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税制メールマガジン第174号 2024年5月15日

【税制メールマガジン第174号】
 2024年5月15日

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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 令和6年度税制改正の内容紹介 ~国際課税、納税環境整備~
4 今月は何税の月?「5月:大蔵省に主税局設置(明治17(1884)年)」
5 編集後記

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1 はじめに

5月に入り、ゴールデンウィーク(GW)もあっという間に終わりました。皆様、如何お過ごしでしょうか?
私は家族で、岩手県花巻市を観光させて頂きました。花巻市には、メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手や菊池雄星選手の母校である花巻東高校があります。昨年、大谷翔平選手が米ドジャースと結んだ移籍契約については、報酬後払いに伴うカリフォルニア州税の支払いに関しても、大きな注目が集まりました。
また、花巻市は宮沢賢治の出身地でもあります。詩人・童話作家・教師など多彩な顔をもつ宮沢賢治ですが、その作品のなかには、密造酒の取締りに当たる税務署長の奮闘を描いた作品もございます。寒気が強くて長い東北地方では、元々、濁酒の自造自飲が盛んでもありました。
さらに、花巻温泉では、従業員賃金のベースアップや休暇充実を行うとともに、宿泊料の引き上げという価格転嫁を行っており、正に物価と賃金の好循環を進めておられます。駐車場まで荷物を受け取りに来てくれるドアマン。館内に飾られた生け花の数々。手間がかかることを承知で、夕食の配膳を大広間でなく客室で行うとともに、その後、鮮やかな手際で布団を敷いていくスタッフ達。いずれも人への投資が無ければ成り得ないサービスだと思いました。
皆様がGWに訪問された各地にも、きっと税制にまつわるエピソードが秘められているかもしれませんので、是非、調べてみるのも一興かと。

財務省主税局総務課 企画官 境吉隆

・宮沢賢治『税務署長の冒険』(青空文庫)
・租税資料ライブラリー 税務行政の民衆化(国税庁)
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/shiryou/library/13.htm
・税の歴史クイズ 米と酒の交換(国税庁)
 https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/quiz/1208/index.htm

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2 税制をめぐる最近の動き  

HP掲載日 内容
4月1日
令和5年度 6年2月末租税及び印紙収入、収入額調

(1)租税及び印紙収入、収入額調
令和5年度 6年2月末の租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

・令和5年度 6年2月末租税及び印紙収入、収入額調

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3 令和6年度税制改正の内容紹介 ~国際課税、納税環境整備~

令和6年度税制改正では、国際課税において、“非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備等”、また、納税環境整備において、“GビズIDとの連携によるe-Taxの利便性向上”や“更正の請求に係る隠蔽・仮装行為に対する重加算税制度の整備”、といった重要な改正が行われました。これらの主な内容を紹介します。

<国際課税>
(1)居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備等
分散型台帳技術を使用する暗号資産等を利用した国際的な脱税及び租税回避を防止する観点から、2022(令和4)年にOECDにおいて策定された暗号資産等報告枠組み(CARF:Crypto-Asset Reporting Framework)に基づき、租税条約等により各国税務当局と自動的に交換するため、国内の暗号資産取引業者等に対し非居住者の暗号資産に係る取引情報等を税務当局に報告することを義務付ける制度を整備します。
暗号資産交換業者等の準備期間を考慮し、2026(令和8)年1月1日から適用を開始した上で、2027(令和9)年から情報交換を開始します。

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<納税環境整備>
(2)GビズIDとの連携によるe-Taxの利便性向上
行政手続等において手続を行う法人等を認証するための仕組みであるGビズIDの利用者の利便性の向上に資する観点から、法人について、GビズID(一定の認証レベルを有するものに限る。)を用いて、e-Taxにログインすることを可能とするとともに、この場合には、e-Taxの「ID(識別符号)・パスワード(暗証符号)」の入力及びその申請等の際の「電子署名・電子証明書」の送信を要しないこととします。

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(3)更正の請求に係る隠蔽・仮装行為に対する重加算税制度の整備
納税者が申告後に税額の減額を求めることができる更正の請求において、隠蔽・仮装行為を未然に抑止する観点から、隠蔽・仮装したところに基づき「更正請求書」を提出した場合を重加算税の賦課対象に加えます。
なお、2025(令和7)年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用します。


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4 今月は何税の月「5月:大蔵省に主税局設置(明治17(1884)年)」

明治17(1884)年5月、大蔵省租税局は関税局と合併して、主税局となりました。当時の機構には、地租課や酒税課など現在とは異なる課が多く設置されていました。さて、今回のコラムでは、明治17年5月に主税局のトップとなった郷純造を中心に取り上げたいと思います。このときの主税局の長は「主税官長」という役職名で、主税官長が明治19(1886)年2月に廃官となった後、主税局の長は主税局長となります。なお、郷純造は後に、明治19(1886)年3月に初代の大蔵省事務次官にも就任します。
郷純造の大きな功績の一つとして伝えられている事項としては、渋沢栄一や前島密といった旧幕臣を新政府の大隈重信に推薦し登用させたことが挙げられます。大蔵卿となった大隈重信は、「我輩が大蔵省に入って人材を求めて居ると、郷純造君が洋行帰りの渋沢君を推薦して来た。郷氏はなかなか人物を見る眼があった。氏の薦めて来た人物は皆良かった。前島君(前島密)も其の一人である。」と述べています。大河ドラマ『青天を衝け』にも郷純造(演:松本こうせい)は登場しておりました。
しかし、郷純造と渋沢栄一は直接の面識は無かったようです。渋沢栄一の自伝『雨夜譚』には、「余を大蔵省に推挙せし人々」という項で、次のように語っています。「殊に今日の朝廷には一人の知己もない身の上であるから、かたがた以て今日の任命は何人の推薦ということが詳らかならぬ訳だったが、後に聞けば、全く大蔵卿の伊達正二位がかつて自分の名を承知して居られたのと、その頃別に面識はなかったが郷純造という人もどこでか自分の事を聞き及んで居た処から、つまりこの任命の事に及んだのであったということが分かりました。」郷純造の推挙が無かったら、日本経済の歴史も大きく変わっていたかもしれません。
また、郷純造は大蔵省において全国大名諸藩の「藩債処分」に取り組みました。明治政府は、廃藩置県により藩を消滅させたことから、旧藩の債務を最終的に明治政府の責任において処理しました。その処理のために、旧諸藩の抱える債務残高や藩札発行高を大蔵省に報告させ、旧藩の債務の総額を確定する調査を行うとともに、この巨額の債務を処理するための方針を立て、発行時期によって藩債を3種類に分類し、処分を実行しました。
その他にも、幕臣時代に大酒を飲んで彰義隊に加わるのを免れるといった話(明治25(1892)年5月4日 読売新聞 明治紳士ものがたり「郷純造偽り酔うて難を避く」)や、自由党青年から決闘状を送りつけられるも一笑に伏して無視する話(明治25(1892)年2月10日 読売新聞 「雑報 郷純造氏に決闘状を送る」)や、江戸の南画家・谷文晁の絵画を購入する美術収集家としての話(明治24(1891)年4月12日 読売新聞 「谷文晁の画幅「九竜飛雲」、郷純造・前大蔵次官が購入」)等が伝わっており、多彩で魅力的な人物のように推察されます。
是非、郷純造の功績に関する歴史的研究が更に進むとともに、いつかドラマ化されて主題歌を中島みゆきさんが歌ってくれることを願います。

・租税局、関税局、主税局(大蔵省史第2期第4章第1節 明治19年以前の大蔵省機構)
・郷純造 幕末から明治を生きた政治家~美濃国から江戸へ~
・初代大蔵省事務次官を知っていますか?~幕末・明治を生き、渋沢栄一を新政府に引き入れた岐阜人~(広報誌ファイナンス令和3年10月号)

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5 編集後記

今年のGW、皆様はいかがお過ごしになられたでしょうか。GW中の海外旅行者数は、コロナ禍前の9割程度まで回復したそうです。私は、祖父母の実家に帰省し、自然豊かな場所で心身ともにリフレッシュしてきました。
さて、今号の連載コラムは、主税局設置に関する歴史をお届けしました。郷純造の人生についてドラマ化されることを楽しみにしています・・。

最後に皆様にお知らせです。パンフレット「令和6年度税制改正」の発送準備が整いましたので、送付を希望される方は以下のリンクよりお申し込みいただければと思います。

・財務省HP:税制に関するパンフレットをお届けします

今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

財務省主税局総務課 広報係 高木

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