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特集 静岡・富士市立高校で実施 財務局の「財政教育プログラム」


財務局では、小中学校、高校向けの出前授業として、タブレット等を活用した予算編成シミュレーションなどアクティブ・ラーニングを採り入れた「財政教育プログラム」を実施している。本特集では9月5日に実施された富士市立高校での様子を紹介する。


次世代にわたり持続可能な財政の実現に向けて財政のあり方を主体的に考える機会を提供

財政教育プログラムの4つの特徴とは

財務局では、次世代にわたって財政を持続可能なものにしていくためには、財政のあり方などについて、主体的に考えることが大切であると考え、財政教育の機会や情報を提供している。
その一つが財政教育プログラム。このプログラムは、難しいと感じがちな「日本の財政」に興味を持ってもらうことを目的としており、大きく4つのポイントがある。
1つ目はアクティブ・ラーニングの導入。日本の将来について考えることをテーマとしたグループワークを取り入れ、自身の描く未来やその実現に向けた課題、課題解決のための手段など、子どもたちが意見を出し合いながら議論を行うことにより、主体的・対話的で深い学びを促している。
2つ目は財務局職員との交流ができること。当日は、講師役に加え、グループワークの補助を務めるアドバイザーが派遣される。アドバイザーは、子どもたちからの質問に答え、時には意見を引き出す疑問を投げかけるなど、活発な議論の手助けを行い、子どもたちとの積極的な交流を図る。
3つ目はタブレット端末等ICT機器の活用。グループワークでは、タブレット端末等のICT機器を積極的に活用している。使用する予算編成シミュレーションツールは、各予算項目を増減させるとグラフが変化する仕組みとなっており、視覚的に楽しみながら取り組むことができる。
4つ目は学校と財務局との協働。指導案作成の段階から先生方と職員で綿密に連携し、学校と財務局が協働しながら1つのプログラムを作り上げている。プログラムの内容は、先生方の要望などに応じて、様々な形にカスタマイズすることも可能となっている。
財政教育プログラムを実施することで、日本の財政に興味を持ち、社会問題を自分事として捉えられるようになる、などの効果が期待できる。
なお、令和3年度は小、中、高校生向けに140件実施された。
また最近の取組みとして、高校の新学習指導要領において、財政・租税の役割、社会保障の充実・安定化や財政の持続可能性などを主体的に学ぶ新科目「公共」が今年4月から開始されたことに伴い、財政教育と租税教育との連携に注力しており、財政教育プログラムと租税教室の連携授業などを行っている。

先生方の声
意外と質問、反論が多く、こんなに子どもたちが発言するとは思っていなかった。嬉しい誤算。(小学校教諭)
職員が回ってアドバイスなどのサポートをしてくれたおかげで、普段は消極的な生徒も意欲的に個人ワークに取り組んでいたし、グループワークでは活発に話ができていた。(中学校教諭)
将来の進路として、大学の法文学部や経済学部を志望する生徒も多く、昨年のプログラム実施後、財政に興味を持ちキャリア(職業)研究する生徒も現れた。(高校教諭)


東海財務局と静岡税務署が連携し富士市立高校でプログラムを実施

3年生の2クラス80名の生徒が参加

東海財務局では、富士市立高校の3年生2クラス、80名の生徒を対象とした財政教育プログラムを令和4年9月5日に実施した。
また、この授業は、静岡税務署が実施する租税教室との連携授業として実施した。
まずは、東海財務局財務広報相談室の金山尚人広報相談第二係長から財政についての授業が行われた。医療やゴミ収集など、身近な公共サービスの例を挙げながら、理想的な公共サービスとはどうあるべきかを生徒に考えてもらう内容となった。途中、公共サービスの費用を実感してもらうため、「日本で救急車を1回呼ぶのにかかっている費用はどれくらいか」とのクイズも出題され、参加型の授業となった。
静岡税務署の篠崎あけみ税務広報広聴官からは、税金の種類や仕組みについての授業が行われた。公共サービスを提供するためには、費用がかかることから、国民一人一人がその費用を負担するために税金があるとの説明があった。
また、税の仕組みを作る上では、「公平・中立・簡素」であること、様々な立場の人、様々な世代、受けるサービスの違いに対応した公平な課税を実現する必要があることなどについて解説があった。
さらに、諸外国と比較して日本の税金は高いのか、安いのかも話題として取り上げられた。各国の国民全体の所得に占める税金と社会保障費の負担率を表す国民負担率でみると、欧州と比較すると低い水準であることが示された。
その後再び、金山係長から社会保障と税負担のバランスについて解説があった。現在の日本では、歳出が歳入を上回っており、その差は徐々に広がっているとの紹介があり、その原因の一つとして社会保障費の増大が示された。また日本は、受益と負担のバランスが不均衡となっているが、米国のように「低福祉、低負担」の国、デンマークのように「高福祉、高負担」の国など、世界にはさまざまな国がある。それぞれにメリット・デメリットがあり、正解はないとの解説があった。これを受けて日本の社会保障と税負担のバランスをどうすればいいか、生徒が自ら考えるグループワークに引き継がれた。

写真:財政の授業の様子
写真:熱心にメモを取る生徒も。
写真:税制の授業の様子。
写真:財政について解説をする金山係長。
写真:税制について解説する篠崎税務広報広聴官。
写真:財政教育プログラムのリーフレット。小学生向け、中学生向け、高校生向けの3種類が用意されている。
写真:クイズも取り入れられ参加型の授業に。
写真:授業の途中で財政学習動画を視聴。
写真:日本の国民の受益と負担のバランスはどこに位置するか。講師の問いかけに生徒はピタリと正解の位置を示した。
写真:国の歳出と歳入の推移を解説。不足する歳入を借金で穴埋めしていることをワニの口に例えて紹介。


グループワークで「予算のテーマ」を設定。歳出、歳入プランを検討、発表へ

東海財務局の職員がアドバイザーとしてサポート

グループワークでは、今回の授業に参加した3年生2クラスをそれぞれ8班に分けて、予算によって何を実現したいか、まずは、班ごとにテーマを決めるところから始まった。その後、テーマを実現するための歳出、歳入のプランを検討した。2班に1名の割合で東海財務局の職員がアドバイザーとして付き、生徒の疑問などに答え、議論を活発にするための問いかけを行うなどサポートを行った。グループワークの後は、各班で検討したプランについて発表が行われ、「子育て支援の強化」や「社会保障の増強」といったプランの発表に対し東海財務局の職員がコメントしたり、質問を投げかけたりするなど、財政のあり方をより深く考えさせるやり取りが行われた。

写真:5人が1班になって予算のテーマを検討。
写真:グループワーク中は財務局のアドバイザーが生徒の疑問に答えて生徒の議論をサポート。
写真:班ごとに検討したことはワークシートに記録していく。
写真:グループワークの最後に班ごとに作成した予算プランを発表。
写真:グループワーク終了後に当日の内容を講評し、しめくくり。
写真:終了後には反省会を実施 プログラム終了後に担当の先生を交えて財務局職員は反省会を実施。次回のプログラム実施に生かしていく。

図表.プログラムの効果
図表.プログラムの基本構成
図表.国民の受益と負担のバランスの国際比較
図表.歳出、歳入のシミュレーション
図表.グループワークの進め方
図表.予算編成で生徒が参考にした歳出項目と歳入項目
図表.グループワークで記入されたワークシートの例