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英国と中国の二国間関係 ~実利主義の国・英国の対中戦略~

前国際局地域協力課国際調整室 縄田 恵子


0エグゼクティブサマリー
1.香港問題を軸に考察する英国の対中国政治スタンス
18世紀後半、英国は、対清貿易赤字とそれに伴う銀の流出に対処すべく、アヘンを植民地インド経由で清に売り、インドから英国へ銀が還流する三角貿易を作り上げた。アヘンを巡り清との間で勃発した1839年第1次アヘン戦争の結果結ばれた南京条約により香港島を割譲して以来、英国は、世界的な金融・貿易ハブである香港の礎作りに関与するとともに利益を得てきた。例えば、英国の代表的金融機関であるHSBCホールディングスの前身となる上海香港銀行は、アヘン交易で得られた収益等の英国本土への送金ニーズに収益機会を見出して設立され、今日でも最大収益源は香港であると共に、英系スタンダードチャータード銀行と共に香港ドル発券機能の一翼を担っている。1984年の「英中共同宣言」に基づく一国二制度の下、1997年に香港が中国に返還されて以降、英中関係は急速に深化していく。この間、ブレア、ブラウンの労働党政権は、中国を巡る人権問題に正面から切り込まず経済的関係を優先、2010~2016年の保守党キャメロン政権下で英中関係は「黄金時代」を迎える。しかし、続くメイ政権以降、香港での民主化運動激化を契機に英中蜜月関係には陰りが見え始める。そして2020年の香港での「国家安全維持法案」の可決を受け、ジョンソン政権は香港居住者の英国居住権獲得プロセスの簡素化、武器禁輸措置の香港への適用、香港との犯罪人引渡し条約の即時且つ無期限停止等の措置を講じた。しかし天安門事件や新疆ウイグル自治区における人権侵害に対して講じた制裁措置に比べると限定的な対応であった。ジョンソン政権では、新型コロナウィルス発生源に関し説明を果たさない姿勢やウクライナを侵略したロシアとの友好関係を維持強化する中国を批判しつつも、両国間のハイレベルな対話の枠組みである「英中合同経済貿易委員会」、「英中経済・金融財政対話」の再開に向けた動きも見られた。

2.貿易・投資を巡る英中関係
英中間の貿易収支は英国の赤字が続く。2021年、中国は英国の第1位の輸入相手国となったものの、英中両国が、貿易、特に天然資源等の重要品目で依存関係にあるとは言えない。資本取引では、英国が国外に有する金融資産全体に中国と香港が占める割合は、資産・負債いずれも約2%と僅か。直接投資は英国から中国や香港への投資がその逆よりも多く、金融分野が多数を占める。しかし中国の対内直接投資規制により伸びは限定的であり、中国から英国への直接投資に関してもEU離脱に伴う投資環境の不透明化及び昨今の5G網や原発建設への中国企業参入を巡り英国内での警戒感の高まりが制約要因となる。但し、2021年に英国で「国家安全保障・投資法」が成立したものの、マイクロチップ会社の中国企業への売却が承認されるなど、同法の実効性には疑問がていされる。証券投資に関しても同様に、英国から中国への投資が大きい。英国からの証券投資に関しては、資本規制が緩い香港を通じた取引が多く、HSBCやスタンダードチャータード銀行などの英系銀行が仲介を果たしてきたが、近年、ロンドン・上海ストックコネクトや現在協議中の英中ボンドコネクトを始めとして、中国本土と英国を直通するチャネルが整備されつつある。なお、中国から英国への証券投資も増加傾向にあり、この点、2014年の英国による人民元建てソブリン債発行などが挙げられる。その他、英国はグリーンファイナンス分野で中国の発展を後押ししている。これらの英中間の貿易や資本の結びつき強化を後押ししてきたのが両国間の閣僚レベルの対話枠組みである「英中合同経済貿易委員会」及び「英中経済・金融財政対話」であり、多数のアジェンダで具体的な成果を上げてきた。

3.人的交流から考察する英中関係
中国は英国内の外国人留学生出身国第1位。大学等の教育機関が経済的恩恵を受ける反面、技術移転や学問の自由侵害の恐れも指摘されており、近年政府を中心に警戒感を顕わにするが、大学側はパンデミック下における渡航制限による学生数の減少と、それに伴う学費収入の減少により慎重姿勢を見せている。各種の世論調査から伺える英国人の対中感情は、香港問題を機に悪化傾向にある。中国には人権問題で対抗するべきと考える人が最も多い上、香港人に英国籍を与えるべきと考える人が半分を超えるなど、一般の英国人は政府に比して価値や規範を重視する傾向が高いように思える。

4.英中関係の今後
外国において、人権問題を始めとする民主主義的価値観が脅威に晒された際のこれまでの英国の対応は、対象地域との経済的利害の程度によって差があるように思える。2021年に発表された今後10年間の外交指針をまとめた「統合レビュー」では、中国を「体制上の競争相手」とは見做すものの明確な脅威とは位置付けていない。金融分野を中心に進む二国間の関係強化は、気候変動対策に貢献するグリーンファイナンスや原子力発電所への投資拡大と相俟って更に深まる可能性もある。また、香港における民主化抑圧の動きに対し強硬な態度を取らなかった姿勢は、東アジア最大の地政学リスクとなる台湾海峡の対立を巡る、英国の対応を推量するのに役立つ。英国が、中国との関係悪化に伴う経済的恩恵の減少を懸念し中国の振る舞いに寛容になるか、米国と共同歩調を取り、台湾を擁護する効用が大きいと判断するかは未だ見通せないが、中国あるいは台湾との関係維持により得られる経済的利益の比較考量は、大きな判断材料となると考えられる。また、英国与党保守党内で対中姿勢を巡り分裂の動きがあることにも注意を要する。9月7日にはトラス新政権が発足したが、同政権は対中政策を英国新政権の優先課題の一つと位置付け、同志国との連携を強化しながら対峙するとの大方針の下、「統合レビュー」の早期見直しを表明している。日本としては、人権、民主主義や法の支配等の基本的価値観を共有しつつも、実利主義に基づく対応を取りがちな英国の出方を冷静に観察しながら、連携を深めて行く必要がある。


1はじめに
昨今の国際社会において、中国の存在感は年々大きくなっている。気候変動や途上国の債務問題、ロシアによるウクライナ侵略など、様々な国際課題はいずれも中国を抜きにして解決は困難だ。異なる政治体制や価値観を持つ中国という大国を、課題解決に向けて建設的に巻き込み、国際社会の中で責任ある行動を取るよう促すには、日本と共通の価値観を持つ国々との連携を緊密にしていく必要がある。その際、これらの国々の対中政策とその背景にある政治経済関係や世論の動向等を把握することは非常に重要である。
こうした問題意識をもって、国際調整室では、担当する主要先進各国の対中政策や二国間関係を掘り下げ、発信している。ドイツに焦点を当てた第1弾、豪州に焦点を当てた第2弾に続く本レポートでは、英国と中国の関係を政治、貿易、投資、金融、そして人的交流等の観点から歴史的視点を持って概観し、今後の二国間関係について考察する。なお、本稿は個人の見解であり、所属組織を代表するものではない。


2香港問題を軸に考察する英国の対中国政治スタンス
最初に、数世紀にわたり英中関係のネクサスであり続けてきた香港を軸に、英中政治関係の歴史的な変遷を(1)産業革命期のアヘン交易、(2)香港返還を巡る議論、(3)香港返還後の英中黄金時代、(4)人権を巡る関係悪化、の4つのフェーズに区切って紹介する。

(1)産業革命期のアヘン交易
産業革命期、英国は当時の清との貿易を独占していたが、1780年代以降英国内で高まった紅茶需要を清国からの輸入で賄う一方、英国の主要輸出品である綿製品が清内の安価な代替品に対し競争力を持たなかったため、恒常的な対清貿易赤字へと傾き、結果、大量の銀が英国から清に流出した。この不均衡を是正すべく、英国は、英国、インド、清間の「三角貿易」を確立した(図1 三角貿易)。これは、当時英国植民地であったインドで大量のアヘンを製造して清へ輸出、その対価として銀がインドへ支払われる流れを作った上で、産業革命で生産性を高めた英国産綿織物をインド市場で流通させ、インドがその対価として銀を英国に支払う関係を指す。「三角貿易」により、植民地インドを経由して、清の銀が英国の下へ還流する構図を作ったのだ。これに対し清は、アヘン問題担当の閣僚(欽差大臣)を務めていた林則徐が、アヘン禁止令に違反した英国商人のアヘン倉庫を封鎖すべく、逮捕状を発出するとともに、アヘンを全て没収・焼却処分する。これが引き金となり、第1次アヘン戦争(1839~1842年)が勃発。結果、清が敗北し、1842年、香港島の割譲を含む不平等条約、南京条約*1が結ばれた。さらに、英仏―清間で勃発した第2次アヘン戦争(アロー戦争)(1856~1860年)後に締結された北京条約*2により麻薬取引が合法化されるとともに、香港島の対岸の中国本土から延びる九龍半島も含めてイギリスに割譲されることとなった。
こうした経緯を経て、英国は、今日世界的な貿易・金融都市となった香港発展の礎作りに深く関与した。例えば、インドで生産されたアヘンを清へ販売していた貿易会社(ペニンシュラ・オリエンタル汽船会社)で働くトーマス・サザーランドは交易経験から商業銀行の必要性を見出し、第2次アヘン戦争後の1865年、現在のHSBC(Hong Kong and Shanghai Banking Corporation)ホールディングスの前身となる香港上海銀行を香港に設立。アヘン売買による利益は同銀行を介して英国へ送金された。香港上海銀行はその後、アジア全土にビジネス網を拡大、中国の茶、絹、インドの絹、麻、フィリピンの砂糖、ベトナムのコメ、絹の貿易から巨額の収益を上げ、中国・東南アジアと英国を結ぶハブとして成長を続けた*3。1980年代以降、HSBCはアメリカや欧州にもネットワークを広げ、グローバル金融機関として世界中で収益を得ているが、現在でも最大収益源は香港であり(図2 HSBCの国別純営業利益, 3 HSBCの顧客口座別残高地域別割合(2021年))、また、同じく英系のスタンダードチャータード銀行及び中國銀行と並び、香港ドルの発券銀行の一翼を担っている*4。

(2)香港返還を巡る議論
1972年、保守党のエドワード・ヒース内閣(1970-1974)において英国は中華人民共和国と外交関係を樹立した。これは1997年の香港の租借権期限まで25年というタイミングであった。従って、それ以降の政権は、北京政府との関係を強化しつつ租借期限後の香港との関係やその体制について中国と合意する必要があった。こうした中、サッチャー政権下(保守党、1979.5.4-1990.11.28)の1982年4月、香港の将来に係る公式の二国間協議が開始され、2年間の交渉を経て調印された「英中共同宣言」において、香港は1997年6月30日以降、中国の下で「一国二制度」を取ることが定められた。
返還合意後は、1986年10月にエリザベス女王が中国を初めて訪問するなど、英中関係は良好に推移するかに見えた。しかし、1989年6月に「天安門事件」が発生。サッチャー首相は「衝撃を受け、愕然としている」と述べ*5、発生から数週間後の6月26日、EUの一員として中国に対し武器禁輸措置を課した。また、「一国二制度」の下で返還自体は合意されたものの、具体的な政治体制を巡り英中間で意見の相違がたびたび表面化した。例えば英国がメージャー政権(保守党、1990.11.28-1997.5.2)下の1992年10月に、親英・民主派政党の勢力拡大を狙った普通選挙を規定する民主化改革案を発表したことを受け、数か月間交渉が中断された。その際は、選挙権は拡大するが、普通選挙は規定しないという妥協案で決着した。その後、ブレア政権(労働党、1997.5.2-2007.6.27)下の1997年6月30日、156年間の英国による支配を経て、香港は正式に中国に返還された。

(3)香港返還後の英中黄金時代
香港返還後、英中関係は急激に深化する。1998年10月、上海の新証券取引所や英国保険会社を訪れ、英国を「ヨーロッパでナンバーワンの中国の友人」にしたいと述べたブレア首相は*6、人権問題解決より経済関係を優先する姿勢を取った。例えば、1999年5月にダライ・ラマ14世とロンドンで面会した際、チベット領有権を巡る中国への姿勢について正面から議論しなかった上、その後も「ダライ・ラマ14世をチベット政府のトップとして認めていない」との見解を表明し、中国への配慮を見せている*7。さらに同年10月に胡錦涛国家主席とその夫人が訪英した際、ロンドンでチベット運動家によるデモが発生したにも関わらず、ブレア首相は「両国間の経済的つながりの高まり、国際的な安全保障問題、気候変動に焦点を当てる」と述べ、人権問題への言及は避けている*8。他方で、香港については、(1)当時香港で合法であった法輪功運動*9のメンバー逮捕、(2)中国政府への反逆行為を禁止する改正香港憲法23条の香港行政長官による発表、(3)香港の選挙法を変更する場合の中国政府の事前承認や香港行政長官の直接選挙に当たっての中国政府の拒否権を北京政府が規定、といった動きが採られたことに対して、ブレア首相は2004年7月、「返還交渉で合意された内容が履行されていない」との非難声明を発表している*10。
こうした動きにもかかわらず、英中関係はブラウン政権(労働党、2007.6.27-2010.5.11)下でも強化され続けた。例えば、2008年北京オリンピック時の温家宝首相との会談や、2009年の中国共産党60周年記念に際してのエリザベス女王から胡錦涛国家主席への祝辞等、トップレベルでの良好な関係を築くのみならず、2008年のウェールズ・重慶友好協力協定といった地域間交流や、「英中経済・金融対話」(3章(3)で詳述)の発足等、経済面での関係構築が図られた。また、2009年の温家宝首相の訪英で、英国初の「中国戦略」を発表、この中で、国際社会における中国の影響力拡大を後押しする立場を明確にした。また、ブラウン首相もブレア首相同様、中国を巡る人権問題には正面から切り込まない姿勢を取り、2008年10月、「チベットが中国の一部であり、独立を支持しない」ことを表明した*11。
続くキャメロン政権期(保守党、2010.5.11-2016.7.13)の英中関係は「黄金時代」と形容され、経済面を中心に最も密接となった。第3章(3)で詳述する通り、この時期キャメロン首相は、リーマンショック後の所得収支赤字を回復させるため、大規模な企業使節団を連れて訪中、自らセールスマンとなって、経済・貿易・投資面で中国との取り決めを次々と結んでいった。2012年5月、キャメロン首相とクレッグ副首相によるダライ・ラマ14世との会談をきっかけに、約1年半にわたる閣僚級交流の断絶が生じたことがあったが、2013年11月に自ら訪中して閣僚交流を再開した。この問題以降、キャメロン政権の対中宥和的姿勢は強まったように見える。例えば2014年に香港で民主化に向けた「雨傘運動」が発生した際、中国政府によって英国下院の外交委員の香港訪問が禁止されたが、これについて下院で討議するに留まり、対抗措置等は採られていない。

(4)人権を巡る関係悪化
メイ政権時(保守党、2016.7.13-2019.7.24)より英中「黄金関係」に陰りが見え始めた。当初、前キャメロン政権の親中姿勢を継続し、少なくとも2017年時点で英国は「一国二制度の原則が多くの分野でうまく機能している」と評価していたが*12、2019年3月に香港行政庁長官による「逃亡犯条例改正案」提出に対する民主化デモ勃発を契機に雲行きが怪しくなる。2019年4月、英国下院外交委員会は、香港が「一国一制度」に向かっていると懸念を表明*13。しかし中国は、「「一国二制度」を定めた英中共同宣言は既に過去のもの」との認識を示し、取り合おうとしなかった。英国は犯罪人引渡条約が英中共同宣言に与える影響について声明を出すことを検討するも、結局実行に移さなかった。
続くジョンソン政権(保守党、2019.7.24-2022.9.5)で、二国間対立は更に深まる。同首相は、元々サッチャー政権時にロンドン市長として中国と交流があったことや、メイ政権時に外相を務めた際、香港を巡る人権抑圧、民主化阻止の動きに対して曖昧な外交姿勢をとった経緯からも明らかな通り、首相就任当時は親中姿勢が顕著であり、実際、2020年6月、自らを「親中派(sinophile)」と述べていた*14。特に2020年1月のEU離脱以降は、中国傾斜が明らかで、2020年2月、ジョンソン首相と習主席は会談で、英中関係の重要性について認識を共有し、二国間協力を約束している。しかし、「国家安全維持法案*15」が、2020年6月に中国全人代で可決されたことを受け、英国は同法案が「英中共同宣言」の明確かつ重大な違反と非難すると共に*16、香港在住の英国国籍保有者を対象に、英国居住権獲得プロセスを簡素化し、英国へ容易に避難できる措置をとった。併せて、(1)中国本土への武器禁輸措置の香港への拡大、(2)香港との犯罪人引渡し条約の即時・無期限停止、という追加措置を発表。これに対し中国は、香港住民が有する英国パスポート承認を撤回し、将来的に香港から英国への渡航ができなくなる可能性を示唆*17するとともに、英中関係は「深刻に毒されており」、英国は「重要な歴史的岐路」に立たされていると警告する等、互いに強硬な姿勢をとり続けた。
更に、経済安保(3章(2)で後述)、人権侵害、新型コロナウィルス感染流行、ロシアによるウクライナ侵略が、英中関係の悪化に拍車をかけているように見える。新疆ウイグル自治区における人権侵害に関しては、2021年3月、英国はEU、米国、カナダと共に、中国高官に制裁を発動した。数日後、中国は上院・下院議員を含めた英国人10人の出入国を禁じ、資産を凍結する対抗措置を採っている。新型コロナウィルスについては、2021年4月、ラーブ英外相が、「国際社会は北京の感染症対応について答えを求めるだろう」と、中国の説明責任を追及している*18。さらに2021年、英国はインド・太平洋地域における米豪英の安全保障上の枠組み「AUKUS(Australia・United Kingdom・United Statesの頭文字)」に参加。領土問題、核拡散、気候変動、テロや重大組織犯罪などの非国家的脅威を含む地政学的競争の中心としてインド太平洋地域を位置づけ、同地域への関与を明白にしている。ロシアによるウクライナ侵略後に関しては、中国がロシアに対してはっきりとした立場を表明していないことを非難している*19他、中国による台湾への力による現状変更の懸念が高まっていることを受け、2022年4月、トラス外相は、「欧米は台湾の自衛能力確保に協力すべき」とし、NATOの台湾への関与を呼びかけている*20。但し、特筆すべきは、人権・安保をめぐる上記緊張感の高まりがみられる中にあって、2021年12月、スナク財務大臣は、胡春華副総理と行った電話会談の場で、「2022年中に第11回英中経済金融対話を開催することに合意」したと伝えられているほか、グリーンファイナンスや英中の資本市場の関係強化に向けた動きが進められているように見えることだ(詳細は3章(3)にて議論)。

(5)まとめと考察
香港への対応を軸に、英国の中国に対する政治姿勢を200年の歴史を通じて振り返る中で浮かび上がるのは、人権・民主主義・法の支配という価値観を軸にした姿勢というよりも、実利を重視する姿勢と言える。前者については、経済的既得権益の維持・拡充に劣後し、例えば、中国に対する制裁はEUのメンバーとして一致した対応を取った天安門事件と新疆ウイグル自治区の問題に限られ、それ以外はレトリックに終始しているように見える。こうした対応は、本稿「終わりに」で議論する通り、今後、台湾海峡を巡る地政学的緊張がさらに高まった際の英国の対応を含む、今後の英中関係に示唆を与えるように思われる。


3貿易・投資を巡る英中関係
産業革命を起こした国として知られる英国だが、その国際収支は、18世紀末以来、貿易収支が赤字、サービス収支と所得収支が黒字であり、貿易赤字による英ポンド売りを英国への資本流入に伴う英ポンド買いで相殺するという構造が続く*21。前章冒頭で紹介した通り、中国との関係においても同様で、経常収支は赤字基調だ。他方、前述の通り香港の発展を支えてきた経緯から、香港を通じて中国本土から資本収益を多く得てきた。以下ではその詳細を紹介するとともに、近年、グリーンファイナンス分野でも深まる中国本土と英国の関係にも光を当てる。

(1)貿易
英国の中国からの輸入は、近年伸びが著しく、2021年、中国は英国にとって第1位の輸入先国(13.3%)となった。英国から中国への輸出額もここ20年間で約20倍に伸びているものの、最も高かった2019年で7位、輸出全体の6.5%を占める程度である(図4 英国の上位国別輸出割合推移(順位は2021年時点), 5 英国の上位国別輸入割合推移(順位は2021年時点))。中国から見ると、英国は輸入面では25番目、輸出では9番目の貿易パートナー(2021年)となっている(図6 中国の上位国別輸出割合推移(順位は2021年時点), 7 中国の上位国別輸入割合推移(順位は2021年時点))。英国の対中貿易収支は、赤字額が拡大傾向にあり、特に2020年は約-370億ポンドと大きく増加した。サービス収支と第1次所得収支は1999年から一貫してプラスが続くが、貿易収支の赤字を補える規模でなく、全体として対中経常収支はマイナスで推移している(図8 英国の対国経常収支)。
英国の中国からの輸入を品目別に見ると、多い順から電子機器(21.7%+1.3)、データ処理機器を初めとした原子炉・ボイラー関連(19.3%+1.4)*22、家具、寝具、照明(7.4%+1.3)が上位を占めるが(2021年)、2020年は主にマスクの材料となる繊維製品や医療用ガウン等の衣料品、2021年は科学製品、玩具、ゲームが輸入額の伸びに寄与している。英国から中国への主要な輸出品目は自動車(23.2%、前年比+2.6)、ターボジェットやプロペラ、エンジンを主とした原子炉・ボイラー関連(13.2%、+1.4)、鉱物燃料、鉱物油(13.2%、+1.1)となっている(2021年)。
近年中国は英国にとって第1位の輸入先国となったことは注目に値するものの、英中関係は、独中、豪中と比べて、貿易面での結びつきは相対的に薄く、天然資源等、重要な品目での依存関係にあるとは言えない。

(2)投資
A)英国の対外資産・負債総額
英国が国外に有する金融資産全体(約12.5兆ポンド)に中国と香港が占める割合は、2020年時点でそれぞれ1%、2.2%と小さい(図9 英国の対外資産残高)。投資負債(対内投資)も同様で、負債合計約13兆ポンドに対し、中国は0.8%、香港が1.9%程度を占めるのみである(図10 英国の対外負債残高)。

B)対中国直接投資
しかし、二国間の取引規模は、英国から中国への投資を中心に増加傾向にある。直接投資は証券投資に比べ小規模ながら、ここ20年程は資産が負債を上回っており、英国が中国本土に行う投資の方が多いことが分かる(図11 対中国本土:金融資産負債残高)。
分野を見ると、直接投資・資産(英国から中国本土)、直接投資・負債(中国本土から英国)ともに内訳が判明しているものの中では金融が最も多い(図12 英国の中国に対する分野別直接投資残高, 13 中国の英国に対する分野別直接投資残高)。
直接投資は双方向共に、ここ20年程伸びが緩やかで、今後も急な増加は考えにくい。まず、中国では外資による直接投資に制限がある。米中貿易摩擦の激化を背景に外国投資家による中国への投資促進の目的で2020年1月に施行された「外商投資法」も、関連法案作成プロセスにおける外資企業向け市中協議の実施や、特定の業種、分野、地域における投資の優遇措置等に留まっており、投資可能分野はネガティブリストにより管理されている*23。実際、在中英国商工会議所は、英国企業にこの法律による恩恵は特にないと述べている*24。
中国による英国向け直接投資も、EU離脱後の投資環境の不透明さなどが当面障壁となるだろう。また近年、英国内で中国企業による直接投資や中国製品の輸入が経済安全保障上の脅威と見なされつつある。以下、主な事例として、中国大手通信機器メーカー「ファーウェイ」の5G網参入と、英国内の原子力発電所建設事業への中国企業の参入を紹介する。

(ア)ファーウェイ
ファーウェイは大容量ネットワークシステム、5G(第5世代移動通信システム)に関して、早期に研究開発に着手し、その高い技術力と3G、4Gネットワークで作り上げた顧客網を足掛かりに、アフリカや欧州への導入を進め、競合他社を凌いできた。2019年6月末時点の5G関連の必須特許の世界シェアは11%と米クアルコムに次ぐ2位、5G通信機器の世界シェアは2020年時点で首位(35.7%)*25だ。英国には2000年に進出し、現在約1600人の従業員を雇用、2020年にはケンブリッジに研究開発拠点を設けた。英国でも5G通信機器の高いシェアを有していることが想像される(具体的なデータは入手できていない)。
英国ではキャメロン政権時から政府を挙げてファーウェイへの投資と製品の輸入を推進してきた。例えば、キャメロン在任中の2015年、英国政府は習主席訪英の際に、ファーウェイと13億ポンド規模の契約を締結している。一方、英国内のセキュリティ関連事業への海外企業参入が、重要な国家インフラ施設のサイバーセキュリティリスク等を高める懸念については、2009年に発表された「国家安全保障戦略」で既に指摘されていた*26。2014年には、国家サイバーセキュリティセンターが年次報告を開始し、2018年にはファーウェイのエンジニアリングプロセスのリスク、2019年には製品の深刻な脆弱性が報告されている。こうした中、2019年にはファーウェイの英国進出が議会でも話題になったが、この時点では、本格的な脅威と認識し具体的対応を検討するまでには至らなかった。2020年に入り、中国の香港や新疆ウイグル自治区への対応から、英国内の懸念が技術的観点から地政学的観点へと変化していく中、5G網にファーウェイが参加することについて英国国家安全保障会議が議論を開始した。中国はファーウェイをめぐる決定が「英国が中国の真の誠実なパートナーであるかどうかの試金石」となると牽制したが*27、2020年5月には、英国政府は同盟国間(D10=G7+豪州、韓国、インド)で代替5G技術の開発を促進する計画を発表し、同年7月、2020年12月31日以降にファーウェイの5G機器を新たに購入することを禁止、2027年までに英国の電気通信ネットワークからファーウェイの5G機器をすべて撤去することを義務付けることを発表し、法案作成に着手した。
現在政府は通信事業者と協議し法案を作成しているが、政府案がファーウェイ機器の削減目標を半年後ろ倒ししたため、一部対中強硬派議員から批判が噴出している*28。また、2022年2月に就任した英国官邸広報部長が過去ファーウェイのロビー活動を行っていた事実も指摘されている*29。

(イ)原子力発電所
英国は、2050年ネットゼロに向け、原子力を再生可能エネルギーに並ぶエネルギー源とみなしており、現在8カ所での原子力発電所の新規建設が予定されている。これまで英国は、中国企業、具体的には「中国広核集団(CGN:China General Nuclear Power Group)」*30を主な出資者として受け入れてきた。かつて国営(イギリス核燃料会社(BNFL))であったが、運営が行き詰まったため、民営化に舵を切り、技術はフランス、資本は中国、というセットに移行した。例えばエセックス州のブラッドウェルB発電所のCGN出資比率は66%、サフォーク州のサイズウェルC発電所のCGN出資比率は20%、ヒンクリー・ポイントC発電所のCGN出資比率は34%となっている*31。近年、英国内で中国を巡る地政学リスクへの意識が高まる中、CGNが建設・運営に関与する原発のコストや、中国の関与自体についての議論が広がっており、2021年7月には、「英国政府がサイズウェルC原子力発電所の建設計画から中国広核集団(CGN)を排除する方向」と報じられている*32他、2022年6月には、「英国政府が、中国を排除するために、サイズウェルC原子力発電所の株式を200億ポンドで購入する方向」との報道も出ている*33。いずれも政府による公式発表ではないが、政府内で原発を巡る中国依存を見直す動きが活発化していることを伺わせる。

(ウ)国家安全保障・投資法
以上のような中国企業の進出を受けて、英国政府は規制に乗り出している。2021年4月、国家安全保障・投資法(NSIA:National Security and Investment Act)が成立、2022年1月4日に施行された同法では、外資企業が人工知能や民間原子力を含む17分野*34について、一定程度の株式や議決権を取得*35する場合、英国政府による事前審査が義務付けられる。審査の結果、リスクがあると判断された取引について、政府は阻止・是正・緩和のための措置を講じることができる。しかし、同法施行後の2022年4月に英国政府がウェールズのマイクロチップ工場の中国企業への売却等を承認したため、同法の実効性への批判が保守党議員を中心に出されている*36。また、審査対象企業が広範でリスク基準も曖昧なため、新規参入企業の障害となり、特に先端技術産業にとってはコストの方が大きいとの批判も出てきており*37、今後の動向が注視される。

C)対中国本土証券取引
英中間の証券投資残高を見ると、2020年末時点で、資産(英国から中国への投資)が、負債(中国から英国への投資)を5倍近く上回っている(図14 対中国本土:金融資産負債残高)。今後も中国向け証券投資は、中国の資本規制緩和に伴う増加が見込まれる一方、現在の制度上は香港を介した取引が容易であることから、英中間の直接取引の主流化には尚時間を要すると思われる。中国から英国への証券投資の残高は2015年から伸びている。特筆すべきは、2014年10月の英国政府による、西側諸国で初めての約3億ポンド相当の人民元建てソブリン債の発行だ*38。背景には、小規模ながらも急速に成長しているオフショア人民元市場に流動性をもたらし、英国を香港に次ぐ人民元市場とするという狙いがあると思われる。

D)対香港直接投資・証券投資
英国―香港間の直接投資・証券投資の残高の推移を示した図15 対香港:英国金融資産負債残高と、図14における中国本土との直接投資・証券投資の残高を比較すると、英国からの証券投資は中国向けが、直接投資は香港向けが相対的に多く、英国への証券投資・直接投資はともに、中国よりも香港からがメインであることがわかる。また、英国の対香港経常収支(図16 対香港:英国経常収支)を見ると、2010年を境に所得収支の黒字基調が続いている。

E)中国の資本規制と香港を介した資本の通り道
上記で紹介した英国と中国、英国と香港間の直接・証券投資、及び英国の対香港所得収支の動向の背景には、中国政府による資本規制が影響していると考えられる。中国政府は人民元の資本移動規制を通じて、為替レートを通貨バスケットと一定の範囲で固定することを可能にしている。従って、例えば、日本や欧米の個人投資家は、中国国内の金融資産に自由に投資することはできない。従来より適格外国機関投資家(QFII)制度等を通じて制限的に取引することは可能だったが*39、近年、米中貿易摩擦など海外からの圧力を受け、規制緩和、具体的には「ボンドコネクト」、「ストックコネクト」の導入と拡張が進んでいる。
「ボンドコネクト」とは、2017年7月に導入された、海外の機関投資家による香港の口座を通じた中国本土の債券取引を上限なしで可能とする仕組みである。この所謂「北向きボンドコネクト」に続き、2021年9月には、中国本土の機関投資家による、本土の口座を通じた香港での債券取引を可能とする「南向き」ルートも開通した。但し、南向きルートは、1日当たり200億元(31億1000万ドル)、年間5000億元という取引上限が設定されている。
こうした仕組みの下で、英国銀行が多くの取引を仲介している。まず、債券は人民元でしか購入できないため、人民元を保有していない外国投資家は、外貨を人民元に交換する必要がある。人民元転を行う銀行には、現地の銀行以外に、外資系銀行が指定されており、この中にはHSBCとスタンダードチャータード銀行が含まれる。次に、調達した人民元を用いて、海外電子取引プラットフォームを通じて、中国本土のマーケットメーカーに注文を出し、売買に参加するが、このマーケットメーカーには外資系金融機関が複数選定されており、北向きにはHSBCとスタンダードチャータード銀行が、南にはスタンダードチャータード銀行が含まれている。このように、英国と中国と直接繋ぐ証券取引のシステムはないが、香港を介することで可能である上、英国の金融機関が仲介役割を担っている。また、2019年に行われた「第10回英中金融・経済対話」で英中ボンドコネクトの実現可能性が議題とされていることから、近い将来、ロンドン金融街と中国との直接の債券取引ルートが開通する可能性もある。
「ストックコネクト」は、複数の株式市場間で上場株式を取引・決済することを可能とするシステムだ*40。2014年に上海-香港間、2016年に深圳-香港間が開通したことで、外国人投資家は香港を経由して上海あるいは深圳の株式市場へのアクセスを得ており、HSBCとスタンダードチャータード銀行は株売買のライセンスを有する証券会社として、またクリアリング銀行として参加資格を与えられている。これに加え、2018年、ロンドン―上海の取引所間のストック・コネクトが開通した。両取引所の上場企業の内、要件を満たす企業による、預託証券を通じた重複上場を可能とする仕組みだ。2021年12月にはロンドンと深圳の取引所間の取引も可能になった。上海・ロンドンストックコネクトを介した、英国企業の上海証券取引所への上場実績はなかったが、新興企業の上場が多い深圳と繋がったことで、上場の可能性もある。また、ロンドン証券取引所に現在上場している8社の中国企業のうち、4社(公益事業が2社、金融・保険事業が2社存在)はストック・コネクトを通じた上場だ(図18 ロンドン証券取引所における中国企業上場数)。

F)オフショア人民元取引
2010年7月、中国人民銀行(PBoC)と香港金融管理局(HKMA)が香港で人民元の受渡に係る共同声明を発表したことで、香港の銀行で中国本土外の投資家が人民元建てサービスを利用可能になった。上述したボンドコネクトを通じた証券投資等で使用するオフショア人民元の取引参加者の国・地域別の内訳を見ると、香港が4分の3を占めている。これは、香港非居住企業や個人投資家がオフショアで人民元を入手するには、香港にノストロ口座(非居住者口座)を開設する必要があることから当然と言えるが、英国が香港に次いで大きな割合を占めている点は特筆すべきだろう(6.3%、図19 オフショア人民元取引国・地域(金額ベース、2022年4月))。

G)グリーンファイナンスにおける協力
中国は世界最大の温室効果ガス排出国であり、2020年に発表された、2030年までの炭素排出のピークアウトと2060年までのネットゼロ目標を達成するには、年間2~4兆元(約3100~6200億ドル)が必要と見積もられている*41。こうした背景の下、中国は中国人民銀行(PBoC)が中心となってグリーンファイナンスの取組みを推進している。例えば、2016年9月にPBoCは主要国の中央銀行として初めて「グリーンな金融システム構築のためのガイドライン(Guidelines for Establishing the Green Financial System)」を発表した*42。そして、英国はこうした中国の取組みを後押しするパートナーだ。
例えば、中国が2016年にG20議長国として、その立上げを共同声明に盛り込んだ「G20 Green Finance Study Group(現在の「G20 Sustainable Finance Working Group」の前身)はPBoCと英国中央銀行(BoE)が共同議長を務める形で議論をスタートさせた。また、2017年12月の「第9回英中経済・金融対話」では、「英中グリーンファイナンス作業部会(UK-China Green Finance Taskforce)」の立上げが合意された。2018年3月には作業部会で取り決められた内容を実行する「英中グリーンファイナンスセンター(UK China Green Finance Center」が北京に設置され、気候関連の環境リスク開示に関する3年間のパイロットプロジェクトが開始されている。さらに、2019年4月に北京で開催された「第2回一帯一路フォーラム」では、シティ・オブ・ロンドンのグリーンファイナンス・イニシアチブ(GFI)と中国のグリーンファイナンス委員会(GFC)の協力の下、中国国有銀行を含む28行の金融機関が「一帯一路構想のグリーン投資原則(Green Investment Principles for the Belt and Road Initiative)」を支持し署名した。
また、2015年10月には、中国の発行体として初めて中国農業銀行がグリーンボンドを起債したが、その舞台として選ばれたのはロンドンの債券市場であった*43。中国のグリーンボンド発行額は2019年に3854億元、2020年に2561億元、2021年に6110億元と着実に増加、2022年は6月9日時点で既に3616億元が発行されており前年同期比73.7%も急増している。また、2021年PBoCは統一的で厳格な「国内グリーンボンドガイドライン」を発表している。こうした動きを後押ししているのが、「英中グリーンファイナンス作業部会」のメンバーである、CBI(Climate Bonds Initiative)*44であり、グリーンボンド発行に係る政策ガイダンス、基準開発、及び認証やデータ分析等を行い、中国の地方政府、企業等が発行するグリーンボンドに対するグローバルな投資家のアクセス向上に向けた取組みに従事している。

(3)英中間のハイレベル経済・金融対話
これまで紹介してきた通り、英中の結びつきは、直接投資、証券投資、そしてサステナブルファイナンスの文脈で、従来は香港経由で、近年は中国本土と直接のチャネルで、次第に強化されてきている。以下では、こうした動きを後押ししてきた、英中間のハイレベルのイニシアティブや対話の枠組みを紹介したい。

A)英中黄金期
第2章で紹介した通り、キャメロン政権期(保守党、2010.5.11-2016.7.13)は「英中関係の黄金期」と称される。例えば、キャメロン首相は着任から約半年後の2010年11月に財相、エネルギー・気候変動担当相、ビジネス・イノベーション・職業技能担当相、教育相の閣僚4名と約50名のビジネスリーダーを含む過去最大規模の代表団を引き連れて北京を訪れ、首脳会談に臨んだ。この訪問で「英中エネルギー対話」が発足した他、数十億ポンドの企業契約が締結された。翌年には中国側が訪英し、英国のクリーンな石炭火力技術契約など10億ポンド相当の契約が交わされている。2011年1月には、中国の李克強副首相とハーグ英国外務相が会談し、両国の貿易・投資関係を継続的に構築することを確認した。当時、英国は中国からの投資にオープンであることを強調しており*45、例えば2012年9月、キャメロン首相とファーウェイ創業者兼CEOの会談では、英国への13億ポンドの投資が約束された。この約束は、本稿3章で既にふれた、習近平主席の訪英の機会で結実した。

B)AIIBとの関与
2015年3月の英国のAIIB(Asian Infrastructure Investment Bank)加入は英中の蜜月期を象徴する出来事と言える。G7を含む先進諸国で最初の、そして唐突にも見えた英国のAIIB加盟表明は、その後、ドイツやフランス等、欧州諸国やカナダが加盟に動くきっかけとなった。現在、英国の出資比率は3.2%(議決権比率は2.9%)*46、5名の副総裁のうち、Policy and Strategyの担当は、元英国財務省官房長(Chief Secretary)のダニー・アレキサンダー氏が務めている。
C)二国間経済枠組みの再開
英中間には、「英中合同経済貿易委員会(U.K.-China joint economic and trade committee)」*47と「英中経済・金融対話(Economic and Financial Dialogue)」*48という2つの閣僚級の経済対話の枠組みがある。直近の議題を見ると、これまで本稿で紹介してきた、資本規制緩和やグリーンファイナンス分野における具体的な項目が数多く盛り込まれていること分かる。
香港問題を受け、2つの枠組みは停止していたが、最近になって再始動の動きがあった。2021年12月、新華社通信は、「胡春華副総理はスナク財相と電話会談を行い、2022年に第11回英中経済・金融対話を開催することに合意した」と報じた*49。また、2022年2月10日付のPolitico紙は「ジョンソン首相が英中合同経済貿易委員会を、スナク財相が英中経済・金融財政対話の再開について指示した」と伝えている*50。
2022年7月28日、英中経済金融対話において英中両国間の貿易・投資・金融関係を強化する新たな経済協定に署名する寸前だったことを示す英財務省リーク文書が英タイムズ紙で報じられた*51。47ページに及ぶ協定原案には、銀行・資産運用・規制・旅行に関する関係強化を含む20以上の分野における潜在的な「政策的成果」の詳細が含まれる他、合同経済貿易委員会の会合が2022年後半に2018年以降初めて開催されるとも記載があった。当該文書は、ジェノサイドと表現されてきた中国によるウイグル民族への扱いや、中国政府による香港人の民主主義的権利に対する弾圧には全く言及していなかった。*52*53*54
2022年9月6日に首相に就任したトラス氏は対中強硬派として知られ、「経済的なパートナーシップはもうないだろう」との姿勢だが*55、今後の英中間のハイレベル対話が如何に進展するかは予断を許さない。


4人的交流から考察する英中関係
(1)教育
今日、世界中で中国人留学生が増えているが、英国も同様である。2006年以降、年々増加を続け、2019~2020年には、英国で学ぶ留学生に占める中国人の割合は32.6%と最大勢力となった。パンデミック後の2020~2021年においてもわずかに減少するのみである(図20 英国における出身国別留学生数推移, 21 英国における留学生の出身国(2020-2021年))。
英国教育機関が中国人学生から経済的恩恵を受けている反面、技術移転や学問の自由の侵害も指摘される。2019年、MI5(英国諜報機関)とGCHQ(英国情報本部)は中国との共同研究や基金が国家の危機をもたらす可能性について、英国の大学に警告した。また同年、英国下院の外交委員会が外務省はこの問題を直視すべきとの見解を発表した*56。最大16の大学が収入の5分の1を中国人留学生に依存しているとの報告もある*57。
実際、中国政府や関係機関等が英国に留学する学生や大学組織に干渉する動きもあり、例えばCSSA(中国学生学者連合会)*58は、英国の台湾・香港学生が中国に関するデモに参加しないように呼び掛けたことが報告されている*59。また同組織は、2017年2月、ダラム大学討論会が主催する法輪功講演をバリケードで封鎖し、中止させている。更には、2020年6月11日、在英中国大使は、英国が米国を抜いて中国人学生の主要な留学先となったことを受け、「自分の力を活用し」「祖国に奉仕」するよう堂々と呼びかけている*60。
政府が警戒感を高める一方、大学側はそれほどの問題意識を有しているようには見えない。例えば、英国シンクタンク・オンワード社による、「英国の大学が中国人留学生に危険なほど依存している」と警告に対し、オックスフォード大学やケンブリッジ大学、LSEをはじめとするイギリスの研究型公立大学24校が構成するラッセルグループは、「英国人学生が入学生の77%を占めるため、中国人留学生に大きく依存している訳ではない」との見解を示している*61。こうしたスタンスの背景には、パンデミックに伴う渡航制限による留学生数、そして収入の減少という困難に多くの大学が直面している事情があると考えられる。

(2)対中国・香港感情
本章の締めくくりに、米国のシンクタンクPew Research Centerが2002~2020年まで14か国を対象に行った各国のイメージ調査*62、2021年1月に英国British Foreign Policy Group(BFPG)が英国人2002人を対象に行った「イギリスの外交政策とグローバル・ブリテンに関する世論調査」*63、及び、スロバキアのシンクタンクThe Central European Institute of Asian Studied(CEIAS)が2020年9、10月に1500人(18~70歳)の英国人を対象にオンラインで実施した「Covid-19時代における、英国人の対中世論」*64を元に、英国人が抱く対中感情について紹介する。

A)英国人の中国に対する感情
過去20年間、中国にネガティブな感情を抱く英国人の割合は、他のG7諸国と比べて圧倒的に低かったが、香港問題を受けて、2018年以降急激に高まり(55%)、足元、他国と同程度となっている(図22 中国に対しネガティブな印象を持つ人の割合(2005~2019年))。また、英国人の国際社会における脅威対象として、中国は3番目に大きな脅威と捉えられている(図23 今後10年間の英国の安全保障上の脅威(%、2021年))。
しかし、英国の経済、安全保障、外交の中心にインド太平洋地域を据え、中国に対抗する、という具体的な意思があるようには見えない。このことは、「英国がインド太平洋地域に傾斜すべきか」との問いに対し、約42%が「わからない」と回答、「他地域とのバランスをとるべき(35%)」と合わせると8割近く上るという結果に表れている。逆に、「同地域に政策の中心を据えるべき」との回答はわずか15%だ(図24 インド太平洋地域への傾斜について(%, 2021年))。
では、英国人の求める中国との付き合い方とはどのようなものか。「人権問題について中国に対抗すべき」との回答が最も多く(40%)、「気候変動などの地球規模課題での協力」を求める声も同程度(38%)ある。さらに研究協力(27%)、経済関与と財政的投資(22%)等、互恵関係を模索する意見が続き、関わりをもたないとの回答も一定数存在する(図25 英国は今後中国とどう関わるべきか(%, 2021年))。人権問題と気候変動が上位2つを占めることから、英国民は、経済的実利よりも価値や規範を重視する傾向が読み取れる。

B)英国人の香港人に対する感情
これまで幾度となく関係悪化の引き金となった香港だが、世論においても関心が高い。2020年3月、英政府は香港在住の英国国籍保有者に対し、英国居住権の獲得簡易化を図ったが、同年9月CEIASは居住権付与の是非を調査した。「全香港人に与えるべき」(25%)と「1997年以前に英国と関係があった人にのみ与えるべき」(29%)の二つを合わせると、半数以上が香港人に居住権を与えることに賛成しているが(図26 英国は元宗主国として香港の人々に居住権を与えるべきか(%, 2020年))、特に全香港人に英国居住権を与えて良いと考える人が4分の1も占めることは特筆すべきであり、改めて香港が一般の英国人にとって、極めて身近な存在であることが分かる。


5終わりに―英中関係の今後
英中の政治関係を、約200年の時間軸をもって香港に焦点を当てて概括した第2章を中心に、本稿で指摘してきた通り、英国は、貿易赤字を補って余りある金融所得や資本取引を得ることで国富増大を目指すという、実利重視の姿勢をとり続けてきたように見える。故に、経済的利害に乏しい地域の人権問題に関しては強硬な姿勢を取るものの、中国や香港のように、自国が既得権、あるいは将来獲得し得る利得を損なう可能性が高い場合、民主主義的価値観が脅威に晒されても、実効性ある制裁発動には慎重姿勢を見せてきた。2021年3月に発表された、今後10年間の安全保障、貿易、開発、外交に関わる英国の方針を示した「統合レビュー(Integrated Review)」*65では、中国に関して西側諸国と対峙する「体制上の競争相手(systemic competitor)」と表現するに留まり、明確な脅威とは位置付けなかった*66。これは、ジョンソン首相が経済か人権かという選択を避けた結果生じた「戦略的な空白(strategic void)」と指摘されている*67。英中関係は近年、金融分野を中心に深まり、広がりを見せているが、こうした動きは、気候変動対策に貢献するグリーンファイナンスや原子力発電所への投資拡大と相俟って、さらに深まっていく可能性がある。
こうした点は、東アジアの主たる地政学リスクである台湾海峡の緊張感がさらに高まった場合の英国の対応を推し量る上での有益な材料となる。英国は「英中共同宣言」において「中華人民共和国が唯一の政府であり、台湾はその一部」とすることを基本的立場とし、中国との対立は「双方の対話を通じて解決されるべき」ことを基本姿勢としてきた。他方、英国と台湾の政治的結びつきは強く、英中国交樹立と同時期の1976年、140人の英国議員から成り、台北事務所(=在台湾英国大使館)を通じ、台湾と様々な取組みを行う「英国・台湾全党議会グループ」が設立されるなど、積極的に関係を構築してきた。2017年10月には、クラウンエステート(王室の資産を管理する機関、英国の海洋エネルギープロジェクト開発を行っている)とシティ・オブ・ロンドン関係者が訪台し、英国の洋上風力技術とグリーンファイナンスについて協力することが約束された。同年12月には、1991年に発足させた閣僚級の「英台貿易協議」が第20回の節目を迎え、英国産豚肉やスコッチウイスキーの輸入促進、再生可能エネルギーやフィンテック等の金融サービスに関する専門知識を提供することが合意されている。さらに、欧州各国で議員の訪台が相次ぐ中、2022年2月には、英下院外交委員会の議員団が台湾を訪問、二国間で友好協力(UK-Taiwan friendship and cooperation)を結んでいる*68。
以上のように、英国の台湾への関与も歴史が長く、主に貿易や金融面で協力してきた。しかし、150年以上に亘って英国が統治してきた香港への中国政府の抑圧に対して、英国が踏み込んだ姿勢を取らなかったことを考慮すると、将来起こり得る台湾海峡危機に際して、英国が、中国との関係悪化に伴う経済的恩恵の減少を恐れ、実質的対応を取らない可能性も考えられる。他方、中国本土との深い関係がその付加価値の源泉となっていた香港に比して、台湾は、それ自体が高い経済的価値を有するとの認識のもと、英国が、台湾の現状、及び台湾との関係維持のために米国と共同歩調をとって強硬姿勢を取る方が大きな利益を得ることができる、と考える可能性もある。本レポートではこれ以上は踏み込まないが、英国が中国本土との比較で、台湾とどのような経済的利害を有しているかを分析する意義は大いにあるだろう。
また、足元で、特に政権与党である保守党や世論を中心に中国に対する警戒感が高まっていることも注目に値する。原子力や教育に対する中国依存に国民の関心が集まり、対中感情も悪化傾向にある。加えて、保守党内では、中国との関係維持・向上を通じた経済的利益を重視する、2013年にジョンソン首相が立ち上げた「中国の保守党の友人(Conservative Friends of the Chinese)」がある一方で、2020年には、「中国研究グループ(CRG)」や、「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」といった対中強硬派議員グループが立ち上がるなど、対中政策を巡る亀裂と言える動きが見られている。更に9月7日、トラス新政権が発足したが、同首相は前述した「統合レビュー」の見直しを表明しており、中国を「体制上の競争相手(systemic competitor)」からロシアと同等の「差し迫った脅威(acute threat)」へと引き上げることを示唆するなど*69、今後の英中関係は対立の方向へと進んでいく可能性もあるが、具体的で有意なアクションに結びつくかは予断できない。また、半導体や新たな科学技術分野など、経済安保上の懸念になり得る分野で貿易・投資管理をすることは可能だろうが、大きな市場規模を持つ中国との完全なデカップリングは困難な上、HSBC等、香港・中国との関係が深い金融機関の存在もあり、今後、中国に対して敵対的で鋭い言説が増える可能性はあるが、実際の行動との間のギャップは広がるかもしれない。
昨年秋に政権を発足させて以来、岸田首相はすでに5回も訪英しており*70、今後の日英関係の更なる発展と、中国への連携した働きかけに期待が高まっている。日本としては、今後、英国がインド太平洋地域への関与を深めていくとの期待をもって、共通の価値観を基に連携を深めていきたい。同時に、英国が実利主義に基づき、日本が期待するように中国と対峙しない可能性も念頭に置き、政府、民間及び金融市場等様々なレベルでの英国と中国の対話や協力の動きや関連するデータを客観的に観察し、冷静に対応する必要がある。
(以上)

図表17.債券・株式相互接続制度の仕組み(各種資料を基に作成)
図表.(参考1)英中経済・金融財政対話※直近3回分
図表.(参考2)英中合同経済貿易委員会※直近3回分
図表.(参考3)英中経済・金融財政対話リーク文書

*1) 不平等条約の内容は、(1)香港を譲渡、(2)広州・廈門・上海・福州・寧波の開港、(3)貿易自由化、(4)賠償金支払。
*2) さらに列強による中国分割が行われた際、1898年6月にイギリスが九竜半島北部と付属する33の島嶼を99年間租借とすることを清に認めさせた。
*3) 明治期(1870年~1872年)の日本にも、金融や銀行に関する助言と援助を行っている。
*4) 香港は通貨制度として「カレンシーボード制」を採用しているため、HSBCを含む発券銀行は、定められた交換レートで、自らが発券した香港ドルを米ドルに交換しなければならない。
*5) http://news.bbc.co.uk/onthisday/hi/dates/stories/june/4/newsid_2496000/2496277.stm
*6) http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/188976.stm
*7) http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/340564.stm
*8) http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/4416574.stm
*9) 1990年代初頭に中国で始まった気功法。欧米、日本など海外へも普及し、一時7000万人の支持者を得たが、1999年に中国政府と衝突があって以来弾圧の対象に。宗教、人権弾圧の観点から米議会を始めとして国際社会からの注目度が高い。
*10) https://www.bbc.com/news/world-asia-pacific-16526765
*11) http://www.china.org.cn/international/news/2008-11/02/content_16700275.htm
*12) https://hansard.parliament.uk/commons/2017-06-29/debates/17062926000008/HongKongSpecialAdministrativeRegion20ThAnniversary
*13) https://publications.parliament.uk/pa/cm201719/cmselect/cmfaff/612/612.pdf
*14) https://appcg.org.uk/prime-minister-boris-johnson-on-uk-engagement-with-china/
*15) 中国の全国人民代表大会が2020年6月末に制定し、即日施行。「国家分裂」「政権転覆」「テロ活動」「外国勢力との結託」の4つを、国家安全に危害を加える犯罪と規定し、最高で終身刑を科す。香港域外での行為や外国人が処罰対象になることも明記。これまでにメディア関係者や民主活動家らが逮捕や起訴されている。
*16) https://hansard.parliament.uk/Commons/2020-07-01/debates/7A4917D6-E522-4589-8649-B9537A1051EA/HongKongNationalSecurityLegislation
*17) https://uk.reuters.com/article/uk-china-hongkong/china-threatens-to-stop-recognising-bno-passports-of-hong-kong-residents-idUKKCN24O009
*18) https://www.ft.com/content/8c46252e-766f-4fe6-964f-fe7f67a03c0e
*19) https://www.newindianexpress.com/world/2022/mar/20/uk-pm-issues-stark-message-to-china-over-russia-ukraine-conflict-2432266.html
*20) https://www.msn.com/en-gb/news/world/truss-says-west-must-overhaul-approach-to-international-security/ar-AAWFLud
*21) 例外として北海油田が軌道に乗った1980-1982年は貿易黒字。
*22) 原子炉、ボイラーは、輸出入ともに第2位。2021年の英国の対中輸入では、中国の得意とする電子・情報技術を活用するデータ処理関連機器が上位を占め、英国の対中輸出においてはターボジェットやプロペラ、エンジンが上位を占めた。
*23) 例えば、リーガルサービス、人文社会科学研究機関、原子力発電所建設や経営への投資が禁止される他、新エネルギー車等を除き、完成車製造における外国企業の持分割合は50%に制限されている。金融分野への禁止や制限は特にない。
https://www.bing.com/ck/a?!&&p=43f5ab9fa226cb3445c7a31b8b58cb9ad0e05f5a3dc2f3adfeebdbaff81b35aeJmltdHM9MTY1NTU2NjI3NCZpZ3VpZD03ODE0NDViZS0xMWRjLTQ1YTgtOWY0MS00MTI2ZjViMTk0YTkmaW5zaWQ9NTE1Mw&ptn=3&fclid=b017d871-ef1b-11ec-99f7-45a807f7f3fc&u=a1aHR0cHM6Ly93d3cuamV0cm8uZ28uanAvZXh0X2ltYWdlcy93b3JsZC9hc2lhL2NuL2xhdy9wZGYvaW52ZXN0XzA3NS5wZGY&ntb=1
*24) https://commonslibrary.parliament.uk/research-briefings/cbp-9004/
*25) 2位はエリクソン(24.6%)、3位のノキア(15.3%)。https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2009/17/news030.html
*26) https://www.gov.uk/government/publications/the-national-security-strategy-of-the-united-kingdom-update-2009
*27) https://www.thetimes.co.uk/edition/news/china-threatens-to-pull-plug-on-new-british-nuclear-plants-727zlvbzg
*28) https://www.telegraph.co.uk/technology/2022/02/18/britain-delays-removal-huawei-telecoms-network/
*29) https://www.bbc.com/japanese/60298257
*30) 1994年に設立された深圳に本社を構える中国国有企業。原子力の他、太陽光、風力、水力も手掛ける。
*31) https://bfpg.co.uk/2020/07/resetting-uk-china-engagement/
*32) https://www.theguardian.com/environment/2021/sep/25/ministers-close-to-deal-that-could-end-chinas-role-in-uk-nuclear-power-station
*33) https://www.theguardian.com/environment/2022/jun/14/uk-buys-option-to-take-20-stake-in-sizewell-c-nuclear-power-plant
*34) 先端材料、先端ロボット工学、AI、民間原子力、通信、コンピューター・ハードウェア、政府に不可欠な物品又はサービスの提供を行う者、緊急サービスに不可欠な物品又はサービスの提供を行う者、暗号認証、データ・インフラ、防衛、エネルギー、工学生物学、軍事または軍民共用の技術、量子技術、衛星及び宇宙技術、運輸
*35) 対象には、(1)株式もしくは議決権を25%以上取得する取引(政府原案の15%から引上げ)、(2)保有している株式もしくは議決権が、25%、50%、75%のそれぞれの閾値を超える取引、(3)いかなる種類の決議も通せる、もしくは妨害できるだけの議決権を取得する取引が含まれる。
*36) https://www.politico.eu/article/uk-minister-quietly-approve-chinese-microchip-factory-takeover/
*37) 2022年5月、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が、法律に対する初期評価を発表したが、その中で審査対象が広範であることと審査プロセスに係る具体的な3つの課題を提示しており、(1)どのような投資家が適切で、そうでないかが具体的ではない故に、全てが同法の審査対象になる可能性がある、(2)エンジェル投資や初期投資に依存する企業にとって、得られる価格よりも審査プロセスに係るコストが大きく、致命的になる可能性がある、(3)新規参入企業にとっては、英国政府の国家安全保障上の優先事項を理解するのが難しくデュアルユース・テクノロジー(民生・軍事のどちらにも利用できる高度な先端技術)を行う通信、コンピュータ・ハードウェア/先端材料、人工知能セクターにとって障害になる可能性があるとの指摘がなされている。
*38) https://www.gov.uk/government/news/britain-issues-western-worlds-first-sovereign-rmb-bond-largest-ever-rmb-bond-by-non-chinese-issuer
*39) 適格外国機関投資家(QFII)制度:2002年導入。中国証券監督管理委員会の認定受けた海外の機関投資家(投信会社、保険会社、証券会社、その他資産管理機関が対象だが、資産規模も必要なため、大企業でないと参入が難しい)が外貨を人民元に両替し、中国人民元建ての金融商品へ投資できる。国外への送金に規制がある。
人民元適格外国機関投資家(RQFII制度):2011年導入。機関投資家はオフショアで調達した人民元で本土の株式・債券へ投資可能に。送金の制限も緩和された。2020年、両制度の投資上限枠が撤廃された。
CIBM(China Interbank Bond Market)ダイレクトスキーム:2016年導入。対象となる機関投資家が拡大されたことに加え、投資上限や送金回数の制限はない。しかし、中国人民銀行への届出や取引の際に利用しなければならない決済代理人との個別契約、中国本土の保管振替機関に対する直接の口座開設が必要。
*40) ボンドコネクトとの違いは、1日当たりの投資枠上限があること。
*41) http://en.ce.cn/main/latest/202102/01/t20210201_36278798.shtml
*42) http://www.pbc.gov.cn/english/130721/3133045/index.html
*43) https://www.bing.com/ck/a?!&&p=1878db23bf8d1cee729153fd88274a0cef187e2a3a37bde9a491acddf00a04fbJmltdHM9MTY1NjQxNTEyMiZpZ3VpZD1jYjMyM2E1NC0yMGJkLTRhZWEtODU0MS0wMDgxNWY3YmJjYmMmaW5zaWQ9NTE0Ng&ptn=3&fclid=10b44f20-f6d4-11ec-b32a-8036b0dfef3e&u=a1aHR0cDovL3d3dy5uaWNtci5jb20vbmljbXIvcmVwb3J0L3JlcG8vMjAxOS8yMDE5c3ByMDQucGRm&ntb=1
*44) 債券市場に関わる、様々な政策提言をしている英国の非営利団体。
*45) https://www.parliament.uk/globalassets/documents/other-committees/intelligence-security/Critical-National-Infrastructure-Report.pdf
*46) https://www.aiib.org/en/about-aiib/governance/members-of-bank/index.html
*47) 1996年設置。貿易協力について話し合う年次閣僚級会合。直近では2018年8月24日、英国・フォックス国際貿易相と中国・中山商務相間。
*48) 2008年設置され。2019年まで計10回開催。直近では、2019年6月17日、ハモンド英財相と胡春華副総理間。
*49) https://www.scmp.com/economy/global-economy/article/3159255/uk-china-agree-resume-annual-economic-dialogue-same-week
*50) https://www.politico.eu/article/boris-johnson-uk-china-trade-economy/
*51) https://www.thetimes.co.uk/article/treasury-leak-reveals-former-chancellor-eyed-new-china-deal-hwxbm3258
*52) 英中経済金融対話に先立って行われるサミット、詳細情報は特になし
*53) 「a UK China RMB internationalisation dialogue in London in 2018」、公開情報なし
*54) 公開情報なし
*55) https://www.thetimes.co.uk/article/liz-truss-will-declare-china-an-official-threat-for-the-first-time-3bk7jwqjx
*56) https://thepienews.com/news/alarming-evidence-of-chinese-meddling-in-uk-unis/
*57) https://unherd.com/2020/07/our-universities-are-dangerously-reliant-on-china/
*58) 1970年代に創られた世界中の大学や教育機関に存在する中国人学生や学者をサポートする学生組織。人権団体やジャーナリストの中には海外の中国人学生を監視するためとの見方も。
*59) https://bfpg.co.uk/2020/07/resetting-uk-china-engagement/
*60) http://www.chinese-embassy.org.uk/eng/ambassador/dsjhjcf/t1787799.htm
*61) https://russellgroup.ac.uk/news/uk-students-make-up-three-quarters-of-russell-group-undergraduates/#.Xx714TJyvOU.email
https://researchbriefings.files.parliament.uk/documents/CBP-9004/CBP-9004.pdf
*62) https://www.pewresearch.org/global/2020/10/06/unfavorable-views-of-china-reach-historic-highs-in-many-countries/
*63) https://bfpg.co.uk/2021/02/2021-annual-survey/
*64) https://ceias.eu/survey-europeans-views-of-china-in-the-age-of-covid-19/
*65) https://www.gov.uk/government/collections/the-integrated-review-2021#integrated-review
*66) https://www.theguardian.com/politics/2021/mar/16/uk-defence-policy-review-lacks-clarity-on-china-and-indo-pacific
*67) https://www.theguardian.com/politics/2021/sep/10/pm-accused-of-deliberate-strategic-void-on-china-to-prioritise-trade
*68) https://commonslibrary.parliament.uk/research-briefings/cdp-2022-0031/
*69) https://www.thetimes.co.uk/article/liz-truss-will-declare-china-an-official-threat-for-the-first-time-3bk7jwqjx
*70) https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/0505kaiken.html