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特集 令和5年度 内閣・内閣本府等、デジタル庁、復興庁及び外交関係予算について

主計局主計官 佐久間 寛道


1.概観
(1)内閣・内閣本府等関係予算
内閣・内閣本府は重要施策に関する企画立案・総合調整の機能を担っており、その所掌は、2.で取り上げるデジタル田園都市国家構想の実現・地方創生、沖縄振興、宇宙政策等のほか、防災、北方対策、海洋政策など、極めて広い分野にわたっている。また、消費者庁、金融庁、公正取引委員会などの外局等も有しており、5年度からはこども家庭庁が新たに設立される。このような幅広い分野における諸課題への対応のため、内閣・内閣本府等の5年度予算は、全体として対4年度9,491億円増の47,122億円を計上している*1。

(2)デジタル庁予算
3年9月に設立されたデジタル庁は、デジタル社会実現の司令塔として、国民の利便性の向上や行政の効率化等を実現するため、国、地方公共団体、事業者等によるデジタル化の取組を牽引する役割を担っている。
年間を通じた一元的なプロジェクト監理を実施し、効率的で利便性の高い情報システムの整備を進める一括計上予算と、デジタル庁の体制強化やアナログ規制の横断的な見直し等を推進するデジタル庁運営・政策経費を合わせ、5年度予算は、対4年度231億円増の4,951億円を計上している。

(3)復興庁予算
復興庁は、東日本大震災からの復興に関する事業の円滑かつ迅速な遂行を図るため、東日本大震災からの復興に関する施策の企画立案・総合調整等を行っている。各省庁所掌の予算については、復興に関する行政各部の事業を統括・監理する一環として、復興庁が所管する一括計上予算として東日本大震災復興特別会計に計上している。復興庁の5年度予算は、「第2期復興・創生期間」の3年度目において、被災地の復興に必要な取組を確実に実施するため、5,523億円*2を計上している。

(4)外交関係予算
5年度の一般会計ODA(政府開発援助)予算は、ロシアによるウクライナ侵略を含め国際情勢が激変する中、G7広島サミットや日本ASEAN友好協力50周年等を見据え、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け戦略的なODAの活用を図るなど、現下の国際情勢にしっかりと対応できる予算を確保しており、対4年度98億円増*3の5,709億円となっている。
また、5年度の外務省予算については、ア.「自由で開かれたインド太平洋」を含む法の支配に基づく国際秩序の維持・拡大、イ.人間の安全保障、地球規模課題への取組の推進、ウ.外交・領事実施体制、情報戦への対応の強化を柱としている。ODA予算を確保しつつ、異例の円安・物価高も踏まえ、日々の外交活動を支える経費を重点的に手当てするなど外交・領事実施体制を強化しており、対4年度485億円増の7,560億円*4を計上している。


2.内閣・内閣本府等関係予算
内閣・内閣本府等関係予算の主な項目は以下のとおりである*5。
(1)デジタル田園都市国家構想の実現・地方創生の推進(内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局、内閣府地方創生推進事務局)
5年度予算では、これまでの地方創生の取組に加え、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」(令和4年12月23日閣議決定)の策定を踏まえ、同構想の実現に向け、「デジタル田園都市国家構想交付金」*6を1,000億円計上し、地方におけるデジタル実装や、デジタルの活用による観光・農林水産業の振興等の地方創生に資する取組・拠点施設の整備などを支援することとしている。
このほか、地方におけるデジタル技術を活用した取組の普及促進事業(Digi田甲子園等)に係る経費として、1.4億円を新規計上している一方で、地方大学・地域産業創生交付金については、執行実績等を勘案し、対4年度2億円減の20億円を計上している。

(2)沖縄振興予算(内閣府沖縄担当部局)
沖縄振興策を総合的・積極的に推進する観点から、公共事業関係費等、沖縄振興一括交付金、沖縄科学技術大学院大学、沖縄健康医療拠点整備などについて、所要額を積み上げ、総額2,679億円*7を計上している。
5年度においては、「強い沖縄経済」実現ビジョンに係る施策について、「クリーンエネルギー導入促進事業」や「スタートアップ拠点化推進事業」の増額等により、同ビジョンを推進している(同ビジョンに係る施策の経費として対4年度7億円増の28億円を計上)。また、沖縄振興特定事業推進費を対4年度5億円増の85億円に増額し、市町村等の事業を支援することとしている。

(3)情報収集衛星の開発・運用の推進
(内閣衛星情報センター)
安全保障及び大規模災害への対応等の危機管理のために必要な情報の収集のため、情報収集衛星の開発・運用を効率的に推進するための経費として、625億円を計上している。

(4)宇宙開発利用に関する施策の推進
(内閣府宇宙開発戦略推進事務局)
精度や信頼性の高い衛星測位を可能とする実用準天頂衛星システムについて、現行の4機体制での運用を着実に実施するとともに、7機体制の確立に向けて5-7号機の開発等を効率的に推進するための経費として、167億円を計上している。
また、我が国を取り巻く国際的な宇宙開発の情勢を踏まえて、必要な技術動向等の調査を行うとともに、多様な分野における産学の高度な技術を活かした研究開発・実証を省庁横断で強力に推進するため、宇宙開発利用推進費23億円を計上している。

(5)次の感染症危機に対応する司令塔機能の強化
5年度中に内閣官房に設置することとされている「内閣感染症危機管理統括庁」について、感染症危機に備えた訓練や調査研究・普及啓発等に係る経費として、4.7億円を計上している。

(6)男女共同参画社会の推進
(内閣府男女共同参画局)
関係団体と連携して地方公共団体が行う、女性デジタル人材・女性起業家の育成や役員・管理職への女性登用、NPO等の知見を活用した困難や不安を抱える女性への相談支援等、地域の実情に応じた取組を支援するとともに、配偶者暴力(DV)被害者支援、性犯罪・性暴力被害者支援を始めとして、女性に対するあらゆる暴力の根絶に向けた取組を推進するための経費として、16億円を計上している。

(7)霊感商法等の悪質商法への対応
(消費者庁)
寄附の不当勧誘による被害者の救済、被害の未然防止にしっかり対応するため、適格消費者団体への情報提供等の活動支援、重要消費者紛争手続(ADR)の適正化・迅速化等の新たな業務を担う(独)国民生活センターの体制強化等を行うとともに、地方消費者行政強化交付金により消費生活相談や地域における啓発の充実・強化に取り組む地方公共団体を支援するための経費として、22億円を計上している。


3.デジタル庁予算
5年度のデジタル庁予算については、情報システム関係予算の一括計上やデジタル庁の体制強化、アナログ規制の横断的な見直し等を推進するものとなっている。
デジタル庁予算の主な項目は以下のとおりである。
(1)情報システム関係予算(一括計上)
政府共通のクラウドサービスや新しい府省間ネットワーク(GSS:ガバメントソリューションサービス)等の各府省が共通で利用するシステム・ネットワークの整備、地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化を加速するための環境整備、公金受取口座の金融機関経由での登録開始に係る環境整備、共通基盤であるマイナポータルの利便性の抜本的改善、事業者に対するオンライン行政サービスの充実等を推進する経費として、4,812億円を計上している。

(2)デジタル庁の運営に関する経費
デジタル社会の実現に関する司令塔として、新技術の動向等を踏まえたデジタル化に関する戦略の立案やデジタル原則に照らした規制の見直し等、社会全体のデジタル化を推進するために必要な体制強化(常勤職員494人(+83人)、非常勤職員454人(+117人)、期間業務職員74人(+16人)の計1,022人(+216人)や、G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合、情報システム調達に係る調査等を実施する経費として、125億円を計上している。

(3)デジタル庁の政策に関する経費
マイナンバー制度の広報やデジタル推進委員等の全国展開、社会のデジタル化を阻むアナログ規制の見直し、生活に密接に関連する準公共・相互連携分野のデジタル化を推進する経費等として、14億円を計上している。


4.復興庁予算
5年度の復興庁予算については、地震・津波被災地域において心のケア等の被災者支援などきめ細かい取組を着実に推進するとともに、原子力災害被災地域において帰還・移住等の促進など本格的な復興・再生に向けた取組を推進するなど、復興のステージに応じたきめ細やかな取組を継続して進めるものとなっている。
復興庁予算の主な項目は以下のとおりである*8。
(1)被災者支援総合交付金
復興の進展によって生じる、「心身のケア」、「コミュニティ形成・再生」、「住宅・生活再建の相談支援」及び「心の復興」等の課題に対応するため、地方公共団体等における被災者支援の取組を一体的に支援するための経費として、102億円を計上している。

(2)福島再生加速化交付金
福島の再生を加速するため、避難指示を受けた12市町村等に対して、長期避難者への支援から早期帰還への対応及び新たな住民の移住・定住の促進の施策等を一括して支援するための経費として、602億円を計上している。

(3)福島国際研究教育機構関連
令和5年4月に設立を予定する「創造的復興の中核拠点」となる福島国際研究教育機構(F-REI)の運営費等を支援するための経費として、146億円を計上している*9。

(4)各省庁所掌予算の一括計上
各省庁所掌の予算については、被災地からの要望にワンストップで対応するため、被災地の要望を復興庁において一元的に受理し、これを踏まえ、復興事業に必要な予算を復興庁が一括して要求し、予算を計上しているところであり、4,647億円を計上している。
また、執行段階においても、復興庁が各省庁へ事業の実施に関する計画等を通知し、予算の配分を行っている。


5.外交関係予算
(1)ODA予算
ア.ODA予算の位置付けと5年度予算の特徴
我が国のODA予算は、経済成長及び経常収支黒字の拡大を背景に1970年代末から1990年代後半にかけて大幅に増加した後、財政構造改革に伴い、各年度その水準の引き下げを図ることとされた。近年はおおむね横ばいとなっており、「自由で開かれたアジア太平洋」の実現等に向け用いられている。
5年度における一般会計ODA予算は、新型コロナウイルス感染症の国際的な収束や、気候変動対策を含む開発・人道支援ニーズ、「自由で開かれたインド太平洋」の具体化のために重点的に予算を配分し、前年度より98億円の増加となる5,709億円(4年度5,612億円)を計上している。4年度第2次補正予算と合わせると9,124億円となり、過去最大の伸び(対前年度1,911億円増)となった。
イ.外務省ODA予算
ODA予算の大部分を占める外務省ODA予算は、主に、無償資金協力、技術協力及び国際機関等への拠出から構成される。
[無償資金協力・技術協力]
無償資金協力は、返済義務のない資金を供与するものであり、主に、所得水準の低い国を対象としている。医療・保健、食糧援助といった基礎的生活分野への援助や、地雷除去、環境保全等の取組への支援、経済発展のために必要な道路・橋梁の建設等インフラ整備への支援、災害や難民援助に係る緊急人道支援など、多岐にわたる支援を実施している。
技術協力は、感染症対策や気候変動対策といった途上国の開発課題に対処すべく、日本の技術や知見を相手国の技術者等に伝えることを目的として、国際協力機構が専門家の派遣や研修員の受入れ等を行うものである。
5年度予算においては、「自由で開かれたインド太平洋」の具体化、グローバルな課題への対処、複雑さを増す安全保障・経済環境への対応等に必要な経費として、無償資金協力については1,634億円(4年度1,633億円)、技術協力については1,519億円(4年度1,518億円)を、それぞれ計上している。
[国際機関等への拠出*10]
国際機関等への拠出については、国連分担金等、条約等に基づく支払い義務があるもの(分担金・義務的拠出金)と、政策的判断に基づき任意に拠出するもの(任意拠出金)から構成される。この任意拠出金については、国際機関等の活動の成果・影響力、日本の外交政策上の有用性・重要性、組織・財政マネジメント及び日本人職員・ポストの状況等を踏まえつつ、メリハリ付けを行っている。
5年度予算では、分担金・義務的拠出金として1,151億円(4年度1,012億円)、任意拠出金として182億円(4年度339億円)を、それぞれ計上している。

(2)外務省予算
ODA予算を確保しつつ、異例の円安・物価高(ドルの場合、4年度108円→5年度137円)にも対応し、日々の外交活動を支える経費を重点的に手当するなど外交・領事実施体制を強化している。4年度第2次補正予算と合わせた外務省予算は、32年前の湾岸戦争時を除き、初の1兆円台となった。
外務省予算の主な項目は以下のとおりである。
ア.「自由で開かれたインド太平洋」を含む法の支配に基づく国際秩序の維持・拡大
質の高いインフラや海上保安能力向上を含む「自由で開かれたインド太平洋」の実現や、経済安全保障の推進及び食料危機等ウクライナ侵略の影響を受ける国への支援等のため、5.(1)イで述べた無償資金協力・技術協力・国際機関等への拠出に係る経費を計上している。
また、同志国の安全保障上のニーズに応え、資機材の供与やインフラ整備等を行う、軍等が裨益者となる無償による資金協力の枠組みを新たに創設し、20億円を計上している。
イ.人間の安全保障、地球規模課題への取組の推進
国際社会におけるグローバルな課題解決を我が国が主導すべく、4年度補正予算による前倒しの対応を含め、新型コロナウイルスや将来の感染症への備え(COVAXを通じたワクチン支援(4年度補正216億円)、グローバルファンド拠出金(4年度補正195億円)等)や気候変動問題への対応(途上国のGX及び気候変動適応策の推進(4年度補正154億円))、人間の安全保障の推進及び質の高い成長に向けた戦略的・効果的なODAの実施などの取組を推進するための経費を計上している。
ウ.外交・領事実施体制、情報戦への対応の強化
[日々の外交活動を支える「足腰予算」の強化]
2,197億円(4年度1,923億円)
在勤手当や現地職員給与など人件費や、その他在外公館関係の経費を重点的に措置したほか、航空運賃が高止まるなか外国出張に万全を期すための旅費等、異例の円安・物価高に対応した必要な経費を計上している。
[在留邦人の保護・支援の強化や在外公館の機能強化]
在外邦人退避のためのチャーター機手配等の拡充(1.8億円(4年度1.4億円))、在外邦人の実態把握の強化(1.2億円(4年度0.9億円))、在外公館施設の整備及び警備体制の強化(162億円(4年度138億円))等のための経費を計上している。
※上記「足腰予算」との重複を含む。
[情報戦への対応と戦略的対外発信の強化]
479億円(4年度447億円)
SNS空間におけるモニタリング・情報分析等を通じた情報戦への対応(2.1億円(新規))、親日派・知日派育成のための交流の推進等のための経費を計上している。
※上記ア.との重複を含む。
また、予算措置に加え、
(1)在セーシェル大使館、北大西洋条約機構(NATO)政府代表部、在ローマ国際機関政府代表部(兼館)及び在マルタ事務所の新設、
(2)ウクライナ情勢への対応等を背景とした外務省定員の100名の純増(5年度末定員6,604名)
を通じて、外交・領事実施体制の更なる強化を図ることとしている。


図表.資料1:内閣・内閣本府等、デジタル庁、復興庁及び外交関係予算
図表.資料2:令和5年度 内閣・内閣本府等予算のポイント(概要)
図表.資料3:令和5年度 デジタル庁予算のポイント(概要)
図表.資料4:東日本大震災復興特別会計予算のポイント(概要)
図表.資料5:令和5年度 外交関係予算のポイント(概要)
図表.資料6:政府全体の一般会計ODA予算の推移(当初+前年度補正)


*1) 警察庁を除く。なお、5年度からこども家庭庁が新設されることから対4年度は大幅増となっている。
*2) 東日本大震災復興特別会計の5年度歳出額7,301億円のうち、復興加速化・福島再生予備費(財務省所管:1,000億円)及び震災復興特別交付税(総務省所管:622億円)等を除いた復興庁所管計上分の予算額である。
*3) 当初予算の一般会計ODAとしては、水準ピーク時の平成9年度以降で最大の増加額。
*4) G7広島サミット開催準備に係る特殊要因(171億円)及びシステム関係経費のデジタル庁移管分(125億円)を含む。
*5) 内閣府予算のうち、総合科学技術・イノベーション会議関係の予算、警察庁予算、こども家庭庁予算、公共事業関係費等は、内閣係以外の係において査定がなされている。ここでは、内閣係の担当分野における「主な項目」について紹介している。
*6) 令和4年度第2次補正予算において、従来の「地方創生推進交付金」等の交付金を新たに「デジタル田園都市国家構想交付金」として位置づけ、800億円を計上。
*7) 自動車安全特別会計空港整備勘定計上分を含む。
*8) 復興庁予算について、復興係が担当するのは復興庁が自ら執行する予算であり、他省庁に移し替えて執行される予算は、それぞれの省庁の担当係が査定を行う。ここでは、主に復興係が査定を行う項目について記述する。
*9) 各省庁所掌予算(126億円)及び一般会計予算(1億円)を含む。
*10) 国際機関等への拠出で記載されている予算額は、非ODA予算も含む。