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特集 税関発足150周年記念イベントレポート 税関150年のあゆみを次世代へつなぐ

税関は、明治5年11月28日(1872年)、今日の税関の前身である運上所から改称されて正式に発足し、令和4年11月28日に150周年を迎えた。
この起点となった11月28日は、「税関記念日」とされており、各地の税関では、広く税関の役割や業務を理解してもらうため、様々なイベントを精力的に実施している。
小誌令和4年8月号において、税関のあゆみと未来に向けた取組みを紹介したが、今号の特集では、11月28日に開催された税関発足150周年記念式典の模様、さらに、150周年を契機に、関係団体と連携した小中学生絵画コンクールやシンポジウム、その他各地の税関での周年事業などを紹介する。
取材・文 向山勇
 
150周年ロゴマーク・キャッチコピー
メインカラーの青色は、空と海の物流、そして信頼をイメージ。また、円を形作る3本の流れは、過去、現在、未来であり、時代を超えた社会の流れを表現している。ロゴマークの中心にある3つの桜は、税関の使命(安全・安心な社会の実現、適正・公平な関税等の徴収、貿易の円滑化)を示している。また、税関のメッセージとして、キャッチコピーを併記している。いずれも税関職員が制作をした。
 
秋篠宮皇嗣同妃両殿下がご臨席 
税関発足150周年を記念した式典を開催
 
令和4年11月28日(月)、財務省は、パレスホテル東京(東京都千代田区)において、税関の発足から150周年を記念した式典を執り行った。
記念式典には、秋篠宮皇嗣同妃両殿下がご臨席された。また、税関の現役職員や職員OBのほか、国会議員や在京大使、税関行政に関係する団体の役員等、多くの各界関係者が記念式典に参列した。
 
財務大臣式辞
記念式典では、公務により記念式典に出席できなかった鈴木財務大臣に代わり、秋野財務副大臣が式辞を読み上げた。
式辞では、150周年を迎えるにあたり、これまで税関行政を担ってきた先人たちや多くの関係者に向けた感謝の意が表された。また、これまで税関が果たしてきた役割、意義を引き継ぐとともに、取り巻く環境の変化やニーズに適切に対応し、税関が、50年後、100年後も国民の期待に応えられるよう努めていくとの決意が述べられた。
また、世界最先端の税関を目指して令和2年6月に策定した「スマート税関構想2020」に、新たな環境変化やニーズに対応するための新規施策を盛り込んだ「スマート税関の実現に向けたアクションプラン2022(P9参照)」を公表し、更なる税関業務の高度化・効率化を進めるとともに、利用者の利便向上に取り組むことも述べられた。
 
秋篠宮皇嗣殿下おことば
記念式典では、秋篠宮皇嗣殿下から、「我が国は、諸外国との貿易を通じて産業を盛んにし、国民生活を豊かにするなど、目覚ましい発展を遂げてきました。この間、税関は、関税等の適正な徴収や密輸の厳格な取締り、貿易の円滑化を推進し、人々が安全で安心して暮らせる社会の実現と、貿易を通じた経済発展に大きく貢献してきました。」とおことばが寄せられた。
また、令和4年9月、記念式典に先立って妃殿下とともに税関の現場をご視察されたことを振り返り、税関職員に対し「皆様が日々士気高く職務を遂行されることによって、人々の安寧な暮らしが築かれていることを再認識した1日であり、そのたゆみない努力に深く敬意を表します。」とのおことばも寄せられた。
 
麻生前財務大臣、御厨世界税関機構事務総局長による祝辞
来賓を代表して、令和3年10月まで財務大臣を務められていた麻生太郎前財務大臣が祝辞を述べられた。麻生前財務大臣は、「税関では歴史と伝統がしっかりと受け継がれていると感じていた。」と在任当時を振り返られた後、近年、税関に対する国民の期待は一層高まっているとしたうえで、「先人が積み重ねてきた良き伝統をしっかりと引き継いでいくとともに、変化にも的確に対応し、世界最先端の税関を実現することを期待している。」と述べられた。
 
税関に関する国際機関である世界税関機構(WCO)で事務総局長に就かれている御厨邦雄氏も、税関発足150周年に際して、祝辞を述べられた。
御厨事務総局長は、国際機関の長という立場から、官民協力における効率的な貿易面での国境管理で、日本税関が世界のリーダーであることを紹介するとともに、国際協力の面における日本税関の活動に感謝の意を表した。
祝辞の最後には、長い歴史の中で、日本税関の発展に寄与された先人への深い敬意が表されるとともに、次の150年間の日本税関の発展を祈念する言葉が述べられた。
 
職員代表者による宣誓
来賓祝辞に続いて、式典会場のメインモニターでは、税関150年の歴史を振り返る記念動画が放映された。動画の最後には、「これからも私達は、国民の安全と安心を守る税関であり続けます。」といったテロップが流された。
その後、記念式典の締め括りとして、全国の税関職員の代表者が、「発足から150周年という大きな節目の年を迎えるにあたり掲げた『水際で守る 日本の未来』というスローガンを心に刻み、税関に課された使命を果たしていく。」との決意を述べた。また、税関を取り巻く環境は常に変化し、新たな課題が出ている中、「先人たちから受け継がれた精神をもって、それぞれの課題にしっかり対応してまいる。」、「税関職員であることの誇りを胸に、一丸となって職務に精励し、これからも、水際で、国民の安全安心を守り続けていく。」といった、力強い宣誓が行われ、秋篠宮皇嗣同妃両殿下、多くの参列者から拍手が沸き起こった。
最後に、諏訪園関税局長が閉会にあたり感謝の言葉を述べ、式典は、盛会のうちに終わりを迎えた。
 
式典会場内には、小中学生絵画コンクール受賞作品を展示
式典会場には、参列者に向けた展示品が並んだ。その一つが、税関発足150周年を記念して、財務省が公益財団法人日本関税協会と共催した絵画コンクールの受賞作品であり、「税関」や「貿易」をテーマに描かれた色彩豊かで伸び伸びとした作品が並び、記念式典に花を添えた。また、同会場内では、昭和30・40年代の税関業務の様子を記録した動画が放映され、参列者が当時の映像を懐かしみながら、旧交を温めていた。
 
絵画コンクール受賞作品を紹介
財務大臣賞
小中学生絵画コンクールは、普段、税関に馴染みの薄い小中学生に、絵画の制作を通して、税関の役割や国際貿易に関心をもってもらうことを目的に実施された。各地の税関では、小中学生絵画コンクールの表彰式を開催し、税関長から受賞者に表彰状を授与した。表彰式の様子は、各地のメディアでも取り上げられるなど、税関の認知度アップにも一役買った。
 
写真:世界の船 
西宮市立南甲子園小学校5年 内藤(ないとう) 樹那(じゅな)さん(兵庫県)
写真:神戸から世界へ
神戸市立塩屋中学校3年 康(こう) 宗一郎(そういちろう)さん(兵庫県)
写真:東京税関
写真:名古屋税関
写真:神戸税関
写真:大阪税関
写真:長崎税関
写真:沖縄地区税関
 
全国各地の税関において記念式典やイベントを開催
 
記念式典
写真:門司税関
新しい監視艇の名前を地元の小学生から公募し、記念式典でお披露目
応募した小学生を記念式典へ招待して感謝状を贈呈(写真はテープカットの模様)
写真:大阪・神戸税関
音楽隊による演奏を披露
写真:東京税関
タレントの斉藤慎二さんと女優の高田夏帆さんも広報大使として活躍
 
イベント
写真:長崎税関
長崎の貿易史跡を巡るツアーを実施
写真:東京税関
地元中学生が一日税関支署長等を体験
写真:函館税関
写真:名古屋税関
写真:横浜税関
写真:沖縄地区税関
税関の歴史や業務を紹介したパネル展、麻薬探知犬のデモンストレーションなどを開催
イベントの目玉として登場した税関のマスコットキャラクター「カスタム君」は、子供たちに大人気
写真:地元の高校生による書道パフォーマンスを行い、渾身の作品は会場の観客を魅了
写真:神戸税関
写真:沖縄地区税関
写真:東京税関
写真:東京税関
子供用の制服を着ての写真撮影や密輸取締りの体験コーナーには、多くの来場者が押し寄せるなど、各地のイベントは大盛況
 
外部団体との連携事業
特殊切手・プルーフ貨幣セットを発行
日本郵便(株)から発行された特殊切手。
デザインは財務省関税局の若手職員で構成した税関150周年プロジェクトチーム・「かもめプロジェクト(令和4年8月号参照)」で検討した。
独立行政法人造幣局から発売されたプルーフ貨幣セット。
特殊切手と同様に「かもめプロジェクト」でデザインを検討した。
 
JR東日本電車内で動画を放映
税関と同じく令和4年に150周年を迎える企業と共に、JR東日本の一部路線の車内で、税関の歴史や業務を紹介する動画が流された。
写真:放映した動画は現在、
「税関チャンネル(YouTube)」に掲載中
 
税関150周年記念シンポジウムを開催
日本通関業連合会、日本関税協会及び輸出入・港湾関連情報処理センター(NACCSセンター)が税関発足150周年を記念して「大転換期にある世界貿易と税関 ー官民パートナーシップの将来像ー」をテーマに、シンポジウムを開催。世界貿易の様々な変化を踏まえ、今後の世界貿易を展望し、その中で税関が果たすべき役割や官民パートナーシップの在り方が議論された。
税関発足150年を契機として、スマート税関構想に新規施策を追加した
「スマート税関の実現に向けたアクションプラン2022」を公表
関税局・税関では、税関行政の中長期ビジョン「スマート税関構想2020」を取りまとめ(令和2年6月公表)、世界最先端の税関(スマート税関)を目指して取り組んでいる。
税関を取り巻く環境は、越境電子商取引(EC)の拡大による輸入貨物の急増や経済社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の急速な進展、経済安全保障上の脅威への対処を含む新たなニーズの出現など、内外のダイナミックな構造変化の流れを受けて、大きく変化している。
「スマート税関の実現に向けたアクションプラン2022」は、こうした変化を踏まえ、新たな環境変化やニーズに対応するための新規施策を盛り込むなど「スマート税関構想2020」に掲げる施策をアップグレードして取りまとめ、令和4年11月28日に公表した。
「スマート税関の実現に向けたアクションプラン2022」の新規施策