このページの本文へ移動

税制メルマガ第159号 2023年2月8日

【税制メルマガ第159号】 
 2023年2月8日

================================= 


◆目次
1 はじめに
2 税制をめぐる最近の動き
3 うんこ税金ドリル 第2弾をリリース!
4 令和5年度税制改正(案)の内容紹介 ~所得税~
5 コラム「税制のプロに聞く」(第6回)
6 編集後記

=================================

1 はじめに

 税制メルマガは、2023年はじめての配信となります。
 本年もどうぞよろしくお願いします。

 霞が関の省庁では、年末年始の前後に休暇をとる人も多いのですが、主税局では、法案の作成や国会審議の準備などで忙しいため、なかなかまとまった休みをとることができる職員は少ないです。
 そのかわり、税制改正法の成立後は、少しゆとりのあることが多いので、ゴールデンウィーク前後に休暇をとったり、夏休みを長めにとったりして、英気を養う職員も多いです。

 本日、文響社さんとのコラボによる「うんこ税金ドリル ~税金があるときないとき編~」をリリースしました!一昨年11月にリリースした「うんこ税金ドリル」の第2弾です。詳しくは下記で紹介していますので、是非チェックしてみて下さい。

 今月のコラム「税制のプロに聞く」は、参事官室で租税条約を担当する西島補佐によるものです。
 条約の交渉は主に英語で行われるなど、国内法令の改正とは異なる困難を伴います。参事官室の条約担当は、主税局の中で最もinternationalなセクションです。

財務省主税局総務課 企画官 松井誠二

=====================================================

2 税制をめぐる最近の動き  

HP掲載日  内容
1月5日  令和4年度 11月末租税及び印紙収入、収入額調
2月1日  令和4年度 12月末租税及び印紙収入、収入額調
2月3日  「所得税法等の一部を改正する法律案」が国会に提出されました。

(1)租税及び印紙収入、収入額調
租税及び印紙収入、収入額調を財務省ホームページで公開いたしました。

下記リンクから内容をご覧いただけます。
○令和4年度 11月末租税及び印紙収入、収入額調
○令和4年度 12月末租税及び印紙収入、収入額調


(2)「所得税法等の一部を改正する法律案」が国会に提出されました。
下記リンクから内容をご覧いただけます。

====================================================

3 うんこ税金ドリル 第2弾をリリース!

 大好評であった第1弾に続き、「うんこ税金ドリル ~税金があるときないとき編~」をリリースしました!第1弾は、全国の小学校や税務署・関係団体による租税教室等で活用いただき、多くの子どもたちに税金について学んでもらいました。

 私が初めて第1弾を読んだ際は、最後のページで説明されている、うんこと税金の共通点の解説について、納得した上で、思わず吹き出してしまいました(笑)。まだご覧になっていない方は、是非第1弾もご覧いただき、頭を柔らかくして考えてみてください!

 今回は、第2弾のリリースまでの経緯をご紹介させていただきます。第1弾の作成後、続編の期待の声が多く寄せられる中、どのような内容にすれば、税金の意義をより深く学んでいただけるか、昨年の夏に現在のメンバー体制になってから、日々考えをひねり出してきました。

 そこで、新たに作成する冊子では、これまでと切り口を変え、単に税金だけに着目するのではなく、財政全体の中で税金はどう位置づけられているのか、より大局的な視点で学習できる教材とする方針で一致しました。また、第1弾から少々難易度をあげることで、小学校高学年の子どもたちにも十分学習できる内容とする方向性で定まりました。

 ただ、財政や税金に関するデータや数字を並べるだけでは、読みづらく、理解が難しくなるため、どうすればとっつきやすい内容にできるか、非常に悩みました。

 文響社さんとの度重なる打合せを経て、第1弾とは形式を変え、税金がある世界とない世界を「間違い探し形式」で出題することにしました。うんこ先生の世界に入ることで、どのような場面で税金が活用されているのか、より直感的に学べるよう意識しました。

 中身を詰める段階では、どこを間違いとするか、どんな間違い方にするか、細部にまでこだわりました。また、税金がある世界でも、困っている人が存在していることを示すことで、本冊子だけで学びを終えるのではなく、そこから今後の税財政のあり方を自ら考察してもらうきっかけとなるよう工夫を施しています。

 振り返ってみると、昨夏の着任時は「うんこ」というワードが飛び交う職場に違和感を覚える毎日でした。小学校時代のにぎやかな教室にタイムスリップしたのではと錯覚したほどです(笑)。おかげさまで、今ではうんこ税金ドリルを片手に、真顔でうんこと税金について語れる次元に到達しました。

 以上、簡単に第2弾リリースの経緯を紹介させていただきました。少しでも、本冊子が税金や財政について考えるきっかけとなれば幸いです!

 うんこ税金ドリルの冊子は下記リンクからご覧いただけます。ぜひ、第1弾とあわせてご覧ください!2月中をめどに、希望者に無料で冊子を配布させていただきますので、お楽しみに♪

○「うんこ税金ドリル ~税金があるときないとき編~」冊子
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/20230208drill.html

○税制に関するパンフレットの申込みページ
※「うんこ税金ドリル ~税金があるときないとき編~」冊子は2月中をめどに申込み開始の予定です。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/haifu/index.php
主税局総務課 広報係長 對馬

===================================================

4 令和5年度税制改正(案)の内容紹介 ~所得税~

 令和5年度税制改正(案)では、所得税について、(1)NISA制度の抜本的拡充・恒久化、(2)スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設、(3)極めて高い水準の所得に対する負担の適正化など、重要な改正が行われる予定です。
 以下、主な内容を紹介します。

(1) NISA制度の抜本的拡充・恒久化
 「資産所得倍増プラン」の実現に向け、「貯蓄から投資へ」の流れを加速するため、NISA制度の抜本的拡充・恒久化が行われます。
 具体的には、若年期から高齢期まで、長期・積立・分散投資による継続的な資産形成を行えるよう非課税保有期間が無期限化されるとともに、口座開設可能期間には期限を設けないこととされ、NISA制度は恒久的な措置となります。
 また、個人のライフステージに応じて、資金に余裕があるときに短期間で集中的な投資を行うニーズにも対応できるよう、一定の投資信託を対象とする「つみたて投資枠」の年間投資上限額については、現行のつみたてNISAの水準(年間40万円)の3倍となる120万円に拡充されます。
 加えて、上場株式への投資が可能な現行の一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」の年間投資上限額については、現行の一般NISAの水準(年間120万円)の2倍となる240万円に拡充され、「つみたて投資枠」との併用が可能となります。
 一方、年間投資上限額とは別に、投資余力が大きい高所得者層に対する際限ない優遇とならないよう、一生涯にわたる非課税保有限度額が設定され、その総額は、老後等に備えた十分な資産形成を可能とする観点から、現行のつみたてNISAの水準(800万円)から倍増以上となる1,800万円とされます。また、「成長投資枠」については、その内数として現行の一般NISAの水準(600万円)の2倍となる1,200万円とされます。
※令和6年1月から適用される予定

(2) スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設
 スタートアップを生み育てるエコシステムを抜本的に強化する観点から、保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合の優遇税制が創設され、スタートアップへの資金供給が強化されます。
 具体的には、保有株式の譲渡益を元手に創業者が創業した場合やエンジェル投資家がプレシード・シード期のスタートアップに再投資を行った場合に、上限額を20億円として、再投資分につき株式譲渡益に課税しない制度が創設されます。
※令和5年4月1日以降の再投資について適用される予定

(3) 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化
 (1)や(2)の措置とあわせて、税負担の公平性の観点から、極めて高い水準の所得に対して最低限の負担を求める措置が導入されます。
 具体的には、株式や土地建物の譲渡所得、給与・事業所得、その他の各種所得を合算した所得金額(基準所得金額)から特別控除額(3.3億円)を控除した金額に、22.5%の税率を乗じた金額が、納めるべき所得税の金額を超過した場合には、その超過した差額を追加的に申告納税することとされます。
※令和7年分以降の所得税から適用される予定

===================================================

5 連載コラム「税制のプロに聞く」(第6回)

 主税局参事官室で租税条約を担当しております西島と申します。

 租税条約とは、文字通り、国同士が税金の取扱いについて約束をするものです。対象とする税金は所得税や法人税等です。皆さまの中には海外取引や海外勤務のご経験のある方もいらっしゃると思います。海外に出ると、その国でどのように税金が課されるのか分からないという不安がつきものですが、租税条約は、各国が課税できる範囲を定めることで、安心して国際的な取引や活動を行えるようにすることを意図しています。このほか、国際的な脱税や租税回避等に対処するための手段として、税務当局間の情報交換や徴収共助(滞納された税金の徴収を相互に支援すること)を可能にする規定もあります。

 各国が課税できる範囲を制限することには、二重課税のリスクを回避するという目的があります。条約がない場合には、各国はそれぞれの国内法に基づいて課税を行います。各国の税制は様々ですが、(1)「所得を取得する者が住んでいる国(居住地国)であることを理由として課税を行う」とともに、(2)「所得が生じている国(源泉地国)であることを理由として課税を行う」、という2つの考え方の組合せから成り立っているのが一般的です。日本では、居住者・内国法人についてその全ての所得(全世界所得)に課税を行う一方で、非居住者・外国法人については国内源泉所得に課税を行うこととしているのと同様です。

 これを国際的に見ると、日本居住者や日本企業が外国で生じた所得を取得する場合、日本が居住地国として課税を行い、外国が源泉地国として課税を行うこととなり、同じ所得について二重課税が生じることになります。この際、条約によってあらかじめ源泉地国である外国の課税を制限することができれば、二重課税のリスクを軽減することができるというわけです。

 そうすると、条約では常に源泉地国の課税を免除すればよいのではないかと思われるかもしれません。しかしながら、自国の課税をどこまで制限できるかについては国によって立場が異なります。日本のように海外に対して投資を行う側の国であれば源泉地国の課税を制限する方が有利に働くことが多いと思いますが、途上国のように投資を受け入れる側の国は、自国において所得が生じている以上、ある程度の課税は認められるべきと考える傾向があります。

 このように、その国の属性、政策、法制度等の様々な背景がありますから、条約交渉においては、まずお互いのポジションの違いを把握することが出発点になります。その上で、交渉を通じて提案の趣旨やこだわりの強さを確認しながら、何を受け入れ、何を受け入れないかを決め、ポジションの違いを埋めて行くという作業を行います。場合によっては、何回も交渉を重ねてようやく合意に至るということもあります。

 なお、交渉の主催国は交代で務めるのが慣行になっています。相手国で開催する場合には移動を伴いますし、環境も異なるので不利な面もあるのですが、相手国の状況を実際に見た上で交渉を行うことは有効です。また、コロナ禍においてオンライン交渉という手段も活用され始めましたが、人と人とが交渉するものですから、お互いの信頼関係を築くことが大事であり、その点においては対面交渉が引き続き重要な役割を果たしていくものと考えています。

 昨今では、OECDにおいて、経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対処するための国際交渉も行われています。今回はその内容に触れることはできませんが、そこでの議論にも表れているように、技術の進歩によって国際的な活動がより一般的なものとなっており、国際課税は今後ますます身近な問題となっていくことと思います。もし国際課税の問題に接した場合には、租税条約についても思い出していただければ幸いです。

財務省主税局参事官室 参事官補佐 西島大充

(参考)「租税条約に関する資料」のページ
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/index.htm

===================================================

6 編集後記

 1月があっという間に過ぎ去り2月になりました。新年感はだいぶ薄れてしまいましたが、読者のみなさま、本年も税制メルマガをよろしくお願いいたします。

 今号の連載コラムは、租税条約担当の記事をお届けしました。相手国との交渉に当たっては、互いのバックグラウンドを理解し歩み寄る必要があるとのことですが、一個人同士ですら交渉が決裂することがあることを思うと、一国を代表して交渉をまとめることは一筋縄ではいかないのだろうなと感じました。

 今号も最後までお読みいただきありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

財務省主税局総務課 広報係 内田


===================================================

当メールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。
mailto:mg_tax@mof.go.jp

=================================

税制メールマガジンのバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/mail_magazine/index.htm

=================================

財務省メールマガジンの配信中止・登録内容の変更は、こちらでお願いします。

配信中止
 → https://www.mof.go.jp/e-service/unsubscribe1.htm
登録内容の変更
 →https://www.mof.go.jp/e-service/modify1.htm