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「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」4/6


第6章 損益計算書



59 表示区分
 損益計算書には、経常損益計算及び純損益計算の区分を設けなければならない。



60 総額主義の原則
 費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。



61 費用収益対応の原則
 
費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各費用項目とそれに関連する収益項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。



62 損益計算書科目の分類

 経常損益計算の区分は、当該独立行政法人の業務活動から生じた費用及び収益を記載して、経常利益を計算する。

 純損益計算の区分は、経常損益計算の結果を受けて、固定資産売却損益、災害損失等の臨時損益を記載し、当期純利益を計算する。(注44)(注45)

 純損益計算の結果を受けて、目的積立金取崩額等を記載し、当期総利益を計算する。

 



注44> 臨時損益項目について
 臨時損益に属する項目であっても、金額の僅少なもの又は毎期経常的に発生するものは、経常損益計算に含めることができる。

 



注45> 当期純利益の計算について
 独立行政法人において、法人税等の納付義務が発生する場合又は「第35 法人税等の期間配分に係る会計処理」による会計処理を行う場合には、経常損益計算の結果を受けて臨時損失及び臨時利益を記載して税引前当期純利益を示し、これに法人税、住民税及び事業税の額並びに法人税等調整額を加減して当期純利益を示すものとする。



63 費用の表示項目
 
業務費及び一般管理費については、これらを構成する費用の内容に応じて区分し、それぞれにその内容を表す適切な名称を付して表示するものとする。



64 収益の表示項目

 運営費交付金収益は、「第80 運営費交付金の会計処理」による会計処理を行った結果、当期の収益として認識された額を表示する。

 受託収入、手数料収入、売上高等については、実現主義の原則に従い、サービスの提供又は商品等の販売によって実現したもののみをそれぞれ適切な名称を付して表示する。

 補助金等収益は、「第82 補助金等の会計処理」による会計処理を行った結果、当期の収益として認識された額を表示する。なお、補助金等収益は、補助金等の交付決定区分ごとに適切な名称を付して表示する。

 寄附金収益は、「第84 寄附金の会計処理」による会計処理を行った結果、当期の収益として認識された額を表示する。



65 損益計算書の様式
 
損益計算書の標準的な様式は、次のとおりとする

 

 

第65 損益計算書を表す図1

 


第65 損益計算書を表す図2



第7章 キャッシュ・フロー計算書



66 表示区分

 キャッシュ・フロー計算書には、業務活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フローの区分を設けなければならない。(注46)

 業務活動によるキャッシュ・フローの区分には、投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローを記載する。(注47)

 投資活動によるキャッシュ・フローの区分には、固定資産の取得及び売却、投資資産の取得及び売却等によるキャッシュ・フローを記載する。(注48)

  財務活動によるキャッシュ・フローの区分には、資金の調達及び返済によるキャッシュ・フローを記載する。(注49)

 国庫納付及び法人税等に係るキャッシュ・フローは、業務活動によるキャッシュ・フローの区分に記載する。

 受取利息、受取配当及び支払利息に係るキャッシュ・フローは、いずれも業務活動によるキャッシュ・フローの区分に記載する。(注50)

 



注46> キャッシュ・フロー計算書の表示区分について

 

 キャッシュ・フロー計算書においては、一会計期間におけるキャッシュ・フローを業務活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フローの三つに区分して表示する。

 

 業務活動によるキャッシュ・フローの区分には、独立行政法人の通常の業務の実施に係る資金の状態を表すため、サービスの提供等による収入、原材料、商品又はサービスの購入による支出等、投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローを記載する。

 

 独立行政法人に対して国から交付される運営費交付金については、法人がその業務を行うことを前提に、そのための財源として交付される資金であり、損益計算においても法人の業務の遂行によって最終的に収益計上されるものであるので、その収入額を業務活動によるキャッシュ・フローの区分に表示する。

 

 国又は地方公共団体から交付される補助金等については、独立行政法人が行う業務の財源として交付される資金であり、損益計算書においても法人の業務の遂行によって最終的に収益計上されるものもあるので、その収入額を業務活動によるキャッシュ・フローの区分に表示する。

 

 なお、サービスの提供等により取得した手形の割引による収入等、業務活動に係る債権・債務から生ずるキャッシュ・フローは、業務活動によるキャッシュ・フローの区分に表示する。

 

 投資活動によるキャッシュ・フローの区分には、固定資産の取得等、将来に向けた運営基盤の確立のために行われる投資活動に係る資金の状態を表すため、独立行政法人の通常の業務活動の実施の基礎となる固定資産の取得及び売却、投資資産の取得及び売却等によるキャッシュ・フローを記載する。

 

 独立行政法人に対して国から交付される施設費については、その収入額を投資活動によるキャッシュ・フローの区分に表示する。

 

 財務活動によるキャッシュ・フローの区分には、増減資による資金の収入・支出、債券の発行・償還及び借入れ・返済による収入・支出等、資金の調達及び返済によるキャッシュ・フローを記載する。

 

 独立行政法人が行う出資は、主として政策目的の資金供給として行われるほか、債券発行、長期借入れによる資金の調達も法人の業務財源として必要性が認められる場合に限られている。また、通則法第47条で余裕金の運用先を安全資産に限る等、本来実施すべき業務以外の資産運用等によって収益を上げることは期待されておらず、これらの活動から生ずる受取利息、受取配当及び支払利息はいずれも法人の業務に起因するものである。このため、損益の算定に含まれる受取利息、受取配当及び支払利息はいずれも業務活動によるキャッシュ・フローの区分に記載する方法に限定する。

 



注47> 業務活動によるキャッシュ・フローの区分について
 業務活動によるキャッシュ・フローの区分には、例えば、次のようなものが記載される。

 

 

(1

) 原材料、商品又はサービスの購入による支出

(2

) 人件費支出(職員及び役員に対する報酬の支出)

(3

) その他の業務支出

(4

) 運営費交付金収入

(5

) 受託収入、手数料収入等サービスの提供等による収入((4)、(6)及び(8)に掲げるものを除く。)

(6

) 補助金等収入

(7

) 補助金等の精算による返還金の支出

(8

) 寄附金収入(「第84 寄附金の会計処理」により資本剰余金として計上されるものを除く。)

(9

) 利息及び配当金の受取額

(1

0) 利息の支払額

(1

1) 国庫納付金の支払額

(1

2) 法人税等の支払額

 



注48> 投資活動によるキャッシュ・フローの区分について

 

 投資活動によるキャッシュ・フローの区分には、例えば、次のようなものが記載される。

 

 

(1

) 有価証券の取得による支出

(2

) 有価証券の売却による収入

(3

) 有形固定資産及び無形固定資産の取得による支出

(4

) 有形固定資産及び無形固定資産の売却による収入

(5

) 施設費による収入

(6

) 施設費の精算による返還金の支出

 

 ただし、独立行政法人の通常の業務活動として実施される、例えば、次のようなものは業務活動によるキャッシュ・フローの区分に記載される。

 

 

(1

) 資金の貸付けを業務とする独立行政法人が行う貸付けによる支出

(2

) 出資及び貸付けにより民間企業に研究資金を供給することを業務とする独立行政法人が行う出資及び貸付けによる支出

 



注49> 財務活動によるキャッシュ・フローの区分について
 財務活動によるキャッシュ・フローの区分には、例えば、次のようなものが記載される。

 

 

(1

) 短期借入れによる収入

(2

) 短期借入金の返済による支出

(3

) 債券の発行による収入

(4

) 債券の償還による支出

(5

) 長期借入れによる収入

(6

) 長期借入金の返済による支出

(7

) 金銭出資の受入による収入

(8

) 民間出えん金(「第84 寄附金の会計処理」により、資本剰余金に計上される寄附金に限る。)の受入による収入

 



注50> 利息の表示について
 利息の受取額及び支払額は、総額で表示するものとする。



67 表示方法

 業務活動によるキャッシュ・フローは、主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額表示する方法により表示しなければならない。

 投資活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フローは、主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額表示しなければならない。

 資金に係る換算差額は、他と区別して表示する。



68 キャッシュ・フロー計算書の様式
 キャッシュ・フロー計算書の標準的な様式は、次のとおりとする。

 

第68 キャッシュ・フロー計算書を表す図1

 

第68 キャッシュ・フロー計算書を表す図2



69 注記事項
 キャッシュ・フロー計算書については、次の事項を注記しなければならない。

 

(1

) 資金の期末残高の貸借対照表科目別の内訳

 

(2

) 重要な非資金取引(注51)

 

(3

) 各表示区分の記載内容を変更した場合には、その内容

 



注51> 重要な非資金取引について
 キャッシュ・フロー計算書に注記すべき重要な非資金取引には、例えば、次のようなものがある。

 

 

(1

) 現物出資の受入による資産の取得

(2

) 資産の交換

(3

) ファイナンス・リースによる資産の取得