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独立行政法人会計基準の改訂について

平成15年3月3日

独立行政法人会計基準研究会

財政制度等審議会財政制度

分科会法制・公会計部会

公企業会計小委員会





 会計基準改訂の経緯

 独立行政法人に適用される会計基準は、「中央省庁等改革の推進に関する方針」(平成11年4月27日中央省庁等改革推進本部決定)を受けて開催された「独立行政法人会計基準研究会」において、平成12年2月に「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」として策定された。他方、「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月19日閣議決定)に基づき、特殊法人等から独立行政法人化するものがあることを踏まえ、同計画において「国の予算措置の手法の多様化に伴い、『独立行政法人会計基準』について所要の見直しを行う。」との決定がなされた。
 このため、独立行政法人会計基準の改訂作業を行うこととし、それに際しては、総務省が開催している独立行政法人会計基準研究会と、従来、「特殊法人等会計処理基準」や「特殊法人等に係る行政コスト計算書作成指針」の策定に携わってきた財務省に設置されている財政制度等審議会財政制度分科会法制・公会計部会公企業会計小委員会との連携を図りつつ、両者の共同ワーキング・チーム(以下「共同ワーキング・チーム」という。)を立ち上げ、検討を行うこととした。
 共同ワーキング・チームは会計、財政等の学識経験者、実務者を中心に構成されており、平成14年7月25日の初会合から平成15年1月14日まで、週1~2回のペースで合計31回の検討会を開催した。その間、昨年10月には中間論点整理を取りまとめ、議論の方向性について、独立行政法人会計基準研究会及び財政制度等審議会財政制度分科会法制・公会計部会公企業会計小委員会に報告したところであるが、その後更に検討を進め、「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」の改訂案として取りまとめ、独立行政法人会計基準研究会において平成15年2月28日に、財政制度等審議会財政制度分科会法制・公会計部会公企業会計小委員会において平成15年3月3日にそれぞれ了承を得た。



 会計基準改訂の必要性
 共同ワーキング・チームでは、まず、「特殊法人等整理合理化計画」に基づき、独立行政法人化が予定される特殊法人等の業務及び会計処理の実態を通じ、新たに独立行政法人となる法人の行うこととなる業務の内容の把握に努めたところ、公共事業を実施する法人、保険・共済事業のために多額の資金運用を行っている法人、研究開発資金を供給する目的で民間企業等に出資を行う法人、国の財源措置に依存せず独立採算で業務を実施する法人等、多種多様な業務の実施が予定されているほか、国から多様な財源措置の方法が予定されていることを認識するに至った。現行の「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」(以下「基準及び注解」という。)は、国の機関から独立行政法人に移行し、主に研究開発や検査等の業務を行う独立行政法人を念頭に策定されているため、国からの多様な財源措置が採られることを前提としておらず、また、貸付金等の金融資産に対する貸倒引当金の計上基準が明示されていない、連結会計の基準が導入されていない等により、財務報告目的が十分には達せられない場合も生じうることが確認された。
 現行の基準及び注解は、平成13年4月に設立された独立行政法人から適用され、これに準拠した最初の決算財務諸表が作成されたところであり、運用面において定着した状況ではないが、上述のように、今後設立が予定されている独立行政法人においては多種多様な業務が実施されることとなること、及び独立行政法人制度の今後の発展も視野に入れ、全ての独立行政法人の会計処理に必要な会計基準を整備する必要があるとの観点から、基準及び注解の改訂の検討を行った。



 会計基準改訂に対する基本的認識
 共同ワーキング・チームは、独立行政法人の多種多様な会計取引及び事象に対応するため、金融商品に係る会計基準、退職給付に係る会計基準等の企業会計の最新の基準の考え方を取り込むとともに、連結情報についても、企業会計の連結財務諸表原則に準拠した基準を整備する等、包括的、網羅的な会計基準に改訂する必要があると認識する。
 他方、独立行政法人は公共的な性格を有し、利益の獲得を本来の目的とはしておらず、営利企業とは制度の前提や財務構造が異なっており、費用と収益の対応関係も営利企業のそれとは基本的に異なること、その意思決定のみでは完結し得ない独立行政法人の活動については、独立行政法人の業績を評価する手段としての損益計算に含めることが適当でない場合があること等が、現行の基準及び注解を策定した「独立行政法人会計基準研究会」より指摘されているところであり、共同ワーキング・チームの認識も同様である。
 改訂される基準及び注解は、多種多様な業務を行う独立行政法人の全てに適用可能な網羅的な会計基準とする必要があり、また、企業会計の最新の基準の考え方を取り入れ、これに公的な主体としての特性に基づく理論的な修正を加えることにより、独立行政法人に負託された業務及び責任の範囲内でその財政状態及び運営状況を適切に表示する会計基準とする必要があると認識する。



 会計基準改訂の主な内容

 共同ワーキング・チームにおいては、上記のような基本的認識に立ち、かつ独立行政法人化が予定される特殊法人等の会計処理の現状を踏まえ、包括的かつ詳細な検討を行い、現行の基準及び注解の改訂を行った。
 改訂の主な内容は、まず、先行の独立行政法人では想定されなかった会計取引及び事象に対応するため、有価証券の評価基準及び評価方法、販売用不動産の評価基準及び評価方法、貸倒引当金の計上方法、外貨建取引の会計処理、退職給付引当金の計上方法等について、企業会計の最新の基準の考え方を可能な限り取り込むとともに、国からの財源措置の多様化等を踏まえ、補助金等に係る会計処理、国の財源措置が事後に行われる場合の会計処理、法令により計上が要請されている引当金又は準備金に係る会計処理等の独立行政法人固有の会計処理を新たに整備する等、公的な主体である独立行政法人の特性にも配慮した会計基準に改訂することとした。
 また、現行の基準及び注解は、実際に運用されて一年程度ではあるが、第一期の決算を踏まえ、実務上その解釈に疑義を生じた会計処理等についても、注解を加える等の見直しを行った。
 更に、民間企業等に対する出資を業務として実施する独立行政法人が設立されることから、独立行政法人とその出資先の会社等を公的な資金が供給されている一つの会計主体として捉え、公的な主体である独立行政法人の説明責任を果たす観点から、連結財務諸表に関する基準を新たに設定することとした。
 なお、独立行政法人が行う出資は主として政策目的の資金供給であり、独立行政法人と出資先企業との関係は民間企業における親子会社の関係とは基本的に異なっている。このため、独立行政法人の評価に資する財務諸表は個別財務諸表とし、連結財務諸表は、公的な主体としての説明責任の観点から作成される財務諸表と位置付けることとした。このため、独立行政法人の連結財務諸表は企業会計のそれとはその性格を異にしている。



 改訂会計基準の性格と取扱い

 改訂後の基準及び注解は、現行の基準及び注解と同様に、独立行政法人がその会計を処理するに当たって従わなければならない基準であるとともに、会計監査人が独立行政法人の財務諸表等の監査をする場合において依拠しなければならない基準であって、独立行政法人の会計に関する認識、測定、表示及び開示の基準を定めるものである。
 改訂後の基準及び注解は、一般的かつ標準的な会計基準を示すものであり、独立行政法人は他に合理的な理由がない限り基準及び注解の定めるところに従わなければならないが、そこに定められていない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うこととなるほか、基準及び注解の趣旨を踏まえる限りにおいては、主務省令において個別の独立行政法人の特殊性に基づく会計処理を排除するものではないことも現行の基準及び注解と同様である。
 なお、主務省令において個別の独立行政法人の特殊性に基づく会計処理を定める場合には、基準及び注解の趣旨を十分に踏まえた慎重な検討が行われることを特に希望するものである。



 今後の発展について

 独立行政法人会計基準は、今回の改訂により、企業会計の最新の基準と同程度の会計処理基準を網羅した基準となり、現時点で想定し得る全ての独立行政法人の会計取引及び事象に対応可能な会計基準であると考える。
 他方、公的な主体の会計基準については、近年その研究が活発に行われるようになっているほか、企業会計についても、会計基準の国際的調和を図るべく議論されており、平成14年8月には固定資産の減損に係る会計基準が公表されたところである。共同ワーキング・チームは、このような公的な主体の会計基準に関する研究や企業会計の動向を踏まえ、独立行政法人会計に関する理論及び実務が今後より一層進展することを期待するとともに、基準及び注解は今後とも充実改善が図られる必要があると認識する。



 適用時期等

 改訂後の基準及び注解は、今後新たに設立される独立行政法人を念頭に策定したものであるが、先行して設立されている独立行政法人に対しても適用される。先行して設立された独立行政法人については、平成15年4月1日以降開始する事業年度から適用することが適切である。