、数量(建面積、延面積)、建築年月日、用途等

(3)工作物

所在、地番、種目、構造、数量、設置年月日等

(4)立木竹

所在、地番、樹種、樹齢、数量(材積、本数、束)等

(5)機械

所在、地番、構造、型式、寸法、能力、製造年月日等

(6)船舶

所在、地番、構造、寸法、能力、建造年月日等

(7)航空機

所在、種類、構造、型式、寸法、能力、製造年月日等

価格時点

評価財産の価格は、時の経過により変動するものであるから、価格時点を確定する。

評価条件

(1)対象確定条件

依頼目的に応じて対象確定条件を設定する。

現状所与

独立鑑定評価

部分鑑定評価

併合鑑定評価、分割鑑定評価

未竣工建物等鑑定評価

その他

(2)想定上の条件

依頼目的に応じて、評価財産の現実の価格形成要因と異なる状態を前提とした想定上の条件を設定することができる。

この場合の条件設定に当たっては、鑑定評価書等の利用者の利益を害するおそれがないこと、実現性を満たすこと及び合法性を満たすことという三つの要件を、他の事情を含めて総合的に勘案する必要がある。

(3)調査範囲等条件

国による既存の調査及び不動産鑑定士の通常の調査の範囲では事実の確認が困難な場合、調査範囲等条件を設定することができる。

ただし、鑑定評価書等の利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合に限る。

(4)その他の条件

上記(1)~(3)以外に不動産鑑定評価委託契約において業務上の前提条件がある場合に設定することができる。

価格又は賃料の種類

上記3で設定する評価条件を踏まえて価格又は賃料の種類を確定する。

(1)価格

正常価格

限定価格

特定価格

特殊価格

(2)賃料

正常賃料

限定賃料

継続賃料

第2処理計画の策定

評価財産に係る利用計画、契約予定日等について確認を行うとともに、評価事務に要する日数のほか、不動産鑑定士等の選定、国有財産等の管理及び処分の担当者(担当機関)における予定価格の決定、処分等相手方との折衝等の事務に要する日数を勘案の上、評価の着手日及び評定価格の回答日の設定を行うなど、適切な処理計画を策定する。

第3資料の収集及び整理

国有財産等の価格は、その現実の状態に応じて変動するものであるから、現実の状態が確認できる資料を客観性の確保に配慮しつつ可能な限り収集する。

第4鑑定業者等の選定

鑑定業者等は、令和元年9月24日付財理第3228号「国有財産等の評価に係る不動産鑑定業者の選定方法について」通達に定めるところにより選定する。

第5鑑定業者等への評価依頼

鑑定業者等への評価依頼は、上記第1で確定した基本的事項を記した書面(第1、2号様式(財務局等の実情によりこれを修正して使用して差し支えない。以下、本基準の他の様式について同じ。))により行う。また、必要な関係資料を提供するとともに、以下の事項について適切に説明する。

(1)依頼目的及び確定した基本的事項等

(2)提供した関係資料の作成者及び作成の背景・経緯等

(3)評価財産の過去の一般競争入札における最低売却価格等の情報(第1号様式(別紙))

地下埋設物又は土壌汚染等の土地の物理的瑕疵が存する場合、これらの瑕疵が地価に及ぼす影響を十分説明するよう鑑定業者等に要請する。

評価に当たって、消費税法(昭和63年法律第108号)第4条第1項の規定により消費税の課税対象となる建物等の鑑定評価額等は、原則として消費税相当額を含まないものとする。

また、同法第6条第1項の規定により非課税となる土地等の評価において、土地の造成等課税対象となる役務の提供に係る経費等を考慮するときは、当該経費等相当額は、消費税相当額(円単位未満切捨て)を含むものとする。

評価依頼後、依頼時に確定した基本的事項等を変更する場合には、必要に応じて、「不動産鑑定士が不動産に関する価格等調査を行う場合の業務の目的と範囲等の確定及び成果報告書の記載事項に関するガイドライン」(平成21年8月28日付国土交通事務次官通知。以下「価格等調査ガイドライン」という。)の「Ⅱ.業務の目的と範囲等の確定」に定めのある「変更を明記した文書等」(いわゆる「確認書」)の取り交わしを行う。

第6鑑定評価書等の審査

審査に当たっての基本姿勢

鑑定業者等から提出された鑑定評価書等の審査は、客観的立場において行い、鑑定評価書等の内容について確認を行う。その際、不動産鑑定評価基準及び価格等調査ガイドラインに留意する。

審査の方法

鑑定評価書等の審査は、原則として書面による審査(鑑定評価書等の内容についての鑑定業者等への聴取及び説明資料の徴求を含む。)を行う。ただし、書面による審査のみでは審査の適正を期し難いと認めるときは、実地調査の上、審査を行う。

審査の内容

(1)価格形成要因の把握

上記第3で収集した資料等を基に、評価財産の価格形成要因を把握する。

(2)鑑定評価書等の審査事項

鑑定評価書等の審査は、以下の事項等について、第3-2号様式を活用して確認する。

依頼目的及び確定した基本的事項と鑑定評価書等の記載内容との整合性

上記(1)で把握した価格形成要因と鑑定評価書等の記載内容との整合性

表記及び計算の正確性

不動産鑑定評価の各段階における各種判断等の説得性

同一需給圏、近隣地域の範囲、市場分析及び標準的使用(標準的画地)

最有効使用(土地の最有効使用、建物及びその敷地の最有効使用)

適用した評価手法及びその内容

試算価格又は試算賃料の調整(複数の評価手法を適用した場合には、各手法に共通する価格形成要因に係る判断の整合性を含む。)

鑑定業者等に対する要請等

鑑定評価書等の内容に疑義等がある場合には、鑑定業者等に対して以下の要請等を行う。

(1)事実関係に係る是正

鑑定評価書等の記載内容と依頼目的及び確定した基本的事項とが異なる場合又は事実関係に誤認がある場合には、その相違点等を明らかにして是正の要請をする。

(2)疑問点、不明点に係る説明、再検討

鑑定評価書等の記載内容について、疑問点又は不明点がある場合には、説明を求めるとともに、必要に応じて再検討の要請をする。

(3)第三者チェックの有識者意見の活用

平成30年9月18日付財理第3111号「普通財産の処分価格等の明確化に係る手続きについて」通達第4の1に定める第三者チェックの結果、外部の有識者から意見が示された場合には、不動産鑑定士に伝達し活用を促す。

ただし、不動産鑑定評価は、独立した専門職業家である不動産鑑定士が行うものであるため、最終判断及び責任は不動産鑑定士が負うものであることに留意する。

審査調書の作成

鑑定評価書等の審査を行った後、審査の内容を明らかにした審査調書(第3号様式)を作成する。

第7評定価格の決定

上記第6の鑑定評価書等の審査を経て、鑑定評価額等を基として評定価格を決定する。この場合において、以下の点に留意する。

(1)複数の鑑定評価書等を徴した場合には、これらを平均した価格を基とする。

(2)鑑定評価額等が零以上でない場合には、評定価格は「無し」とする。

一般競争入札対象財産の評定価格は、上記1の規定にかかわらず、需給の状況等を考慮して鑑定評価額等を20%の範囲で修正することができる。

評定価格の算定に当たっては、上位4位以下の端数を四捨五入の上、上位3位にとどめ、端数計算の結果、1円以上1,000円未満となった場合には1,000円とする。

ただし、賃料の評価は端数計算を行わない。

第8評価調書の作成

評定価格の決定に当たっては、評価の内容を明らかにした評価調書(第4号様式)を作成する。

評価調書の作成は、審査調書の作成と併せて行う。

第4章特例評価

特例評価については、上記第2章第5の2に規定する評価財産ごとに以下の手順により行うものとする。

第1数量単位当たりの評定価格

単独利用困難な土地

単独利用困難な土地の数量単位当たりの評定価格は、一体利用地を判定したうえで、評価土地の現況により、宅地、宅地造成地及びその他の土地の区分に分類して以下のとおり算定する。

(1)一体利用地の判定

一体利用地とは、評価土地を含めて一体で利用することが適当と認められる画地をいう。一体利用地の判定に当たっては、以下の点に留意する。

土地所有関係にかかわらず、一区画の土地として利用されているか否かその使用の実態に応じて判定する。

一区画の土地として利用されているか否かは、不動産登記上の筆界にかかわらず、現況の土地の用途により判定する。

(2)宅地

(算式)

数量単位
当たりの
評定価格
  基礎とする
土地の価格
造成・有益
費等相当額
  × (1-借地権割合) × 需給関係
によ
(更地価格

基礎とする土地の価格

一体利用地内に宅地の取引事例がある場合

(算式)

基礎とする
土地の価格
  各取
事例価格
× 事情
よる修正
× 時点
よる修正
  の合計
取引事例の数

(イ)各取引事例価格

一体利用地の所有者等から宅地の取引事例(評価土地の価格時点から原則として既往5年以内の取引事例)に係る資料等を取得した場合には、取引事例価格を基として基礎とする土地の価格を算定する。

(ロ)事情による修正

取引事例が特別な事情等を含み、取引事例価格に影響していると認められる場合には、事情による修正を行う。ただし、取得した資料等では修正することが困難な場合には、当該取引事例価格を使用しない。

取引事例価格が取引の際における極度の買進み、売急ぎ又は特別な縁故関係等による特別な事情が加味されたものであると判明したときは、当該特別な事情がない価格に修正する。

取引事例価格が所有権以外の権利付価格であるときは、これらの権利が付されていない土地としての価格に修正する。

取引事例価格に建物価格、立木補償及び移転補償等土地の対価以外のものが含まれているときは、当該取引事例価格からこれらを控除して修正する。

(ハ)時点による修正

取引事例の契約時点と評価土地の価格時点との間において土地の価格水準に変動があると認められるときは、その間の時点による修正を行う。

時点による修正は、以下のうち適当と認められる方法により求めた修正率を用いて行う。また、各指標の基準日以降の変動予測は、民間の調査機関等の地価動向調査等を考慮することができる。

国土交通省地価公示又は都道府県地価調査の地価(以下「公示価格等」という。)の変動を基とした修正率

相続税路線価の変動を基とした修正率

A及びBを加味した修正率

A~Cにより難い場合には、意見書の変動率

一体利用地内に宅地の取引事例がない場合

(イ)路線価地域に所在する場合

(算式)

基礎とする
土地の価格
一体利用地の
相続税評価額
× 時価倍率 × 時点による修正

相続税評価額

相続税評価額は、財産評価基本通達の規定によって算定する。その際、評価土地の価格時点が9月1日から12月31日までの間であるものは、その年の相続税評価額を用いる。

この場合において、以下の点に留意する。

(A)評価土地が私道敷地、高圧線下地又はがけ地の場合は、一体利用地について、財産評価基本通達で定める私道評価、がけ地補正率等の修正は行わない。

(B)一体利用地が財産評価基本通達に規定する地積規模の大きな宅地に該当しない場合において、一体利用地の所有者等から一体利用地の固定資産税評価額に係る資料等を収集したときには、使用の可否等を判断した上で、上記算式の一体利用地の相続税評価額を当該一体利用地の固定資産税評価額を基とした価格に読み替えることを妨げない。その際、評価土地の価格時点が9月1日から3月31日までの間であるものは、その年度の固定資産税評価額を用いる。

ただし、当該固定資産税評価額に上記(A)に類する修正がされている場合には、当該修正の適用がない価格に補正する。

(算式)

一体利用地の
固定資産税評価額
を基とした価格

一体利用地の
固定資産税評価額

一体利用地の相続税路線価

一体利用地の固定資産税路線価

時価倍率

原則として1.00倍とし、財務局長等が必要と認める場合は1.00を修正することができる。

時点による修正

上記イ(ハ)により求める。

ただし、規定中「取引事例の契約時点」とあるのは「相続税評価額の調査時点(評価土地の価格時点の属する年の相続税評価額の場合はその年の1月1日、前年分の相続税評価額の場合は前年の1月1日)」と読み替える。

なお、基礎とする土地の価格の算定が困難な場合には、鑑定評価書等により求めることができる。

(ロ)倍率地域に所在する場合

(算式)

基礎とする
土地の価格
一体利用地の
相続税評価額
× 時価倍率 × 時点による修正

相続税評価額

相続税評価額は、上記(イ)A((B)を除く。)により求める。

この場合において、以下の点に留意する。

(A)一体利用地の所有者等から一体利用地の固定資産税評価額に係る資料等を収集した場合には、使用の可否等を判断した上で、当該固定資産税評価額を用いて相続税評価額を算定することを妨げない。その際、評価土地の価格時点が9月1日から3月31日までの間であるものは、その年度の固定資産税評価額を用いる。

(B)一体利用地が財産評価基本通達に規定する地積規模の大きな宅地に該当する場合は、財産評価基本通達21-2ただし書は適用しない。

時価倍率

上記(イ)Bにより求める。

時点による修正

上記(イ)Cにより求める。

なお、基礎とする土地の価格の算定が困難な場合には、鑑定評価書等により求めることができる。

造成・有益費等相当額

造成・有益費等相当額は、財産評価基本通達の規定に準じて算定し、この規定により算定することができない又は適当でないときは、意見書により求めることができる。

なお、基礎とする土地の価格の算定において、既に造成・有益費等相当額が控除されている場合等には、重複して控除することのないよう留意する。

借地権割合

借地権割合は、財産評価基本通達の規定に基づく割合により求める。

なお、財産評価基本通達の規定に基づく地域別の借地権割合によることが著しく実情に沿わないと認められる場合は、意見書によることができる。

また、評価土地が誤信使用財産である場合は「誤信使用財産取扱要領」通達により求める。

需給関係による修正

評価土地の態様に応じて、次表に掲げる修正率を適用して需給関係による修正を行う。この場合において、以下の点に留意する。

評価土地が複数の態様にまたがる場合には、態様ごとに区分したうえで、修正率を適用する。

態様が重複する場合には、重複する態様のうち最も低い修正率を適用する。

基礎とする土地の価格を上記①イで算定する場合において、採用した取引事例が、私道敷地、高圧線下地又はがけ地であって評価土地と同一の態様に属する土地に係る取引事例価格である場合には、次表の上記以外の土地とみなして需給関係による修正を行う。

基礎とする土地の価格を上記①ロで算定する場合において、土砂災害特別警戒区域内にあるがけ地の需給関係による修正は、財産評価基本通達の特別警戒区域補正率に次表に掲げるがけ地の修正率を乗じて適用する。

この場合において、その最小値は0.50とすると定められているが、本基準では、単独利用困難な土地の性質に鑑み、当該最小値は適用しない。

また、固定資産税評価額を用いて算定する場合には、市町村に特別警戒区域の指定による減価の有無を確認し、既に考慮されている場合には、重複して修正することがないよう留意する。

修正率

(残価率)(%)

私道敷

10

高圧線下

30

がけ

45度以上

5

30度以上45度未満

20

15度以上30度未満

40

上記以外の土

50

(3)宅地造成地

宅地造成地とは、造成後経過期間がおおむね5年以内の宅地、造成中の宅地見込地及び宅地造成することが決定又は予定されている宅地見込地をいう。

また、宅地造成とは、田、畑等宅地以外の土地を宅地とするため、道路等公共施設の新設を伴うなど相当規模の切土、盛土等の土木工事を要するものである。

なお、宅地造成地の所在する地域の発展状況によって、造成後市街化されるまでの期間に著しく差異を生ずる場合があるので、造成後の経過期間が5年以内であっても周辺が市街地として熟成しているときは、宅地として評価するものであるから留意する。

(算式)

数量単位
当たりの
評定価格
  基礎とする

土地の価格
造成
有益費等
相当
  × (1-借地権等割合) × 需給関係
によ
(更地価格

基礎とする土地の価格

宅地造成地内に宅地造成前の土地(以下「素地」という。)の取引事例がある場合

(算式)

基礎とする
土地の価格
  各取
事例価格
× 事情
よる修正
× 時点
よる修正
× 各取
事例の面積
  の合計
取引事例の総面積

(イ)各取引事例価格

一体利用地の所有者等から素地の取引事例(評価土地の価格時点から原則として既往3年以内の取引事例とし、これがない場合には既往5年以内の取引事例とする。)に係る資料等を取得した場合には、取得したすべての取引事例価格を基として基礎とする土地の価格を算定する。

この場合において、以下の点に留意する。

評価土地の分布状況等からみて、単一の価格によることが著しく不適当と認められる場合は、宅地造成地を適宜分割し、それぞれに対応する取引事例価格による。

複数の取引事例価格が同一年(暦年又は決算年度)内にある場合は、最後に行われた取引の取引時点を同一年内のすべての取引事例価格の取引時点とする。

評価土地の価格時点から既往1年又は2年以内に素地の価格水準を把握できる取引事例価格がある場合は、既往1年又は2年以内の取引事例価格による。

(ロ)事情による修正

上記(2)①イ(ロ)により求める。

(ハ)時点による修正

上記(2)①イ(ハ)により求める。

宅地造成地内に素地の取引事例がない場合

上記(2)①ロにより求める。

造成・有益費等相当額

上記(2)②により求める。

借地権等割合

借地権割合は、上記(2)③により求める。

耕作権割合は、財産評価基本通達の規定に基づく割合により求める。

なお、財産評価基本通達の規定に基づく地域別の耕作権割合によることが著しく実情に沿わないと認められる場合は、意見書(原則として評価土地の所在する地域における農業委員会の意見書)によることができる。

また、評価土地が誤信使用財産である場合は「誤信使用財産取扱要領」通達により求める。

需給関係による修正

上記(2)④により求める。

(4)その他の土地

(算式)

数量単位
当たりの
評定価格
  基礎とする

土地の価格
造成
有益費等
相当
  × (1-耕作権割合) × 需給関係
によ
(更地価格

基礎とする土地の価格

上記(2)①により求める。

造成・有益費等相当額

上記(2)②により求める。

耕作権割合

上記(3)③(借地権割合を除く。)により求める。

需給関係による修正

上記(2)④により求める。

堂宇敷地等

堂宇敷地等の数量単位当たりの評定価格は、以下のとおり算定する。

(算式)

数量単位当たりの
評定価
基礎とする
土地の価格
× 需給関係に
よる修
(更地価格)

(1)基礎とする土地の価格

基礎とする土地の価格は、上記1の規定に準じて求める。

ただし、(2)①ロ(イ)A(A)及び(B)並びに(ロ)A(A)及び(B)を除く。

この場合において、以下の点に留意する。

評価土地が所在する地域の標準的な用途に供されているものとして、基礎とする土地の価格を求める。

基礎とする土地の価格の算定が困難な場合には、鑑定評価書等により求めることができる。

(2)需給関係による修正等

評価土地の用途に応じて修正率を適用して需給関係による修正を行う。

堂宇敷地(地蔵尊、馬頭観音及び祠等の敷地)

その状況に応じ、残価率を50%程度まで見込む。

墳墓地(墳墓の用に供されている土地)

その状況に応じ、残価率を50%程度まで見込む。

海浜地(表土が砂れきからなる海沿いの自然状態にある平坦な土地)

評価土地を近隣の土地に相応した土地とするために必要とする造成費等相当額の限度内において、経済価値を参しゃくして残価率を見込む。

なお、評価土地が林地に介在する場合は、その状況に応じ、残価率を50%程度まで見込む。

池沼(自然水等を貯水している土地)

次のイ又はロのいずれかによる。

評価土地を近隣の土地に相応した土地とするために必要とする造成費等相当額の限度内において、その経済価値を参しゃくして残価率を見込む。

なお、評価土地が林地に介在する場合は、その状況に応じ、残価率を50%程度まで見込む。

評価土地を養魚池として利用し、その経済価値が高いと認められる場合は、その状況に応じ、当該土地を養魚池とするために必要とする造成費等相当額及び当該養魚池の収益力等を参しゃくして増加修正率を見込む。

ゴルフ場等敷地(ゴルフ場、遊園地、運動場、野球場及びこれらに準ずる土地)

次のイ又はロのいずれかによる。

評価土地をゴルフ場等敷地とするために必要とする造成費等相当額及び当該ゴルフ場等の収益力を参しゃくして増加修正率を見込む。

評価土地の経済価値が低いと認められる場合は、その状況に応じ、近隣の土地に相応した土地とするために必要とする造成費等相当額の限度内において、その経済価値を参しゃくして残価率を見込む。

貸付中の軌道等敷地(貸付契約後、10年以上軌道敷及びプラットホーム敷として利用されている土地)

残価率を50%とする。

なお、その一区画の土地は、帯状の土地をその周辺の価格標準を考慮し、適宜、一定の範囲で分割して定めるものとする。

鉱泉地(鉱泉(温泉及び冷泉を含む。)の涌出口並びにその維持及び管理に必要な土地)

一口座について、その鉱泉地と状況の類似する鉱泉地の価格若しくは取引事例価格又は鑑定評価書等を参しゃくして求める。

貸付中の財産等及び鑑定評価書等を徴することに経済的合理性がない評価財産

貸付中の財産等及び鑑定評価書等を徴することに経済的合理性がない評価財産の数量単位当たりの評定価格は、評価財産の区分により以下のとおり算定する。

(1)土地

(算式)

数量単位
当たりの
評定価格
  基礎とする
土地の価格
造成・有益
費等相当額
  × (1-借地権等割合)
(更地価格

基礎とする土地の価格

(算式)

基礎とする
土地の価格
評価土地の
相続税評価額
× 時価倍率 × 時点による修正

相続税評価額

相続税評価額は、上記1(2)①ロ(イ)A((A)及び(B)を除く。)により求める。

鑑定評価書等を徴することに経済的合理性がない評価財産のうち、土地の一部を分割して処分するような場合の数量単位当たりの評定価格は、分割前の画地等の相続税評価額により求める。

時価倍率

上記1(2)①ロ(イ)Bにより求める。

時点による修正

上記1(2)①ロ(イ)Cにより求める。

なお、基礎とする土地の価格の算定が困難な場合には、鑑定評価書等により求めることができる。

造成・有益費等相当額

上記1(2)②により求める。

借地権等割合

上記1(3)③により求める。

なお、国有地上に存する建物を貸家にしている場合であって、当該建物に借家権が付着することにより評価上の減価要因と認められる場合には、借地権割合に借家権割合を乗じて求めた率を、算式において適用することができる。

(2)建物

国有地上の建物

(算式)

数量単位当たりの
評定価
自用の建物の価格 × (1-借家権割合)

自用の建物の価格

(算式)

自用の建物
の価
建物
再調達原価
× 物理的減価
による修正
× 機能的・経済的
減価による修正

(イ)建物の再調達原価

評価建物を新たに建築するものとしての標準的な再調達原価は、評価先例(財務局等において徴した鑑定評価書等のうち、評価建物の価格時点から原則として既往3年以内のもの)の建物の再調達原価等を参考に求める。

なお、適切な評価先例がない場合には、意見書によることができる。

(ロ)物理的減価による修正

評価建物の建設後の期間の経過に伴い、自然的作用による老朽及び地震・火災等の偶発的な事故により損傷している場合又は評価建物に使用者が有益費を投じている場合は、物理的減価による修正を行う。

(算式)

物理的減価
による修
経年による
残価
× 滅失残価率

経年による残価率

経年による残価率は、当該建物の実情により、定額法又は定率法のうちいずれか適当と判断される方法で求める。

(A)定額法

(算式)

経年による残価率 =1-   1-建物残存割合 × 経過年数  
建物耐用年数

(B)定率法

(算式)

経年による残価率 =(1-償却率)経過年数

建物耐用年数、建物残存割合及び償却率は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年3月31日大蔵省令第15号)別表に基づき求める。

また、建物の経過年数は、当該建物の建設年月日から価格時点までの期間について月数計算により求めるものとし、この場合の月数は暦に従って計算し、1か月に満たない端数を生じたときは、これを1か月とする。

ただし、次のa~cに掲げる場合は、上記により算定した経過年数に替え、当該建物の耐用年数から当該建物の価格時点以降について現実に使用に耐えると見込まれる期間を控除した期間を、経過年数とみなして求める。

なお、「現実に使用に耐えると見込まれる期間」の具体的な判断に当たっては、鑑定業者等の意見を求め、客観的に判断する。

評価建物の維持管理が特に良好なものであるとき

評価建物の維持管理が特に不良等(地震・火災等により被害を受け、若しくは化学薬品を使用していたことにより、又は行政財産の用途廃止後未使用の状態となり、通常の維持管理が行われていないことにより、老朽化が著しいもの等)であるとき

評価建物の構造及び仕上げの程度が著しく劣るとき

滅失残価率

「滅失」とは、地震・火災による被害、盗難及び風水害により、建物構成部材が滅失している状態をいい、建物が滅失した場合に適用する滅失残価率は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造、れんが造、石造及びこれらと木造を併用する建物等(以下「鉄筋コンクリート造建物等」という。)については、次の(A)及び(C)、木造建物については、次の(B)及び(C)のそれぞれの相乗積により求める。

(A)鉄筋コンクリート造建物等の滅失残価率は、滅失している部分を補修するために必要な滅失補修額(概算で差し支えない。)を工種別に次の算式により求める。

(算式)

滅失残価率 =1-

滅失補修額(総額)

再調達原価(総額)

(B)木造建物の滅失残価率は、別表第1に掲げる「木造建物種目別価格構成割合表」による評価建物の各構造区分の価格構成割合に、当該構造区分の滅失割合(概算で差し支えない。)を乗じて得た計数の合計(次の算式においてSと表示する。)を求め、これに次の算式を適用して算出する。

(算式)

滅失残価率 =1-

価格構成割合の合計(100)

(C)貸付中の評価建物に使用者が有益費を投じていることが確認できる場合は、有益費投下時の資料に基づき、鉄筋コンクリート造建物等については、再調達原価に有益費投下部分の工種別価格構成割合(概算で差し支えない。)を乗じて有益費相当額を求め、また、木造建物については、各構造区分の価格構成割合に当該構造区分における有益費投下部分の割合を乗じて得た計数の合計(次の算式においてSと表示する。)を求め、それぞれ次の算式により滅失残価率を算出する。

(算式)

滅失残価率 =1-

 

有益費相当額

又は

 

再調達原価

価格構成割合の合計(100)

(ハ)機能的・経済的減価による修正

評価建物が機能的陳腐化及び経済的不適応等となっている場合は、次のA及びBに定めるところにより、立地条件及び陳腐化等による残価率を求め、機能的・経済的減価による修正を行う。

(算式)

機能的・経済的
減価による修正
立地条件による
残価
× 陳腐化による
残価

なお、機能的陳腐化及び経済的不適応等が一般の不動産取引の状況からみて大きい場合は、自用の建物を、評価上取り壊すことが妥当と認められる建物として取り扱うことに留意する。

立地条件による残価率

評価建物の位置、環境、日照及び通風並びにガス及び水道等供給施設の不便等により効用価値の劣る場合には、その程度に応じた残価率を見込む。

陳腐化等による残価率

最近建築された建物に比し、陳腐化又は非効率化している建物である場合又は特殊用途向きの建物であるため、そのままでは一般に利用価値が少ないものである場合は、その程度に応じた残価率を見込む。

借家権割合

借家権割合は、財産評価基本通達の規定に基づく割合により求める。

なお、財産評価基本通達の規定に基づく地域別の借家権割合によることが著しく実情に沿わないと認められる場合は、意見書によることができる。

また、評価建物が誤信使用財産である場合は「誤信使用財産取扱要領」通達により求める。

借地上の建物(借地権付建物)

(算式)

数量単位
当たりの
評定価格
  自用の
建物の
×(1-借家権割合)  
× 借地権
×   借家権
  × 借地の
評価建物の延面積

自用の建物の価格

上記①イにより求める。

借家権割合

上記①ロにより求める。

更地価格

上記(1)により求める。

借地権割合

上記1(2)③により求める。

なお、評価建物が民有地上の国有建物である場合の借地権価格の取扱いは、昭和61年4月23日付蔵理第1686号「民有地上の国有建物の処理について」通達により求める。

管理及び処分に緊急を要する評価財産

(1)土地

宅地(更地)

更地の数量単位当たりの評定価格は、次の算式により求める。

(算式)

数量単位
当たりの
評定価格
評価
例の鑑定
評価
×
による
× 地域格差
によ
× 個別格差
によ
造成
有益
等相当

評価先例の鑑定評価額

不動産鑑定評価基準に規定された地域分析を行い、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域における評価先例の鑑定評価額(財務局等において徴した鑑定評価書等のうち、評価土地の価格時点から原則として既往3年以内のもの)から求めるものとし、以下の点に留意する。

(イ)評価先例において標準的画地の価格が求められている場合には、評価先例の鑑定評価額ではなく標準的画地の価格を採用することができる。

(ロ)評価土地の規模が評価先例の規模を著しく上回り、評価土地を分割利用することが合理的と認められるときは、評価土地を標準的な宅地規模に区画割りするとした場合に必要となる道路、公園等の潰地による修正を次の算式により行った後の価格を採用することができる。

(算式)

修正後
評価先例の
鑑定評価額
評価
例の鑑定
評価
×  

1-

想定した道路及び公園等の面積

 

評価土地の面積

時点による修正

上記1(2)①イ(ハ)により求める。

ただし、規定中「取引事例の契約時点」とあるのは「評価先例の価格時点」と読み替える。

地域格差による修正

近隣地域と評価先例が所在する地域との間において地域格差が認められる場合には、当該評価先例の鑑定評価額を現状に即した地域格差により修正する。

地域格差による修正は、別表第2「地域格差比較項目表」を適用し、次の算式により地域格差修正率を求め、当該評価先例の鑑定評価額をその地域格差修正率により修正する。

なお、別表第2「地域格差比較項目表」の格差率は標準的な率であることから、同表によることが現状に即さないと認められるときは、当該修正率を超えて修正したものを採用する。

また、評価先例が近隣地域に所在する場合には、地域格差による修正は行わない。

(算式)

地域格差修正率 =

近隣地域の格差率(100)

評価先例が所在する地域の格差率

個別格差による修正

評価土地と評価先例との間において個別格差(造成・有益費等相当額で考慮するものを除く。)が認められる場合には、評価先例の鑑定評価額を現状に即した個別格差により修正する。

個別格差による修正は、別表第3「個別格差比較項目表(A)」及び別表第4「個別格差比較項目表(B)」を適用し、次の算式により格差修正率を求め、当該評価先例の鑑定評価額をその格差修正率により修正する。

なお、別表第3「個別格差比較項目表(A)」及び別表第4「個別格差比較項目表(B)」の格差率は標準的な率であることから、同表によることが現状に即さないと認められるときは、当該格差率を超えて修正したものを採用する。

(算式)

個別格差修正率 =

評価土地の格差率

評価先例の格差率

造成・有益費等相当額

上記1(2)②により求める。

宅地以外の土地

宅地以外の土地(建付地、貸家建付地、借地権及び底地を除く。)については、上記①の規定に準じて求める。

なお、個別格差による修正については、別表第5「個別格差比較項目表」を適用する。

(2)自用の建物

自用の建物(解体する場合を除く。)の数量単位当たりの評定価格は、上記3(2)①イにより求める。

(3)工作物

工作物(解体する場合を除く。)の数量単位当たりの評定価格は、1メートル又は1個ごとに、上記3(2)①イの規定に準じて求める。

(4)機械

機械(解体する場合を除く。)の数量単位当たりの評定価格は、機械1個ごとに、上記3(2)①イの規定に準じて求める。

なお、機能的・経済的減価による修正を行うに当たって、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)による検査を必要とする場合は、これに必要とする経費を考慮して残価率を見込む。

(5)船舶

船舶(解体する場合を除く。)の数量単位当たりの評定価格は、船舶1隻ごとに、上記3(2)①イの規定に準じて求める。

なお、機能的・経済的減価による修正を行うに当たって、船舶安全法(昭和8年法律第11号)による検査を必要とする場合は、これに必要とする経費を考慮して残価率を見込む。

(6)航空機

航空機(解体する場合を除く。)の数量単位当たりの評定価格は、1機ごとに、上記3(2)①イの規定に準じて求める。

第2評定価格の決定

各評価財産の評価単位及び数量単位は以下による。

評価財産の区分

評価単位

数量単位

土地

宅地及び宅地見込地

(平方メートル)

一区画の土地

1平方メートル当たり

農地・林地

1,000平方メートル当たり

(平方メートル)

一棟

延1平方メートル当たり

工作物

メートル

1メートル当たり

一個

1個当たり

一個

1個当たり

一隻

1隻当たり

航空機

一機

1機当たり

評定価格の算定に当たって、以下の点に留意する。

(1)相手方ごとの評定価格は、評価財産の区分ごとの評定価格の合計額による。

(2)評価財産の区分ごとの評定価格は、評価単位当たりの評定価格の合計額による。

(3)評価単位当たりの評定価格は、数量単位当たりの評定価格に評価数量を乗じて求める。

評定価格の算定に当たって、端数計算は以下のとおりとする。

(1)金額

価格計算

評定価格を算定するまでの計算過程において、価格計算の結果、1円未満の端数が生じた場合には、その端数を四捨五入の上、円の単位にとどめる。

ただし、その過程において、相続税評価額及び固定資産税評価額を基とした価格を求める場合は、その端数を切り捨てる。

数量単位当たりの評定価格

数量単位当たりの評定価格の端数計算は以下による。

数量単位当たりの評定価格

端数計算

10万円以上

1,000円未満の端数を四捨五入し、1,000円の単位にとどめる。

1万円以上10万円未満

100円未満の端数を四捨五入し、100円の単位にとどめる。

10円以上1万円未満

10円未満の端数を四捨五入し、10円の単位にとどめる。

1円以上10円未満

端数計算しない。

評価単位当たりの評定価格

評価単位当たりの評定価格の端数計算は以下による。

評価単位当たりの評定価格

端数計算

10億円以上

100万円未満の端数を四捨五入し、100万円の単位にとどめる。

10万円以上10億円未満

上位4位以下の端数を四捨五入し、上位3位にとどめる。

1,000円以上10万円未満

1,000円未満の端数を四捨五入し、1,000円の単位にとどめる。

1円以上1,000円未満

1,000円とする。

(2)修正率等

各種の修正率又は指数は、小数点4位以下の端数を四捨五入の上、小数点3位にとどめる。なお、格差修正率を求める場合の格差率については、小数点2位にとどめる。

第3評価調書の作成

評定価格の決定に当たっては、評価の内容を明らかにした評価調書(第5~9号様式)を作成する。

第5章評価替等

評価財産の契約予定日が上記第2章第3に規定する評定価格の有効期間を超える場合には、以下の手順により評価替等を行い、評定価格を求める。

第1評価替の対象財産

評価替の対象財産は以下のとおりとする。

一般評価により評定価格を求めた評価財産(新規賃料を含む。)

特例評価により評定価格を求めた評価財産のうち、管理及び処分に緊急を要する評価財産(これに該当しない評価財産については、改めて特例評価を行って評定価格を求める。)

第2評価替の方法

公示価格等を基とした変動率等、適当と認められる方法により求めた変動率を当初の評定価格に乗じて評価替を行う。

ただし、これにより難い場合又は新規賃料の評価替の場合には、意見書の変動率による。

第3評定価格の決定

評価替等による評定価格の決定は、以下のとおり行う。

(1)当初の評定価格を一般評価により求めた場合

上記第3章第7(2を除く。)の規定に準じて行う。

(2)当初の評定価格を特例評価により求めた場合

上記第4章第2の規定に準じて行う。

一般競争入札対象財産について、評価替を行う場合又は改めて特例評価を行って評定価格を求める場合には、評定価格の決定に当たり、当分の間、評価土地に対する市場の需給の状況に応じた修正を行うことができる。

第4評価調書の作成

評定価格の決定に当たっては、評価の内容を明らかにした評価調書(第4号様式)を作成する。

第5改めて鑑定評価書等を徴する場合

以下に該当する場合等、上記第2によることが適当でない場合には、原則として改めて鑑定評価書等を徴し、上記第3章の規定により評定価格を求める。

当初の価格時点から評価替の価格時点の間に、地価等に急激な変動が生じた場合

評価財産の周辺地域における相続税路線価、公示価格等が、前年比10%以上変動している場合又は前年比5%以上の変動が同一方向に2年連続した場合等

鑑定評価書等の受領後新たに価格形成要因が判明した場合又は価格形成要因が変動した場合

第6章他の手法等

第1本基準に定めのない他の手法等

財務局長等は、本基準に定めのない他の手法等によることが適当であると認められる場合には、あらかじめ、本省と意見調整の上、他の手法等により評価することができる。

第2通達改正に伴う経過措置

本通達は、令和7年4月1日以降、新規に評定価格を決定するものから適用する。

ただし、同日前に評定価格を決定して相手方と交渉を開始している場合には、なお従前の例によることができる。


第1号様式~第11号様式、別表第1~別表第5(PDF:1954KB)