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税制メールマガジン第170号 2024年1月15日

【税制メールマガジン第170号】
 2024年1月15日

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◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 令和6年度税制改正(案)の内容紹介 ~所得税~
4 今月は何税の月?「1月:大蔵省租税局の設置(明治10年)」
5 編集後記

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1 はじめに

2024年最初の配信となりますが、このたび石川県能登地方を震源とする令和6年能登半島地震で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。財務省HPでは、税金や地震保険等の関連情報をまとめたページを掲載しておりますので、是非ご参考頂ければ幸いです。
日本テレビ系列で放送されたドラマ・ゼイチョー ~「払えない」にはワケがある~も昨年末に完結。税金滞納者の「お金と心」に寄り添う徴税吏員の活躍を通じて、税金の大切さを改めて感じました。主人公たちの財務省時代の回想場面もあり、石造りの階段を駆け上がるシーンは、実際の財務省の階段とそっくり(国立科学博物館日本館の中央階段でロケされたか)と思う一方、屋上風景や内観は現代的なピカピカなビルのもので、実際とは大分違うなぁ、等と思うことも・・・。
「財務省のオフィスって、こんな地味で質素なのですね。高層ビルの中で仕事していると思ってました。」と来訪者から言われることもしばしば。丁度、『大人の社会科見学 in財務省』(新R25)の動画が先日公開され、そのなかで主税局職員も出演し税制改正の流れ等を解説しております。財務省のオフィス風景等も詳しく紹介しておりますので、是非ご覧いただくと、「なるほど、その昔、昭和の時代に、霞ヶ関三丁目の大蔵官僚はメガネをかけた●ブネ●ミ、って大蔵官僚自身が書いたのは、こういうところから来ているのね」などと感じてもらえるかと。
なお、その広報誌ファイナンスの随筆においても、「“大蔵省の良い点は”という問いに対しては、大かたの子ネ●ミ君が“先輩、後輩、同期の人達が、家族的な雰囲気で皆仲良く助け合って仕事をしていること”と答えた」と書かれており、その点はドラマの回想場面でも良く描かれていたなぁ、と思いました。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

財務省主税局総務課 企画官 境吉隆

・財務省ホームページ「令和6年能登半島地震関連情報」
・新R25「大人の社会科見学 in財務省」
・広報誌ファイナンス「一ページ随筆」(昭和51年7月号)

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2 税制をめぐる最近の動き  

HP掲載日 内容
12月1日
令和5年度 10月末租税及び印紙収入、収入額調
12月22日
令和6年度税制改正の大綱が閣議決定されました
12月26日
アルジェリアとの租税条約が発効します

(1)租税及び印紙収入、収入額調

   令和5年度 10月末の租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

・令和5年度 10月末租税及び印紙収入、収入額調

(2)令和6年度税制改正の大綱が閣議決定されました
下記リンクから内容をご覧いただけます。

 ・税制改正の大綱
   ・税制改正の大綱の概要
    https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2024/06taikou_gaiyou.pdf

(3)アルジェリアとの租税条約が発効します

日本国政府と、アルジェリア民主人民共和国政府との間で「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルジェリア民主人民共和国との間の条約」(2023年2月7日署名)を発効させるために必要な相互の通告が完了しました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

 ・アルジェリアとの租税条約が発効します

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3 令和6年度税制改正(案)の内容紹介 ~所得税~

令和6年度税制改正では、所得税について、(1)所得税・個人住民税の定額減税、(2)スタートアップ・エコシステムの抜本的強化のための税制措置、(3)子育て支援税制の一部先行対応、等の重要な改正が行われる予定です。
また、(4)扶養控除等の見直しについても、令和7年度税制改正において結論を得るように方向性が示されました。
以下、主な内容を紹介します。

(1)所得税・個人住民税の定額減税
30年ぶりの高水準の賃上げ、過去最大の民間投資など、日本経済は明らかに動き始めており、このデフレ脱却・構造転換に向けた千載一遇のチャンスを逃さぬよう、この動きを止めることなく、より多くの方が享受できるよう更に拡げていく必要があります。
このため、デフレに後戻りさせないための措置の一環として、令和6年の所得税・個人住民税の定額減税を実施します。
具体的には、納税者及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の減税を行うこととし、令和6年6月以降の源泉徴収・特別徴収等、実務上できる限り速やかに実施します。なお、合計所得金額1,805万円超(給与収入のみの場合、収入2,000万円超に相当)の高額所得者については対象外となります。

(2)スタートアップ・エコシステムの抜本的強化のための税制措置
スタートアップの「出口」について、現在はIPOに偏重していますが、事業規模が未拡大の段階でIPOが行われ、その後に成長が鈍化する傾向にあるとの指摘があります。このため、M&Aを促進することで、スタートアップが既存企業の資金や人材といった経営資源を活用できるようになり、その後の「事業展開」において、より力強い成長を実現することが期待されております。
この観点から、ストックオプション税制における保管委託要件について、企業買収時において機動的に対応できるよう、スタートアップ自身による管理の方法を新設します。さらに、主としてレイター期の人材確保に資するよう、ストックオプション税制の年間の権利行使価額の上限を、スタートアップが発行したものについて、最大で現行の3倍となる年間3,600万円への引上げを実施します。

(3)子育て支援税制の一部先行対応
税制においても子育て世帯のニーズを踏まえた対応を進めていくため、住宅ローン控除、住宅リフォーム税制、生命保険料控除の拡充について子育て支援税制として令和7年度税制改正において検討・結論する方向性が与党の税制改正大綱で示されました。このうち、令和6年の先行対応として、住宅ローン控除について、子育て世帯等に対し、借入限度額を、認定住宅は5,000万円、ZEH水準省エネ住宅は4,500万円、省エネ基準適合住宅は4,000万円へと上乗せするなどの措置を行います。

(4)扶養控除等の見直し
児童手当については、所得制限が撤廃されるとともに、支給期間について高校生年代まで延長されることとなります。
これを踏まえ、16歳から18歳までの扶養控除について、15歳以下の取扱いとのバランスを踏まえつつ、高校生年代は子育て世帯において教育費等の支出がかさむ時期であることに鑑み、現行の一般部分(国税38万円、地方税33万円)に代えて、かつて高校実質無償化に伴い廃止された特定扶養親族に対する控除の上乗せ部分(国税25万円、地方税12万円)を復元し、高校生年代に支給される児童手当と合わせ、全ての子育て世帯に対する実質的な支援を拡充しつつ、所得階層間の支援の平準化を図ることを目指します。
扶養控除の見直しについては、令和7年度税制改正において、見直しが他制度に与える影響への対応の状況等を確認することを前提に、令和8年分以降の所得税と令和9年度分以降の個人住民税の適用について結論を得ます。

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4 今月は何税の月「1月:大蔵省租税局の設置(明治10(1877)年)」

新春なので、明治7年頃の華やかな錦絵に描かれた租税寮出張所をまずはご覧下さい。擬洋風建築の出張所は、印紙類を発売するために設置されました。現代では、郵便局や法務局、コンビニ等でも買える収入印紙ですが、明治初期は印紙税の制度自体が始まったばかり。諸取引に印紙税を課税することで、商人にも公平に課税していく改革が始まりました。

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そうなると、租税等の受入れとともに官金の支払いを司る国庫制度がより重要になってきます。明治10(1877)年1月、租税寮は改称され大蔵省租税局が設置され、租税局長に吉原重俊が就任すると、その改革が急速に進められました。
それまで、政府は全国の租税を敏速かつ確実に中央に集中、保管し、それを配分することができませんでした。その実現のためには、行政組織の統一、予算、会計、租税、貨幣、金融制度の整備、交通機関、市場組織の発達など広範囲な前提条件が必要であるとともに、それと並行して、①府県の財政を規制・統一して国庫の収入とする余地を作り出す、②各省・各府県の出納機関としての旧為替方を排除して、近代的金融機関に出納事務を移す、ことも課題でした。
特に、②旧為替方の排除については、明治11(1878)年7月の郡区町村編成法・府県会規則・地方税規則および府県官制の制定により、地方行政系統が府知事県令-郡区長-町村戸長の形に整理されたのに伴い、郡区長と戸長に徴税事務を取り扱わせるこことし、それまで大蔵省直轄金庫(現金出納機関)の事務を担当してきた府県為替方を国税徴収事務から排除しました。また、明治11(1878)年12月28日の大蔵省達乙第72号「国税金領収順序」により、大蔵省出納局の管理する税金預所が各府県の要地に設けられ、適当な銀行・個人を税金預り人に任命して預所に置き、従来、府県為替方が扱っていた事務のうち税金に関するものをすべて取り扱わせることになりました。
その後、租税以外の収入金等も税金預り人に取り扱わせることにしたのに伴い、税金預り人を大蔵省為替方と改称しました。そして、明治13(1880)年11月27日に「大蔵省為替方条例」が制定され、各地の銀行の中から大蔵省為替方を命じ、大蔵省為替方に税金その他の受入れだけでなく、地方における中央官庁所属の現金支払いと国庫の収入事務を担当させました。以上のように、旧為替方から、「税金出納事務」→「租税以外の出納事務」→「中央官庁の現金支払い・国庫収入事務」と順番に出納事務を銀行に移していきました。
明治15(1882)年の日本銀行開業とともに、吉原重俊が日本銀行の初代総裁に就任すると、その翌年(明治16年)6月、政府は日本銀行に国庫金の取扱いを命じ、日銀に国庫局を置いて、まずその収入事務を委託するとともに、その後、支出事務を委託して、統一的な国庫制度を明治23(1890)年度から実施しました。
1つ興味深い新聞記事があります。明治11(1878)年8月14日の読売新聞において、「此のほど大蔵省の租税局にて仏国収税法といふを翻訳となり銀座四丁目の大和屋で売り出しました。」と紹介されています。吉原重俊は、明治11(1878)年、松方正義・内務卿のフランス・ベルギー調査視察に同行しており、仏蔵相レオン・セーとも交流がありました。その際、フランスの国庫制度に関心をもったのかもしれません。
ただ、これらは偉大な功績のほんの一端。薩摩の秀才として育ち、寺田屋事件(薩摩藩志士粛正事件)に最年少で参加した後、米英両国に留学するとともに、外務省・大蔵省・日本銀行で多岐に活躍するも、病魔に冒され42歳の若さで亡くなります。吉原重俊の功績に関する歴史的研究が更に進むことを願います。

・租税寮出張所の設立(国税庁)
・日本銀行百年史 第2章 2.国庫・国債事務の取扱い
・「税金預り人」と「大蔵省為替方」(国税庁)
・歴代日本銀行総裁小史(日本銀行)
・産業近代化を担った明治の群像 前編(泉三郎, Executive Foresight Online)
・明治宰相列伝 大蔵大輔松方正義仏国博覧会派遣(国立公文書館)
・仏国収税法(国立国会図書館デジタルコレクション)
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5 編集後記

皆様、明けましておめでとうございます。本年も税制メルマガをよろしくお願いいたします。
2024年最初の配信では、令和6年度税制改正(案)の中から「所得税」の内容についてご紹介させていただきました。今後数回にわたって令和6年度税制改正(案)の主な内容を取り上げていく予定です。
また、連載コラムでは、「大蔵省租税局の設置」に関する記事をお届けしました。ご覧いただいた租税寮出張所は文明開化を象徴する建物の1つとされていたそうです。新春にぴったりの華やかな錦絵をお楽しみいただければと思います。
今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

財務省主税局総務課 広報係 高木


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