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PRI Open Campus~財務総研の研究・交流活動紹介~44

財務総合政策研究所の「資料情報部」の業務
財務総合政策研究所資料情報部

 今月のPRI Open Campusでは、財務総合政策研究所の資料情報部で行っている財政史と財政金融統計月報の編纂・刊行等の業務と、財務省図書館の業務や役割について、「ファイナンス」の読者の皆様にご紹介します。

1.資料情報部の業務
(1)「財政史」の編纂・刊行
 資料情報部では、財務省の正史である「財政史」の編纂・刊行業務を行っています。「財政史」とは、財務省の行政の事績を政策の分野別(予算、税制など)に期間を区切って編纂したものです。現在は、「明治財政史」から「平成財政史-平成元~12年度」までの7シリーズ、全117巻が刊行されているほか、財務総合政策研究所のホームページ(https://www.mof.go.jp/pri/publication/policy_history/index.htm)において電子データの公表を行っています。
  「平成財政史-平成元~12年度」の「監修者のことば」には、「近代国家成立以来の財政金融の歴史記録を、財政当局が自ら一貫して記述刊行しているのは、世界的にもほとんど例がなく、日本の誇るべき貴重な文化遺産といって差し支えないのではないだろうか。」といった記述があります。この言葉に示されている伝統をしっかりと受け継ぎ、後世に伝えていくことが資料情報部の重要な使命です。また、財政史は単なる資料集ではなく、後世の人が当時の時代背景等についても理解できるものであることが望ましく、記述が結果の羅列に留まることなく、政策決定に至った状況等について可能な限り記述を行うことによって、財務省職員の財務行政の企画・立案や一般の学術研究の参考の用に供するという編纂の目的を果たすことを目指しています。財政史を読むことによって、他の複数資料等を別途読み込むことなく財務省の行政事績が分かるように編纂方法を工夫するとの考え方の下で、現在、次なる財政史の刊行に向けて準備を進めています。

(2)「財政金融統計月報」の編纂・刊行
 資料情報部では、財務省の主要な業務統計や一般に公表されている統計などを特集テーマごとに収録した財政金融統計月報を刊行しています。財政金融統計月報は、昭和24年(1949年)より刊行しており、インターネットによる情報提供が普及していなかった時代においては、特集テーマに関連する統計データが一つにまとまり、長期間に亘って入手できる資料が整理されていることは、データを利用するユーザーにとって大変利便性が高かったと考えられます。また、統計データだけでなく、例えば当該年度に税制等の改正があれば、その改正内容の記述が網羅されていることも、財政金融統計月報の特色の一つです。刊行された冊子のほか、財務総合政策研究所のホームページ(https://www.mof.go.jp/pri/publication/zaikin_geppo/index.htm)において電子データの公表も行われており、読者の皆さまにご覧いただくことが可能です。

(3)財務省図書館の運営
 資料情報部では、財政や経済を中心に約17万冊の蔵書を有している財務省図書館の運営を行っています。また、財務省図書館は国立国会図書館支部としての役割も担っています。
 皆様は図書館の業務についてどのくらいご存じでしょうか?次節では、知っているようで意外と知らない図書館業務についてご紹介します。

2.財務省図書館の紹介
(1)財務省職員を対象とした財務行政に関する専門図書館
 財務省図書館は、財務省職員が職務を遂行するために必要な図書を所蔵し、財務行政に関する専門図書館として、財務省職員を対象に図書館サービスの提供を行っています。利用できるのは財務省職員に限定されており、一般の方は利用できません。

(2)財務省図書館の沿革
 財務省図書館の沿革は以下のとおりです。
・明治4年(1871年)に大蔵省記録寮記録部が設置され、旧幕府時代の財政関係文書を保管したことに始まります。
・その後、官制分課規程の改正に伴う所属の返還を経て、大正7年(1918年)に「大蔵省文庫」として設置されました。
・大正12年(1923年)の関東大震災に罹災し、約20万冊あったとされる開設以来のほとんどの蔵書を焼失しましたが、文庫復興のため総力をあげて出先機関等より法令・通達・統計等の資料収集に努めました。
・関東大震災の経験から、バラック建て仮庁舎の敷地内に、耐火装備が施されたコンクリート2階建ての独立した書庫が設置されました。
・昭和15年(1940年)の大手町官庁街の火災により大蔵省庁舎が全焼しましたが、大蔵省文庫は焼失を免れました。
・昭和23年(1948年)に国立国会図書館が設置され、「国立国会図書館支部大蔵省文庫」と併せ称することになりました。
・昭和60年(1985年)5月の大蔵省財政金融研究所設立時に同研究所の所属となりました。
・平成12年(2000年)7月の機構改正により、財務総合政策研究所に名称変更しました。
・平成13年(2001年)1月の中央省庁再編に伴い、「財務省図書館」に名称変更し、現在に至っています。
写真 「大蔵省文庫」当時の看板
写真 「国立国会図書館支部」の看板
写真 「財務省図書館」の看板

(コラム1)図書館の種類
 図書館と聞いて、まず皆様が思い浮かべるのは都道府県や市区町村にある公立図書館だと思いますが、図書館と呼ばれる施設は公立図書館だけではありません。図書館は、利用者の種別によって、公共図書館、大学図書館、学校図書館、専門図書館、国立図書館、その他の施設に設置される図書館に分けられます。このコーナーでは、それぞれの図書館の役割などについて簡単にご説明します。
・公共図書館は、図書館法(昭和25年法律第118号)を根拠法として、地方公共団体の設置する公立図書館と日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人の設置する私立図書館からなります。公立図書館は、地域住民に図書館サービスを無料で提供する図書館です。
・大学図書館は、国公立・私立を問わず、大学に設置された図書館を総称したもので、その大学の学生・教職員の学習・研究に必要な資料を保存し提供する組織です。
・学校図書館は、学校図書館法(昭和28年法律第185号)により、図書館資料を収集し、整理及び保存し、児童又は生徒及び教員の利用に供することによって、健全な教養を育成することを目的として、すべての学校に設置しなければならないこととされています。
・専門図書館は、各種の組織体の構成員を対象とし、その組織の目的の実現のために設置される図書館で、官公庁の設置する図書館、民間団体、企業の図書館などがこれにあたります。財務省図書館も専門図書館に分類されます。
・日本で唯一の国立図書館である「国立国会図書館」は、すべての国民にサービスする役割と同時に、国会の立法・調査活動をサポートする役割を担っています。概要については、後ほどご説明します。
・その他の図書館としては、点字図書館、病院図書館、刑務所図書館など、設置施設や利用者・利用目的が特定される図書館があります。

(3)所蔵資料
ア 特色
 財務省職員を対象とした財務行政に関する専門図書館として、財政、経済、金融及び法律分野の図書資料を中心に収集しており、全蔵書の半数を占めています。特に、各分野とも理論、政策及び歴史について重点的に収集整備を行っています。
イ 特別コレクション
 特別コレクションとして多くの資料を所蔵していますが、その中から一部をご紹介します。
・予算書(明治6年~)
・決算書(明治元年~)
・日本外国貿易年表(明治15年~)
・大蔵省沿革志(全20巻)
・吹塵録(全25巻)
 『吹塵録』(すいじんろく)は、勝海舟が収集し、大蔵大臣だった松方正義によってまとめられた、江戸幕府の財政経済を中心とした史料集です。
写真 『予算書』
写真 『決算書』

(コラム2)国立国会図書館デジタルコレクション
 国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/ja/)は、国立国会図書館で収集しているデジタル資料を閲覧できるサービスです。デジタル化資料のうち、著作権保護期間が満了したコンテンツは、インターネット公開しており、ご自身の端末(パソコン、タブレット等)から検索・閲覧・印刷が可能となっています。権利状況によってインターネットで公開できない資料については、個人送信や図書館送信、遠隔複写サービスで閲覧できるものもあります。
 上記で挙げた『吹塵録』も、国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されていますので、ご自身の端末から閲覧することが可能となっています。ご興味のある方はご覧になってはいかがでしょうか。

(コラム3)図書館司書の仕事
 それぞれの図書館には図書館業務を行う専門的職員が勤務しておりますが、図書館法が定める公共図書館に配置される専門的職員を司書及び司書補といいます。司書の資格は、図書館法で定められた国家資格です。司書の仕事と聞いてまず思い浮かべるのは、図書資料の貸出・返却等の手続きを行うカウンター業務ではないでしょうか。確かにこれらも大切な業務ですが、実は皆様が想像している以上に、司書の仕事は広範囲にわたっています。司書の仕事内容は図書館の種類によって多少の違いはありますが、ここでは一般的に知られている公立図書館の例を挙げて司書の主な仕事をご紹介します。

・カウンター業務
 カウンター業務には、図書資料の貸出・返却、予約の受付、新規利用者のカード発行及び利用者情報のシステム登録、レファレンス、資料の修繕、延滞資料の督促などの業務があります。
 とりわけ、レファレンス業務は、利用者の求めに応じ、検索方法についての援助・所蔵調査・所蔵機関の紹介・図書館間貸出・デジタル化資料の閲覧・複写の援助など多岐にわたり、検索・捜索の技術や著作権法の理解などが求められる重要な業務となっています。
・受入資料のデータ入力・装備
 新規に受け入れた書籍を利用者に提供する前に、書誌情報を図書館システムに登録します。装備とは、バーコードや分類記号シールの貼付、蔵書印の押印、保護カバーをかけるなど、利用に供するための準備をすることを言います。書籍にカバー(ブックコートフィルム)をかける作業は、多少コツのいる作業です。
・配架と書架整理
 利用者から返却された図書資料を元に戻すことを配架といいます。利用者が求める資料を探しやすいように、分野ごとに資料を整えて配架します。
・選書
 日々出版される数多の書籍の中から、各図書館に必要なものを選書し、購入の手続等を途切れなくする必要があります。公立図書館では選書の偏りがないようにさまざまなジャンルから平等に本を選定しています。
・広報活動
 新着案内やランキング、その他利用者に役立つ情報を発信します。

 財務省図書館では、上記の司書業務のほか、国立国会図書館支部図書館としての業務や図書館運営上の業務(予算関係、契約関係、図書館システム整備等の行政事務)があります。筆者を含む一般行政事務職員のみでは到底対応しきれないので、司書の専門的知識が必要な業務は、司書の資格を有している専門的職員が非常勤職員として活躍しています。司書業務のうち、レファレンス対応は特に専門的知識と経験が必要な業務です。

3.国立国会図書館支部図書館としての役割
(1)国立国会図書館
 財務省図書館は国立国会図書館支部図書館としての役割を担っていますが、そもそも国立国会図書館とはどういったものかをご存知でしょうか。ここでは、国立国会図書館の概要についてご説明します。
〈沿革〉
・昭和23年(1948年)に、国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)により設立されました。
・第二次世界大戦後、国会が国権の最高機関になると、強力な調査機能を備えた議会図書館設置の要望が起こったことが背景にあり、衆・参両議院議長は連合国軍最高司令官総司令部に対し、図書館専門家の派遣を要請しました。
・その結果、昭和22年(1947年)末に米国図書館使節が来日し、この使節の助言により、基本構想がまとめられ、国立国会図書館法案成立の基礎となりました。
・国立国会図書館には、二つの源流があります。一つは明治23年(1890年)に開設された旧憲法下の帝国議会に属していた貴族院・衆議院の図書館、もう一つは明治5年(1872年)に設立され、行政機関である文部省に属していた帝国図書館(創立時は「書籍館」)です。これら源流となった二つの図書館の蔵書のほとんどが国立国会図書館に引き継がれています。
・昭和43年(1968年)に現庁舎である本館が完成し、昭和61年(1986年)に新館を建設しました。
・平成12年(2000年)に日本で初の国立の児童書専門図書館である国際子ども図書館が部分開館し、平成14年(2002年)5月に全面開館しました。
・平成14年(2002年)10月に国立国会図書館関西館が開館しました。

〈使命〉
・国立国会図書館法は、その前文で、「国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される」とうたっています。

〈役割〉
・国立国会図書館設立の第一の目的として、我が国の再建と国際平和に貢献するために、立法の基礎となる調査機能を備えた議会図書館として機能することにありました。国会議員の立法活動を補佐するために、国立国会図書館の全資料を背景として国政審議全般にわたる調査活動や図書館サービスを行っています。
・また、議会図書館の役割に留まらず、行政及び司法や国民に対して広く図書館サービスを行う、わが国唯一の国立図書館としても機能しています。国立国会図書館は、日本を代表する図書館として、出版文化財の保存に努めるとともに、急速に発展する情報化社会における一大情報センターとして、迅速かつ正確な情報を提供する大きな役割があります。

(2)支部図書館制度
 国立国会図書館は、行政及び司法の各部門に対して図書館サービスを提供しています。この図書館サービスを提供するために、各府省庁及び最高裁判所に現在27館6分館の支部図書館が設置されています(図表3 支部図書館一覧参照)。ここでは、支部図書館制度の概要についてご説明します。

〈沿革〉
・国立国会図書館が発足する以前から政府及び裁判所には図書館がありましたが、当時は図書館の基盤整備が遅れており、また図書館間の連係も活発ではありませんでした。
・支部図書館制度の創設は、昭和22年(1947年)末、国立国会図書館設立のために来日した米国図書館使節の助言と勧告によるところが大きく、この使節は、国立国会図書館の機能のうち、“政府全部門に対する文献に基づく調査とレファレンスの奉仕”を重視し、そのために国立国会図書館を中核として政府図書館の一大協力組織を確立することを勧告しています。
・この勧告に基づき、国立国会図書館法にこの組織の制度化が盛り込まれ、こうして世界に例のない官庁図書館のネットワーク組織としての支部図書館制度が誕生しました。

〈支部図書館制度とは〉
・各府省庁及び最高裁判所に設置されている各支部図書館は、それぞれの特色ある蔵書を持ち、当該分野に関する専門図書館として、その支部図書館が所属している府省庁・裁判所の職員に対して、閲覧、貸出し、レファレンス等の図書館サービスを提供することを通じて業務遂行を支援しています。
・支部図書館制度は、国立国会図書館を中央館としてこれらの支部図書館により形成される図書館ネットワークです。このネットワークのもとで各府省庁等の刊行物の交換、資料の相互貸借、各種の調査業務等、幅広い図書館協力業務を行っています。
・支部図書館制度は、世界の国立図書館に例を見ないユニークなものであり、わが国の図書館ネットワークとしても先駆的な存在です。

(3)納本制度
 国立国会図書館法第24条に基づき、国の諸機関の出版物が発行されたときは、直ちに法定部数を行政及び司法の各支部図書館及びその分館の窓口を経由して、国立国会図書館に納本することとされています。財務省図書館においても、財務省が発行した刊行物(一般会計予算、ファイナンス、債務管理リポート、フィナンシャル・レビュー、財政金融統計月報、財政史等)を国立国会図書館に納本しています。

(参考資料)
・国立国会図書館ホームページ
https://www.ndl.go.jp/
・日本図書館協会ホームページ
https://www.jla.or.jp/
・『行政・司法各部門支部図書館要覧 令和3年度版』

財務総合政策研究所
POLICY RESEARCH INSTITUTE, Ministry Of Finance, JAPAN
過去の「PRI Open Campus」については、
財務総合政策研究所ホームページに掲載しています。
https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.html

図表1 「財政史」各シリーズ
図表2 組織図