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税制メールマガジン第168号 2023年11月10日

【税制メールマガジン第168号】
 2023年11月10日

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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 国際課税への誘い~ポストBEPSプロジェクトの新潮流(第3回)~
4 今月は何税の月?「11月:税務管理局・税務署の設置(明治29年)」
5 編集後記

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1 はじめに

11月に入ってもYシャツを腕まくりして半袖で過ごしたいくらいの暑さが続いておりますが、皆様如何お過ごしでしょうか?
第212回臨時国会が招集され、所得減税を含む経済対策について、白熱した国会質疑がなされていることも、この季節外れの暑さに影響を与えているのかもしれません。「経済、経済、経済」。今正に、デフレ脱却ができるか瀬戸際のなかで、確実に可処分所得を伸ばし、消費拡大につなげ、好循環を実現する。そのために税制が果たす役割について、これほど議論された時期は未だかつて無かったのかもしれません。国民の皆様に、税制のあり方を考えていただくため、税制の広報が何を果たすべきか、改めて自問自答しております。
丁度、国税庁「税を考える週間」が11月11日~17日に開催されます。これからの社会に向かって、私たちの税について考えてみる機会として、既に多くの取組が始まっています。報道ベースで見る限りでも、小学生を対象とした「税に関する書道展」の表彰式(岡山市北区)や税に関する知識を楽しみながら学べるクイズラリー(佐賀県佐賀市)、東京地方税理士会が初めて開催した日本の将来の税制に関する大学生プレゼン大会など、多くの取組が実施されております。キッザニア東京でも、期間限定のTAX OFFICE・税務署がオープンする予定で、税務広報官が税金の使い道をテーマにアンケート調査し、その結果をSNSで広く発信する企画などが予定されているとのこと(東京法人連合会)。
この複雑な世の中で、とても身近に私たちの生活に関わっている税制について、自ら知るような習慣を培う週間となることを祈念しております。

財務省主税局総務課 企画官 境吉隆


・東京国税局 税を考える週間(週間から習慣に・30秒)

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2 税制をめぐる最近の動き  

HP掲載日 内容
10月1日
令和5年度 8月末租税及び印紙収入、収入額調
10月13日
トルクメニスタンとの新租税条約について実質合意に至りました

(1)租税及び印紙収入、収入額調

   令和5年度 8月末の租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

・令和5年度 8月末租税及び印紙収入、収入額調

(2)トルクメニスタンとの新租税条約について実質合意に至りました

日本国政府とトルクメニスタン政府は、両国間の租税条約について、このたび実質合意に至りました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

 ・トルクメニスタンとの新租税条約について実質合意に至りました

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3 コラム・国際課税への誘い~ポストBEPSプロジェクトの新潮流(第3回)~

今回は、最近の国際課税ルールをめぐる最もホットなトピックの1つである「グローバル・ミニマム課税」についてです。
少しおさらいしておくと、グローバル・ミニマム課税は、OECDにおいて議論されてきた「経済のデジタル化に伴う課税上の問題への対応」というプロジェクトにおいて示された「2つの柱」からなる対応策のうち「第2の柱」と呼ばれているものです。前回のコラムの最後にお話ししたとおり、多国籍企業グループが世界中どこで活動したとしても、少なくとも国際的に合意された税率15%(「最低税率(Minimum Tax Rate)」と呼んでいます。)で計算された金額相当までは税を負担することを、各国が求めるための仕組みです。

税金の負担が十分でないというと、「脱税」を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、グローバル・ミニマム課税は、企業の「脱税」に対処することを目的にした仕組みではありません。一般に「脱税」というときには、例えば、所得を隠蔽して税負担を減らすように、平たく言えば法律(税法)に違反する形で税負担を減らすことを指します。一方で、グローバル・ミニマム課税が対処しようとしているのは、例えば多国籍企業グループが事業活動から得た利益を、税制がない、あるいは税制があっても非常に税率が低い国や地域に適法に集めることでグループ全体としての税負担を軽減するような行動です。
そうすると、「適法なら何も問題がないのでは?」という声が聞こえてきそうです。しかし、各国の財政の観点からは、なかなかそういう訳にもいきません。
多国籍企業グループが税負担の低い国にその事業から得た利益、あるいは利益を稼得する事業拠点そのものを集める行動に出るとすれば、そうした企業の誘致を進めるために、世界中の国は競い合って税率を引き下げることになりかねません。こうした税率の引下げ競争という、いわば「底辺への競争」が行き過ぎれば、低すぎる税率によって各国は十分な財源を確保できず、結局はお互いの首を絞めあうことになります。
一般に、税の話は、各国が自分自身で自由に決めることのできる「主権」にかかわる問題ですので、とてもデリケートなトピックです。こうしたデリケートなテーマであるにもかかわらず、グローバル・ミニマム課税が国際的に合意できたのは、各国における世界的な「底辺の競争」への危機感が背景にあったということもできます。

さて、このグローバル・ミニマム課税は、大きく分けて以下の3つの制度からできていて、国際的には、それぞれのアルファベットの頭文字をとった特徴的な名称で呼ばれています。
① 所得合算ルール(IIR: Income Inclusion Rule)
② 軽課税所得ルール(UTPR: Undertaxed Profits Rule)
③ 国内ミニマム課税(QDMTT: Qualified Minimum Top-up Tax)

今回のコラムの残りのパートでは、このうち主に、所得合算ルール(①)をご紹介しようと思います。
冒頭でお話ししたとおり、グローバル・ミニマム課税は、多国籍企業グループを対象にした仕組みです。より正確には、多国籍企業グループのうち、グループ全体の総収入金額が7億5000万ユーロ以上のものが対象になります。これは、日本企業であれば、日本国内にグループ頂点の親会社(最終親会社)があり、外国に子会社などを持っていて、文字通りグローバルに大規模な事業活動を展開している企業グループというイメージになりそうです。

所得合算ルールでは、こうした多国籍企業グループについて、基本的には、グループ内の子会社が得ている利益に着目して、その子会社が所在する国でどの程度の税額を負担しているか、に着目します。ここでいう利益に占める税額の割合を「実効税率」と呼んでいて、この実効税率が国際的に合意された最低税率15%に満たない場合に、グループ内の上位に位置する親会社に対して所得合算ルールが発動されます。

単純化した事例として、A国に最終親会社Pがあり、法人税率が5%のB国に子会社Sがある多国籍企業グループを考えてみましょう。
このグループで、子会社Sが100の利益を得ている場合、B国で負担している税額は5(100x5%=5)です。そうすると、この子会社Sの実効税率は5%(5/100=5%)となり、最低税率15%に足りません。その結果、IIRが発動され、15%に満たない部分の税率10%相当に対応する税額10(100x10%=10)がA国によって最終親会社Pに対して課税されます(※)。

(※)各国の税制によって税額の計算方法などは異なるため、実際のルールの適用に当たっての「利益」や「実効税率」の計算に当たっては、国際的に合意されたルールに従って様々な調整が行われます。

グローバル・ミニマム課税は、各国が法律の制定などを通じて、自国の制度として導入することが予定されています。したがって、上の事例でいえば、A国はA国の法律で所得合算ルールを導入し、その法律に基づいて最終親会社Pに課税します。
日本はといえば、昨年度の令和5年度税制改正で、所得合算ルールに相当する制度を法人税法に新設しました。これにより、来年の令和6年(2024年)4月以降に始まる企業の会計年度から適用が開始される予定です。

今回は少し堅い話が中心になってしまいましたが、制度の背景や全体像を中心に、少し踏み込んでお話しさせていただきました。
税制改正に携わる仕事をしていると、夏に各省庁から税制改正要望が提出され、年末の与党税制改正大綱、政府税制改正大綱に向けて作業が本格化していくので、秋が深まってくると、税制改正もいよいよ大詰めという気持ちになるものです。今年も例に漏れず令和6年度税制改正に向けた作業が進められていますが、11月に入っても半袖で過ごすことのできるような日が続く上に、イチョウも緑の葉をつけたままといった具合ですから、季節感のないままに月日だけが流れていくようで、何だか変な感じです。
このコラムも、秋の深まりとともに、だんだんと複雑な話が増えてきましたが、秋の夜長のお供にしていただきながら、もう暫くの間、お付き合いいただけますと幸いです。

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4 今月は何税の月「11月:税務管理局・税務署の設置(明治29年)」

先月から日本テレビ系列で放送開始となったドラマ・ゼイチョー ~「払えない」にはワケがある~、を楽しく拝見しております。ドラマの主人公・饗庭蒼一郞(菊池風磨)は、みゆきの市役所納税課徴税第三係に勤める「徴税吏員」で、徴税吏員とは、地方税法第1条第1項第3号において、“道府県知事若しくはその委任を受けた道府県職員又は市町村長若しくはその委任を受けた市町村職員をいう”、と定められています。他方、国税の徴収を行う職員である「徴収職員」については、国税徴収法第2条第11号において、“税務署長その他国税の徴収に関する事務に従事する職員をいう”、と定められています。
このように、現在では税務署(国税)と地方自治体(地方税)がそれぞれ徴収を行っていますが、江戸時代には各地の名主や庄屋が年貢を徴収していました。(勿論、幕藩体制の下では、国や地方といった認識はなかったでしょうが・・・)明治時代に入っても、国税の徴収事務は地方の郡長・区長に委任され、その下の戸長が税金を徴収し、その後、国税徴収法などが成立し、地租や所得税等の国税の徴収が市町村に委託されました。また、明治17(1884)年に国税の徴収事務は府県に移され、各府県の収税長と収税属により実施されました。大蔵省は各地に設置した収税委員出張所(後に租税局出張所)に官吏を派遣し、徴収の監視等に当たりました。このように明治半ばまでは、国税の徴収の主体は各地方の役所でした。
その形が大きく改革されたのが、明治29(1896)年11月に行われた税務管理局・税務署の設置です。全国に20の税務管理局と500の税務署が創設され、各府県収税部で取り扱っていた国税の徴収事務は税務管理局が引継ぎ、各府県収税部の管轄下にあった収税署の事務・人員は税務署に移管されました。この改革の背景として、もともと、各府県収税部は、大蔵大臣だけでなく、府令・県令の指揮・監督下にも置かれていたため、執行の実態が必ずしも同一ではなかったことから、税務管理局・税務署の設置により、執行面での全国的な統一が図られた、と考えられています。なお、徴収補助機関として市町村が地租等の国税の徴収にあたることは従前と変わらなかったとのこと。
このような、国税と地方税の徴収機関が分かれていく歴史の流れを踏まえて、ドラマを見てみると、また違った趣きが感じられるかもしれませんね。

・ドラマ ゼイチョー ~「払えない」にはワケがある~
・国税庁HP「徴収制度の整備」「税務署の創設」
・大蔵省史「第2期 近代財政の確立と大蔵省(明治14年~明治28年)
・大蔵省史「第3期 経済の発展と大蔵省(明治28年~大正3年)
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5 編集後記

段々と肌寒い季節となってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
財務省主税局では、11月9日に東大発の知識集団としてメディアで大活躍中の「QuizKnock」とコラボした動画を公開いたしました。動画を通して、楽しく税に関する知識を身につけられるような内容となっていますので、下記URLよりぜひご覧ください。

さて、今回の税制メルマガですが、国際課税に関するコラムでは、「グローバル・ミニマム課税」をテーマとしております。どのような背景の下で、税制改正が行われたのかを理解することで、税に関する知識が深まることを実感いたしました。
また、税の歴史を巡るコラムでは、「税務管理局・税務署の設置」について取り上げております。私自身、今年の7月まで税務署で勤務をしていたのですが、税務署が設置された歴史的背景など知る機会がなかったため、大変勉強になりました。明治半ばまで、国税の徴収の主体は各地方の役所であったという史実に驚きです。

今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

財務省主税局総務課 広報係 高木

・財務省HP「「QuizKnock」と財務省主税局のコラボ動画を公開!」 
【バズっちゃった】すごすぎる雑学ツイートをしてめっちゃ拡散されたら勝ち!【ツイートじゃなくてポストな】
・クイズで全知全納!?税制マスター~QuizKnockとクイズで学ぼう~


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