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特集 令和5年度 司法・警察、経済産業、環境予算について

主計局主計官 有利 浩一郎

文中、〔 〕書きの金額は、令和4年度当初予算比の増減を表す。


○ 経済産業省予算
1.概観
経済産業省の令和5年度一般会計予算は、科学技術振興費を増額する一方、エネルギー対策特別会計への繰入の削減等により、対前年度当初予算で▲215億円の8,809億円となっている。
経済産業省の令和5年度一般会計予算では、科学技術立国の観点から、科学技術振興費について前年度を上回る伸びを確保し、特に、新産業創出につながる先導的な研究開発、サイバーセキュリティの強靱化等に必要な予算を計上している。
また、中小企業対策費については、信用保証に関し貸付動向を踏まえた減があった一方、取引適正化・価格転嫁対策の強化や、中小企業の研究開発投資促進、事業承継・事業再生支援等に必要な予算を計上している。
エネルギー・グリーン関連では、エネルギー対策特別会計において、カーボンプライシングで得られる将来の財源を裏付けとしたGX経済移行債の発行により、民間のGX投資を支援する仕組みを創設し、2050年までのカーボンニュートラル目標達成に向けた革新的な技術開発やクリーンエネルギー自動車の導入などの支援に必要な予算を計上している。
東日本大震災復興特別会計においては、特定復興再生拠点区域外の住民の帰還に向けた先行除染や、福島国際研究教育機構におけるロボット分野の研究開発の実施等に必要な予算を計上し、引き続き復興支援を推進することとしている。

2.科学技術関係
科学技術立国の観点から、新産業創出につながる先導的な研究開発や、サイバーセキュリティの強靱化などに必要な経費を確保しており、一般会計の科学技術振興費で1,122億円〔+18億円〕を計上している。
具体的には、新産業・革新技術創出に向けた先導研究プログラムに19億円〔+10億円〕を計上するほか、産業サイバーセキュリティ強靱化事業に24億円〔新規〕、産業DXのためのデジタルインフラ整備事業に24億円〔+2億円〕を計上している。

3.中小企業対策
中小企業対策費は、経済産業省予算のほか、財務省予算及び厚生労働省予算に計上されており、中小企業等に対する貸出動向等を踏まえた信用保証に係る経費の減少〔▲15億円〕があった一方、その他の政策的経費の増〔+6億円〕を反映して、一般会計全体では1,704億円〔▲9億円〕を計上している。
特に令和5年度予算においては、取引適正化対策や、中小企業の研究開発投資などに重点的な予算措置を行うとともに、事業再生・事業承継支援など、現下の中小企業等を取り巻く経営課題に対応するために必要な予算を計上している。
具体的には、「下請かけこみ寺」による事業者からの相談対応、下請代金法の執行、下請Gメン(取引調査員)による監督等により取引適正化を推進する中小企業取引対策事業24億円〔+2億円〕、中小企業が産学官連携により行う研究開発等を支援する成長型中小企業等研究開発支援事業133億円〔+28億円〕、再生計画策定支援やマッチング支援等を実施する中小企業活性化・事業承継総合支援事業157億円〔▲1億円〕を計上している。資金繰り対策については、(株)日本政策金融公庫による低利融資や信用保証協会の債務保証等を円滑に行うため212億円〔▲15億円〕(別途財務省分604億円〔▲2億円〕)を計上している。

4.エネルギー対策特別会計
エネルギー対策特別会計には、石油石炭税収を財源とするエネルギー需給勘定、電源開発促進税収を財源とする電源開発促進勘定、原子力損害賠償支援勘定の3つの勘定がある。また、成長志向型カーボンプライシング構想の具体化で得られる将来の財源を裏付けとしたGX経済移行債の発行により、民間のGX投資を支援する仕組みを創設し、新たな枠組みの下で支援を開始することとしている。
(1)エネルギー需給勘定(石油石炭税財源)
令和5年度予算においては、石油・天然ガスの安定供給確保のため、必要な開発案件への支援や国内石油精製機能の強化等による石油供給構造の高度化等に必要な経費を計上している。
また、内外の経済的、社会的環境に応じた安定的かつ適切なエネルギーの需給構造の構築を図るため、再生可能エネルギーの利用拡大のための技術開発に要する経費及び省エネルギー設備等の導入支援に要する経費等を計上している。
ア.燃料安定供給対策
我が国のエネルギーの安定供給を確保する観点から、次世代燃料安定供給の促進に必要な予算を計上している。
具体的には、次世代燃料(非化石)の製造・安定供給のための環境整備や、自然災害に対する製油所の強靱化等を支援するとともに、カーボンニュートラル社会に対応した製油所等の事業再構築を促進するため66億円〔▲9億円〕等を計上している。
イ.エネルギー需給構造高度化対策
内外の経済的、社会的環境に応じた安定的かつ適切なエネルギーの需給構造の構築を図るため、先進的な省エネルギー設備等の導入を支援するとともに、アンモニア混焼等の技術開発等を実施することとしている。
具体的には、工場・事業場における先進的な省エネ設備等の導入を支援するため261億円〔+7億円〕、火力発電の高効率化・低炭素化に向けたアンモニア混焼等の技術開発のほか、火力発電所等から回収した二酸化炭素を再利用するためのカーボンリサイクル技術開発を実施するため176億円〔+7億円〕等を計上している。

(2)電源開発促進勘定(電源開発促進税財源)
電源開発促進勘定の歳出は、発電設備の建設と運転を円滑にすることを目的とする「電源立地対策」、発電用施設の利用促進と安全確保等を目的とする「電源利用対策」及び「原子力安全規制対策」で構成されており、前二者の経済産業省所管分については、それぞれ1,492億円〔+29億円〕、112億円〔▲36億円〕を計上している。このうち、「電源立地対策」の約半分を占める電源立地地域対策交付金は、発電用施設等の立地の促進及び運転の円滑化を図るため、立地自治体に対して交付される交付金である。設備容量や発電電力量などによって交付額が算定されており、745億円〔+14億円〕を計上している。また、「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(平成28年12月閣議決定)を踏まえ、中間貯蔵施設費用相当分について、原子力損害賠償・廃炉等支援機構に対する交付金として470億円〔同額〕を計上している。

(3)GX対策等(GX経済移行債発行対象経費)
成長志向型カーボンプライシング構想の具体化で得られる将来の財源を裏付けとしたGX経済移行債の発行により、民間のGX投資を支援する仕組みを創設し、2050年カーボンニュートラル目標達成に向けた革新的な技術開発やクリーンエネルギー自動車の導入、次世代革新炉の研究開発について、新たな枠組みの下で支援を開始することとしている。
具体的には、企業の社会実装投資のコミット等を条件に、革新的技術の早期確立・社会実装を図る取組に対し4,564億円〔新規〕、クリーンエネルギー自動車の市場確立に向けて、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)等の車両購入費用の一部補助に200億円〔新規〕、高速炉・高温ガス炉において必要となる要素技術開発等に123億円〔新規〕等を計上している。

5.復興関係(東日本大震災復興特別会計)
特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けて、先行除染や住民への帰還意向調査等の実施に必要な予算を計上している。また、令和5年度に設立予定の福島国際研究教育機構に関し、経済産業省関連では、ロボットやエネルギー、放射線の産業利用といった分野の研究開発に必要な予算を本格計上している。
具体的には、特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けて、大熊町、双葉町における一部の地域で先行的に除染等を実施するとともに、住民への帰還意向調査や意向確認結果を反映した対象地域の地図データ、線量データ等の整備を実施するため60億円〔+45億円〕、災害現場等の過酷環境下や人手不足の産業現場等でも対応可能となるようなロボットの研究開発を実施するとともに、放射線の産業利用の実現に向けた超大型X線CT装置の技術開発等を実施するため88億円〔新規〕等を計上している。


○ 環境省予算
1.概観
環境省の令和5年度一般会計予算では3,258億円を計上しており、うち1,290億円がエネルギー対策費、454億円が公共事業関係費、1,036億円が科学技術振興費・その他経費、478億円が原子力規制委員会関係となっている。また、東日本大震災復興特別会計において3,231億円を計上している。

2.エネルギー対策費
2050年カーボンニュートラル及び2030年度削減目標の実現に向けて、エネルギー対策特別会計において、令和4年度に創設された地域脱炭素移行・再エネ推進交付金について、より地域経済の成長にも資するよう要件を見直した上で拡充するとともに、GX実現に向けた政府投資として、自営線を用いたマイクログリッドの構築を支援する新たな交付金(特定地域脱炭素移行加速化交付金・GX経済移行債発行対象経費)を創設することで、経済成長と地域脱炭素をともに推進することとし、あわせて350億円〔+150億円〕を計上する。
また、GX実現の観点から、産業競争力強化・経済成長と2050年カーボンニュートラル・2030年度温室効果ガス削減目標を共に実現するため、商用車(トラック・タクシー)の電動化について、車両の導入支援に136億円〔新規・GX経済移行債発行対象経費〕を計上するほか、脱炭素社会の実現には、我が国のエネルギー消費の3割を占める住宅・建物分野の取組が重要であることから、家庭部門のCO2削減目標達成に貢献するため、住宅のZEH化及び断熱リフォームの支援に100億円〔▲10億円〕を計上している。そのほか、COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)における議論等を踏まえ、我が国のCO2排出量削減にも資する脱炭素インフラ等の輸出を推進するため、日本企業による優れた脱炭素技術のパートナー国への導入支援に137億円〔▲8億円〕を計上している。

3.公共事業関係費
一般廃棄物処理施設について平成当初以降にダイオキシン類対策等のために整備した施設の老朽化による更新需要に対応するため、広域化・集約化を図りつつ、エネルギー対策特別会計等も活用して、廃棄物処理施設の災害強靱化や地球温暖化対策の強化を推進するため、一般会計の公共事業関係費で272億円〔同額〕(※)を計上している。
※廃棄物処理施設の整備については、一般会計の公共事業関係費において、環境省予算のほか、国土交通省予算(北海道・離島)で25億円、内閣府予算(沖縄)で12億円を計上している。

4.科学技術振興費
エネルギー対策特別会計における予算措置も合わせ、GOSAT(温室効果ガス観測技術衛星)2号機の継続運用とともに、世界の温室効果ガス排出源の特定と排出量の推定精度向上を目指し、GOSAT3号機に係るシステム開発等を実施するために18億円〔+2億円〕を計上している。

5.原子力規制委員会
原子炉の高経年化技術評価に資する研究として、実機材等を活用し、炉内構造物等の健全性評価に係る研究に15億円〔+4億円〕を計上するとともに、審査効率化に資する研究として、地震・津波等のハザードと施設への影響の評価研究に14億円〔+0億円〕を計上している。

6.東日本大震災復興特別会計
除染後の除去土壌等を最終処分するまでの間、安全かつ集中的に管理・保管するための中間貯蔵施設の整備と除去土壌等の輸送等の実施に1,786億円〔▲195億円〕、帰還困難区域の復興・再生に取り組むため、同区域内に定められた特定復興再生拠点区域における除染・家屋解体等の実施に436億円〔▲9億円〕を計上するほか、ALPS処理水放出に伴う風評被害を最大限抑制するため、放出開始前後の海域のトリチウム等の放射性物質濃度のモニタリングを含む環境モニタリング調査の実施に9億円〔+1億円〕を計上するなど、福島の復興を着実に支援することとしている。
※上記環境省予算のほか、内閣府予算(原子力防災担当)において、避難の円滑化を着実に推進するため、地域防災計画・避難計画の具体化・充実化を進めるほか、道府県が行う原子力災害時の防災活動に必要な放射線測定器、防護服等の資機材の整備を促進するなど、原発等周辺地域における原子力防災体制の充実・強化に124億円(エネルギー対策特別会計)を計上している。


○ 司法・警察予算
1.裁判所
裁判所の令和5年度一般会計予算については、3,222億円〔▲6億円〕を計上している。このうち人件費は、2,631億円〔▲67億円〕である。
裁判手続等のデジタル化を着実に進めるため、民事訴訟手続のデジタル化に係るシステム開発、民事訴訟手続や家事事件手続のウェブ会議の利用拡大に向けた環境整備等の実施に必要な経費として56億円〔+44億円〕を計上している。
また、裁判所施設の長寿命化等の取組を計画的かつ着実に進めていくため、施設整備の実施に必要な経費として146億円〔+1億円〕を計上している。

2.警察庁
警察庁の令和5年度一般会計予算については、3,208億円〔+98億円〕(デジタル庁一括計上額(306億円)を含む)を計上している。このうち人件費は、1,038億円〔▲9億円〕であり、交通反則金収入を原資とする交付税及び譲与税配付金特別会計の繰入金が516億円である。
分野別では、国際テロの脅威が継続している情勢や令和5年のG7広島サミット開催等を踏まえ、引き続きテロ対策等を推進するとともに、頻発する大規模災害のほか、国境離島における警備事象等の緊急事態に係る対処能力の強化のため、170億円〔+108億円〕を計上している。また、サイバー犯罪・サイバー攻撃に的確かつ機動的に対処するための体制整備等の推進に必要な経費として、41億円〔+3億円〕を計上している。
その他、通学路対策を含む交通安全確保の諸施策等を実施するための経費として205億円〔+1億円〕、ストーカー・DV、児童虐待及び特殊詐欺等、生活の安全を脅かす犯罪対策の推進として48億円〔+14億円〕等を計上している。

3.法務省
法務省の令和5年度一般会計予算については、7,881億円〔▲158億円〕(デジタル庁一括計上額(631億円)を含む)を計上している。このうち人件費は、5,127億円〔▲70億円〕である。
分野別では、外国人材の受入れ・共生社会の実現に向けた取組の推進・出入国在留管理体制の強化、満期釈放者対策を始めとする再犯防止対策等の推進、人権擁護活動の充実強化を合わせた、共生社会の実現経費として、417億円〔+26億円〕を計上している。
また、霊感商法等への対応を含む法テラスによる総合法律支援の充実強化など困難を抱える方々への取組の推進経費として332億円〔+6億円〕を計上している。
その他、DXに向けた取組の推進経費として632億円〔+30億円〕、公安調査庁のヒューミントを含む情報収集・分析体制の充実強化経費として32億円〔▲0億円〕、検察活動の充実強化に係る経費として17億円〔+1億円〕、所有者不明土地等問題への対応・登記所備付地図整備を推進するための経費として76億円〔+4億円〕等を計上している。


図表.【経産】計数表
図表.【環境】計数表
図表.【司警】計数表