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コラム 海外経済の潮流144

中国貿易概況

大臣官房総合政策課 渉外政策調整係 和田 尚馬


1.はじめに
本稿を読まれている皆さまにおかれては本日をいかがお過ごしだろうか。シャツに袖を通し、お気に入りの靴を履いてお出かけをする。そんな素敵な朝を迎えることができれば、きっと気分よく一日を過ごすことができるだろう。こういった何気ない日常を形作っている衣服や靴、その他さまざまな製品をよくよく見てみると中国製と表記されていることが珍しくない(筆者も何気なく今着用しているシャツのタグに目を落としたが中国製であった)。今や我々日本人にとって中国製品は切っても切れないほど日常に浸透しており、中国が「世界の工場」と呼ばれるようになってから久しいことを改めて実感させられる。そんな世界の工場・中国ではあるが、最近の輸出入動向を見てみると状況はあまり芳しくないようだ。本稿では2022年における中国貿易の状況について見ていくこととする。


2.2022年の中国貿易
中国における2022年通年での輸出額は3兆5,936億ドル、輸入額は2兆7,160億ドルとなっており、2021年通年の輸出額3兆3,571億ドル、輸入額2兆6,867億ドルを上回っている。
一方で輸出入の伸び率を見てみると、2022年の輸出は前年比7.0%、輸入は同1.1%にとどまっており、2021年の輸出同29.6%、輸入同30.0%を大きく下回っている。
2021年の輸出入伸び率が特に高い水準であった点には留意する必要があるが、2022年の伸び率は低水準にとどまった。
2022年中の動きについてもう少し細かく見ていくと、前年同月比では輸出、輸入ともに10月から12月にかけて3か月連続のマイナスに転じており、年後半にかけて状況が悪化してきたことが確認できる。
10月から12月の貿易落ち込みについては、インフレや利上げの影響で景気減速懸念が強まっている欧米向けの輸出が落ち込んだこと、厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策の影響で内需が停滞したことなどが要因として挙げられている。


3.国・品目別にみる中国貿易
ここからはもう少し細かく見ていこうと思う。
まず輸出入額の相手国・地域別シェア*1について、輸出では米国(16.2%)、ASEAN(15.8%)、EU(15.6%)の順に大きくなっている。また、輸入についてはASEAN(15.0%)、EU(10.5%)、台湾(8.8%)と続いている。輸出入ともにここ数年でASEANの存在感が増してきており、輸出に関しては2022年にEUを抜き米国に次ぐ2番目のシェアとなった。
この点については、欧米で利上げやインフレによる景気減速懸念が強まっていることや米中摩擦を受けて、欧米に取って代わる貿易相手としてASEANが台頭してきたことが窺える。
なお、ASEANに占める同年の各国シェアについては、輸出が大きい順からベトナム(25.9%)、マレーシア(16.5%)、シンガポール(14.3%)と続き、輸入がマレーシア(26.9%)、ベトナム(21.6%)、インドネシア(19.1%)となっている。
次に品目別*2にドルベースの輸出入シェア*1を見ていく。輸出においてはシェアの大きい順に機械類等(41.9%)、紡織用繊維及びその製品(8.9%)、卑金属及びその製品(8.4%)となっており、輸入においては機械類等(31.2%)、鉱物性生産品(28.6%)、化学工業製品(7.3%)の順に大きかった。
輸出入ともに「機械類等」のシェアが最も大きくなっているが、その内訳は輸出入で異なる。
機械類等の輸出では、スマートフォンなどを含む電話機器及びその他の機器、コンピュータなどの自動処理機械等の占めるシェアが大きい一方で、輸入では半分近くが集積回路である。すなわち集積回路などの部品を輸入し、スマートフォンやコンピュータなどの製品を国内で製造し、輸出するといった構造となっていることが読み取れる。
また、輸入で機械類等と同程度のシェアである「鉱物性生産品」の内訳では原油と天然ガスが合わせて6割弱であり、エネルギー資源の輸入が大半を占めていると言える。ちなみに原油と天然ガスに占めるロシアのシェアはそれぞれ16.0%、12.0%と2021年の同15.7%、6.0%から拡大しており、特に天然ガスで顕著だった。


4.おわりに
ここまで2022年の中国貿易の概況、国別・品目別の状況を整理してきた。前述の通り、「ゼロコロナ」政策や欧米の景気減速懸念を受けて、2022年は輸出入の伸びが鈍化したが、2023年は、「ゼロコロナ」政策の撤廃を受け、世界経済の状況次第で輸出入が改善するとの見通しもある。日本にとって輸出入とも1位の貿易相手国である中国の経済及び貿易の動向は引き続き注視する必要がある。
(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見である。

図表1 中国の年間輸出・輸入額
図表2 中国の年間輸出・輸入の伸び率
図表3 2022年の前年同月比輸出・輸入伸び率
図表4 国・地域別輸出シェア(2022年、ドルベース)
図表5 国・地域別輸入シェア(2022年、ドルベース)
図表6 品目別輸出シェア(2022年、ドルベース)
図表7 品目別輸入シェア(2022年、ドルベース)
図表8 輸出の機械類等の内訳(2022年、ドルベース)
図表9 輸入の機械類等の内訳(2022年、ドルベース)
図表10 輸入の鉱物性生産品の内訳(2022年、ドルベース)

*1) 中国海関総署から取得した数値を基に筆者にて試算。
*2) HSコードの「部」の単位で品目別に分類している。