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Ⅰ-2.これまでの財政投融資

(1)財政融資

A.財政融資制度の沿革

① 明治時代初期~中期

 「財政融資資金」の歴史は明治時代初期までさかのぼることができます。当時、民間金融機関は未発達であり、政府のもとに各種の資金が集まりました。明治9年(1876年)の「準備金取扱規則」では大蔵省国債寮で預金を預かりこれを運用するという趣旨の規定がおかれており、明治11年(1878年)には駅逓 (えきてい)局貯金(現在の郵便貯金)の預託も受けるようになり、集まった資金を国債で運用することになりました。さらに明治18年(1885年)5月、「預金規則」が制定され、大蔵省預金の預入が法制化されました。なお、「預金規則」には具体的な運用方法及び内容について何等規定されておらず、当初は運用よりもむしろ保管管理に重点がおかれていたものと考えられます。

② 明治時代後期~戦時中

 その後、明治40年代(1907年~1912年)にはそれまで運用の太宗を占めていた国債証券のみならず、地方債証券などの引受け、一般会計、特別会計に対する貸付けなどに運用されるようになり、大正に入ると国内事業資金の供給や対外投資にあてるため、興業債券、勧業債券の引受けや特殊銀行などに対する貸付けなどが増加しました。しかし、これらの中には運用上問題が生じたものがあったため、大正14年(1925年)に「預金部預金法」及び「大蔵省預金部特別会計法」が制定され、運用の基本原則の明確化、経理の明確化・機構面での整備(「預金部」の設置)が図られました。その後戦時体制への突入とともに、次第にその運用は、国策会社、軍需会社に対する資金の供給や大陸投資などに重点が移されていきました。

③ 戦後

 終戦後、預金部の運用資産について、特殊会社、銀行などの債権や貸付金などに損失が生じたため、預金部の資産及び負債の整理が実行されました。また、占領下での運用先は、連合軍総司令部の方針として、原則として国及び地方公共団体に対するものに限定されることとなりました。その後、国民生活が落ち着きを取り戻すにつれ、郵便貯金を中心として預金部資金が急増し、余裕金が生じたことと産業界から長期設備資金の供給を求める声が強かったことなどから、長期資金の供給体制を整備するため、昭和26年(1951年)に「資金運用部資金法」が制定されました。同法により設置された「資金運用部資金」が財政融資資金の前身です。
 資金運用部資金法においては、郵便貯金や政府の特別会計の積立金・余裕金などの政府資金を資金運用部に統合し一元的運用を図ることが明確化されました。また、確実かつ有利な運用を徹底するため、運用先を国(一般会計及び特別会計)や地方公共団体と、その全額出資法人などに限定することを規定しており、この点は現在の財政融資資金においても同様の考え方を踏襲しています。

財政融資制度の沿革(概略)


B.財政投融資改革

 財政投融資制度については、平成13年度(2001年度)に抜本的な改革(財政投融資改革)が行われました。
 この改革以前は、資金運用部資金法(「A.財政融資制度の沿革」参照)に基づき、郵便貯金や年金積立金が資金運用部資金に義務的に預託されており、財政投融資の主要な資金調達手段となっていました。郵便貯金や年金積立金などを活用した財政投融資は、国内の貯蓄を社会資本の整備などに効率的に活用する財政政策手段として我が国の経済発展に貢献してきたと考えられますが、政策的に必要とされる資金需要とは関係なく原資が集まることで財政投融資の規模が肥大化し、効率的な運用が行われていないなどの問題が指摘されていました。
 財政投融資改革は、こうした点を踏まえ、財政投融資制度をより効率的で市場原理と調和のとれたものとするために行われました。
 具体的な改革の内容については、まず、財政投融資の資金調達のあり方について、郵便貯金・年金積立金の資金運用部への預託義務が廃止され、全額自主運用(原則市場運用)される仕組みへと改められました。財政投融資に必要な資金は、財投債の発行により市場から調達されることとなり、これにより、必要な資金需要に応じた効率的な資金調達を行うことが可能となりました。同時に、貸付金利は国債金利と基本的に同水準となりました。
 さらに、財投機関が行う財政投融資対象事業についても民業補完の観点から事業を見直し、また、財投機関においても必要な事業の資金調達については、財投機関自身が財投機関債の発行により市場での自主調達に努めることとなりました。
 このほか、政策コスト分析を導入しました。これは、財政投融資のディスクロージャーの観点から、財政投融資を活用している事業について政策コスト(将来見込まれる補助金や出資金の機会費用など)がどの程度生じるかを明らかにすることで、財政投融資対象事業の妥当性や財投機関の財務の健全性に関する情報の充実を図ったものです。

財政投融資改革のイメージ

財政投融資改革のイメージ

(参考)財政融資資金の調達金利と貸付金利

 財政融資資金は、財投債と預託金を主な財源としています。財投債は国債の一種であり、商品性も通常の国債と同じで、発行も通常の国債と合わせて行われているため、調達金利は国債金利そのものです。一方、国の特別会計の積立金・余裕金などからの預託金については、財務大臣が預託期間に応じて、国債の利回りに即した預託金利を定めることとされています(ただし、0.001%を下限としています)。
 また、貸付金利についても、国債の流通利回りを基準として、貸付期間に応じ、償還方法 (元金均等元利均等満期一括)や据置期間(貸付を受けた日以降、元金を償還せず、利子のみを支払う期間)といった償還形態の違いを反映した上で財務大臣が定めていることから(ただし、0.001%を下限としています)、調達金利と貸付金利は、基本的に国債金利と同水準になります。
 以上のような金利の設定方法は、財政投融資改革において導入されたものです。それまでの預託金利は、昭和62年(1987年)の資金運用部資金法改正により、国債の金利その他市場金利を考慮するとともに預託者側の事情にも配慮して政令で定めることとされており、財政投融資改革直前における預託金利の実際の水準を見ると、7年以上の預託に対しては毎月発行される10年物利付国債の表面利率に0.2%を上乗せした水準で設定されていました。他方、貸付金利については、貸付期間にかかわらず7年以上の預託金利と同一の水準で設定されてきました。
 財政投融資改革により預託者への配慮規定が廃止され、預託金利や貸付金利は国債の流通利回りに基づき設定されるようになり、市場原理との調和が図られることとなりました。
 そして、現下の金利情勢等を踏まえ、平成31年(2019年)4月1日から財政融資資金貸付金利・預託金利の設定方法を、①下限利率を0.01%から0.001%へ変更、②0.01%未満となる年限についても国債のイールドカーブに基づいた金利を設定、③金利改定時期は毎月1日、としています。

財政投融資改革前・改革後の貸付金利(固定金利・据置期間なし)のイメージ



C.財政投融資対象分野の変遷

1945年~1970年代前半(戦後復興期~高度経済成長期)

 戦後経済復興期には、基幹産業(石炭・鉄鋼・海運・電力など)の育成に力点が置かれました。
 その後、高度経済成長期に入り、欧米より遅れたインフラ整備やマイホーム取得のために住宅分野にも活用され、さらに、中小企業支援や公共事業にも活用されました。こうした分野を担うべく、財投機関の数も増加し、政策目的に応じた様々な財投機関が出揃いました。
 ① 特定の産業分野:日本開発銀行などの政策金融機関
 ② 中小企業対策:中小企業金融公庫、国民金融公庫
 ③ 高速道路:日本道路公団
 ④ 空港:新東京国際空港公団
 ⑤ 住宅建設:日本住宅公団、住宅金融公庫

戦後復興期~高度経済成長期(主な活用事例)
主な分野 財投機関 活用事例
住宅
日本住宅公団 多摩ニュータウン、高島平団地の整備など
中小企業 中小企業金融公庫 ソニー(株)、京セラ(株)などの創業期・成長期に融資
社会資本整備
日本道路公団
東名、名神高速自動車道などの建設
日本国有鉄道
東海道・山陽新幹線の建設
新東京国際空港公団
成田国際空港の建設
産業
電源開発
電力供給のためのダム建設など(御母衣ダム)
日本開発銀行
基幹産業(石炭・鉄鋼・海運・電力など)に対する長期資金の供給

1970年代後半~1990年代(安定成長期~バブル期~ポスト・バブル期)

 オイルショックを経て安定成長期へ移行し、企業の投資意欲が減退する中、1970年代後半から1980年代前半にかけて住宅及び中小企業向けが増加し、生活環境整備(都市開発など)を加えると財政投融資全体の6割を占めました。また、大都市圏を中心とした大規模なニュータウンや研究学園都市の開発、地方産業拠点の建設など、採算性が必ずしも高くない事業にも活用されました。
 バブル崩壊後の1990年代は、経済対策として公共事業が推進される中、住宅向けが増大し、全体の3分の1となりました。

安定成長期~バブル期~ポスト・バブル期(主な活用事例)
主な分野 財投機関 活用事例
住宅 住宅金融公庫 住宅建設のための融資
宅地開発公団 千葉ニュータウンの開発など
生活環境整備
地域開発
住宅・都市整備公団 都市の再開発(みなとみらい21)、研究学園都市(筑波)の開発など
地域振興整備公団 いわきニュータウン・長岡ニュータウンなどの開発、地方都市の再開発
水資源開発公団 水資源の開発・利用のため、奈良俣ダム、早明浦ダムなどの建設
中小企業 中小企業金融公庫
国民金融公庫
民間金融機関からの融通が困難な中小企業などに対する融資
社会資本整備 日本鉄道建設公団 長野新幹線などの建設
空港整備特別会計など 東京国際空港(羽田)の沖合展開・再拡張

2000年代以降

 平成13年(2001年)から財政投融資改革を実施し、対象分野の重点化・効率化に取り組みました。こうした中、「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年(2001年)12月閣議決定)などを背景に、住宅の割合が大きく減少しました。その後、平成20年(2008年)のリーマン・ショック後の経済危機や平成23年(2011年)の東日本大震災への対応として、資金繰りに困難をきたしている企業に対する支援(セーフティネット貸付や危機対応業務)、復旧・復興事業や防災・減災対策に活用されました。また、近年では新型コロナウイルス感染症の流行の際の資金需要に対しても、財政投融資が積極的に活用されました。

2000年代以降(主な活用事例)
時期 主な分野 財投機関 活用事例
リーマン・ショック後の経済・金融危機 中小・小規模事業者 日本政策金融公庫 中長期的に業況の回復が見込める中小企業などへのセーフティネット貸付の拡充等
中堅・大企業等 日本政策金融公庫 指定金融機関(日本政策投資銀行、商工組合中央金庫)を通じた危機対応融資
海外投融資 国際協力銀行 日本企業の海外事業などを支援するための信用供与
東日本大震災 中小・小規模事業者 日本政策金融公庫 東日本大震災復興特別貸付制度、被災中小企業向けの資本性資金の供給(資本性劣後ローン)などを通じた資金繰り支援
中堅・大企業等 日本政策金融公庫 指定金融機関を通じた危機対応融資(ツーステップ・ローン)
地方 地方公共団体 東日本大震災を教訓として行う防災・減災対策のための資金供給
住宅 福祉医療機構 被災した病院・福祉施設の復旧及び運転資金の貸付
福祉・医療 住宅金融支援機構 被災した住宅に係る災害復興融資の拡充
新型コロナウイルス感染症 中小・小規模事業者 日本政策金融公庫 新型コロナウイルス感染症特別貸付制度、利子補給による実質無利子・無担保融資などを通じた資金繰り支援
中堅・大企業等 日本政策金融公庫 指定金融機関(日本政策投資銀行、商工組合中央金庫)を通じた危機対応融資、民間金融機関からの金融支援を促す資本性劣後ローン
農林水産業 日本政策金融公庫 経営に影響が出ている農林漁業者に対する、実質無利子・無担保融資を通じた資金繰り支援
福祉・医療 福祉医療機構 休業や事業を縮小した医療・福祉事業者に対する、無利子・無担保等の優遇融資を通じた資金繰り支援


(2)産業投資

A.産業投資の活用

 産業投資は、産業の開発及び貿易の振興を目的としており、政策的必要性が高く、リターンが期待できるものの、リスクが高く民間だけでは十分に資金が供給されない分野に民間資金の呼び水・補完としてのエクイティ性資金などを供給する産投機関に対する出資及び貸付を行っています。民間金融機関などの行う投資活動は、短期的な期間損益を株主、債権者などから求められる短中期的投資が中心となるのに対し、産業投資は、投資回収をして利益が上がるまで長期的に耐えることができる資金、いわゆるペイシェント・キャピタルであることが特徴です。
 また、産投出資に加えて、産投貸付も特例的・限定的に活用しています。産投貸付については、確定利付の財政融資では対応困難な長期・一括返済の業績連動型金利設定の融資が可能であることから、資本性劣後ローンなどのメザニンファイナンスを手がけている(株)日本政策金融公庫などにおいて活用されています。

  業績連動型金利設定のイメージ       資本性劣後ローンの効果
業績連動型金利設定のイメージ   資本制劣後ローンの効果

B.産業投資制度の沿革

 産業投資の歴史は、産業投資特別会計(以下「産投特会」という)の設置までさかのぼることができます。産投特会は、昭和28年度(1953年度)に、「経済の再建、産業の開発及び貿易の振興」を目的とした投資を行う際に、その経理を一般会計と区分して明確にするために「産業投資特別会計法」により設置された特別会計であり、米国対日援助見返資金特別会計の資金など、並びに一般会計から当時の日本開発銀行及び日本輸出入銀行への出資金などを承継しています。
 当初、電力、海運、石炭、鉄鋼などの重要産業の整備が喫緊の課題であったため、産投特会は一般会計繰入を主な原資として、政府関係機関などに対する出融資を実施していました。昭和50年代(1975年~1984年)以降、財政事情の悪化に伴いそれまで産業投資の主な原資であった一般会計からの繰入が急激に減少したことなどを踏まえ、昭和60年(1985年)に「産業投資特別会計法」が改正され、産投特会の資本の充実を図るとともに、産投特会の在り方を見直すこととされました。この法改正により、①NTT及びJT株式の一般会計から産投特会への無償所属替え、②産投会計から一般会計への繰入規定の創設、③設置規定から「経済の再建」の文言の削除など、所要の整備が行われました。
 その後、昭和62年度(1987年度)に社会資本整備の促進を図るためNTT株式の売却収入を活用した無利子貸付制度が創設されたことに伴い、産投特会は産業投資勘定と社会資本整備勘定に区分されました。
 さらに、「特別会計に関する法律」の成立を受け、平成20年度(2008年度)に産業投資勘定は財政融資資金特別会計に移管され、名称を財政投融資特別会計とした上で投資勘定になりました。
 (注)社会資本整備勘定は平成19年度(2007年度)をもって廃止され、一般会計へ移管されました。

財政投融資特別会計(投資勘定)の経緯

財政投融資特別会計(投資勘定)の経緯

C.産業投資の対象分野

 産業投資は、従来、政策金融機関や独立行政法人などに対し、資本性資金の供給や政策的必要性の高いプロジェクトを支援するための財務基盤強化を目的とした出資を実施し、近年は、官民ファンドを通じてリスクマネー供給を強化し、これを呼び水として民間資金を誘発しています。
 一方、研究開発法人向け投資は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年(2010年)12月7日閣議決定)などを踏まえた各法人における事業の廃止や新規採択の廃止などを受け、大幅に減少しています(平成26年度(2014年度)以降はゼロ)。

D.官民ファンドを通じたリスクマネー供給

 官民ファンドは、政府・民間から拠出された資金を原資として、政策目的を実現するための投資活動を行うファンドを指します。政府として出資しているため、政策目的を実現する必要があり、具体的には政府の成長戦略の実現や地域活性化への貢献及び新たな産業・市場の創出など、政策的意義のある分野において、民間資金の呼び水・補完としての役割を果たし、民間のリスクマネー供給を活発化させることを目的として設立されています。
 官民ファンドは、こうした政策目的が達成されるよう、それぞれの設置法に基づき、所管官庁の監督の下、政策目的の実現に向けた取組がなされています。
 特に研究開発・ベンチャーなどの分野においては、産業投資を活用して、民間の人材・ノウハウによる運営を基本としつつ民主導の新しい官民パートナーシップの構築に向けた取組を行っていく必要があるとされ、平成21年度(2009年度)に(株)産業革新機構が創設されました(平成30年(2018年)9月25日の改正産業競争力強化法施行により、(株)産業革新投資機構に改組)。また、(株)日本政策投資銀行による企業の競争力強化や地域活性化のほか、政府の成長戦略を受け、クールジャパン戦略、民間資金を活用したインフラ整備(PFI)、インフラシステムの海外展開支援などに官民ファンドの対象分野が拡大しています。

官民ファンドのスキーム
官民ファンドのスキーム

官民ファンドの概要(産業投資対象機関について)

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E.昨今の経済・金融情勢を踏まえた今後の産業投資について

 産業投資は、政策的必要性が高く、リターンが期待できるものの、リスクが高く民間だけでは十分に資金が供給されない分野にエクイティ性資金などを供給しており、産投機関に対する出資及び貸付です。産業投資は、特別会計に関する法律第50条において、「産業の開発及び貿易の振興のために国の財政資金をもって行う投資」と規定されており、政策性と収益性という2つの要件をそれぞれ満たす必要があります。令和3年度(2021年度)末で6兆5,239億円の出資及び貸付を行っており、融資業務などのリスクバッファ、投資の直接の原資などに使われています。近年では、官民ファンド向けの出資など、投資の直接の原資として産投出資が使われる割合が増えています。
 日本経済の成長力強化などにつながる産業の開発及び貿易の振興の観点から、民間投資の状況を見ると、新産業の創出、ビジネスの新陳代謝の促進、日本企業の海外展開などに係るエクイティ性資金の供給が一層必要であり、産業投資は、民間資金の呼び水・補完としての役割を果たす必要があります。他方、産業投資が出資している官民ファンドは、全体で累積損益はプラスですが、一部のファンドでは累積損失が生じています。
 このような状況を踏まえ、財政制度等審議会財政投融資分科会では、投資の直接の原資としての産投出資を中心に、今後の産業投資について検討を行い、令和元年(2019年)6月14日に報告書『今後の産業投資について』が取りまとめられました。なお、報告書において指摘された事項については、財務省において以下のとおり対応しております。

報告書『今後の産業投資について』への対応状況

1.改革工程表に基づく取組を踏まえた財投計画編成

 平成31年(2019年)4月に、累積損失の大きい4官民ファンド(農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構、CJ)、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT))は、経済財政諮問会議が決定した「新経済・財政再生計画 改革工程表2018」に基づき、累損解消に向けた投資計画を策定・公表しています。その後は各年度央及び年度末の実績に基づき、最新の「新経済・財政再生計画 改革工程表2021」にも定めるとおり、各官民ファンド及び各所管官庁がそれぞれの投資計画の進捗のフォローアップを行っています。財政投融資分科会等を通じて当該フォローアップ結果を確認し、財政投融資計画編成に反映します。

(注)A-FIVEについては、所管官庁である農林水産省において、令和3年度(2021年度)以降は新たな出資の決定を行わず、可能な限り速やかに解散するとの方針が示されています。

2.投資の直接の原資としての産投出資に対するガバナンス(出資条件)

 投資の直接の原資として産投出資を行う機関との間で、産投出資の条件を取決めています。今後、収益性の実現に課題が生じる可能性がある場合には、当該出資条件に基づき、機関の投資決定プロセス等を適切に確認し、その確認の結果に応じて、翌年度以降の財政投融資計画編成への反映を検討することとしています。

3.投資の直接の原資以外の産投出資に対するガバナンス(既往出資)

 産投機関・所管官庁から、毎年8月末に既往出資の活用状況等について報告を受け、産投対象プロジェクトの資金として一部活用されなくなったものがないか等について確認し、財政投融資計画編成に反映するなどの対応を実施しています。

「財政投融資を巡る課題と今後の在り方について」のポイント
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(3)「財政投融資を巡る課題と今後の在り方について」

 財政投融資改革以降、財政投融資計画の規模は減少傾向にありましたが、平成20年(2008年)以降、平成20年(2008年)9月のいわゆるリーマン・ショックや平成23年(2011年)3月の東日本大震災からの復興への対応、民間投資を活性化させるための官民ファンドを通じたリスクマネーの供給など、当時の経済社会情勢を踏まえ、資金需要に対し積極的に対応してきました。
 そこで、平成26年(2014年)2月から6回にわたり財政制度等審議会財政投融資分科会(財投分科会)が開催され、内外の経済・金融情勢の変化などを踏まえて政府が行う投融資活動の在り方と、それを適切に運営していくために、官民の役割分担・リスク分担、貸し手又は出資者としてのガバナンスについて検討されました。その結果、「財政投融資を巡る課題と今後の在り方について」がとりまとめられました。

「財政投融資を巡る課題と今後の在り方について」のポイント

「財政投融資を巡る課題と今後の在り方について」のポイント


(4)新型コロナウイルス感染症対策等としての財政投融資の活用

新型コロナウイルスの影響を受けた企業の資金繰り支援対策等(令和2年度第1次・第2次補正予算)

 令和2年(2020年)4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を踏まえ、事業の継続を強力に支援すべく、中小・小規模事業者や中堅企業・大企業の資金繰り支援対策等に万全を期すため、令和2年度第1次補正予算において総額10兆1,877億円(財政融資9兆9,877億円、産業投資1,000億円及び政府保証1,000億円)の財政投融資計画の追加を行いました。
 さらに、実質無利子・無担保融資を含む、融資規模の拡充や資本性資金の活用など、金融機能の強化に向けた対応を行うため、同年第2次補正予算において総額39兆4,258 億円(財政融資32兆8,258 億円、産業投資1,000 億円及び政府保証6兆5,000 億円)の財政投融資計画の追加を行いました。

(参考)令和2年度第1次補正予算における財政投融資計画の追加について

https://www.mof.go.jp/policy/filp/plan/fy2020/r02hosei/zt001.pdf

(参考)令和2年度第2次補正予算における財政投融資計画の追加について

https://www.mof.go.jp/policy/filp/plan/fy2020/r02hosei/zt003.pdf


国土強靱化やポストコロナ時代の社会・経済構造変化への対応等(令和2年度第3次補正予算)

 令和2年(2020年)12月8日に閣議決定された「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」を踏まえ、現下の低金利状況を活かして、生産性向上や防災・減災、国土強靱化対策を加速するとともに、ポストコロナ時代の社会・経済構造変化に対応した民間投資を促進するため、令和2年度第3次補正予算において総額1兆4,341億円(財政融資1兆4,121億円、産業投資200億円及び政府保証20億円)の財政投融資計画の追加を行いました。

(参考)令和2年度第3次補正予算における財政投融資計画の追加について

https://www.mof.go.jp/policy/filp/plan/fy2020/r02hosei/zt005.pdf


令和3年度財政投融資計画のポイント

 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業・事業者及び地方公共団体への強力な支援、イノベーションの大胆な加速と事業再生・構造転換、低金利を活用した、生産性向上や防災・減災、国土強靱化等につながるインフラ整備の加速等のため、総額約40兆9,056億円(財政融資38兆3,027億円、産業投資3,626億円及び政府保証2兆2,403億円)の財政投融資計画を策定しました。

(参考)令和3年度財政投融資計画について

https://www.mof.go.jp/policy/filp/plan/fy2021/r03seifuan/zt001.pdf

科学技術立国の実現や、防災・減災、国土強靱化の推進等(令和3年度補正予算)

 令和3年(2021年)11月19日に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」に基づき、科学技術立国の実現に向けた積極的な投資を促進するとともに、防災・減災、国土強靱化の推進を図るため、令和3年度補正予算において総額9,221億円(財政融資9,200億円、政府保証21億円)の財政投融資計画の追加を行いました。

(参考)令和3年度補正予算における財政投融資計画の追加について

https://www.mof.go.jp/policy/filp/plan/fy2021/r03hosei/zt001.pdf

令和4年度財政投融資計画のポイント

 新型コロナの影響を受けた事業者への支援/ポストコロナを見据えた成長力強化、科学技術立国の実現、「デジタル田園都市国家構想」の推進、経済安全保障の推進、インフラ整備の加速(国際競争力の強化、防災・減災、国土強靱化)等のため、総額約18兆8,855億円(財政融資16兆4,488億円、産業投資3,262億円及び政府保証2兆1,105億円)の財政投融資計画を策定しました。

(参考)令和4年度財政投融資計画について

https://www.mof.go.jp/policy/filp/plan/fy2022/r04seifuan/zt001.pdf

財政投融資計画額の推移(フロー)

財政投融資計画額の推移(フロー)

財政投融資計画残高の推移(ストック)

財政投融資計画残高の推移(ストック)