主計局主計官 坂本 成範
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基本的考え方 
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令和5年度の国土交通省・公共事業関係予算については、主に以下の考え方により、編成を行った。 
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(1)公共事業関係費については安定的に確保(6兆600億円:対前年度+26億円)し、中でも、 
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新技術を活用した老朽化対策の効率的実施 
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特定都市河川の指定などハード・ソフト一体となった流域治水対策や、先端的なデジタル技術を活用した洪水予測技術の開発加速等の総合的な取組 
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など、防災・減災、国土強靱化の取組を推進。 
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(2)このほか、 
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生産性向上・成長力強化につながるインフラ整備 
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建設・建築DXの活用や脱炭素化(GX)の推進 
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人口減少に対応した広域的なコンパクト・プラス・ネットワークの推進 
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といった観点から、メリハリ付けを強化。 
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(3)地域公共交通ネットワークの再構築に向けて、 
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社会資本整備総合交付金における「地域公共交通再構築事業」の創設等による、鉄道設備やバス施設の刷新など、地域の創意工夫を活かした取組の支援 
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エリア内交通ネットワークの利便性向上・効率化に向けた交通事業者のインセンティブを引き出すため、地方自治体が交通事業者に一定エリアの公共交通を一括して長期で運行委託(エリア一括協定運行)する場合への補助制度の創設 
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などを通じて、公共事業・非公共事業を組み合わせて総合的・重点的に支援。 
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(4)このほか、観光や航空分野も含め、ポスト・コロナを見据えたDXの推進や成長投資を通じた生産性向上、持続可能性確保等に向けた取組に重点化。 
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(5)「海上保安能力強化に関する方針」(令和4年12月16日関係閣僚会議決定)に基づき、尖閣領海警備能力や広域海洋監視能力の強化などの海上保安能力を抜本的に強化。 
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総額の水準 
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令和5年度の公共事業関係費の一般会計予算は、前年度比+26億円(+0.0%)の6兆600億円としている。 
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国土交通省関係予算については、前年度比+205億円(+0.4%)の5兆8,714億円としている。 
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主な施策の概要 
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令和5年度の国土交通省予算において重点的に措置している主な施策は以下のとおりである。 
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※以下、計数は令和4年度当初予算⇒令和5年度予算 
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(1)防災・減災、国土強靱化の推進 
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ア.防災・減災、国土強靱化に資するインフラ整備の着実な推進 
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(ア)老朽化対策への重点化 
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老朽化対策 
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6,701億円⇒6,817億円(+116億円、+1.7%) 
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うち道路メンテナンス事業費補助 
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2,234億円⇒2,245億円(+ 11億円、+0.5%) 
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うち河川メンテナンス事業費補助等 
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151億円⇒ 158億円(+ 7億円、+4.6%) 
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A.既存ストックを最大限活用し、将来の更新費用の低減を図るため、新技術等も活用しつつ事後保全から予防保全への移行に向けて老朽化対策に重点化。 
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B.道路メンテナンス事業費補助においては、自治体におけるライフサイクルコストを意識した老朽化対策及び新技術を活用した効率化等を推進するため、長寿命化修繕計画において「集約・撤去や新技術等の活用に関する短期的な数値目標及びそのコスト縮減効果」を定めることを補助の要件化。 
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(イ)社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金の重点配分の強化 
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A.重要政策課題に対する重点配分の強化 
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新技術を活用したインフラメンテナンス、ハード・ソフト一体となった防災・減災対策や、地域公共交通ネットワークの再構築など、分野横断的に対応すべき重要政策課題に意欲的に取り組む整備計画に対する交付金の重点配分を強化。 
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B.道路整備事業 
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(a)地域が策定する交通・まちづくり等に関する計画に位置付けられた自動運転関連施設やBRT等の公共交通の走行環境整備について、新たに重点配分対象化。 
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(b)社会資本整備総合交付金(ストック効果を高めるアクセス道路の整備)、防災・安全交付金(国土強靱化地域計画に基づく事業)について、長寿命化修繕計画(個別施設計画(橋梁))が未策定の地方公共団体は重点配分の対象外とする。 
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C.海岸事業 
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砂浜の保全・再生に向けて、総合的な土砂管理の観点から、気候変動等の予測を踏まえた砂浜管理への転換や、事業間の連携による効率的な侵食被害対策を推進するため、「関係機関と連携し、河川、ダム、港湾、漁港等から発生する土砂を有効活用することが社会資本総合整備計画(又は農山漁村地域整備計画)に示されていること」を要件に、交付金の重点配分を実施。 
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イ.ハード・ソフト一体となった防災・減災対策の推進 
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(ア)流域治水の推進(特定都市河川の指定の促進) 
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40億円⇒73億円(+34億円、+84.1%) 
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土地の利用規制を含む流域治水対策の実行ツールである特定都市河川の指定を通じて総合的な治水対策を加速させるため、指定地域を対象とする事業を重点的に支援。 
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(イ)治水分野におけるデジタル技術の活用 
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68億円⇒71億円(+3億円、+5.1%) 
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流域情報等のオープンデータの拡充、サイバー空間上の実証実験基盤の整備等による水害リスク情報の充実や洪水予測の高度化などの取組を推進。 
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(ウ)気象庁における線状降水帯の予測精度向上等に向けた取組の強化等 
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132億円⇒142億円(+10億円、+7.2%) 
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(参考)令和4年度第2次補正予算(デジタル庁込み)664億円 
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近年頻発する線状降水帯の予測精度向上等を着実に推進するため、大気の3次元観測機能などの最新技術を導入した次期静止気象衛星の製造に着手するとともに、気象庁スーパーコンピュータ等を強化。 
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(エ)国土交通データプラットフォームを活用した防災・減災の取組 
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1億円⇒1億円(+0億円、+1.2%) 
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(参考)令和4年度第2次補正予算 1億円 
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※デジタル庁一括計上分を含む。 
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BIM/CIM(※)等データや官民が保有する様々なデジタルデータを連携し、一元的に検索・表示・ダウンロードを可能とするプラットフォームの整備を推進し、当該プラットフォームから得られるデータについて、防災シミュレーションや効率的な維持管理の取組への活用を図る。 
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(※)事業の計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入し、その後の施工、維持管理の各段階においてもこれを活用することで、事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る取組。 
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(オ)地方整備局等の執行体制の強化 
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23,653人⇒23,753人(+100人) 
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大規模自然災害からの復旧・復興や自然災害発生時におけるTEC-FORCEの被災自治体への派遣に加え、地域の防災・減災、国土強靱化の取組の推進を図る観点から、地方整備局等の人員を増員し体制を強化。 
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(2)生産性向上・建設DXの推進 
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ア.国際コンテナ戦略港湾等の機能強化 
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545億円⇒574億円(+29億円、+5.3%) 
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国際コンテナ戦略港湾(京浜港・阪神港)に寄港する国際基幹航路の維持・拡大を図り、我が国立地企業のサプライチェーンを安定化すること等を通じて、我が国産業の国際競争力を強化するため、 
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(ア)船舶の大型化に対応したコンテナターミナルの整備等を集中的に実施するとともに、 
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(イ)AIの活用等による港湾業務の自動化・省力化や物流手続の電子化を通じて、港湾物流における生産性向上を促進。 
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イ.高速道路における自動運転普及や脱炭素化の推進【新規】 
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0.01億円(皆増) 
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高速道路内における自動運転の普及や脱炭素化の推進のため、自動運転車両拠点施設やEV充電施設など、利用者利便の向上や物流生産性向上などに資する機能高度化施設と一体となって整備される駐車施設(「特定駐車場施設」)の整備を支援。 
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ウ.整備新幹線の着実な整備 
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(ア)整備新幹線の着実な整備 
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804億円⇒804億円(±0億円、±0.0%) 
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北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)における、着工以降の予期せぬ自然条件への対応や、関係法令改正等への対応に伴う事業費の増加への対応を含め、整備を着実に推進するための所要額を計上。 
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(イ)北陸新幹線事業推進調査 
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12億円(皆増) 
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北陸新幹線(敦賀・新大阪間)について、従来、工事実施計画の認可後に行っていた調査も含め、施工上の課題を解決するための調査を先行的・集中的に実施するための所要額を計上。 
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エ.BIМの活用促進・ICT施工の推進 
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3億円⇒6億円(+2億円、+73.7%) 
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(参考)令和4年度第2次補正予算 83億円 
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(ア)建築生産プロセスの効率化や建築物の質の向上に資する建築BIMの社会実装を加速化するため、中小事業者等が建築BIMを活用する建築プロジェクトへの支援を行い、あわせて建築BIMによる建築確認を可能とする環境整備等を進める。 
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(イ)BIM/CIM等の3次元モデルを活用した建設工事に係るデータを受発注者で情報共有し業務効率化・高度化を図るための、情報通信システム環境の整備や、BIM/CIM等3次元データに対応した人材育成のための環境整備を進める。 
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また、大手企業だけではなく、中小の建設業にもICT施工を普及拡大させるため、ICT施工技術者の育成を推進するとともに、ICT施工に必要となる機器・機械を認定し、積極的な導入を支援する。 
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オ.下水汚泥の肥料活用 
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37億円の内数等 
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(参考)令和4年度第2次補正予算 30億円 
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肥料の国産化・安定供給を図るべく、地方公共団体による下水汚泥のコンポスト化施設の整備や肥料利用促進のための案件形成を支援するとともに、汚泥処理プロセスからのリン回収等に関する実証事業を行う。 
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カ.まちづくりや防災に資する地籍調査への民間測量成果の活用 
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1億円⇒1億円(△0億円、△0.7%) 
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まちづくりや防災に資する地籍調査を更に加速するため、同調査の実施主体である自治体が、民間の開発事業に伴う既存の測量成果等を活用するための補助制度において、地籍調査として申請するために要する調査等の費用への定額補助を追加。 
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キ.適正な工期設定等による働き方改革の推進 
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0.4億円⇒0.4億円(△0.0億円、△7.1%) 
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令和6年4月から建設業に適用される罰則付き時間外労働規制も見据え、適正な工期設定と合わせ、特に中小建設業における生産性向上の課題等について更なる調査・検討を行い、引き続き生産性向上について事例集の作成等による横展開を図る。 
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(3)ポスト・コロナに向けた対応 
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ア.地域公共交通ネットワークの再構築 
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(ア)地域公共交通再構築事業【新規】 
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社会資本整備総合交付金 
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(地域公共交通再構築事業、 
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都市・地域交通戦略推進事業)5,492億円の内数 
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先進車両導入支援等事業17億円(皆増) 
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※先進車両導入支援等事業のうち、2億円は観光庁計上分。 
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A.地域づくりの一環として、持続可能性・利便性・効率性の高い「地域公共交通ネットワーク」の再構築に必要なインフラ整備に取組む地方自治体への支援を可能とするため、社会資本整備総合交付金において、 
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(a)新たに基幹事業として「地域公共交通再構築事業」を創設。 
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(b)「都市・地域交通戦略推進事業」の基幹事業に、既存の路面電車・バス等に加え、鉄道施設等の整備を支援対象に追加。 
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B.地域公共交通ネットワークの再構築のため、鉄道・バスに係る燃料電池車両、自動運転車両等、先進的な車両の導入に対する支援事業を創設。 
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(※)JRに関し、「新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針」については、これまで通り適切に運用。 
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(イ)地域公共交通確保維持改善事業 
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207億円⇒207億円(±0億円、±0.0%) 
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(参考)令和4年度第2次補正予算 415億円 
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A.これまでの地域バス等の運行費支援に加えて、エリア内交通ネットワークの利便性向上・効率化に向けた交通事業者のインセンティブを引き出すため、地方自治体が交通事業者に一定エリアの公共交通を一括して長期で運行委託(エリア一括協定運行)する場合への補助制度を創設。 
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B.このほか、自動運転の実証運行や先進・優良事例を含め、地域の多様な主体の連携・協働による取組を支援。 
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イ.空港使用料及び航空機燃料税の引下げ 
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(ア)新型コロナウイルス感染症の影響による航空会社の厳しい財務状況等を踏まえ、インバウンド回復に向けた航空会社の機材投資を引き続き後押しするため、国内線の空港使用料(着陸料、停留料及び航行援助施設利用料)及び航空機燃料税を軽減(500億円規模、上記空港使用料及び航空機燃料税の総額の約3割相当。)。 
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(イ)令和3年度から令和5年度における空港使用料・航空機燃料税の減免による歳入の減少を踏まえ、その回復を図るため、令和7年度から令和18年度にかけて、空港使用料を適正な水準に設定。 
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ウ.インバウンド回復に向けた戦略的取組 
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232億円⇒310億円(+78億円、+33.7%) 
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うち観光財源 90億円⇒200億円 
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(+110億円、+122.2%) 
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(参考)令和4年度第2次補正予算 1,500億円 
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(ア)観光立国復活に向けた基盤を強化するため、国内における新たな交流市場の開拓、コロナ後のニーズ変化も踏まえた地域の魅力向上・持続可能な観光地域づくり、観光産業の高付加価値化に取り組むための所要額を計上。 
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(イ)また、インバウンド消費額5兆円超の達成を含む、インバウンド回復に向けた戦略的取組を実施し、地方への誘客強化・消費拡大を図るための所要額を計上。 
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(4)海上保安能力の抜本的強化 
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2,231億円⇒2,431億円(+200億円、+9.0%) 
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※デジタル庁一括計上分を含む。 
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新たに取りまとめられた「海上保安能力強化に関する方針」(令和4年12月16日関係閣僚会議決定)に基づき、尖閣領海警備能力や広域海洋監視能力の強化などの海上保安能力の強化を推進。 
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ア.尖閣領海警備や広域海洋監視などの能力強化 
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(ア)大型巡視船5隻の就役 
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(イ)中型ヘリコプター3機の就役 
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(ウ)無操縦者航空機3機へ運用拡大 
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イ.業務基盤の整備 
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(ア)戦略的アセット管理による長寿命化の推進 
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(イ)サイバー対策等情報通信システムの強靱化 
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(5)国民の安心・安全の確保 
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ア.一般会計から自動車安全特別会計への繰戻し 
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54億円⇒60億円(+6億円、+10.2%) 
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(参考)令和4年度第2次補正予算 12億円 
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令和3年12月に財務大臣・国土交通大臣間で合意された内容(※)を踏まえ、被害者支援事業等が安定的、継続的に将来にわたって実施されるよう、引き続き繰戻しを実施。 
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(※)財務大臣・国土交通大臣間合意(令和3年12月22日)(抄) 
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- 毎年度の具体的な繰戻額については、令和4年度予算における繰戻額の水準を踏まえ、(中略)財務省及び国土交通省が協議の上、決定することとする。 
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- 一般会計からの繰戻しに継続して取り組む 
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(注)令和4年度予算における繰戻額:54億円 
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イ.通学路における交通安全対策の推進 
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500億円⇒555億円(+55億円、+11.0%) 
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令和3年に実施した通学路合同点検の結果も踏まえて実施している、速度規制等のソフト対策と歩道整備等のハード対策を適切に組み合わせた効果的な交通安全対策を推進するため、重点的に支援。 
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図表 《公共事業関係費》 
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図表 《国土交通省関係予算》 





