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「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」1/6

独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」

平成12年2月16日設定

平成15年3月3日改訂


第1章 一般原則



1 真実性の原則

 独立行政法人の会計は、独立行政法人の財政状態及び運営状況に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。(注1)

 



注1> 真実性の原則について

 

 独立行政法人は国の事務及び事業の実施主体であって、その業務の実施に関して負託された経済資源に関する情報を負託主体である国民に開示する責任を負っており、説明責任の観点から、その財政状態及び運営状況を明らかにし、適切に情報開示を行うことが要請される。

 

 独立行政法人の業務運営については、その自律性及び自発性の発揮の観点から、国による事前統制を極力排除し、事後チェックに重点を置くこととされているが、適切に事後チェックを行うためには、業績評価が適正に行われなければならない。

 

 このような説明責任の観点及び業績の適正評価の観点から、独立行政法人の会計は 、その財政状態及び運営状況に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。



2 正規の簿記の原則

 独立行政法人の会計は、独立行政法人の財政状態及び運営状況に関するすべての取引及び事象について、複式簿記により体系的に記録し、正確な会計帳簿を作成しなければならない。(注2)

 会計帳簿は、独立行政法人の財政状態及び運営状況に関するすべての取引及び事象について、網羅的かつ検証可能な形で作成されなければならない。

 独立行政法人の財務諸表は、正確な会計帳簿に基づき作成し、相互に整合性を有するものでなければならない。(注3)

 



注2> 複式簿記について
 独立行政法人においては、その財政状態及び運営状況に関するすべての取引及び事象について捕捉しうる合理的な会計処理及び記録の仕組みとして、複式簿記を導入するものとする。

 



注3> 行政サービス実施コスト計算書の整合性について

 

 行政サービス実施コスト計算書は、独立行政法人の財務諸表を構成する書類の一つであり、基本的には正確な会計帳簿に基づき作成されるべきものである。

 

 しかし、行政サービス実施コスト計算書には、その性格上一定の仮定計算に基づく機会費用を含むことから、会計帳簿によらないで作成される部分が存することに留意する必要がある。その場合には、当該部分の作成根拠等を注記等により開示しなければならない。



3 明瞭性の原則

 独立行政法人の会計は、財務諸表によって、国民その他の利害関係者に対し必要な会計情報を明瞭に表示し、独立行政法人の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。(注4)

 



注4> 明瞭性の原則について

 

 独立行政法人においては、国民の需要に即応した効率的な行政サービスの提供を実現することが求められており、その行政サービスの提供のために負託された経済資源に関する会計情報を負託主体である国民を始めとする利害関係者に対し報告する責任を負っている。

 

 国民その他の利害関係者にわかりやすい形で適切に情報開示するため、独立行政法人の財務諸表は明瞭に表示されなければならない。



4 重要性の原則

 独立行政法人の会計は、国民その他の利害関係者の独立行政法人の状況に関する判断を誤らせないようにするため、取引及び事象の金額的側面及び質的側面の両面からの重要性を勘案して、適切な記録、計算及び表示を行わなければならない。

 質的側面の考慮においては、独立行政法人の会計の見地からの判断に加え、独立行政法人の公共的性格に基づく判断も加味して行わなければならない。

 重要性の乏しいものについては、本来の方法によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則及び明瞭性の原則に従った処理として認められる。(注5)

 



注5> 重要性の原則について

 

 公共的な性格を有する独立行政法人の会計は、独立行政法人会計基準に定めるところに従った会計処理及び表示が求められるものである。

 

 ただし、独立行政法人の会計が目的とするところは、独立行政法人の財政状態及び運営状況を明らかにし、国民その他の利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあることから、重要性の乏しいものについては、本来の会計処理によらないで合理的な範囲で他の簡便な方法によることも、正規の簿記の原則に従った処理として認められる。

 

 重要性の原則は、財務諸表の表示に関しても適用され、本来の財務諸表の表示方法によらないで合理的な範囲で他の簡便な方法によることも、明瞭性の原則に従った表示として認められる。



5 資本取引・損益取引区分の原則

 

 独立行政法人の会計においては、資本取引と損益取引とを明瞭に区別しなければならない。(注6)

 



注6> 資本取引・損益取引区分の原則について

 

 独立行政法人は、公共的な性格を有し、本来的には利益の獲得を目的とせず、公的なサービスの提供を行うことを目的としており、運営費交付金及び補助金等による国からの財源措置が行われることが一般的である。このような独立行政法人においては、第一に、経営成績ではなく運営状況を明らかにするために損益計算を行うこととしている。このような観点から行われる損益計算においては、独立行政法人が中期計画に沿って通常の運営を行った場合、運営費交付金及び補助金等の財源措置との関係においては損益が均衡するように損益計算の仕組みが構築されることとなる。また、政策の企画立案主体としての国との関係において、独立行政法人の独自判断では意思決定が完結し得ない行為に起因する収支等独立行政法人の業績を評価する手段としての損益計算に含めることが合理的ではない収支は、独立行政法人の損益計算には含まれないものとする。

 

 また、独立行政法人においては、第二に、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)第44条にいう利益又は損失を確定するために損益計算を行うこととしている。

 

 このように独立行政法人においては、その運営状況を適正に示すという観点及び通則法第44条にいう利益又は損失の確定を適切に行うという観点から、その会計において、資本取引と損益取引とを明瞭に区別しなければならない。



6 継続性の原則

 独立行政法人の会計においては、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。(注7)

 



注7> 継続性の原則について

 

 独立行政法人はその公共的な性格から適切に情報開示を行わなければならず、その会計処理の原則及び手続に関する選択性は原則として排除される。

 

 しかしながら、一つの会計事実について二つ以上の会計処理の原則又は手続の選択適用が認められる場合は皆無とはいえない。そのような場合において、独立行政法人が選択した会計処理の原則又は手続を継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる計算結果が算出されることになる。その結果、財務諸表の期間比較を困難ならしめ、独立行政法人の財政状態及び運営状況に関する国民その他の利害関係者の判断を誤らしめるおそれがある。したがって、いったん採用した会計処理の原則及び手続は、正当な理由により変更を行う場合を除き、財務諸表を作成する各事業年度を通じて継続して適用しなければならない。

 

 正当な理由によって、会計処理の原則又は手続に変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。

 

 財務諸表の表示方法について変更を加えたときは、これを財務諸表に注記しなければならない。



7 保守主義の原則

 独立行政法人の会計は、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行わ なければならない。

 独立行政法人の会計は、過度に保守的な会計処理を行うことにより、独立行政法人の財政状態及び運営状況の真実な報告をゆがめてはならない。



第2章 概念



8 資産の定義

 独立行政法人の資産とは、過去の取引又は事象の結果として独立行政法人が支配する資源であって、それに より独立行政法人のサービス提供能力又は将来の経済的便益が期待されるものをいう。

 資産は、流動資産及び固定資産に分類される。

 独立行政法人においては、繰延資産を計上してはならない。(注8)

 



注8> 繰延資産について

 

 独立行政法人においては、一般的に国からの財源措置が行われるが、その 額は、通常独立行政法人に負託された業務に係る支出額に対応する形で措置されることとなる。また、研究開発費等を資産として貸借対照表に計上することは適当でないとする「研究開発費等に係る会計基準」の考え方を勘案すると、独立行政法人においては繰延資産を計上することは適当ではなく、支出した当該事業年度の費用として処理すべきものである。

 

 独立行政法人が事業資金等の調達のために債券を発行する場合で、債券の額面金額を下回る金額で発行した場合には、当該額面額を下回る金額は、長期前払費用としての性格を有することから債券発行差金の科目により資産として計上するものとする。
 資産に計上した債券発行差金は、毎事業年度、債券の償還期間にわたり合理的な基準で計算した額を償却しなければならない。期限前に債券を償還した場合には、債券発行差金の未償却残高のうち、償還した債券に対応する部分を当該事業年度に償却しなければならない。

 

 債券発行に要した費用は、当該費用が発生した事業年度の費用として処理しなければならない。



9 流動資産

 次に掲げる資産は、流動資産に属するものとする。(注9)

 

(1

) 現金及び預金。ただし、貸借対照表日の翌日から起算して一年以内(以下この章において「一年以内」という。)に期限の到来しない預金を除く。

 

(2

) 有価証券で、「第27 有価証券の評価基準及び評価方法」において定める売買目的有価証券及び一年以内に満期の到来するもの

 

(3

) 受取手形(独立行政法人の通常の業務活動において発生した手形債権をいう。ただし、破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で一年以内に回収されないことが明らかなものを除く。以下同じ。)

 

(4

) 売掛金(独立行政法人の通常の業務活動において発生した未収入金をいう。ただし、破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で一年以内に回収されないことが明らかなものを除く。以下同じ。)

 

(5

) 製品、副産物及び作業くず

 

(6

) 半製品

 

(7

) 原料及び材料(購入部分品を含む。)

 

(8

) 仕掛品及び半成工事

 

(9

) 商品(販売の目的をもって所有する土地、建物その他の不動産(以下「販売用不動産」という。)を含む。以下同じ。)

 

(1

0) 消耗品、消耗工具、器具及び備品その他の貯蔵品で相当価額以上のもの

 

(1

1) 前渡金(原材料、商品等の購入のための前渡金をいう。ただし、破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で一年以内に回収されないことが明らかなものを除く。以下同じ。)

 

(1

2) 前払費用で一年以内に費用となるべきもの(注10)

 

(1

3) 未収収益で一年以内に対価の支払を受けるべきもの(注10)

 

(1

4) 繰延税金資産で、流動資産に属する資産又は流動負債に属する負債に関連するもの、及び特定の資産又は負債に関連しないもののうち、一年以内に取り崩されると認められるもの

 

(1

5) その他の資産で一年以内に現金化できると認められるもの

 



注9> 流動資産又は流動負債と固定資産又は固定負債とを区別する基準について

 

 独立行政法人の通常の業務活動により発生した受取手形、売掛金、前渡金、買掛金、前受金等の債権及び債務は、流動資産又は流動負債に属するものとする。ただし、これらの債権のうち、破産債権、再生債権、更生債権及びこれに準ずる債権で一年以内に回収されないことが明らかなものは、固定資産たる投資その他の資産に属するものとする。

 

 借入金、差入保証金、当該独立行政法人の通常の業務活動以外によって発生した未収金、未払金等の債権及び債務で、一年以内に入金又は支払の期限が到来するものは、流動資産又は流動負債に属するものとし、入金又は支払の期限が一年を超えて到来するものは、投資その他の資産又は固定負債に属するものとする。

 

 現金及び預金は、原則として、流動資産に属するが、預金については、一年以内に期限が到来するものは、流動資産に属するものとし、期限が一年を超えて到来するものは、投資その他の資産に属するものとする。

 

 売買目的有価証券及び一年以内に満期の到来する国債、地方債、政府保証債その他の債券は流動資産に属するものとし、それ以外の有価証券は投資その他の資産に属するものとする。

 

 製品、半製品、原材料、仕掛品等のたな卸資産は、流動資産に属するものとし、独立行政法人がその業務目的を達成するために所有し、かつ、その加工又は販売を予定しない財貨は、固定資産に属するものとする。

 

 なお、固定資産のうち残存耐用年数が一年以下となったものも流動資産とせず固定資産に含ませ、たな卸資産のうち恒常在庫品として保有するもの又は余剰品として長期間にわたって所有するものも固定資産とせず流動資産に含ませるものとする。

 



注10> 経過勘定項目について

 

 前払費用

 

 

(1

) 前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。

(2

) したがって、前払費用として対価を支払った独立行政法人においては、いまだ提供されていない役務の提供を受けるという経済的便益が期待されるものであるため、前払費用は資産に属するものとする。

 

 前受収益

 

 

(1

) 前受収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、いまだ提供していない役務に対し支払を受けた対価をいう。

(2

) したがって、前受収益として対価の支払を受けた独立行政法人においては、いまだ提供していない役務の提供をしなければならず、経済的便益の減少を生じさせるものであるため、前受収益は負債に属するものとする。

 

 未払費用

 

 

(1

) 未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、既に提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないものをいう。

(2

) したがって、既に提供された役務に対していまだ対価の支払を終えていない独立行政法人においては、その対価の支払を行わなければならず、経済的便益の減少を生じさせるものであるため、未払費用は負債に属するものとする。

 

 未収収益

 

 

(1

) 未収収益は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、既に提供した役務に対していまだその対価の支払を受けていないものをいう。

(2

) したがって、既に提供した役務に対していまだ対価の支払を受けていない独立行政法人においては、その対価の支払を受けるという経済的便益が期待されるものであるため、資産に属するものとする。



10 固定資産

 固定資産は、有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産に分類される。(注9)



11 有形固定資産

 次に掲げる資産(ただし、(1)から(7)までに掲げる資産については、独立行政法人の通常の業務活動の用に供するものに限る。)は、有形固定資産に属するものとする。(注11)

 

(1

) 建物及び附属設備

 

(2

) 構築物(土地に定着する土木設備又は工作物をいう。以下同じ。)

 

(3

) 機械及び装置並びにその他の附属設備

 

(4

) 船舶及び水上運搬具

 

(5

) 車両その他の陸上運搬具

 

(6

) 工具、器具及び備品。ただし、耐用年数一年以上のものに限る。

 

(7

) 土地

 

(8

) 建設仮勘定(前各号に掲げる資産で通常の業務活動の用に供することを前提として、建設又は製作途中における当該建設又は製作のために支出した金額及び充当した材料をいう。以下同じ。)

 

(9

) その他の有形資産で流動資産又は投資たる資産に属しないもの

 



注11> 備蓄資産について
 供給途絶や価格高騰等の事態が生じた場合の安定供給を確保する目的で備蓄している資産は、将来売却されることが見込まれる場合であっても有形固定資産に属するものとする。



12 無形固定資産

 特許権、借地権、地上権、商標権、実用新案権、意匠権、鉱業権、漁業権、ソフトウェアその他これらに準ずる資産は、無形固定資産に属するものとする。



13 投資その他の資産

 流動資産、有形固定資産又は無形固定資産に属するもの以外の長期資産は、投資その他の資産に属するものとする。

 次に掲げる資産は、投資その他の資産に属するものとする。

 

(1

) 投資有価証券。ただし、関係会社(「第101 連結の範囲」及び「第112 関連会社等に対する持分法の適用」において定める特定関連会社及び関連会社をいう。以下同じ。)有価証券を除く。

 

(2

) 関係会社株式

 

(3

) その他の関係会社有価証券

 

(4

) 長期貸付金。ただし、役員、職員又は関係法人(「第99 連結財務諸表の作成目的」において定める関係法人をいう。以下同じ。)に対する長期貸付金を除く。

 

(5

) 役員又は職員に対する長期貸付金

 

(6

) 関係法人長期貸付金

 

(7

) 破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権

 

(8

) 長期前払費用。ただし、債券発行差金を除く。

 

(9

) 債券発行差金

 

(1

0) 繰延税金資産。ただし、流動資産として計上されるものを除く。

 

(1

1) 未収財源措置予定額(「第83事後に財源措置が行われる特定の費用に係る会計処理」により計上される未収財源措置予定額をいう。以下同じ。)

 

(1

2) その他



14 負債の定義

 独立行政法人の負債とは、過去の取引又は事象に起因する現在の義務であって、その履行が独立行政法人に対して、将来、サービスの提供又は経済的便益の減少を生じさせるものをいう。

 負債は法律上の債務に限定されるものではない。

 負債は、流動負債及び固定負債に分類される。



15 流動負債

 次に掲げる負債は、流動負債に属するものとする。(注9)

 

(1

) 運営費交付金債務

 

(2

) 預り施設費

 

(3

) 預り補助金等。ただし、一年以内に使用されないと認められるものを除く。

 

(4

) 預り寄附金。ただし、一年以内に使用されないと認められるものを除く。

 

(5

) 短期借入金

 

(6

) 買掛金(独立行政法人の通常の業務活動において発生した未払金をいう。以下同じ。)

 

(7

) 独立行政法人の通常の業務活動に関連して発生する未払金又は預り金で一般の取引慣行として発生後短期間に支払われるもの

 

(8

) 未払費用で一年以内に対価の支払をすべきもの(注10)

 

(9

) 未払法人税等

 

(1

0) 繰延税金負債で、流動資産に属する資産又は流動負債に属する負債に関連するもの、及び特定の資産又は負債に関連しないもののうち、一年以内に取り崩されると認められるもの

 

(1

1) 前受金(受注工事、受注品等に対する前受金をいう。以下同じ。)

 

(1

2) 前受収益で一年以内に収益となるべきもの(注10)

 

(1

3) 引当金(資産に係る引当金及び固定負債に属する引当金を除く。)

 

(1

4) その他の負債で一年以内に支払又は返済されると認められるもの



16 固定負債

 次に掲げる負債は、固定負債に属するものとする。(注9)

 

(1

) 資産見返負債(中期計画の想定の範囲内で、運営費交付金により、又は国若しくは地方公共団体からの補助金等(補助金、負担金、交付金及び補給金等の名称をもって交付されるものであって、相当の反対給付を求められないもの(運営費交付金及び施設費を除く。)をいう。以下同じ。)により補助金等の交付の目的に従い、若しくは寄附金により寄附者の意図に従い若しくは独立行政法人があらかじめ特定した使途に従い償却資産を取得した場合(これらに関し、長期の契約により固定資産を取得する場合であって、当該契約に基づき前払金又は部分払金を支払った場合を含む。)に計上される負債をいう。)

 

(2

) 長期預り補助金等

 

(3

) 長期預り寄附金

 

(4

) (何)債券(事業資金等の調達のため独立行政法人が発行する債券をいう。)

 

(5

) 長期借入金

 

(6

) 繰延税金負債。ただし、流動負債として計上されるものを除く。

 

(7

) 退職給付(独立行政法人の役員及び職員の退職を事由として支払われる退職一時金、厚生年金基金から支払われる年金給付、国家公務員共済年金に係る整理資源及び恩給負担金をいう。以下同じ。)に係る引当金

 

(8

) 退職給付に係る引当金及び資産に係る引当金以外の引当金であって、一年以内に使用されないと認められるもの

 

(9

) その他の負債で流動負債に属しないもの



17 引当金

 将来の支出の増加又は将来の収入の減少であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、当該金額を引当金として流動負債又は固定負債に計上するとともに、当期の負担に帰すべき金額を費用に計上する。ただし、引当金のうち資産に係る引当金の場合は、資産の控除項目として計上する。

 法令、中期計画等に照らして客観的に財源が措置されていると明らかに見込まれる将来の支出については、引当金を計上しない。

 発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金は計上することができない。



18 資本の定義

 独立行政法人の資本とは、独立行政法人の業務を確実に実施するために拠出された財産的基礎及びその業務に関連し発生した剰余金から構成されるものであって、資産から負債を控除した額に相当するものをいう。

 資本は、資本金、資本剰余金及び利益剰余金に分類される。



19 資本金等

 資本金とは、独立行政法人に対する出資を財源とする払込資本に相当する。

 資本剰余金とは、資本金及び利益剰余金以外の資本であって、贈与資本及び評価替資本が含まれる。(注12)(注13)

 利益剰余金とは、独立行政法人の業務に関連し発生した剰余金であって、稼得資本に相当する。

 



注12> 資本剰余金を計上する場合について

 

 独立行政法人が固定資産を取得した場合において、取得原資拠出者の意図や取得資産の内容等を勘案し、独立行政法人の財産的基礎を構成すると認められる場合には、相当額を資本剰余金として計上する。

 

 具体的には、以下のような場合が想定される。

 

 

(1

) 国からの施設費により非償却資産又は「第86 特定の償却資産の減価に係る会計処理」を行うこととされた償却資産を取得した場合

(2

) 国又は地方公共団体からの補助金等により非償却資産を取得した場合

(3

) 中期計画に定める「剰余金の使途」として固定資産を取得した場合

(4

) 中期計画の想定の範囲内で、運営費交付金により非償却資産を取得した場合

(5

) 中期計画の想定の範囲内で、寄附金により、寄附者の意図に従い又は独立行政法人があらかじめ特定した使途に従い、非償却資産を取得した場合

 

 なお、上記2(2)、(4)及び(5)の場合において償却資産を取得した場合には、相当額を資産見返負債として計上する。

 



注13> 民間出えん金について

 

 中期計画等において、独立行政法人の財産的基礎に充てる目的で民間からの出えんを募ることが明らかにされている場合であって、当該中期計画等に従って出えんを募った場合には、当該民間出えん金は、独立行政法人の財産的基礎を構成すると認められることから、資本剰余金として計上する。

 

 資本剰余金として計上した民間出えん金は、出えんに係る事業が終了した場合等、出えんを募った際の条件に基づき出えん者に払い戻す場合を除き、取り崩すことはできない。



20 費用の定義

 独立行政法人の費用とは、サービスの提供、財貨の引渡又は生産その他の独立行政法人の業務に関連し、その資産の減少又は負債の増加(又は両者の組合せ)をもたらす経済的便益の減少であって、独立行政法人の財産的基礎を減少させる資本取引によってもたらされるものを除くものをいう。(注14)

 



注14> 独立行政法人の費用の定義から除かれる事例について
 資本取引として独立行政法人の費用から除外されるものの例は、以下のとおり。

 

 

(1

) 「第86 特定の償却資産の減価に係る会計処理」を行うこととされた償却資産の減価償却相当額

(2

) 上記(1)の償却資産の売却、交換又は除却等に直接起因する資産の減少又は負債の増加(又は両者の組合せ)



21 収益の定義
 独立行政法人の収益とは、サービスの提供、財貨の引渡又は生産その他の独立行政法人の業務に関連し、その資産の増加又は負債の減少(又は両者の組合せ)をもたらす経済的便益の増加であって、独立行政法人の財産的基礎を増加させる資本取引によってもたらされるものを除くものをいう。(注15)

 



注15> 独立行政法人の収益の定義から除かれる事例について
 資本取引として独立行政法人の収益から除外されるものの例として、「第86 特定の償却資産の減価に係る会計処理」を行うこととされた償却資産の売却、交換又は除却等に直接起因する資産の増加又は負債の減少(又は両者の組合せ)がある。



22 キャッシュ・フロー計算書の資金

 独立行政法人のキャッシュ・フロー計算書が対象とする資金の範囲は、手元現金及び要求払預金とする。(注16)(注17)

 



注16> 貸借対照表との関連性について
 キャッシュ・フロー計算書の資金の期末残高と貸借対照表上の科目との関連性については注記するものとする。

 



注17> 要求払預金について
 要求払預金には、例えば、当座預金、普通預金、通知預金及びこれらの預金に相当する郵便貯金が含まれる。



23 行政サービス実施コストの定義

 独立行政法人の行政サービス実施コストとは、独立行政法人の業務運営に関して、国民の負担に帰せられるコストをいう。



24 行政サービス実施コスト

 次に掲げるコストは、行政サービス実施コストに属するものとする。

 

(1

) 独立行政法人の損益計算上の費用から運営費交付金及び国又は地方公共団体からの補助金等に基づく収益以外の収益を控除した額(注18)

 

(2

) 「第86 特定の償却資産に係る減価の会計処理」を行うこととされた償却資産の減価償却相当額

 

(3

) 「第87 退職給付に係る会計処理」により、引当金を計上しないこととされた場合の退職給付の増加見積額

 

(4

) 国又は地方公共団体の資産を利用することから生ずる機会費用(注19)

 

 

 国又は地方公共団体の財産の無償又は減額された使用料による貸借取引から生ずる機会費用

 政府出資又は地方公共団体出資等から生ずる機会費用

 国又は地方公共団体からの無利子又は通常よりも有利な条件による融資取引から生ずる機会費用

 



注18 >

 


行政サービス実施コスト計算における損益計算上の費用及び控除すべき収益の範囲について

 

 損益計算上の費用には、納付すべき法人税等の額に法人税等調整額を加減した額及び損益計算書上の費用に計上された国庫納付額も含まれる。

 

 法令に基づく引当金等は、独立行政法人における収入と当該収入が充てられるべき支出が異なる事業年度となるため、当該収入と支出を対応させるための会計処理であることから、当該引当金等への繰入に係る費用は行政サービス実施コストには含まれない。

 

 行政サービス実施コストとは、独立行政法人の業務運営に関して、国民の負担に帰せられるコストであることから、損益計算上の費用から控除すべき収益は、国民負担に帰せられない自己収入に限られる必要があり、例えば、次のような収益は控除すべき収益には含まれない。

 

 

(1

) 特殊法人又は他の独立行政法人等から交付される補助金又は助成金等に係る収益のうち、当該交付法人が国又は地方公共団体から交付された補助金等を財源とするもの

(2

) 国からの現物出資が、消費税の課税仕入とみなされることによって生じた還付消費税に係る収益

(3

) 法令に基づく引当金等の戻入収益

(4

) 財源措置予定額収益

 



注19> 機会費用について

 

 国又は地方公共団体の財産の減額された使用料による貸借とは、貸主である国又は地方公共団体が法令の規定に従い減額して貸し付けている場合の当該貸借をいう。

 

 国又は地方公共団体からの有利な条件による融資とは、貸主である国又は地方公共団体が政策的に低利融資を行っている場合の当該融資をいう。