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特別会計における新たな財務書類の作成に係る中間取りまとめ(試作基準)平成14年10月_3/3

第7章 参考情報



.特別会計の業務等についての情報
 特別会計が行っている業務、当該特別会計における勘定間の財政資金の流れや他会計及び特殊法人等との間の財政資金の流れ及び根拠法令等について記載する。なお、特別会計内に勘定区分が設けられている場合には、勘定単位で記載する。



.機会費用について
 業務費用・財源計算書の業務費用としては認識されていないが、特別会計が業務を実施する上での国民の負担と考えられるコスト(以下「機会費用」という。)を記載する。
 機会費用として算定するものは以下に掲げるものとし、会計年度末残高に、会計年度末における10年もの国債の利回りを乗じることにより算出することとする。

 


1


 特別会計法の規定により「基金」等として整理されているものに係る機会費用


2


 いわゆる特別の会計間の繰入法に基づく返済条件付受入金に係る機会費用


3


 貸付金の原資等としての受入金に係る機会費用



.連結財務書類について
 特別会計から、特殊法人、認可法人及び独立行政法人(以下「特殊法人等」という。)に対して出資がなされている。しかし、民間企業の行っている出資とは異なり、その内容は事業資金の供給である等、特殊法人等を支配する目的で行われているものではなく、また、当該出資には議決権がない。さらに、出資の特殊な形態として、公社の民営化によって特別会計が保有する株式等がある。
 このように、特殊法人等に対する出資をもって民間企業における支配従属関係があるとは言い難く、企業会計と同様に出資で連結の判断を行うことは適当でない。他方、特別会計と業務の関連がある特殊法人等に対しては、特別会計から補助金等が支出されており、これらの財政資金が支出されている特殊法人等を連結することにより、特別会計の経理している業務の全体像を示すことには意義があると考えられるため、これらの法人を有する特別会計は、連結財務書類を作成する。
 なお、連結財務書類については、次章に示すところによる。



第8章 連結財務書類



.連結財務書類の作成目的
 特別会計が経理している業務と関連性があり、政策的に一体性がある特殊法人等を連結することによって、特別会計の経理する事業及びこれに関連する特殊法人等の事業を合算したところの財政状況を開示することを目的として連結財務書類を作成する。



.連結財務書類の位置付け
 特別会計の財務諸表は決算に基づき作成されており、新たな財務書類においても決算に基づく財務書類を基本とすべきと考えられること及び連結に際しては特別会計と特殊法人等との会計処理統一化の困難性等の技術的問題が存在していること等から、連結財務書類は参考情報として作成する。



.連結財務書類の体系等
 連結財務書類の体系は、連結貸借対照表、連結業務費用・財源計算書及び連結区分別収支計算書とする。
 連結貸借対照表においては、特別会計の経理する業務及びこれに関連する特殊法人等の業務を合算したところの資産及び負債の状況を明らかにするものである。
 連結業務費用・財源計算書においては、特別会計の経理する業務及びこれに関連する特殊法人等の業務に関し、当該年度に発生した業務費用の総額とその財源を明らかにするものである。
 連結区分別収支計算書においては、特別会計の歳入歳出決算と特殊法人等の収入支出決算を合算したところの区分別の収支の状況を明らかにするものである。



.連結の対象について
 特別会計と業務関連性があり、かつ、政策的一体性がある特殊法人等を連結対象とする。なお、連結を行った特殊法人等の法人名を注記する。

 


(1)


 業務関連性について
 特別会計から特殊法人等に対して出資や補助金等の財政支出が相当程度ある場合には、業務関連性があるものとする(ただし、政策的な投資を業務としている特別会計を除く。)。
 「出資や補助金等の財政支出が相当程度ある場合」とは以下のとおりとする。

   



 特別会計から特殊法人等に対する出資が特殊法人等の出資全体の50%以上である場合

   



 特別会計から特殊法人等に対する出資が特殊法人等の出資全体の20%以上であり、かつ、特別会計からの補助金等の財政支出が、特殊法人等の当該年度の決算上の総収入の20%以上である場合


 


 また、「出資や補助金等の財政支出が相当程度ある場合」に該当しないが、特別会計と業務関連性があると考えられる特殊法人等は連結対象とする。
 なお、特別会計から特殊法人等に対する出資金の額が僅少な場合(特別会計からの出資累計額が100万円未満)には連結の対象とはしない。また、民営化によって政府に無償譲渡された株式等は、一般会計から無償で所管換えされたものであり、特別会計と特殊法人等との業務関連性はないと考えられることから、連結の対象とはしない。

 


(2)


 政策的一体性について
 特別会計の管理大臣と特殊法人等の主務大臣が異なる場合には、その特別会計と特殊法人等とは政策的に一体性があるとは言い難く、特別会計の管理大臣と特殊法人等の主務大臣が同一の場合に特別会計と特殊法人等との間に政策的一体性があると考えられる。



.連結財務書類の作成の考え方等

 


(1)


 使用する財務諸類
 特別会計と特殊法人等にそれぞれ適用される会計処理等は、その会計主体としての特性に応じたものとなっていることから、その修正を完全に行うことは困難である。このため、出納整理期間の取引の修正及び特殊法人等に特有の会計処理の修正を行った上で、既存の財務書類を活用して連結財務書類を作成する。
 また、行政コスト計算書を作成している特殊法人及び認可法人においては、行政コスト計算書の添付資料として作成された財務書類を活用して連結財務書類を作成する。
 なお、特殊法人及び認可法人が作成する行政コスト計算書の添付資料としての連結財務諸表は業務関連性ではなく支配従属関係によって特殊法人等の子会社が連結されており、特殊法人等の子会社を特別会計の子会社とみなすことは連結財務書類の作成目的とは合致しないことから、当該法人の個別財務書類を活用する。

 


(2)


 連結の方法
 特殊法人等に対して一定額以上の出資又は財政支出がある場合に業務関連性があるとみなして連結を行うことから、比例連結ではなく、通常の企業会計で行われているいわゆる完全連結により連結を行う等、企業会計における連結財務諸表の作成の手法を準用して作成する。
 また、特殊法人等が複数の勘定区分を有し、業務関連性を勘定単位で区分できる場合には、勘定単位で連結の判断を行い、特殊法人等の勘定と連結を行う。ただし、勘定を経由して他の勘定に財政資金が繰り入れられている場合には、当該他の勘定と連結を行うものとする。

 


(3)


 出納整理期間中の取引について
 新たな財務書類においては、出納整理期間が設けられている特別会計では、当該期間における現金の受払も含めたところで財務書類を作成することとしている。これに対して、特殊法人等においては出納整理期間が設けられていない。
 出納整理期間中に特別会計と特殊法人等との間で、補助金等の精算が行われる場合等があることから、連結に際しては、当該期間中の現金の受払いについて、可能な限り修正を行う。

 


(4)


 特殊法人等に特有の会計処理の取扱い
 特殊法人及び認可法人の行政コスト計算書の添付資料としての財務書類においては、資産見返補助金が負債に計上されている場合があるほか、独立行政法人においては、運営費交付金や一部の寄附金が負債計上されている場合や退職手当に係る引当金が計上されていない場合があるなど、特殊法人等においては、それぞれの特性を反映した財務諸表が作成されている。
 これらの特殊法人等に特有な会計処理については、資産及び負債の適正評価の観点から、負債計上されている資産見返補助金や運営費交付金等については負債から資産・負債差額へ移し換え、退職手当に係る引当金は所要額を計上する等、連結に際して必要な修正を行う。

 


(5)


 会計処理の修正に係る注記
 特別会計と特殊法人等との連結に際し、出納整理期間における現金の受払いの修正や、特殊法人等の特有の会計処理の修正を行った場合には、連結に際して行った主要な修正の内容について注記する。



.連結財務書類における表示科目等について

 


(1)


 資産・負債差額の部の表示
 特別会計の資産・負債差額の部と特殊法人等の資本の部では、その位置付け及び内容が大きく異なっている。このため、連結財務書類においては、資産と負債の差額は、一括して「資産・負債差額」として表示する。

 


(2)


 他会計等の出資の表示
 連結対象となる特殊法人等においては、当該特別会計以外からの出資を受け入れている場合もある。特殊法人等の解散については法律で規定され、その剰余金等については必ずしも持分割合に応じた分配がなされるわけではないことから、連結貸借対照表において、特殊法人等に対する他会計等の出資者の出資を含んだ総額を資産・負債差額の部に表示し、他会計等からの出資累計額を内書きで表示する。



<参考資料>
各特別会計における損益計算書と貸借対照表の添付状況(13年度決算)
特別会計名
(勘  定  名)
損 益
計算書
貸 借
対照表
1 事業特別会計(31)    
 (イ) 企    業(4)    
    郵政事業
    造幣局
    印刷局
    国有林野事業    
      国有林野事業勘定
      治山勘定
 (ロ) 保険事業(11)    
    簡易生命保険
    地震再保険
    厚生保険    
      健康勘定
      年金勘定
      児童手当勘定
      業務勘定
    船員保険
    国民年金    
      基礎年金勘定
      国民年金勘定
      福祉年金勘定
      業務勘定
    労働保険    
      労災勘定
      雇用勘定
      徴収勘定
    農業共済再保険    
      再保険金支払基金
      勘定
      農業勘定
      家畜勘定
      果樹勘定
      園芸施設勘定
      業務勘定
    森林保険
    漁船再保険及漁業共済
    保険
   
      漁船普通保険勘定
      漁船特殊保険勘定
      漁船乗組員給与
      保険勘定
      漁業共済保険勘定
      業務勘定
    貿易再保険
    自動車損害賠償責任
    再保険
   
      保険勘定
      保障勘定
      業務勘定
 (ハ) 公共事業(5)    
    国営土地改良事業
    道路整備
    治水    
      治水勘定
      特定多目的ダム
      建設工事勘定
 
特別会計名
(勘  定  名)
損 益
計算書
貸 借
対照表
    港湾整備    
      港湾整備勘定
      特定港湾施設工事勘定
    空港整備
 (ニ) 融資事業(2)    
    産業投資    
      産業投資勘定
      社会資本整備勘定
    都市開発資金融通
 (ホ) 行政的事業(9)    
    郵便貯金
    登記
    特定国有財産整備
    国立学校
    国立病院    
      病院勘定
      療養所勘定
    食糧管理    
      国内米管理勘定
      国内麦管理勘定
      輸入食糧管理勘定
      農産物等安定勘定
      輸入飼料勘定
      業務勘定
      調整勘定
    農業経営基盤強化措置
    特許
    自動車検査登録
2 資金特別会計(2)    
    財政融資資金
    外国為替資金
3 整理区分特別会計(4)    
    交付税及び譲与税配付金    
      交付税及び譲与税
      配付金勘定
      交通安全対策特別
      交付金勘定
    国債整理基金
    電源開発促進対策    
      電源立地勘定
      電源多様化勘定
    石炭並びに石油及びエネル
    ギー需給構造高度化対策
   
      石炭勘定
      石油及びエネルギー
      需給構造高度化勘定

(凡

例)
◎……根拠 規定があり該当があるので添付しているもの
○……根拠 規定はないが、決算において参考添付しているもの(予算には添付なし)
-……添付 していないもの(根拠規定なし)
(注)( )内数字は特別会計数を示す。
(注 )郵政事業、造幣局、印刷局、簡易生命保険、郵便貯金及び国立学校の6特別会計は試作の対象外とする。

財政制度等審議会  財政制度分科会
法制・公企業会計部会 公企業会計小委員会
公企業会計ワーキンググループ名簿

臨時委員 会田 一雄 慶應義塾大学教授
高木 勇三 日本公認会計士協会理事・中央青山監査法人理事
兵藤 廣治 元衆議院大蔵委員会調査室長
宗岡  徹 みずほ総合研究所調査本部主席研究員
専門委員 井上  隆 経団連経済本部経済法制グループ兼税制グループ副長(平成14年7月まで)
内山 英世 朝日監査法人代表社員
梅森  徹 日本銀行企画室企画第二課長(平成14年8月まで)
梶川  融 太陽監査法人代表社員
木村 琢麿 千葉大学助教授
黒川 行治 慶應義塾大学教授
佐々 誠一 新日本監査法人代表社員
万代 勝信 一橋大学教授
森田 祐司 監査法人トーマツ パブリックセクターパートナー
横尾賢一郎 (社)日本経済団体連合会経済本部経済法制グループ長(平成14年7月から)
吉岡 伸泰 日本銀行企画室企画第二課長(平成14年8月から)

(注)中途で交代した委員の職名は、当時の職名。

新たな特別会計財務諸表の検討に係る
財審小委・WGの開催状況

 
○ 法制・公企業会計部会公企業会計小委員会
1 平成13年10月16日 新たな特別会計財務諸表の検討を了承
2 11月1日 国の予算・会計制度の概要等
3 20日 特別会計等財務書類の作成ガイドライン
4 12月13日 論点整理に向けた自由討議
5 平成14年1月16日 論点整理
 
○ 公企業会計小委員会ワーキング・グループ
1 平成14年2月6日 論点整理の概要、国の予算・会計制度の概要等
2 15日 類型別特別会計の概要
3 25日 類型別特別会計の概要
4 3月7日 検討にあたっての論点等について
5 25日 検討にあたっての論点等について
6 4月5日 財務諸表の作成単位、作成手法等
7 19日 資産項目(国有財産等)
8 5月10日 資産項目(国有財産等)、負債項目(退職給与引当金、責任準備金等)
9 24日 負債項目(公的年金債務)
10 6月7日 公的年金債務(厚生年金、恩給、国家公務員共済年金)
11 13日 公的年金債務(国家公務員共済年金)、資産・負債差額
12 21日 フローの財務書類
13 7月5日 フローの財務書類
14 19日 フローの財務書類、連結
15 8月2日 フローの財務書類、連結
16 23日 フローの財務書類、連結
17 9月2日 フローの財務書類、連結
18 6日 フローの財務書類、連結、中間取りまとめ(試作基準)
19 10日 中間取りまとめ(試作基準)
20 17日 中間取りまとめ(試作基準)
21 20日 中間取りまとめ(試作基準)
22 30日 中間取りまとめ(試作基準)
23 10月4日 中間取りまとめ(試作基準)