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和歌山県財政の現状と課題 ~財政見直し元年~

写真:和歌山観光PRシンボルキャラクター「わかぱん」

和歌山県財政課長 庄中 健太


本稿における意見は筆者個人の見解であり、所属する組織を代表するものではありません。

我が国の財政が危機的状況にあることは叫ばれて久しいですが、社会保障給付費の増加に加え、度重なる「異例の事態」への対応により、依然として開かれた「ワニの口」*1は閉じる気配を見せません。膨れ上がる当初予算、赤字国債を「財源」に行われる異例の規模の経済対策・コロナ対策等、他に類を見ぬ放恣な財政運営が行われているように感じます。
翻って、地方財政の現状はどうでしょうか。国による大規模な経済対策等に伴い、地方交付税以外にも多額の国庫支出金が歳入され、ここ数年の財政規模は膨れ上がっています。では、地方はこうした国の大規模な予算措置を歓迎しており、補助金が貰えてハッピーかというと、必ずしもそうではないかもしれません。当然、それぞれの自治体により状況も異なりますし、捉え方も人それぞれですが*2。
とまれこうした視点も踏まえ、ここでは筆者の属する和歌山県を取り上げ、今般発出された「財政危機警報」*3と併せて県財政の現状と課題*4をお伝えしたいと思います。


和歌山県の特徴
皆さんは和歌山県がどんな所かご存じでしょうか。和歌山県は紀伊半島南西部に位置し、県土の7割以上が森林で覆われています。「近畿のオマケ」と自虐的に呼称されることもありますが、実際に足を運べば豊富な観光資源に恵まれた魅力あふれる地域であることが分かります*5。
ただし、インフラ整備の観点では遅れが目立ち、道路改良率が58.5%に留まるなど、全国(77.5%)や近畿府県(70.9%)と比較して後進県といえます*6。また、その地形的特性ゆえ土砂災害や風水害が起こりやすく、将来は南海トラフ地震による甚大な被害も想定されていることから、防災・減災対策は最優先で行っていく必要があります。加えて、人口に占める高齢者の割合が3割を超え、26年連続で人口減少を記録するなど、高齢化の進展が顕著な県でもあります。こうした中で、物価高騰を始めとする新たな社会課題に対応し、子育て支援やGX・DX等の政策で国と歩調を合わせつつ、引き続き県民の生活を支え、産業を守り、また自然災害にも備えていく必要があります。


今後10年間の財政収支見通し
和歌山県は令和4年3月に策定した「新中期行財政経営プラン」*7(以下「プラン」)において、令和8年度までの5年間の財政収支を試算しています。プランによると、策定時209億円であった財政調整基金及び県債管理基金*8(以下「財調・県債基金」)の合計残高は、令和8年度当初予算編成後には139億円となる見込みでした。その上で、財政運営の目標として、令和8年度の両基金の合計残高を150億円程度維持することとしています。
しかしながら、今般令和5年度予算を編成するにあたり、プラン策定時からの実績の他、足下の物価上昇・金利高騰の影響といった社会経済情勢の変化を踏まえ*9、新たに令和14年度までの10年間の財政収支の推計を行ったところ、県の「貯金」である財調・県債基金が令和7年度に底を突くという結果が明らかになりました(参考1 財調・県債基金残高の見込み)。これは、何ら対策を講じなければ、令和7年度以降の予算編成が困難となり、災害等の不測の事態に対して必要な支援を行うことができない状況が起こり得ることを意味します。


財政収支悪化の要因
では、何故プラン公表から1年足らずでこのような状況となったのでしょうか。
新たな試算では、令和5年度当初予算を起点として、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」*10(以下「中長期試算」)のベースラインケースにより、経済成長条件等を想定し、伸び率を乗ずるなど機械的に推計しています。
財政収支(形式収支)は歳入と歳出の差分です。歳出については、足下の物価高騰・金利上昇を受け、経常人件費・退職手当のほか、公債費の利子償還金や光熱水費等が上方修正されています。反対に、歳入については、中長期試算における経済成長率の見通しが鈍化したことで県税が下方修正されています*11。このように、歳出の増に対して歳入の増が十分に追いついていかず、結果として昨年度と比較してより厳しい財政収支の絵姿となりました。
これは和歌山県のみならず、全ての自治体に当てはまる要因といえます。


長期的な影響
さらに、長期的な影響にも目を向けてみます。地方自治体の独自課税は容易でなく、国と異なり財源不足を補うための赤字地方債の発行も認められていません*12。そのため、歳入は経済成長による税収の増加分を見込んだとしても、人口減少や高齢化の進展に伴いその増加幅は鈍化する見込みです。歳出については、高齢化の進展によって社会保障関係経費が増加するとともに、公共事業の推進に伴い公債費が大きく増加していく見込みです。社会保障関係経費についてはそのほとんどが義務的な経費であり、裁量の余地はほとんどありません。他方、公債費についても県債の元利償還額なので義務的経費ではあるものの、その原因となるハード事業については県の裁量で行われるものです。和歌山県は前述の通りインフラ整備の後進県でしたが、近年は国による国土強靱化事業の推進もあいまって、公共事業を積極的に推進してきました。その結果、県内のインフラ整備や防災・減災対策が加速度的に進展した一方、起債措置による後年度の財政負担についても顕在化してきました。通常、公共事業等のハード事業を行う際は県債を起債して事業資金を調達します。これにより、各年度の財政負担を平準化することができますが、県の借金である県債残高はその分積み上がることになります。また、このうち後年度に地方交付税によって財政措置がなされるものもありますが、いずれにしても償還時には耳を揃えて返済する必要があります*13。
今回の試算によれば、和歌山県の場合、令和5年度当初予算の段階で1兆822億円*14であった県債残高は令和14年度には1兆967億円まで増加し*15、将来負担比率*16は219%から256%まで上昇する見込みです(参考2 県債残高と将来負担比率の推移*17*18*19)。
また、県債残高の増加に伴い、県債償還(毎年度の借金返済)に必要となる公債費は今後、確実に増加していきます。令和5年度当初予算で717億円ですが、令和14年度には894億円にまで増加します。このうち交付税措置を除いた実質的な公債費は225億円から436億円となり、10年で2倍近くに膨らむ見込みです(参考3 公債費の推移*21)。なお、仮に調達金利が1%上昇した場合*20、令和14年度には利子負担がさらに約33億円(2%上昇した場合、約67億円)増加することになります。

このように、和歌山県の財政状況について改めて分析したところ、物価高騰や金利上昇等を受けた歳出増等により、財調・県債基金が令和7年度にも枯渇するという試算結果となりました。また長期的にも、社会保障関係経費や公債費が今後増加を続けることで財政収支を悪化させていく可能性が改めて浮き彫りになりました*22。


財政危機警報
こうした認識の下、和歌山県は令和5年2月、「財政危機警報」を発出し、令和5年度を「財政見直し元年」と位置付けました。「財政危機警報」は、いわゆる「財政非常事態」を宣言するものではありませんが、現状を放置すれば財政危機に直面しかねないという認識を県民と共有し、実際の危機に陥る前に警鐘を鳴らすものです。高齢化の進展に伴い増加する社会保障関係経費や過年度に発行した県債の償還のため今後確実に増加していく公債費を賄い、さらには県内の課題解決のための新たな財政需要にも機動的に対応することができるよう、財政構造を持続可能なものへと転換していく必要があります。


公債費負担軽減措置
和歌山県では、令和4年度2月補正予算において、後年度の公債費負担軽減のための措置を講じました。具体的には、税収の上振れや地方交付税の再算定等で生じた余剰財源を活用し、(1)公債費臨時対策基金の設置(83.5億円)及び(2)借換債の発行抑制(62.0億円)を行っています。
まず、プランの終期年度である令和8年度までの公債費負担を軽減するため、臨時の基金(公債費臨時対策基金)を新設しました。これは、前年度当初予算からの公債費増加分の2分の1に相当する額を取り崩し、公債費償還財源として活用するための基金です。公債費の増加分を全て賄うためには残り2分の1相当額の財源捻出を要しますが、これについては予算編成過程において財源捻出することとしています。これらを併せて「公債費償還財源確保スキーム」として、毎年の公債費増加分の財源を確保していくこととします(参考4 公債費償還財源確保スキームのイメージ)。
次に、借換債の発行抑制について説明します。県債は通常10~30年で償還します。しかし、和歌山県の場合、20年債/30年債であっても契約上は10年で満期が到来します。したがって、10年毎に一括で残債の償還を終え、残存する10年/20年分は新たに借り入れることで、実質的に償還年限を延長しています。今回の措置は、この満期到来時に行われるはずであった新たな借入(借換)を実施せず、その財源を一般会計から県債管理特別会計へ繰り出すものです*23。借換債の発行抑制に用いた財源は62.0億円ですが、これは向こう10年間、公債費(元利)を毎年5~6億円ずつ低減させ、その後の10年間を加えると、全体で65.6億円の公債費抑制効果を持ちます*24。


公債費償還財源確保スキームの効果
「財政見直し元年」である令和5年度からプラン最終年度の令和8年度までの間、前述の公債費償還財源確保スキームを着実に実施した場合、財政収支見通しは幾分か改善します(参考5 財調・県債基金残高の見込み)。これによって、令和7年度に底を突くと試算された財調・県債基金は、枯渇時期が令和10年度まで先送りできる見込みです。それでも3年の延命に過ぎないのは、このスキームだけでは前年度からの公債費増加分及び過年度財源捻出分しか対応できないからです。したがって、なお残る財源不足については時間を稼いでいる間、予算を賢くやりくりすることでさらに収支を改善させていく必要があります。
予算の「賢いやりくり」の例として、例えば、(1)有利な地方債の活用、(2)国に対する公共事業の要望の一元管理、(3)既存事業の精査や予算の組替え等が挙げられます。


方策(1) 有利な県債の活用
一言でいえば、還元率の高い「お得な買い物」をすることです。県の借入金である県債には、返済年度に国から一定のキャッシュバック(交付税措置)のある銘柄もあります。最も典型的なものが臨時財政対策債です。臨時財政対策債は地方交付税の財源不足を補うために地方が「肩代わり」して発行する債券であり、元利償還金相当額の全額が後年度地方交付税の基準財政需要額に算入されるため、地方の実質的な負担はありません*25。
ただし、臨時財政対策債は例外で、地方債は原則ハード事業(投資的経費)に限定されています。その際、地方債充当率(以下「充当率」)と交付税措置率(以下「措置率」)という考え方があります。充当率というのは国庫補助を除く地方負担分(補助裏)のうちどの程度起債が可能なのか、措置率というのは実際の起債額(に対する毎年度の元利償還金)のうちどの程度交付税措置がなされるかを示すもので、総務省告示等で規定されています。例えば、和歌山県で100億円の公共事業があり、国庫補助率が2分の1、充当率が90%、措置率が22.2%とします。この場合、事業実施に当たり国から50億円の補助を受けられるため県負担額は50億円です。この県負担額50億円の90%にあたる45億円は起債によって資金調達ができ、さらに45億円×22.2%の10億円は後年度に地方交付税として国から財政措置がなされます。よって、100億円のうち、国庫補助金と地方交付税を除く実質的な県負担額は40億円で、このうち当該年度に必要な一般財源は5億円ということになります。
公共事業に関する代表的な起債メニューとしては、(1)一般単独事業債、(2)防災・減災・国土強靱化緊急対策事業債(以下「国土強靱化事業債」)、(3)公共事業等債が挙げられます。それぞれ充当率・措置率は(参考6 地方債の例)の通りです。
一般単独事業債は、国の補助対象外の地方独自事業を実施するために起債される地方債です。事業費に対して75%の起債が認められていますが、交付税措置はありません。
国土強靱化事業債は平成30~令和2年の「3か年緊急対策」及び令和3~7年の「5か年加速化対策」に基づいて行われる防災・減災、国土強靱化に資する事業を実施ために起債される地方債です。事業費に対して100%の起債が認められ、50%の交付税措置があります。
公共事業等債*26は、国の当初予算で措置された公共事業等を実施するために起債される地方債です。事業費に対して90%の起債が認められ、22.2%の交付税措置があります*27。
このように受けられる措置に差があることから、選択可能な地方債については措置率の高い県債を活用することで、公債費から当該年度に措置される交付税額を除いた「実質的な公債費」の額を抑制することができます。ただし、国土強靱化事業債は地方自治体にとって魅力的な起債ではありますが、事業量を無尽蔵に増やすことは後年度負担を増大させることに繋がるため、見合いの公共事業等を縮減することを目的とした事業総量のコントロールが重要となります。


方策(2) 国に対する要望の一元管理
国庫補助を受けて行う公共事業については、N+1年度事業をN年度春の時点から国へ要望します。つまり、公共事業関係経費はN+1年度予算編成方針が策定され当初予算案の高さが決定されるより以前に、既に国の内示待ちの状態になっています。仮に国の補助を受けて行う公共事業全体の当初予算額を100億円とします。まず、県の社会資本整備計画に基づき必要な事業量を確保すべく事業所管部の局単位で所管省庁へ要望を提出しますが、N+1年度当初予算で措置されるであろう額(100億円)を下回ることのないよう事業毎に過去の内示率等を基に要望がなされ、結果的に全体の予算額を上回った要望額(例えば200億円)となるのが近年における本県の実情です*28。国からN+1年度予算の内示を受け、事業総額が決定するのがN年度末ですが、ここで仮に120億円相当の事業が内示された場合、当初予算で措置されていなかった20億円についてはN+1年度の補正予算で措置する必要があります。加えて、国土強靱化事業といった補正予算についても要望があり、これらに関しても地方債を財源とする追加の予算措置を行います*29。
このこうした本県の要望プロセスにおける問題点は、公共事業の当初予算額が実質的な意味を失い、どの程度の予算措置がなされるかは各要望部局及び国の内示率に依存して決定されるという点です。国の内示率は他律的*30であり、少なくとも事業要望の適切な管理がなされなければ、意図せず県債残高が積み上がり、後年度の公債費が増加していくことになりかねません。県債残高の増加というのは、裏を返せば県の資本形成の増加であり、これは県民の利便性を高めるとともに、便益を受ける世代で公平に負担を分かち合う意味でも、それ自体が問題ということはありません。ただし、その事業ペースを管理する体制を備えず野放図に事業量を拡大すれば、公債費負担に財源を割かれ、必要な政策を実行することができなくなります。この状況を打開する一つの方策として、財政当局も含め公共事業の事業量・要望額を一元的に管理していくことで、長期的視野を持って起債額をコントロールしていくことが考えられます。


方策(3) 既存事業の精査
最もイメージしやすいのが既存事業の精査です。ただし、本県の財政構造を見ると義務的経費(人件費・公債費・扶助費)が3分の1以上を占めることに加え、政策的経費の中でも義務的性格のある社会保障関係経費や維持修繕費、目的の決まっている中小企業制度融資貸付金のほか、公共事業費をはじめ一足飛びに減額することが適切でない費用も多くあります(参考7 令和5年度当初予算の歳出(性質別))。また、投資的経費はその多くが起債によって措置されることから、これを削減したところでたちまち当年度に十分な一般財源を生み出すことはできません。
本県はこれまで、秋に公表する「予算編成方針」において既存事業の一部を対象にシーリングを実施してきましたが、毎年の捻出額は1億円前後にしかなりません。また、新規事業の予算要求は青天井で受け付け、査定で削減すべき額の目安も存在していません。その結果、それ以上に新規施策が要求され事業化されるため、政策的経費の予算規模は年々大きくなる方向で推移しています。これについてはシーリングを含め予算編成の方法を見直すことや、既存事業についてPDCAサイクルを徹底することで、事業の実績や効果を踏まえた予算査定につながるよう改善してく等の方法が考えられます。


国の予算措置が地方の政策決定に与える影響
以上、和歌山県の財政について、「財政危機警報」と併せて現状と課題を説明してきました。最後に少々脱線しますが、国による近年の大規模な経済対策を受けて、地方自治体がどのような政策決定を行ってきたかについて簡単に述べたいと思います。
新型コロナ流行以降、国が実施してきた主な地方向けの補助金として、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(以下「臨時交付金」)があります。臨時交付金は、医療提供体制の整備から新型コロナの影響で打撃を受ける事業者・生活者の支援まで、「新型コロナ対策に資する」政策であれば、それぞれの実情に応じて地方が自由に使うことのできる*31交付金です。
では、総額17兆円を超える臨時交付金は、各自治体で有効に活用されているのでしょうか。当然、特にコロナ禍の初期において、地方自治体が躊躇なく迅速に新型コロナ対策を実行できたという点で、一定の成果はあったかもしれません。ただし、国から自由に使える交付金の限度額が示されるため、地方としてはその枠を余らせるわけにはいきません。すなわち、一般財源の形で歳入できる地方交付税と異なり、目的と期限が定められている多額の臨時交付金は、期間内に事業化し歳出計上することに注力することになります。結果として、平時であればおよそ許されないであろう事業を予算化し、現金給付やキャッシュレス決済のポイント還元事業、果てにはモニュメント建設まで、新型コロナ対策とは直接関係のない半ばバラマキのような施策が全国の都道府県・市区町村で実施されてきた側面は否定し難いでしょう。
私は財政課長として、臨時交付金を財源とする事業については、県民に対して一貫した説明が可能な事業となるよう、予算査定に努めてまいりました。しかし、これらもあくまで臨時交付金を財源とするワンショットの事業であり、自主財源を用いて恒久的に実行すべきと考えられるものはほとんどありません。私が和歌山県を主体として考え、使える財源はすべて県民のために活用すべく最大限努めるのは当然ですが、ひとたび国の目線に立った時に、大量の赤字国債を発行し、将来世代に負担を押し付けてまで実施すべき事業なのだろうかと憂慮するのもまた事実です。
今回取り上げた公共事業や国土強靱化事業の要望についても、国の制度や内示プロセスを所与とした場合の最適解を検討すべきなわけですが、そもそも所要額の内示がなされたり、同種の事業であれば有利な地方債を選択できるような要望制度が存在するのであれば、内示率が読めない中で高めの要望を提出したり、結果として措置率の低い事業に起債が偏るといった問題は起こらないかもしれません*32。また、全国旅行支援や出産・子育て一時金といった国の経済対策によって措置される事業についても、国の決定や通知において地方の予算編成日程が考慮されておらず、対応に苦慮する例もありました*33。今後、国としても予算措置の内容、日程感、プロセスともに、地方の実情を考慮した適切な制度設計を行っていく必要があるのではないかと愚見申し上げ、和歌山県としてもしっかりと県政を前に進めるため、私も一県職員として邁進してまいります。


筆者略歴
庄中 健太(しょうなか けんた)
平成25年(2013年)財務省入省。主計局地方財政係、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局等を経て、令和4年(2022年)7月より和歌山県へ出向。財政課長として和歌山県の財政運営、予算編成等を担当。


*1) 国の財政において、バブル経済が崩壊した平成2年度を境に歳出と歳入の差が広がっていった状態を「ワニの口」に例えてこのように表すことがある。
*2) 地方六団体の1つである全国知事会においては、新型コロナや物価高騰への対応のため、国による財政措置を要請している。
*3) 和歌山県「財政危機警報」(令和5年2月)https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010400/d00212473.html
*4) 和歌山県「和歌山県財政の現状と課題」(令和5年2月)https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010400/d00212473_d/fil/genzyoutokadai.pdf
*5) 和歌山のご当地グルメの1つに和歌山ラーメンがある。和歌山ラーメンについては本誌(令和4年12月号)に掲載された「紀州名物「和歌山ラーメン」を味わう」を参照されたい。https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202212/202212d.pdf
*6) 国土交通省「道路統計年報2021」(令和2年3月31日時点)
*7) 和歌山県「新中期行財政経営プラン」(令和4年3月)https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/011700/d00210105_d/fil/shinkeieiplan.pdf
*8) 年度間の収支不足を補うために活用される財政調整基金と県債償還のために活用する県債管理基金は、県税収入等の動向に応じて財源不足を補う財源調整的な役割があり、「貯金」のような役割を果たしている。
*9) 令和5年度当初予算を起点として、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(令和5年1月)のベースラインケースにより、経済成長条件等を想定し、伸び率を乗ずるなど機械的に推計。
*10) 内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(令和5年1月)https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/r5chuuchouki1.pdf
*11) 公共事業についても近年の上振れ(後述)を反映しているが、これは一定の国庫補助があることに加え起債措置が取れるため、同時に歳入(県債、国庫支出金)の増にもつながっている点に留意。
*12) 地方財政法第5条参照。
*13) 既発の交付税措置率が有利であった銘柄の償還が終了していくことに伴い、公債費のうち交付税措置がなされるものの割合が減少傾向となる点にも留意。
*14) 臨時財政対策債3,192億のほか、ハード事業以外に対する県債も含まれている点に留意。
*15) この際、県債残高の1兆967億円に加えて、財調・県債基金の残高欄に記載のある▲941億円相当の収支不足が発生している点に留意。
*16) 地方公共団体の財政規模に対する、借入金(地方債)など現在抱えている負債の比率。
*17) 令和3年度までは決算の数値、令和4年度以降の数値については令和4年度2月補正後の数値を反映した見込み額(借換債の発行抑制による公債費の増加を除く)。
*18) 令和4年度以降の将来負担比率は、令和2年度の標準財政規模により算定。
*19) 都道府県を財政力指数(平成30年度~令和2年度)によって分類した場合の和歌山県と同グループ(大分県、山形県、岩手県、青森県、宮崎県、佐賀県、鹿児島県、長崎県、徳島県、秋田県)の平均(沖縄県を除く)。
*20) 令和5年度に調達金利が上昇し、令和14年度まで同率の幅が維持された場合。
*21) 令和3年度までは決算の数値、令和4年度以降の数値については令和4年度2月補正後の数値を反映した見込み額(借換債の発行抑制による公債費の増加を除く)。
*22) なお、県は財政に与える長期的な影響については、プラン策定時から「楽観視できない」との認識を示している。
*23) 和歌山県では従来、2月補正予算において、地方財政法第7条に規定する繰上償還を実施してきた。これは、満期到来前に残債を完済するものである。後年度の金利節減効果等を比較し、今年度は繰上償還を実施せず、借換債の発行抑制を行った。
*24) 和歌山県は過去に、20年間で償還すべき県債(臨時財政対策債*24)について、10年目の借換時に、その償還期限を30年間に延長する措置を行った。当時、見合いの交付税は20年間での償還を前提に措置されていたため、この結果、11年目~20年目までは償還額よりも交付税額の方が多く歳入されることとなり、ある種の財源対策として機能していた。当然、21~30年後に償還すべき残額については交付税措置がなされないため、今後はこの「先食い」のツケを払っていく必要がある。これが令和16年度までの間、合計193億円程度存在するが、今回の借換債の発行抑制は、その一部を負担軽減するための措置という位置付けでもある。
*25) ただし、不交付団体(国から普通地方交付税措置を受けずに財政運営を行う自治体)を除く。
*26) 公共事業等債には補正予算債(充当率100%、措置率50%)も存在するが、ここでは国の当初予算で措置される公共事業等債について述べる。
*27) ただし、事業費補正分を除く。
*28) 要望の様式については所管省庁ごとに異なり、地方自治体が要望時点で把握している今後の事業費まで含んで提出するものもある。
*29) 国土強靱化対策債など、国補正予算に伴う地方債については充当率が100%であるため、当該年度の一般財源を用いることなく予算措置が可能。
*30) 例えば、インフラ整備先進県の要望額が想定よりも下回った場合、後進県に対し、要望額以上の予算が措置される可能性がある。
*31) ただし、「地方単独事業分」以外は大きな目的ごとに枠が設定されており、代表的なものに、無料PCR検査のために用いる「検査促進枠」、飲食店の営業時間短縮要請に伴う補償金の支払いのために用いる「協力要請推進枠」、エネルギー・食料品価格等の物価高騰対策のために用いる「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」等がある。
*32) ただし、すべての地方自治体が交付税措置率の高い有利な地方債を使用できたとしても、国全体(マクロ)の地方交付税額が一定であればゼロサムである点に留意。
*33) 例えば、和歌山県では国の経済対策等に対応するため、令和2~4年度の間、予算提案のための臨時議会の招集が3回、予算案の提出が定例議会の開会に間に合わず追加提案となった事例が5件発生した。