このページの本文へ移動

特別会計における新たな財務書類の作成に係る中間取りまとめ(試作基準)平成14年10月_1/3

特別会計における新たな財務書類の作成に係る
中間取りまとめ
(試作基準)


財政制度等審議会 財政制度分科会
法制・公企業会計部会 公企業会計小委員会
公企業会計ワーキンググループ

平成14年10月


特別会計における新たな財務書類の作成に係る
中間とりまとめ(試作基準)について


財政制度等審議会 財政制度分科会
法制・公企業会計部会 公企業会計小委員会
公企業会計ワーキンググループ



.特別会計の現状

 


(1)


 特別会計の設置
 財政法第13条第2項において、1国が特定の事業を行う場合、2特定の資金を保有してその運用を行う場合、3その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合、法律をもって特別会計を設置することが認められており、現在、37の特別会計が設けられている。

 


(2)


 現行の財務諸表の作成状況
 現在、37の特別会計のうち23の特別会計において、歳入歳出決算の添付資料として、財務諸表が作成されている。
 また、歳入歳出予算の添付資料として、歳入歳出決算と同様の基準で作成した予定財務諸表が作成されている。
 これらの財務諸表の作成は、次のとおりとなっている。

   



 郵政事業、造幣局、印刷局及び国有林野事業のいわゆる企業特別会計においては、その経理は、「現金の収納又は支払の事実にかかわらず、財産の増減及び異動の事実に基づいて行う」こととされ、発生主義が採用されている。また、日々の取引についても複式簿記により記帳がなされており、基本的に、企業会計の考え方に基づいて財務諸表が作成されている。

   



 企業特別会計以外では、現金主義による経理が行われていることから、現金ベースの歳入歳出決算額に歳入歳出外の資金収支取引等を加え、これらを財務諸表科目に振り替えるとともに、その他の決算修正仕訳を行うことによって財務諸表が作成されている。



.公企業会計ワーキンググループでの検討

 


(1)


 公企業会計ワーキンググループでの検討の経緯
 特別会計の財務内容の説明責任の向上を図り、ディスクロージャーを充実させるとの観点等から、昨年10月、財政制度等審議会財政制度分科会法制・公企業会計部会公企業会計小委員会において、「特別会計の財政状況をより明らかにするため、特別会計の特殊性を勘案しつつ、発生主義等企業会計的な考え方を導入した財務諸表の作成方法について検討を行う」こととされた。
 その後、同小委員会において4回にわたり議論を行い、平成14年1月16日に「新たな特別会計財務諸表の作成に係る論点整理」がまとめられた。
 論点整理における新たな財務諸表の方向性は、全ての特別会計を対象として検討を行い、国の予算制度や特別会計の特殊性を踏まえつつできる限り企業会計の手法及び考え方を活用し、特別会計に共通する基準を設ける方向で検討を行うとするものであり、具体的検討については、会計専門家等で構成するワーキンググループを設けて個々具体的に検討を行うこととされた。

 


(2)


 公企業会計ワーキンググループにおける検討
 公企業会計小委員会の論点整理を受け、平成14年2月6日、第1回目の公企業会計ワーキンググループを開催し、その後、23回にわたり特別会計における新たな財務書類の作成方法等について精力的な検討を行った。
 検討は、まず類型別に7つの特別会計を選び、その経理内容、財務諸表の作成状況等について各特別会計を所管している省庁からヒアリングを行い、その後、貸借対照表、フローの財務書類及び連結財務書類等の具体的内容の検討を行った。



.新たな財務書類の試作基準の作成
 現行の財務諸表は、歳入歳出決算の内容を補足する添付資料として、それぞれの特別会計の事業内容を踏まえた独自の基準により作成されており、予算・決算との関連で分かりやすく、予算どおりの執行を確保するという予算統制にも配慮したものとなっている。
 他方、現行の財務諸表については、民間企業の財務諸表や他の特別会計との比較に際して分かりづらいといった指摘もあることから、企業会計の手法及び考え方を可能な限り活用し、特別会計の財務状況をより分かりやすく表示し、特別会計における財務内容の透明性の確保や説明責任の向上を図るとの観点から、現行の財務諸表に加え、新たな財務書類について検討を行った。
 また、特別会計は、民間企業とは異なり、その業務の基盤としての特定の組織や資産を必ずしも有していない場合があることや、マネジメントの責任の及ぶ範囲等から、会計(報告)主体たり得るかといった点や、現行の財務諸表の分かりづらさを補うような財務情報の提示という観点からの検討も行った。
 これらの検討を踏まえつつ、特別会計の経理内容が区々であることや、それぞれの会計処理の実態等も勘案すると、まずは、各特別会計に財務書類の試作を要請し、試作された財務書類に基づき、さらに検討を深めることが不可欠と考えられるため、今回、検討の中間的な取りまとめとして試作基準を作成したものである。
 今回の中間取りまとめでは、各特別会計における財務書類の共通的な試作基準を示し、今後は、本試作基準に基づいて作成された財務書類を通じて各特別会計における財務書類作成上の個別の論点等を洗い出すとともに、特別会計の財務内容をより明らかにするという観点から新たに作成する財務書類の内容等についても更に検討を行う等、試作基準の見直しを行うこととする。



.新たな財務書類の試作基準の検討に際して

 


(1)


 ディスクロージャーの観点からの見直し
 特別会計は、国の経理の一部を区分したものであり、独立した会計主体足り得るのか、また、特別会計制度にまで踏み込んで検討を行うのかとの議論があった。しかし、今回の試作基準の作成にあたっては、まずは特別会計の財務内容の説明責任の向上を図り、ディスクロージャーの充実を図るとの観点から、歳入歳出決算の内容を補足する資料として、企業会計の手法及び考え方を可能な限り活用した、よりわかりやすい新たな財務書類の作成方法の検討を行った。
 また、連結財務書類の作成についても検討を行った。

 


(2)


 国の貸借対照表等との関係
 特別会計等の財務書類作成の指針として、「特別会計等財務書類の作成ガイドライン」が公表されており、また、国の財政事情をよりわかりやすく国民に提供するため、「国の貸借対照表作成の基本的考え方」に基づいて国の一般会計及び全ての特別会計を対象とした「国の貸借対照表(試案)」が作成されていることから、これらの内容を踏まえた上で検討を行った。

 


(3)


 検討対象
 造幣・印刷事業の独立行政法人化及び郵政事業庁の公社化に伴い、造幣局、印刷局、郵政事業、郵便貯金及び簡易生命保険の各特別会計は廃止されること、また、国立学校の法人化に伴い国立学校特別会計は廃止が予定されていることから、これらの特別会計を除いた31の特別会計を検討の対象とした。



.試作の実施
 検討対象とされた、31の特別会計において試作を行うものとする。
 試作については、今後の見直しの検討に資するため、また、行政改革大綱(平成12年12月閣議決定)を踏まえ、平成10年度末で開始貸借対照表を作成し、平成11年度決算、平成12年度決算及び平成13年度決算の3ヵ年分の財務書類を作成する。ただし、連結財務書類の作成は、平成13年度のみとする。
   


特別会計における新たな財務書類の試作基準

目  次



第1章 特別会計における新たな財務書類の体系等



.体系
 新たな財務書類の体系は、貸借対照表、業務費用・財源計算書及び区分別収支計算書とし、これらに関連する事項について附属明細書を作成する。
 また、連結対象法人を有する特別会計においては、参考情報として連結財務書類を作成する。連結財務書類の体系は、連結貸借対照表、連結業務費用・財源計算書及び連結区分別収支計算書とする。



.作成単位
 新たな財務書類は、特別会計の歳入歳出決算の内容を補足するものであることから、原則として、特別会計を作成単位とする。ただし、各々の特別会計法の規定により、特別会計に勘定区分が設けられている場合には、当該勘定単位で歳入歳出決算が作成されていることから、当該勘定を作成単位とする。
 また、連結財務書類等の参考情報等についても、同様の作成単位とする。



.作成に際しての基礎的な計数
 現行の財務諸表は、歳入歳出決算の添付資料という位置付けから、歳入歳出決算の計数のほか、国有財産台帳等の計数を用いて作成されている。
 新たな財務書類についても、現行の財務諸表と同様、歳入歳出決算等の計数を基礎として作成する。



.作成基準日
 新たな財務書類の作成基準日は、会計年度末(3月31日)とする。ただし、出納整理期間が設けられている特別会計については、当該出納整理期間中の現金の受払い等を終了した後の計数をもって会計年度末の計数とする。
 なお、出納整理期間が設けられている場合には、その旨及び出納整理期間中の現金の受払い等を終了した後の計数をもって会計年度末の計数としている旨を注記する。



第2章 貸借対照表



.貸借対照表の作成目的等
 


(1)


 作成目的
 現行の財務諸表は、歳入歳出決算の計数に歳入歳出外の資金収支取引等を加え作成されているが、償却資産について減価償却が行われていないほか、退職給付引当金等の負債が計上されていない等、企業会計的視点からは、その資産及び負債の情報を十分に表しているとは言い難い。
 新たな財務書類における貸借対照表は、減価償却後の資産額及び退職給付引当金等を計上することにより、会計年度末において特別会計が保有する資産及び負債の状況を、より明らかにすることを目的として作成する。

 


(2)


 流動・固定の区分、配列法等
 特別会計が保有している資産及び負債の内容は様々であることに加え、特別会計は歳入歳出予算により財政運営が規律されており、支払能力を判断する必要性が低いこと等から、特に流動・固定の区分は行わない。ただし、配列については、企業会計において原則として流動性配列法が採用されていることから、流動性配列法により表示することとする。
 また、貸借対照表は、「資産の部」、「負債の部」及び「資産・負債差額の部」の3区分とする。

 


(3)


 外貨建て資産及び負債の換算
 外貨建て資産及び負債については、原則として、会計年度末の為替レートで換算し、その換算方法を注記する。
 なお、外貨建て資産及び負債の換算差額については、原則として、洗い替え方式により、その合計額を「資産評価差額」に計上する。



.資産項目
 資産については、現金・預金、有価証券、たな卸資産、貸付金、有形固定資産及び出資等を計上し、形態を表す科目によって表示する。また、貸借対照表価額については、それぞれの資産の所有目的に応じた評価基準及び評価方法により計上する。

 


(1)


 現金・預金
 手持ち現金、日本銀行預託金、財政融資資金預託金のほか、個別の特別会計に固有のものとしての、円貨預け金及び外貨預け金等を「現金・預金」として計上する。
 また、現金及び預金のうち、供託金、契約保証金等として、特別会計が保管しているものについては、特別会計に消費寄託されていることから「現金・預金」として計上する。なお、寄託者からの請求権は「保管金等」として負債計上する。

 


(2)


 有価証券

   


1


 計上対象
 特別会計が資金及び積立金の運用等の目的で保有している債券等及び「出資」として計上されない有価証券を「有価証券」として計上する。また、有価証券の評価基準及び評価方法を注記する。
 なお、契約保証金等として国に寄託されている有価証券は、国に所有権が移転していないため計上しない。

   


2


 評価基準

     



 市場価格のある有価証券
 市場価格のある有価証券については「満期保有目的有価証券」及び「満期保有目的以外の有価証券」に区分し、それぞれ次のとおり評価する。

       


(a)


 満期保有目的有価証券
 満期まで所有する意図をもって保有している有価証券、いわゆる「満期保有目的有価証券」については、償却原価法によって算定された価額をもって貸借対照表価額とする。
 ただし、市場価格が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、市場価格をもって貸借対照表価額とする。なお、有価証券の市場価格の下落率が30%以上の場合には、「著しく下落したとき」に該当するものとして強制評価減を行う。回復する見込みがあると認られ、市場価格によって評価しない場合には、その旨、その理由、市場価格との差異を注記する。この強制評価減に係る評価差額については、「資産評価差額」に計上し、有価証券の償還時又は処分時に当該評価差額を「資産評価差額」から減額し、これに基づき償還損益又は処分損益を計算する。

       


(b)


 満期保有目的以外の有価証券
 「満期保有目的以外の有価証券」については、会計年度末における市場価格をもって貸借対照表価額とする。市場価格での評価替えに係る評価差額については、洗い替え方式により、その合計額を「資産評価差額」に計上する。

     


ii


 市場価格のない有価証券
 市場価格のない有価証券については、取得原価又は償却原価をもって貸借対照表価額とする。
 ただし、市場価格のない株式について、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額を行う。なお、実質価額の低下が30%以上である場合には、「著しく低下したとき」に該当するものとして強制評価減を行う。この強制評価減に係る評価差額については、「資産評価差額」に計上し、市場価格のない株式の処分時に当該評価差額を「資産評価差額」から減額し、これに基づき処分損益を計算する。

 


(3)


 たな卸資産
 製品、半製品、仕掛品等については、原則として、それぞれの種類ごとに取得原価により計上し、その評価基準及び評価方法を注記する。
 ただし、時価が取得原価より著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とする。なお、回復する見込みがあると認め、時価によって評価しない場合には、その旨、その理由、時価との差異を注記する。強制評価減に係る評価差額については、「資産評価差額」に計上し、たな卸資産の処分時に当該評価差額を「資産評価差額」から減額し、これに基づき原価を計算する。

 


(4)


 未収金
 会計年度末における未収入金を「未収金」として計上する。
 なお、特別会計の業務上の未収金のうち、たな卸資産の売却に伴う未収金については、「売掛金」の科目で計上する。
 また、保険業務を行っている特別会計においては、保険料に係る未収分とその他の未収分とを区分し、保険料に係る未収分は「未収保険料」として計上する。

 


(5)


 未収収益
 一定の契約に従い、継続して役務の提供を行っている場合、会計年度末において、既に提供した役務に対して未だその対価の支払を受けていないものを「未収収益」として計上する。

 


(6)


 前払金
 会計年度末において、未だ提供されていない役務又は物品に対する既支払額を「前払金」として計上する。
 なお、前金払されている公共事業の対価について、膨大な数に上る事業ごとにその執行状況を把握し、分離・区分することが困難な場合には、これを「建設仮勘定」として計上することができる。

 


(7)


 前払費用
 一定の契約に従い、継続して役務の提供を受けている場合、会計年度末において、未だ提供されていない役務に対して支払われた対価を「前払費用」として計上する。

 


(8)


 貸付金
 特殊法人等に対する融資残高を「貸付金」として計上する。

 


(9)


 その他の債権
 特別会計に帰属する上記以外の債権については、「その他の債権」として計上する。
 金額的に重要性があるもの又は食糧管理特別会計の「貸付米」や外国為替資金特別会計の「特別引出権」等の各特別会計で固有のものについては、「その他の債権」としてではなく独立の科目で表示する。
 なお、他会計への繰入金で、繰入金に相当する金額が繰り戻されること及び繰り戻されるべき具体的金額(又は算出方法)が法令で規定されているものについては、「他会計繰戻未収金」として計上する。

 


(10


) 貸倒引当金
 売掛金、未収金及び貸付金等の債権に対しては、個々の債権の事情に適した合理的な基準(個別又はグループごとに算定)により貸倒引当金を算定し計上する。ただし、合理的な基準により難い特別の事情がある場合には、過去3年間の実績を用いて算定することができる。
 また、保険特別会計における未収保険料については、不納欠損額等の実績を踏まえ、合理的な基準により不納欠損額を算定し計上する。
 貸倒引当金については、その計上基準、計算方法を注記する。

 


(11


) 有形固定資産
 有形固定資産については、その種類ごとに表示科目を設け計上する。
 また、管理客体ごとに管理法規が定められていることもあり、それぞれの目的に応じた評価方法により計上する。また、減価償却の方法について注記する。

   


1


 国有財産
 公共用財産を除く国有財産については、国有財産台帳によってその価額が管理されていることから、非償却資産については、国有財産台帳価格で計上する。また、償却資産については、国有財産台帳によってその価額が管理されているが、価格改定年度以外の年度においては、減価償却費が台帳価格に反映されていないことから、価格改定年度の翌年度以降の年度において、価格改定時において行われている減価償却の方法(定率法)により減価償却相当額を算出し、国有財産台帳価格より当該減価償却相当額控除後の価額を計上する。
 国有財産の台帳価格の改定に係る評価差額については、「資産評価差額」に計上する。国有財産の処分時において「資産評価差額」は取崩さず、台帳価格改定後の価額(価格改定年度の翌年以降は減価償却相当額控除後の価額)に基づいて処分損益を計算する。
 また、国有財産法施行細則別表1に掲げる国有財産の区分を参考に表示科目を区分する。
 なお、国有財産のうち、売却を前提として国有財産を保有している特別会計においては、これを「たな卸資産」として計上する。

   


2


 公共用財産
 道路や河川といった公共用財産(公園及び広場を除く。)については、国有財産法上、国有財産台帳の作成が適用除外となっていることからその価額が管理されておらず、また、評価そのものも困難である。このため、国の所有となる公共用財産については、過去(施設の耐用年数分)の用地費や事業費等を累計(累積)することにより取得原価を推計し計上する。
 非償却資産である公共用財産の用地部分については、施設の耐用年数分の用地費等を累計(累積)した額をもって計上する。
 償却資産である公共用財産の施設部分については、過去の事業費等を累計(累積)することにより資産額を推計し、この額に基づき定額法により減価償却を行い、当該減価償却相当額控除後の価額を貸借対照表に計上する。(事業ごとの耐用年数については、「国の貸借対照表作成の基本的考え方」による。)
 また、事業費の集計にあたっては、国の事業費のほか、地方公共団体等の負担がある場合には、地方公共団体等の負担分を推計し、これも合わせたところで事業費を累計(累積)する。
 なお、公園及び広場については、国有財産台帳での価格管理がなされていることから、上記1国有財産の評価方法を適用する。

   


3


 物品
 物品については、物品管理簿の記載価格で計上する。また、取得価格が50万円以上の物品について価格管理されていることから、原則として、取得価格が50万円以上の重要物品を計上する。
 また、原則として、物品については減価償却を行い、当該減価償却相当額控除後の価額を計上する。ただし、減価償却が行われていない特別会計においては、物品についての減価償却方法が定められるまでの間は、取得価格で計上できる。物品について減価償却を行っていない場合には、その旨を注記する。

 


(12


) 無形固定資産
 国有財産として管理がなされている地上権等の用益物権及び特許権等の無体財産権のほか、電話加入権やソフトウェアを「無形固定資産」として計上する。また、減価償却の方法について注記する。

   


1


 国有財産
 国有財産として管理されている地上権等の用益物権及び特許権、著作権等の無体財産権については、国有財産台帳価格で計上する。
 地上権等の用益物権については、非償却資産として償却を要しないが、その他の償却資産は償却を行うこととし、使用実施料等の見積価格で国有財産台帳に計上されているものについては、使用料相当額を償却する。
 国有財産の台帳価格の改定に係る評価差額については、「資産評価差額」に計上する。国有財産の処分時において「資産評価差額」は取崩さず、台帳価格改定後の価額(価格改定年度の翌年以降は減価償却相当額控除後の価額)に基づいて処分損益を計算する。

   


2


 電話加入権
 電話加入権については、管理法規がなく資産として管理されていないが、企業会計では資産として計上していることから、「無形固定資産」として取得原価で計上する。ただし、取得原価が判明しないものについては、現在の取得価格 (72,000円)で計上する。

   


3


 ソフトウェア
 ソフトウェアについては、電話加入権と同様に、管理法規がなく資産として管理されていないが、企業会計では資産として計上していることから、これを「無形固定資産」として計上する。具体的には、研究開発に該当しないソフトウェア制作費について、当該ソフトウェアの利用により将来の費用削減が確実であると認められる場合には、当該ソフトウェアの取得に要した費用(過去に遡って算出が困難な場合は、5年間の開発費等の累計)を資産額とし、定額法による減価償却額を控除した額を計上する。

 


(13


) 出資
 国が政策目的をもって保有している出資を「出資」として計上する。
 出資については、原則として出資累計額をもって計上する。ただし、出資について市場価格が存在する場合には、市場価格をもって計上する。市場価格での評価替えに係る評価差額については、洗い替え方式により、その合計額を「資産評価差額」に計上する。
 また、出資先の財務状況により出資の価値が著しく低下したときは、相当の減額を行う。なお、出資の価値の低下が30%以上である場合には、「著しく低下したとき」に該当するものとして強制評価減を行う。この強制評価減に係る評価差額については、「資産評価差額」に計上し、処分時に当該評価差額を「資産評価差額」から減額し、これに基づき処分損益を計算する。(行政コスト計算書を作成している特殊法人及び認可法人は、「特殊法人等に係る行政コスト計算書作成指針」に基づいて作成された貸借対照表によって出資の実質的価値の計算を行う。)



.負債項目
 負債としては、未払金、政府短期証券、借入金、公的年金預り金及び退職給付引当金等を計上し、形態を表す科目によって表示する。

 


(1)


 未払金
 会計年度末までに支払義務発生の原因が生じており、その金額が確定し又は合理的に見積もることができるものを「未払金」として計上する。

 


(2)


 支払備金
 保険契約に基づいて支払義務が発生しているが、保険金として支出されていない金額を「支払備金」として計上する。

 


(3)


 未払費用
 一定の契約に従い、継続して役務の提供を受けている場合、会計年度末において、既に提供された役務に対して未だその対価の支払を終えていないものを「未払費用」として計上する。

 


(4)


 前受金
 会計年度末において、代金の納入は受けているが、これに対する義務の履行を行っていないものを「前受金」として計上する。

 


(5)


 前受収益
 一定の契約に従い、継続して役務の提供を行う場合、会計年度末において、未だ提供していない役務に対し支払を受けた対価を「前受収益」として計上する。

 


(6)


 未経過(再)保険料
 未経過期間(保険契約に定めた保険期間のうち、会計年度末において、未だ経過していない期間をいう。)に対応する責任に相当する額として計算した金額を「未経過(再)保険料」として計上する。

 


(7)


 賞与引当金
 期末手当・勤勉手当については、公務員の日々の勤務に応じて発生する費用であることから、既に勤務が提供された部分について負債として認識し、会計年度末までの期間に対応する部分を「賞与引当金」として計上し、その計上基準及び計算方法について注記する。

 


(8)


 政府短期証券
 外国為替資金証券、財政融資資金証券及び食糧証券の残高(額面額)より、債券発行差金を控除又は加算した額を貸借対照表価額とし、「政府短期証券」として計上する。
 債券発行差金は、政府短期証券の発行期間にわたって償却を行う。なお、債券発行差金の償却分については、支払利息として、業務費用・財源計算書に計上する。

 


(9)


 借入金
 財政融資資金及び民間金融機関からの融資残高を「借入金」として計上する。
 また、貸付金の原資としての他会計からの受入金については、「貸付金財源受入金」の科目で計上する。

 


(10


) 責任準備金
 特別会計が行っている保険事業に係る保険料については、単に保険数理のみではなく、政策的な観点も踏まえて、その水準が設定されており、一概に責任準備金の取扱いを定めることは困難であることから、当面、各特別会計における現行の考え方により計上する。ただし、それぞれの特別会計の保険制度において、引き続き合理的な計上基準を検討する。
 なお、責任準備金については、その計上の考え方、計上方法及び計算方法等を注記する。

 


(11


) 公的年金預り金

   


1


 厚生年金保険及び国民年金
 公的年金は、保険料支払により給付が行われるという社会保険方式が採られており、保険料の支払によって制度の運営者である国(特別会計)に年金を支給する義務が生じることから、過去期間対応の給付現価を負債として認識する考え方もある。しかしながら、公的年金は、社会保険制度であり、その財政方式は賦課方式を基本とした制度となっており、また、年金の支払義務は保険料の払込みによって発生するものではなく、受給資格を満たすことによって発生するものであることから、これを厚生年金及び国民年金の特別会計において負債とは認識しないこととする。
 ただし、過去期間に対応する給付現価のうち、一部は保険料として徴収し、積み立てることとなっているため、過去期間に対応する給付現価のうち、積立金で賄われるべき部分、すなわち財政再計算における各年度末の所要積立金に相当する金額を「公的年金預り金」として計上する。
 なお、年金に係る説明責任の向上を図るため、公的年金の積立方法、財政再計算における各年度末の所要積立金に相当する金額と現実の積立金の差額の発生原因、会計処理のほか、過去期間に対応した将来給付現価額及びこれに対する財源の見込額、算出根拠等について、注記により説明を加える。

   


2


 国家公務員共済年金
 国家公務員共済年金は、国家公務員を対象とする公的年金制度としての社会保険制度であり、給付設計は厚生年金に準拠したものとなっている。また、年金給付に要する費用について、雇用者としての国(特別会計)は、保険料の2分の1を負担しているほか、公経済主体として、基礎年金拠出金の3分の1等を負担している。
 国家公務員共済年金については、企業年金と同様に国家公務員の労働の対価であり、負債として計上すべきとの考え方もあるが、厚生年金が担っている機能を有し、遺族に対する支給、物価スライド等を行っており、単に労働の対価という意義を超えた公的年金制度としての性格を色濃く有していることから、これを負債としては認識しないこととする。
 ただし、国家公務員共済年金のうち、昭和34年10月より前の恩給公務員期間に係る分(整理資源)は、雇用主としての国が全額負担することとされていることから、将来給付見込額の割引現在価値額を「退職給付引当金」として計上する。

 


(12


) 退職給付引当金

   


1


 退職手当に係る退職給付引当金
 退職手当の性格を賃金の後払いであるとの考え方にたち、既に労働提供を行っている部分については負債として認識し、「退職給付引当金」として計上する。計上額は、当面、事務量等を考慮し期末要支給額方式とする。また、計上基準及び計算方法について注記する。

   


2


 恩給給付費
 恩給は、共済年金制度移行前において相当年限忠実に勤務して退職した公務員等に対して、国が公務員との特別な関係に基づき、使用者として給付するものであることから、退職給付と同様の性格を有している。
 また、恩給は一般会計から支給しているが、国の会計内部の負担関係については、特別会計において退職等により給付事由が発生した者の公務員期間に係る恩給支払財源を、当該特別会計が負担(一般会計へ繰入)することとされていることから、当該特別会計の負債として、将来給付見込額の割引現在価値額を「退職給付引当金」として計上する。
 なお、恩給の給付等は、総務省人事・恩給局で行われており、各特別会計での算出が困難なことから、同局において計算された額を計上するものとする。

   


3


 整理資源
 国家公務員共済年金のうち、恩給公務員期間に係る将来給付見込額の割引現在価値額を「退職給付引当金」として計上する。
 なお、国家公務員共済年金の再計算等は国家公務員共済組合連合会が、また、各特別会計における毎年度の予算計上額の計算については財務省主計局で行われており、各特別会計での算出が困難なことから、同局において計算された額を計上する。(恩給公務員期間に係る将来給付見込額の算出は、5年ごとに行われる財政再計算時における見込額を使用する。)

 


(13


) その他の債務
 特別会計に帰属する上記以外の債務については、「その他の債務」として計上する。
 金額的に重要性があるもの又は各特別会計で固有のものについては、独立の科目で表示する。
 なお、他会計からの繰入金で、繰入金に相当する金額を繰り戻すことが法令で規定されているものについては、繰戻し未済額を「他会計繰戻未済金」の科目で計上する。



.資産・負債差額
 特別会計は、特定の事務・事業に係る経理を一般会計から区分したものであり、企業会計のような払込資本に関する取引が原則としてないこと、また、特別会計の設置目的やその目的遂行のための手段の相違等により、資産・負債差額の保有状況が大きく異なること等を踏まえ、資産と負債の差額について、その位置付けを検討した。
 資産及び負債の差額については、政府の財政運営の結果として、この部分をどう捉えるか、その位置付けについて種々議論があったが、国の資産は必ずしも将来の支払財源に充てられるものではないことに加え、公共用財産についての評価方法が定まっていないことや一定の仮定を用いて資産評価を行わざるを得ないこと等から、積極的な性格付けを与えることは適切ではないと考えられる。そのため、貸借対照表における資産と負債の差額については「資産・負債差額の部」として整理する。
 ただし、特別会計によっては、「資産・負債差額の部」の内訳の一部について、その性格を明らかにすることが可能であるため、次のような科目により「資産・負債差額の部」の内訳を表示する。

 


(1)


 基金等
 特別会計の中には、その設立の際に、廃止された特別会計から資産を承継し、特別会計法上これを資本として整理しているもの等がある。これらについては、「基金」等の科目(法律上の名称、「基金」、「資本」、「自己資本」を使用する。)により表示する。
 なお、基金等の根拠法令及びその内容等について注記する。

 


(2)


 基準時資産・負債差額
 本試作基準による開始貸借対照表の作成時に、その性質又は発生原因を明確にすることができないものについては、「基準時資産・負債差額」の科目により表示する。

 


(3)


 資金(積立金)
 財政法第44条において、「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる」と規定されており、特別会計においても、効率的な財政運営の必要性から、資金又は積立金の名称で特別の資金を保有している場合がある。これらの資金又は積立金のうち、歳入歳出の剰余が積み立てられているものについては、「資金」又は「積立金」等の科目(法律上の名称を使用する。)により表示する。なお、資金又は積立金の根拠法令及びその内容等について注記する。

 


(4)


 業務費用・財源差額累計
 業務費用・財源計算書において計算された業務費用・財源差額については、企業会計における当期利益や未処分利益とは、その性格が異なるものであるが、これを貸借対照表において明示することとし、「業務費用・財源差額累計」の科目により表示する。

 


(5)


 資産評価差額
 資産の評価替えに伴い発生した評価差額については、「資産評価差額」の科目により表示する。
 価格改定が行われる国有財産(公園及び広場以外の公共用財産を除く。)の価格改定によって算出される評価差額、外貨建て資産及び負債の為替換算、有価証券、たな卸資産及び出資に係る時価評価及び強制評価減の適用による評価差額を計上する。



.貸借対照表の標準的な様式
 貸借対照表の標準的な様式は次のとおりとする。

 

貸借対照表
資産の部負債の部
現金・預金 ×××
売掛金 ×××
有価証券 ×××
たな卸資産 ×××
未収金 ×××
未収収益 ×××
前払金 ×××
前払費用 ×××
貸付金 ×××
その他の債権 ×××
 貸倒引当金 △×××
有形固定資産 ×××
 土地 ×××
 建物 ×××
 工作物 ×××
 機械器具 ×××
 公共用財産 ×××
  公共用財産用地 ×××
  公共用財産施設 ×××
 物品 ×××
 建設仮勘定 ×××
無形固定資産 ×××
出資 ×××
未払金 ×××
支払備金 ×××
未払費用 ×××
保管金等 ×××
前受金 ×××
前受収益 ×××
未経過(再)保険料 ×××
賞与引当金 ×××
政府短期証券 ×××
借入金 ×××
その他の債務 ×××
責任準備金 ×××
公的年金預り金 ×××
その他の負債 ×××
退職給付引当金 ×××
資産・負債差額の部
基金等 ×××
基準時資産・負債差額 ×××
資金(積立金) ×××
業務費用・財源差額累計 ×××
資産評価差額 ×××
   
資産合計負債及び資産・負債差額合計