2008年1月31日
財務省
オーストラリアとの新しい租税条約が署名されました
本日、我が国とオーストラリアとの間で「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約」の署名が東京で行われました。
1.署名に至る経緯
現行の日豪租税条約は、1970年に発効後、およそ40年の期間が経過し、現在の日豪両国間の緊密な経済関係の現状にそぐわなくなってきていたため、両国政府は、現行条約に代わる新条約を締結するための交渉を2007年1月に開始し、同年8月に新条約案につき基本合意に達しました(2007年8月3日公表)。その後、詳細な条文の確定作業や政府内での法制審査手続を経て、本日の署名に至りました。
2.新条約の概要
(1)新条約は、現行条約の内容を全面的に新しくするものであり、日豪両国間の積極的な投資交流の促進を図るため、投資所得(配当、利子及び使用料(著作権、特許権等))の支払に対する源泉地国課税を軽減し、特に一定の親子会社間配当及び金融機関の受け取る利子等については源泉地国免税としています。また、現行条約には規定されていなかった不動産所得や譲渡収益に関する条項のほか、移転価格課税の更正処分期間を制限する規定を設けるなど、両国における課税関係を明確化・合理化しています。一方、減免措置の拡大に伴う租税回避を防止するための措置を設け、両国の課税権を適切に確保することを図っています。
(2)新条約の締結によって、両国間で事業活動や投資活動を行う企業にとって課税の側面から安定した環境が整えられることを通じて、両国間の投資交流が一層促進されるとともに、我が国経済の活性化にもつながることが期待されます。
3.新条約のポイント
(1)投資所得に対する源泉地国課税の減免
配当(第10条)
配当に対する源泉地国の限度税率が現行条約の15%から次のように引き下げられました。
(i) 持株割合80%以上:免税
(ii) 持株割合10%以上:5%
(iii) その他の場合 :10%
(ただし、不動産投資信託からの配当に対する限度税率は15%とされています。)
利子(第11条)
利子に対する源泉地国の限度税率が現行条約の10%から次のように引き下げられました。
(i) 原則:10%
(ii) 特定の政府機関又は金融機関が受け取る利子:免税
使用料(第12条)
使用料に対する源泉地国の限度税率が現行条約10%から5%に引き下げられました。
(2)租税回避の防止のための措置の導入
投資所得に対する源泉地国課税の軽減に伴い、第三国の居住者による条約特典の濫用のおそれが増大すると考えられることから、これを防止するため、次のような措置が設けられました。
特典の制限(第23条)
投資所得等に対する源泉地国免税の特典を受けることができる者が一定の適格者等に限定されました。
所定の取引形態又は取引目的に基づく特典の不適用(第10、11、12条)
投資所得に関して取引形態や取引目的に照らして条約特典の濫用と認められる場合には、条約の特典を受けることができないことが明記されました。
匿名組合に対する課税の取扱い(第20条)
匿名組合を利用した租税回避を防止するため、匿名組合契約に関連して取得される所得又は収益に対しては、源泉地国の国内法に従って課税することとされました。
(3)その他
上記のほか、次のような規定が設けられました。
両国間で課税上の取扱いが異なる団体に関する規定(第4条)
移転価格課税の更正処分期間を課税年度終了時から7年以内に調査を開始した場合に制限する規定(第9条)
4.今後の手続
新条約は、両国においてそれぞれの承認手続き(我が国においては国会の承認)を経た後、両国間で外交上の公文の交換を行い、その交換の日の翌日から30日目の日に効力が生じます。新条約が2008年12月31日以前に発効した場合には、我が国においては、新条約は次のものに適用されます。
(1)源泉徴収される租税に関しては、2009年1月1日以後に租税を課される額
(2)源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、2009年1月1日以後に開始する各課税年度の所得
(3)その他の租税に関しては、2009年1月1日以後に開始する各課税年度の租税
【参考】
「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約」(和文(PDF:315KB)・英文(PDF:84KB))
「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約に関する交換公文」(和文(PDF:74KB)・英文(PDF:18KB))
問い合わせ先:主税局参事官室
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