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特別会計における新たな財務書類の作成に係る中間取りまとめ(試作基準)平成14年10月_2/3

第3章 業務費用・財源計算書



.業務費用・財源計算書の作成目的等

 


(1)


 作成目的
 企業会計においては、当期の経営成績及び処分の対象とされる利益について、その額及び発生原因を明らかにすること等を目的として損益計算書が作成されている。
 これに対して、特別会計は営利を目的としておらず、業務費用とその財源との間に、企業会計でいう費用と収益の対応関係のような関係がないため、特別会計の損益を明らかにするものとして損益計算書を作成することは適当ではない。
 しかし、特別会計の業務実施に伴い発生する費用を発生主義により認識し、その総額とこれに対する財源を明らかにする必要があると考えられることから、このための計算書として、業務費用・財源計算書を作成する。

 


(2)


 作成方法
 国の会計においては、現金収支を重視した財政統制が行われており、歳入歳出予算に基づいて行われた行政活動の実績を示すものとして、歳入歳出決算が作成されている。
 業務費用・財源計算書は、現金収支の記録である歳入歳出決算の計数から、施設整備費のうち資産計上される部分を控除し、固定資産等売却収入のうち簿価相当分を控除するほか、発生主義により把握する経過勘定項目、減価償却費及び引当金等の非資金取引を修正すること等により作成する。

 


(3)


 業務費用・財源計算書の考え方
 業務費用・財源計算書は、当該年度に発生した業務費用の総額とその財源を計算書の形式で示すものである。
 また、特別会計においては、財源は一体となって業務費用に充てられるが、その財源の性格に従い「対価見合収入等」、「目的税収入」及び「他会計(勘定)からの受入」に区分し、本年度受入財源として計上する。
 なお、業務費用と財源との間には、企業会計でいう費用と収益の対応関係のような関係は存在しないこと等から、この差額は、当該年度に発生した業務費用から、本年度に受入れられた財源を差し引いたことにより計算された、計算上の概念として位置付けられる。



.業務費用・財源計算書上の計上項目

 


(1)


 業務費用
 業務費用は、特別会計における費用としての当該年度の支出済額を基礎とし、それに発生主義に基づく修正を行うことにより、当該年度に帰属すべき費用額を計上する。

 


(2)


 本年度受入財源について
 特別会計の収入としては、手数料等の自己収入、目的税収入及び他会計からの受入等様々な形態がある。業務費用・財源計算書においては、以下により計上する。なお、手数料や運用益等の収入等については、発生主義に基づく経過勘定項目の修正を行う。

   


1


 他会計からの受入金の取扱い
 次に掲げる他会計からの受入金以外については、本年度受入財源として、業務費用・財源計算書に計上する。

     


i


 特別会計法の規定により「資本」等として整理される受入金

     


ii


 いわゆる特別の会計間の繰入法に基づく受入金で、利益が生じた場合に繰入額に相当する額を繰り戻すことが規定されているもの(返済条件付受入金)

     


iii


 貸付金等の原資としての受入金

   


2


 目的税収入の取扱い
 目的税は、特別会計の歳出の多寡とは関係なく、法令の規定に従って収納されることから、その収納された全額を本年度受入財源として計上する。

   


3


 印紙売捌収入の取扱い
 国の各種手数料等の納付については、印紙をもって納付することが認められており、これらの印紙売捌収入は特別会計の業務の対価に相当する。
 印紙が売捌かれた時点で収入として計上されることから、印紙による収入がなされた年度と、当該印紙収入に見合う業務実施年度とは必ずしも一致しないが、この対応関係を把握することは困難なため、当該年度における印紙売捌による収入を本年度受入財源として計上する。

   


4


 資金等からの受入
 特別会計の中には、歳入歳出決算上の剰余等を財政法第44条に規定する資金として保有し、決算上の不足があった場合に当該資金から補足し、また、剰余があった場合には、資金に積み立てることが特別会計法で定められている。
 特別会計内部におかれた資金からの受入は、年度の歳入不足を補うものであるが、業務費用・財源計算書においては、当該年度における実質的な歳入を財源として示すことが適切であると考えられることから、これを本年度受入財源としては整理しない。
 ただし、資金から受入又は資金への繰入がなされていることを明らかにするため、本年度業務費用・差額の下において、「資金(積立金)からの受入」、「資金(積立金)への繰入」の項目を設けて表示する。



.業務費用・財源計算書の標準的な様式
 業務費用・財源計算書の標準的な様式は次のとおりとする。

業務費用・財源計算書

 業

務費用

××××

○○収入に個別に対応する原価

×××

人件費(注1)

×××

退職給付引当金増加額

×××

補助金等

×××

施設整備費(注2)

×××

減価償却費

×××

借入金利子

×××

その他支出

×××

  :

×××


II


 本


年度受入財源

××××

価見合収入等

××××

○○収入

×××

手数料収入

×××

運用益

×××

その他収入

×××

他会計(勘定)からの受入(注3)

×××


 差引

××××




的税収入

××××

目的税収入(直入分)

×××

他会計(勘定)からの受入(注4)

×××


 差引

××××




会計(勘定)からの受入

××××

実体法令に基づく受入(○○財源受入)

×××

その他受入(○○財源受入)

×××


本年度業務費用・財源差額


××××

資金(積立金)からの受入

××××

資金(積立金)への繰入

△ ××××


前年度末業務費用・財源差額累計


××××

本年度末業務費用・財源差額累計

××××


(注1)人件費には、共済組合負担金を含む。
(注2)施設整備費には、資産計上されるものは含まない。
(注3)業務対価相当分を計上。
(注4)目的税収相当分及び特定財源を計上。



第4章 区分別収支計算書



.区分別収支計算書の作成目的等

 


(1)


 作成目的
 歳入歳出予算の執行実績を示すものとして歳入歳出決算書が作成されているが、歳入歳出予算(決算)の項目の区分は予算統制の観点に重点が置かれており、特別会計における財政資金の流れを活動別に区分して示すものとはなっていない。
 このため、特別会計の収支を業務、施設整備及び財務の区分別に示し、特別会計における財政資金の流れを分かりやすく示すという観点から区分別収支計算書を作成する。

 


(2)


 作成方法
 区分別収支計算書は、歳入歳出予算の執行実績をその内容別に区分して示すものであることから、歳入歳出決算の計数を業務収支、施設整備収支及び財務収支の3区分に並び替えることにより作成する。



.資金区分の内容
 区分別収支計算書における区分の内容は、次のとおりとする。

 
(1)

 業務収支
 本区分では、特別会計の業務に係る収支を記載する。
 なお、業務との関連性が低いものについては、本区分の「小計」の下に記載する。
 
(2)

 施設整備収支
 本区分では、特別会計の業務を実施するために必要とする施設整備に係る支出(資産計上されるものに限る。)及び固定資産の処分に係る収入等の収支を記載する。
 
(3)

 財務収支
 本区分では、特別会計における借入金及び債券発行による資金調達及びこれらの返済に係る収支を記載する。



.区分別収支計算書の標準的な様式
 区分別収支計算書の標準的な様式は次のとおりとする。

区分別収支計算書

務収支

 

 

○業務支出

 ××××

人件費

×××

施設整備費(注1)

×××

補助金等

×××

その他業務支出

×××

   :

×××

○業務対価見合収入

 

××××

的税収入

 

××××

目的税収入(直入分)

 

×××

他会計(勘定)からの受入(注2)

 

×××

他会計(勘定)からの受入

 

××××

他会計(勘定)への繰入

 ××××

前年度剰余金受入

 

××××

資金(積立金)からの受入(注3)

 

 ××××

資金(積立金)への繰入(注3)

××××

 

 

 小計

 

××××

利息及び配当の受取額

 

××××

利息の支払額

××××

その他収入

 

××××

その他支出

××××

務収支

 

××××


II


 施



整備収支

 

 

施設整備による支出(注4)

×××

資産売払収入

 

×××

他会計(勘定)からの受入(注5)

 

×××

整備収支

 

××××


III



務収支

 

 

長期借入れによる収入

 

×××

長期借入金の返済による支出

×××

政府短期証券の発行による収入

 

×××

政府短期証券の償還による支出

×××

他会計(勘定)からの受入(注6)

 

×××

務収支

 

××××


本年


度増加額

 


××××

金(積立金)からの受入(注7)

 

××××

金(積立金)への繰入(注7)

××××

年度歳入繰入

 

××××


(注1)施設整備に関わる支出のうち、資産計上されるものを除く。
(注2)目的税収入相当分を計上。
(注3)予算上措置されたものを計上。
(注4)施設整備に関わる支出のうち、資産計上されるものを計上する。
(注5)施設整備費相当分を計上。
(注6)政府短期証券の償還財源相当分を計上。
(注7)決算処理によるものを計上。





5章 注記

 財務書類を判断する上で重要な事項については、注記において補完的な情報を提供する。

 


(1)


 重要な会計方針
 財務書類作成のために採用している会計処理の原則及び手続並びに表示方法その他財務書類作成のための基本となる以下に掲げる事項について記載する。

   


1


 外貨建て資産・負債の換算方法

   


2


 有価証券の評価基準及び評価方法

   


3


 たな卸資産の評価基準及び評価方法

   


4


 有形固定資産及び無形固定資産の減価償却の方法

   


5


 引当金(恩給給付費及び整理資源に係る退職給付引当金を除く。)の計上基準、計算方法

   


6


 公的年金について、その積立方法、積立金の差額の発生原因の説明、過去期間に対応した将来給付現価額、会計処理、財源の見込み、算出根拠及びその他参考となる事項

   


7


 責任準備金の計上の考え方、計上方法、計算根拠及びその他参考となる事項

   


8


 出納整理期間について、出納整理期間が設けられている旨及び出納整理期間中の現金の受払い等を終了した後の計数をもって会計年度末の計数としている旨

   


9


 その他財務書類作成のための基本となる重要な事項

 


(2)


 特別会計固有の表示科目の内容
 特別会計法等に基づき特別会計固有の表示科目を使用した場合等には、その表示科目の内容、根拠法令等について記載する。
 特別会計固有の表示科目としては、特別会計設立の際に廃止特別会計から資産を承継した場合の基金等や財政法第44条に規定する資金等がある。
 なお、財政法第44条に規定する資金については、見合資産の内容を記載する。

 


(3)


 重要な後発事象
 会計年度終了後、財務書類を作成する日までに発生した事象で、翌年度以降の特別会計の財務内容等に影響を及ぼす後発事象のうち、以下に掲げるものを記載する。

   


1


 特別会計の主要な業務の改廃

   


2


 国からの予算措置の重大な変更

   


3


 その他重要な後発事象

 


(4)


 偶発債務
 会計年度末においては現実の債務ではないが、将来、一定の条件が成立すること等により発生する可能性のある債務のうち、以下に掲げるものを記載する。

   


1


 保証債務及び損失補償債務負担の状況

   


2


 係争中の訴訟等で損害賠償等の請求を受けているもの

   


3


 その他主要な偶発債務

 


(5)


 国庫債務負担行為による負担額
 国庫債務負担行為については、将来的に支払義務を負うことになるため、国庫債務負担行為による繰越債務負担額について記載する。

 


(6)


 歳出予算の繰越等
 歳出権の繰越に伴い、繰越額に見合う財源の繰越が行われた場合には、これらの財源の額及び繰越額を調整した後の業務費用・財源差額の金額等を記載する。

   


1


 前年度の繰越額及び繰越に見合って受入れられた財源の額

   


2


 本年度の繰越額及び繰越に見合って受入れられた財源の額

   


3


 繰越の調整(本年度業務費用・財源差額から、本年度の繰越見合財源を控除し、前年度の繰越見合財源の加算)を行った後の業務費用・財源差額の金額

 


(7)


 重要な会計方針の変更
 重要な会計方針を変更した場合、以下に掲げる事項を記載する。

   


1


 会計処理の原則又は手続を変更した場合には、その旨、理由及び重要な会計方針の変更が財務諸表に与えている影響の内容

   


2


 表示方法を変更した場合には、その内容



第6章 附属明細書



.貸借対照表項目に関する明細
 貸借対照表の内容を補足するため、以下の事項を明らかにした附属明細書を作成する。

 


1


 有価証券の明細
 満期保有目的有価証券、満期保有目的以外の有価証券及び市場価格のない有価証券について、それぞれ有価証券の種類ごとに増減の明細等を記載する。また、市場価格のない株式については純資産額等の明細を記載する。

   
満期保有目的有価証券についての明細(様式例)
種類前年度末残高本年度増加額本年度減少額償却原価法に基づく増減額評価差額(本年度発生分)本年度末残高
 ・・・・            
 ・・・・            
   
   

満期保有目的以外の有価証券についての明細(様式例)
種類前年度末残高評価差額の戻入本年度増加額本年度減少額評価差額(本年度発生分)本年度末残高
 ・・・・            
 ・・・・            
   
   

市場価格のない株式についての明細(様式例)
種類前年度末残高本年度増加額本年度減少額評価差額(本年度発生分)本年度末残高
 ・・・・          
 ・・・・          
   
   

市場価格のない株式についての純資産額等の明細(様式例)
出資先貸借
対照表
計上額
資産
(A)
負債
(B)
純資
産額
(C=A-B)
資本金
(D)
特別会計からの出資額
(E)
出資
割合
(F=E/D)%
純資産額による算出額(G=C×F)使用
財務
諸表
 ・・・                 行政コスト計算書
 ・・・                 法定財務諸表
 


2


 たな卸資産の明細
 「たな卸資産」の種類ごとに増減の明細を記載する。

   
たな卸資産の明細(様式例)
種類前年度末残高本年度増加額本年度減少額評価差額(本年度発生分)本年度末残高
 ・・・          
 ・・・          
 


3


 固定資産の明細
 「有形固定資産」及び「無形固定資産」の種類ごとに増減の明細を記載する。

   
固定資産の明細(様式例)
区分前年度末残高本年度増加額本年度減少額本年度減価償却額評価差額(本年度発生分)本年度末残高
(有形固定資産)            
 ・・・            
(無形固定資産)            
   

(注

1)「区分」欄は、国有財産法施行細則別表1に掲げる国有財産の区分を参考に区分する。
(注 2)評価差額は、国有財産台帳の価格改定が行われた年度における評価差額を記載する。
 


4


 貸付金の明細
 主な貸付先ごとに増減の明細を記載する。

   
貸付金の明細(様式例)
貸付先前年度末残高本年度増加額本年度減少額本年度末残高
 ・・・        
 ・・・        
 


5


 その他債権の明細
 債権の種類ごとに主な相手先及び本年度末残高を記載する。

   
その他の債権の明細(様式例)
債権の種類相手先本年度末残高
 ・・・     
 ・・・     
 


6


 出資の明細
 出資先ごとに純資産額等の明細を記載する。

   
出資の明細(様式例)
出資先貸借
対照表
計上額
資産
(A)
負債
(B)
純資産額
(C=A-B)
資本金
(D)
特別会計からの出資額
(E)
出資割合
(F=E/D)%
純資産額による算出額
(G=C×F)
使用
財務
諸表
 ・・・                 行政コスト計算書
 ・・・                 法定財務諸表
 


7


 借入金の明細
 主な借入先ごとに増減の明細を記載する。

   
借入金の明細(様式例)
借入先前年度末残高本年度増加額本年度減少額本年度末残高
 ・・・        
 ・・・        
 


8


 政府短期証券の明細
 政府短期証券の種類ごとに増減の明細等を記載する。

   
政府短期証券の明細(様式例)
種類前年度末残高本年度増加額本年度減少額本年度末残高債券発行差金差引残高
 ・・・            
 ・・・            
 


9


 その他の債務の明細
 債務の種類ごとに主な相手先及び本年度末残高を記載する。

   
その他債務の明細(様式例)
債務の種類相手先本年度末残高
     
     
 


10


 資産評価差額の明細
 区分ごとに資産評価差額の増減の明細等を記載する。

   
資産評価差額の明細(様式例)
区分前年度末残高本年度増加額本年度減少額本年度末残高評価差額の発生原因
外貨建て資産及び負債         為替換算
満期保有目的有価証券         強制評価減
満期保有目的以外の有価証券         時価評価
市場価格のない有価証券         強制評価減
たな卸資産         強制評価減
土地         価格改定
建物         価格改定
 ・・・          
出資(市場価格があるもの)         時価評価
出資(市場価格のないもの)         強制評価減
         
   

(注

)価格改定が行われる国有財産(公園及び広場以外の公共用財産を除く。)については、「本年度増加額」欄及び「本年度減少額」欄に国有財産台帳の価格改定に伴う評価差額の増減を記載する。
 


11


 その他重要な科目の明細
 上記に示した以外の科目で、金額的に重要性がある科目又は特別会計に特有の科目等について明細を作成し、その科目の内訳又は増減を記載する。



.業務費用・財源計算書の内容に関する明細
 業務費用・財源計算書の内容を補足するため、以下の事項を明らかにした附属明細書を作成する。

 


1


 補助金等の明細
 特別会計から支出される補助金等について、主な相手先ごとに、金額、支出目的及び補助金、負担金等の補助金等の区分の明細を作成する。なお、連結対象となる相手先については、その旨を記載する。

   
補助金等の明細(様式例)
相手先金額補助金等の区分支出目的連結対象の有無
 ・・・   補助金    
 ・・・   負担金    
 ・・・        
 


2


 工事原価又は製造原価の明細
 工事原価又は製造原価を計算している特別会計においては、工事原価明細書又は製造原価明細書を作成し、事業費、人件費及び旅費等の内訳を明らかにする。