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米国MMF(マネー・マーケット・ファンド)入門-ホールセール・ファンディングと金融危機以降の規制改革について-

東京大学 公共政策大学院 服部 孝洋*1

1.はじめに
本稿では米国の金融システムを理解するうえで必要となるMMF(Money Market Fund)の基本的な内容を整理することを目的としています。MMFとは国債やレポ、CPなど安全性の高い運用を行う投資信託です。米国では家計や機関投資家などが加入しているMMFの資金がレポやコマーシャル・ペーパー(CP)などを通じて赤字主体である企業等へ資金融通されています。本稿では、MMFの商品性ではなく、MMFが米国の金融システムにどういう影響をもたらしているかという点に焦点をあてます。
本稿では、まずはそもそも銀行と証券会社(投資銀行)の資金調達構造の違いを説明したうえで、証券会社がMMFなどを経由した「ホールセール・ファンディング」に依存していることを説明します。「SOFR入門」(服部, 2022)でトライパーティ・レポを通じて証券会社がMMFからファンディングする例を取り上げましたが、MMFの拡大は金融機関の資金調達と密接な関係を有しています。ちなみに、我が国では銀行中心の金融システムを有しており、MMFのプレゼンスは小さく、MMFが話題になることはほとんどないといってもよいでしょう。
なお、本稿はレポ取引の基本を前提とさせていただくため、必要に応じて筆者が記載した「SOFR入門」をご一読いただければ幸いです。また、筆者がこれまで執筆してきた一連の債券入門シリーズは、筆者のウェブサイトにまとめて掲載してありますので、そちらもご参照いただければと思います*2。

2.ホールセール・ファンディングとMMF

2.1 直接金融と間接金融
本稿では金融システムにおけるMMFの役割について説明をしますが、まず、大きなイメージを掴むため、銀行と証券会社の資金調達の大枠を考えます。金融のテキストでは金融システムを考えるうえで「間接金融」と「直接金融」という言葉を習います。銀行は家計などの黒字主体から預金で調達し、赤字主体へ貸出等で資金融通します。この場合、銀行は資金融通の中間に入ることから、「間接金融」と呼ばれます。一方、「直接金融」の場合、企業や政府が資金調達をするうえで株式や債券等の発行し、投資家がそれを購入することで資金融通します。この場合、証券会社は有価証券の引受や販売等により、黒字主体と赤字主体を直接繋げるため、直接金融を担うと説明されます。
金融論ではまずはこのように習うため、証券会社の貸借対照表(Balance Sheet, BS)は小さいという印象を持つかもしれません(筆者は少なくともそうでした)。しかし、実際に証券会社のBSをみるとその規模が巨大であることがわかります。前述の構図はあくまで債券や株式を新規で発行する発行市場(いわゆるプライマリー・マーケット)であり、証券会社は既発債を売買する流通(中古)市場(いわゆるセカンダリー・マーケット)を形成するためマーケット・メイクを行っています。証券会社は債券等を在庫として保有しているため、大きなBSを有しているわけですが、証券会社がマーケット・メイクを担っている点については「金利指標改革入門」(服部, 2021b)などでこれまで丁寧に説明してきました。

2.2 ホールセール・ファンディングとは
ここから証券会社のファンディングについて焦点を当てて考えていきます。銀行と証券会社は様々な資金調達手段を有していますが、銀行の場合、預金という特別な調達手段が存在します(銀行は預金を取り扱うがゆえ「預金取扱機関」とも言われます)。もっとも、証券会社の場合、そもそも銀行のように預金口座を開設することができませんから、預金を通じて資金調達はできません。そのため、証券会社は預金以外で資金調達をする必要があります。これまでの論文で説明してきたとおり、証券会社はマーケット・メイクをするうえで債券を在庫として保有しますから、保有する債券を担保に資金調達をすることができます。国債のような安全な資産を担保として出すことで預金に似た低い金利で資金調達をすることが可能になるわけです。これが服部(2022)で丁寧に説明したレポ取引でした。
証券会社はレポ以外にもCP*3などの発行でも資金調達をしており、レポやCPなどを通じて短期*4の資金調達をすることを、金融の専門用語を使うと「ホールセール・ファンディング(ホールセール資金調達)」といいます*5。ホールセールという言葉は一般的にあまりなじみがない用語かもしれませんが、金融では(リテールではなく)「大手の投資家(機関投資家)」という意味合いで使われます。例えば、証券会社には通常、ホールセール部門*6と呼ばれる部門がありますが、リテール部門と横並びで表現されます。一方、伝統的な商業銀行が個人の預金で調達した場合、それは個人の預金を通じて資金調達をしているがゆえ、「リテール・ファンディング」ということがあります。

2.3 ホールセール・ファンディングにおけるMMFの役割
ここからMMFの役割について考えていきます。服部(2022)ではMMFを通じてトレーダーがレポでファンディングする事例を取り上げましたが、これはホールセール・ファンディングの事例といえます。前述のとおり、MMFとは要は投資信託なのですが、国債やレポ、CPなど安全性の高い運用を行う主体です。MMFがレポで運用するとは、具体的には国債などの債券を担保として受け取り、短期の貸出をして運用しているイメージです(これを服部(2022)ではリバース・レポと説明しました)。図表1.MMFのイメージにイメージを記載していますが、例えば読者が証券口座を開き、MMFという投資信託に入金します。その投資信託は、短期国債やレポ、CPなど安全性の高い運用を行うことで、赤字主体である証券会社や事業会社等に資金が流れるわけです。
図表2.MMFおよび商業銀行による資金融通*7がMMFおよび商業銀行を経由した資金融通を比較した図です。上段がMMFを経由して赤字主体に資金が流れる動きであり、これがホールセール・ファンディングになります。一方、下段が伝統的な商業銀行を通じた資金融通であり、これがリテール・ファンディングに相当します。
このような資金融通の構造をみると、MMFを通じた資金融通も多くの読者にとってなじみがある商業銀行を通じた資金融通に似た取引であると感じるかもしれません。そのため、MMFを経由したファンディングは、事実上の銀行と同じ機能を果たしていることから「シャドー・バンキング」という表現を用いることがあります。ファイナンスのテキストでは証券化や一部のフィンテックなどもシャドー・バンキングの一例として取り上げられることがありますが、シャドー・バンキングの定義*8は簡単ではありません。本稿ではMMFのみに絞りますが、シャドー・バンキングそのものについてはファイナンスのテキスト等を参照してください(今後の論文で必要があれば取り上げます)。

2.4 米国におけるMMF市場の拡大
MMFというと日本では非常にマイナーな商品に感じるかもしれませんが、米国では事実上、個人の預金のような機能を果たしています(日本でなぜMMFが普及していないかについてはBOXで説明します)。もともとは米国でも伝統的な商業銀行のチャネルが主流でした。米国では伝統的な商業銀行のビジネス・モデルは「3-6-3」と呼ばれており、このモデルは、3%の金利で預金を集め、6%の金利で融資をし、午後3時にはゴルフ場にいくという冗談のようなビジネス・モデルです*9。もっとも、この「3-6-3」モデルは、1970年代に終焉を迎えます。実は、1970年代に米国では高いインフレーションを経験し、それに伴い金利が急騰するのですが、当時の商業銀行はレギュレーションQと呼ばれる銀行規制があり、預金金利を上げることができませんでした。
これに対して攻勢をかけたのがMMFです。当時、インフレが10%を超えており、短期の名目金利も10%を超える水準であることから、預金より高い金利を支払うことが容易な経済環境でした。これにより、伝統的な銀行は預金の流出を余儀なくされます。その後、規制緩和によって伝統的な銀行が高い金利を付すことが可能になり、資金流出が止まるのですが、MMFはこのように預金の代替としてプレゼンスを高めたわけです。

図表3.米国MMF残高の推移は米国のMMFの推移を示していますが、1970年代後半から拡大をみせ、2008年の金融危機時までは基本的に増加傾向にあります。その後、金融危機時に減少に転じますが、近年になり再び残高を増やしています。米国では投資信託の保有が高いという話がしばしばされていますが、その背景には1970年代以降、上記の観点でMMFが普及し、証券口座の利用が広がったことも看過できません(MMFの普及については例えばノセラ(1997)などを参照してください)。MMFは当初、個人から普及がスタートしたのですが、その後、機関投資家にも普及していきました。
MMF拡大の背景には制度的な工夫も指摘できます。MMFが預金のように取り扱いがなされるために重要な点は、時価評価せずいつでも元本(パー)で解約できるような仕組みにすることです。MMFでは長い間、預金のような形で時価評価がされていなかったのですが*10、その工夫をするために、運用内容を安全性が高く、かつ、流動性が高い資産に限定しました(この部分は金融危機後、改革がなされるのですが、その背景を含め後述します)。もっとも、現実的には国債で運用したとしても時価は変動し、特にCPなどで運用した場合、デフォルトのリスクもあります。そのため、MMFについては運用会社による支援が暗黙の前提とされており、しばしば運用会社がMMFの元本割れを防ぐということが行われてきました*11。

2.5 レポを通じたホールセール・ファンディングの拡大
このMMFの拡大とともに証券会社のホールセール・ファンディングも拡大していきます。シン(2015)では米国のプライマリー・ディーラーによるレポ取引と金融機関発行のCPの残高を、米国において主に預金とMMF等で構成されるM2と比較しています*12。シン(2015)によれば、1990年代初頭の場合、レポ取引と金融機関のCPはM2のわずか1/4でしたが、金融危機の直前である2007年8月時点では80%を超えるところまで増加したとしています。
アーマー等(2020)によればレポ市場が拡大してきた要因は3点あります。第一の要因は機関投資家のプレゼンスの高まりです。前述のとおり1970年以降、MMFのプレゼンスが拡大していきますが、レポ取引を通じたファンディングは安全な運用をするMMFの良い受け皿になりました(本稿ではMMFに絞っていますが、1980年以降、様々な要因で機関投資家の運用が拡大していきます)。第二の要因は、前述のとおり、証券会社は預金による調達ができないため、レポがそのよい代替的な手段になった点であり、これも前述の点です。
レポ市場が拡大した第三の要因は、レポの貸し手に対する債権は他の債権よりも回収が優先されるという倒産法上の措置です。前述のようにレポは担保付きの貸出なのですが、読者が担保をもらって貸出をした際、仮に相手がデフォルトしたとしましょう。この場合、デフォルトした企業に対して、読者以外に貸出をしている人もいることが普通ですが、当然読者として他の債権者に対して優先して返済されるかどうかが気になるはずです。アーマー等(2020)によれば、レポは「レポの貸し手は他の多くの債権者に対して『特別の優先債権者の立場』(super priority)を事実上享受」しており、「レポはより魅力的な短期投資の形態となる」(p.689)と評価しています。

3.金融危機時におけるトライパーティ・レポ市場における取り付けと政府による対応

3.1 金融危機時におけるレポ市場
上述のように拡大していったレポ市場やMMFですが、その後、金融危機を経験して、大きな改革を迫られます。服部(2022)では、米国のレポ市場にはバイラテラル・レポとトライパーティ・レポがあり、トライパーティ・レポではクリアリング・バンクと呼ばれる銀行(主にJPモルガンとBNYメロン)が中間に入ることで、MMFなど幅広い投資家がレポ市場に参入することが可能になると説明しました。
金融危機時に短期金融市場で大きな混乱が起きたのですが、特にトライパーティ・レポ市場で大きな問題が発生しました。前述のとおり、クリアリング・バンクがトライパーティ・レポで重要な役割を果たしますが、金融危機前は事実上、クリアリング・バンクが短期的な信用を行うということが商慣行として行われていました*13。金融危機時のニューヨーク連銀の総裁であったガイトナー氏によれば、「トライパーティ・レポで果たす役割は、ほとんどが事務作業だが、現金と証券のやりとりなしに、昼間の数時間(もしくは日中)、借り手に与信を与えることもやっている」(ガイトナー, 2015, p.159)としています。すなわち、当時は、非常に短期とはいえ、クリアリング・バンクがクレジット・リスクを負う構図が存在していました。これは通常時は問題にならなかったのですが、金融危機時にはクリアリング・バンクがこのリスクを忌避することにより、短期市場における資金融通が困難になる事態が発生しました。
また、トライパーティ・レポでは、米国債以外を担保としたレポも活発に行われた点も金融危機時に大きな問題になりました。服部(2022)ではSOFR(Secured Overnight Financing Rate, 担保付翌日物調達金利)の説明に焦点を当てていたためもっぱら米国債を前提にしましたが、米国債以外を担保とするレポも存在します。特に金融危機以前は、トライパーティ・レポの担保として流動性の低い証券化商品が40%程度を占めていたとされます*14。

3.2 金融危機時におけるMMFの取り付け
つまり、金融危機時には以下のことが起きたわけです。読者がMMFに100円預けており、その資金はレポ市場で担保付の貸出がなされています。読者としては担保がある短期の貸出を行っているので、仮に相手が倒産したとしても、担保を取ればいいので安心に思えます。しかし、その担保が金融危機時に証券化商品だったらどうでしょう。相手が100円の返済ができずデフォルトしたとして、担保である証券化商品を読者がクリアリング・バンクから受け取ったとしても、それはもはやどの程度の価値があるかわかりません。そのような担保を受け取るくらいならばMMFで運用していた100円を引き出したいと思うでしょう。その結果、金融危機時には皆一斉に引き出しをするということが起こったわけです*15。
そもそも、前節で説明したとおり、MMFで運用している人々は預金の代替として運用しているわけですから、MMFの安全性に疑義が呈された場合、保有者がすぐに引き出すということが起こりえます*16。伝統的な商業銀行では、仮に多くの預金者が一斉に引き出した際、銀行がその引き出しに対応できないがゆえ、テクニカルにデフォルトすることがありえます。これはいわゆる「銀行取付(Bank Run)」*17ですが、これまで説明したとおり、MMFは預金に似た商品性を有していますから、潜在的にはMMFにも取り付けのリスクが存在していました。
2008年の金融危機時においてMMFの取り付けの引き金になったのはリザーブ・プライマリー・ファンド*18と呼ばれるMMFの元本割れです。同MMFはリーマン・ブラザーズが発行したCPを保有していました。読者もご存じのとおり、リーマン・ブラザーズが2008年9月に倒産したため、このデフォルトがMMFの元本割れを引き起こしました。もちろん、預金のようにMMFで運用していた投資家からすれば元本割れは許容できませんから、多くの人が一斉に引き落とすことを通じて、MMF市場における取り付けが起きたわけです。
図表4.2008年9月におけるMMFからの資金流出入はリーマン・ショック後にMMFからどの程度資金流出したかを示していますが、バーナンキ(2015)によれば、リーマン・ブラザーズ破綻の発表後、ほぼ2日間、1日約1000億ドルの資金がMMFから流出したとされています。前述のとおり、MMFはトライパーティ・レポで運用していますから、MMF市場における取り付けが起こることでMMFは資産の投げ売りを余儀なくされますし、証券会社や事業会社にとってはレポやCPを通じて資金調達をすることも困難となります。2008年の金融危機は様々な重要な特徴を有していますが、MMFの取り付けを通じて短期市場に混乱が起きた点は、それまでの金融危機では経験のない重要な特徴といえます。

3.3 金融危機時における政府及び中央銀行の対応
金融危機時にはこのようなレポ市場における混乱が見られたことから政府は様々な対応を余儀なくされます*19。前述のとおり、MMFは銀行のような役割をはたしており、元本割れが起きたため、取り付けが起こりました。MMFの取り付けに対応するため、まず政府が行った対応はMMFの元本保証です。米国では連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corporation, FDIC)と呼ばれる預金保険があり、預金者にとって元本保証が付されているわけですが、この措置はいわば預金と似た保証をMMFに付したと解釈することもできます*20。図表4をみると、保証の公表後は取り付けが早く終息しているように見て取れます。
さらに、MMFが前述のような形で事業会社等に資金融通をしていたわけですが、MMF市場から資金流出することで、事業会社等の資金調達ができないという状況が生まれました。これに対処するため、米連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board, FRB)がクレジット・リスクを引き受けることで、MMFが有する資産担保コマーシャルペーパー(ABCP)を額面で商業銀行に売却するスキームを立ち上げました。これをABCP-MMMF流動性ファシリティ(Asset-Backed Commercial Paper Money Market Mutual Fund Liquidity Facility, AMLF)といいます。ABCPとは、CPの一種ですが(ABCPについてはBOX 1をみてください)、ガイトナー(2015)は「高品質の資産担保コマーシャルペーパーの市場を復活されるための対策で、リザーブ・ファンドが額面割れしてからコマーシャルペーパーを処分し始めたMMFへの圧力を弱める狙いがあった」(p.257)としています。
AMLFはコロナ禍で再び登場するので、少し丁寧に説明します。具体的なスキームは図表5 ABCP-MMMF流動性ファシリティ(AMLF)のイメージに示されていますが、前述のとおり、MMFがABCPを保有しています。この購入を銀行に促すために、その資金を、ABCPを担保にすることでボストン連銀が貸し付けるというスキームです*21。ガイトナー(2015)は「資産担保コマーシャルペーパーをMMFから購入できるように銀行に融資し、この悪循環を食い止めるという、いささか回りくどい手法*22を用いる」、「連銀がそのリスクを負う」*23(p.258)と説明しています。すなわち、AMLFの導入によって、事実上、FRBは金融機関を経由してMMFからABCPを買い入れたとみることができます*24。
MMFの保証は結局、発動されませんでしたが、バーナンキ(2015)などでは、主にこの二つの対策によりMMFの取り付けは沈静化したと整理しています。なお、本稿ではMMFという観点でAMLFのみに焦点をあてましたが、金融危機時にはプライマリー・ディーラーへの融資やCP向けのファシリティなど多数の措置が取られています。金融危機時に導入されたファシリティについては次回の論文でも取り上げますが、これらの詳細はガイトナー(2015)やバーナンキ(2015)、木下(2018)等を参照してください。

4.金融危機以降の改革

4.1 バーゼル規制:安定調達比率
上述のように、金融危機時にはMMFの取り付けを通じて短期金融市場に混乱が起こりましたが、金融危機時以降は、その問題を防ぐために様々な措置が取られています。本節ではMMF改革を主軸に説明をしますが、まずは銀行の規制の主軸であるバーゼル規制における位置づけについて概観します。
まず、ホールセール・ファンディングという意味で重要な規制は流動性規制です。流動性規制は金融危機を反省にバーゼル規制上、新たに追加された規制になりますが、(1)流動性カバレッジ比率(Liquidity Coverage Ratio, LCR)と(2)安定調達比率(Net Stable Funding Ratio, NSFR)の二つで構成されます。LCRは短期的な流動性リスク管理指標、NSFRは中長期的な流動性リスク管理指標になるのですが、具体的には(1)LCRは金融危機時にすぐに資金がショートしないように、ストレス時、30日間に見込まれる資金流出に対応できる流動性を確保することを求めるものです。
ホールセール・ファンディングという意味で特に重要なものは後者の(2)安定調達比率です。金融庁によれば、「安定調達比率とは、売却が困難な資産(所要安定調達額。オフ・バランスシートを含む)を保有するのであれば、これに対応し、中長期的に安定的に調達(負債・資本)することを求めるものである」*25としています。具体的には、国際統一基準行に対して、下記のように安定調達比率を定義し、この比率が100%以上になるような運営を求めています。
重要な点は、この比率を守るように大手金融機関にインセンティブを与えているところです。安定調達比率の定義式を見てほしいのですが、分母が「所要安定調達額」となっており、これはBSの左側(資産サイド)に焦点をあてたものです。具体的には、金融危機時等において流動化できる可能性に応じてウェイトをとることで、当該銀行が有する「売却が困難な資産(所要安定調達額)」を算出します。一方、分子である「利用可能安定調達額」はBSの右側(調達サイド)の情報で構成され、資金が引き出される可能性に応じてウェイトをとることで算出されます。たとえば個人・中小企業からの預金のウェイトは90%などという高いウェイトである一方、金融機関等からの資金調達の場合、50%など低いウェイトが用いられます。このようにウェイトを用いた比率に立脚することで、売却が困難な資産を保有する場合には、ホールセール・ファンディングに対し、リテール・ファンディングで資金調達を行うようなインセンティブを与えているわけです。これはバーゼルの自己資本比率規制において、リスクが高いアセットで運用する場合は、リスクテイクを許容する株主から資金調達をしてくるようインセンティブを与えていることと類似したロジックです(バーゼル規制の概要については服部(2021a)を参照してください)。

BOX 1.資産担保コマーシャル・ペーパー(ABCP)について

本稿ではABCPについて触れました。図表6 ABCPのイメージがABCPのイメージ図になりますが、SPV(特別目的事業体)というペーパーカンパニーがABCPを発行し、それをMMFなどが購入します。MMFの資金はSPVを通じて事業会社などの赤字主体に資金が流れますが、その一方で、赤字主体の債権等がSPVに保有されます。
ABCPについて2点補足があります。1点目はABCPの多くには信用保証や流動性保証が付されているという点です。Acharya et al.(2013)によれば金融危機直前のABCP市場においてABCPの7割以上がこれらの保証によってカバーされていることを指摘しています。この保証はMMFによるABCPの投資を容易にしました。
2点目は、満期の変換です。ABCPはCPであるため満期が短い債券なのですが、SPVが保有する債権等の満期は一般的には長い可能性があり、これを全体でみると、いわば満期の変換機能を行っているという解釈ができます。このような満期変換機能は、(銀行が短期の預金で調達して、長期の貸出で運用することを考えると)商業銀行と同じ機能を有しているとみることができます。そのため、ABCPもシャドー・バンキングの一種として整理される傾向にあります。
ここではABCPについて最低限の知識を整理しましたが、ABCPなど証券化商品は金融危機時以降、規制等が大きく変わっているため、詳細を知りたい読者は各種資料を参照してください。

4.2 MMFに対する規制改革
ここからMMF規制の概要について議論をしてきます。前述のとおり、MMFを通じた取り付けが問題になりましたが、MMFへの規制も強化されています*26(MMFは投資信託であることから米国証券取引委員会(SEC)が規制を課しています)。ここまでの流れを見た読者がMMFを規制するうえでどう感じるかですが、一つの考え方は、MMFは預金のような機能を果たしており、金融危機においても元本保証のような措置を採られたのだから、銀行と平仄をとった規制を付すべきだというものです。MMFは事実上、銀行のような機能をもっているわけですが、銀行にバーゼル規制という自己資本比率規制を軸とした規制があることを考えるとMMFの規制は緩いとみることもできました。その一方で、そうはいっても、MMFは国債やCPなどで運用するのだから、主に中小企業等への貸出をしている銀行とは有しているリスクの特性は全然異なるわけであり、同一の規制を課すのは実態に合わない、とみることもできます。読者の多くは両方ともその言い分に合理性があると感じるかもしれません。
前節からMMFには脆弱性があることがわかりましたが、その脆弱性は二つのタイプに集約できます。一つ目は、MMFの投資家は預金のようにMMFを保有しているため、元本割れなどがあった場合は銀行の取り付けのように突然の引き出しを行う可能性があるということです。二つ目は、MMFは必ずしも流動性が高い資産を保有しているわけではないため、仮にすぐに引き出された場合に対応できるとは限らない点です。2014年にMMF改革案が発表され、2016年から実施されましたが、大枠でみると、この二つの軸に対応していると理解することができます。
ここから改革の内容について説明をしていきますが、まず、MMFの運用の厳格化がなされました。そもそもMMFには国債で運用がなされる「ガバメントMMF」とCPなどでも運用を行う「プライムMMF」があります*27。金融危機時には、MMFがレポで運用を行う際の担保が証券化商品であったこと等が問題となりました。そこで、ガバメントMMFについては、その99.5%以上を現金や国債等で運用するなど、より運用を厳しくするという対応がなされました。これはより安全性や流動性が高いMMFを設定させることにより、金融危機時の取り付けを防ぐとともに、仮に流出があった場合、その対応を可能にするための措置といえます。
さらに、この改革では、MMFの投資家についても個人投資家と機関投資家を分けた規制がなされました。MMFの取り付けについては、特に機関投資家からの解約が激しかったとされています。これに対処するため、機関投資家から資金を募集する(国債等以外へも運用する)プライムMMFに対して、(1)時価評価するとともに、(2)ゲート条項など、急激な解約に歯止めをかける措置をとりました。すなわち、前述のように国債などに絞った運用を行うガバメントMMFではなく、一定のリスクをとるプライムMMFで機関投資家が運用する場合に、そのMMFを時価評価するとともに、急激に引き出すことを防ぐ措置をとったわけです。
前述のとおり、預金と同じ性質を有するためMMFでは時価評価がなされていないという点を指摘しました。もっとも、特に国債等以外の運用も含むプライムMMFについては、例えば、金融危機時は証券化商品なども有していることから、MMFの時価が見えにくいという意味で投資家がパニックを起こしやすい状況とも言えます。そこで、機関投資家が保有するプライムMMFについては時価評価(これを変動NAV*28といいます)する措置が取られました。
また、機関投資家だけでなく、個人も含めたプライムMMFについては、解約を防ぐ措置として償還手数料とゲート条項が導入されました。償還手数料はMMFの流動性が一定程度低下した場合、MMFの解約に係る手数料を課すことが可能になる措置である一方、ゲート条項は流動性が一定程度低下した場合に一定期間、MMFから引き出しをできなくするための措置です。どちらもプライムMMFに対して取り付けを防ぐための措置と解釈することができます。
図表7.2014年におけるMMF改革の概要が上記をまとめたものです。グレーでハイライトされている部分が2014年で改革がなされた部分になります。*29
このMMFの改革については多面的な評価がなされています。特に重要な点はこの制度改革は必ずしもプラスに評価されているとは限らない点です。例えば、アーマー等(2020)では、「SECが導入した機関投資家向けMMFという『解決策』は、いくつかの懸念を含んでいる」(p.736)としたうえで、固定NAVが継続されたガバメントMMFへのシフト、依然として大量償還リスクにさらされている等の懸念を指摘しています。
MMFの改革については学術研究もなされています。ニューヨーク連銀のエコノミストが分析したCipriani and Spada(2021)はMMFの改革はプライムMMFからガバメントMMFへのシフトを促したと指摘したうえで、この制度改正がガバメントMMFをより貨幣としての機能を強めた点に着目します。そのうえで、投資家が評価する貨幣との類似性(money-likeness)の推定を試み、その結果、money-likenessが20~30bps程度であるという推定結果を示しています。

5.おわりに
本稿ではホールセール・ファンディングについてMMFに焦点を当てて説明をしました。さらに深い議論が知りたい読者はアーマー等(2020)の第20章から22章を読むことをお勧めします。また、金融危機時の対応の記述については、実際の政策を担っていたバーナンキ氏とガイトナー氏の著書を本稿では(いわば一次資料に近いため)できる限り出所としましたが、バーナンキ(2015)やガイトナー(2015)は非常に丁寧に記載されているため、同書を一読することをお勧めします。
本文で説明したとおり、SECの改革について不十分という意見もあったわけですが、実際にこのような懸念はコロナ禍で顕在化します。コロナ禍において投資家が安全資産を求めるようになり、プライムMMFからガバメントMMFへ資金を移すなど、プライムMMFからの資金流出が起こりました。これは本稿で説明した改革が十分でなかった可能性を示唆しています。また、金融危機時に導入されたAMLFも、Money Market Mutual Fund Liquidity Facility(MMMF)と名称を変えて再開されます。現在、規制が再び見直されていますが、紙面の関係上、今回はこれらについては触れていません。今後、これらについて取り扱うことを予定しています。

BOX 2.日本におけるMMF(マネー・マネジメント・ファンド)
本稿で説明したとおり、米国ではMMFが短期金融市場で重要な役割を果たしていますが、米国とは異なり、我が国ではMMF市場は発展しているとはいえません。歴史的には、我が国で中期国債の消化が必要であったことなどを背景に1980年に中期国債ファンドが設定されました*30。その後、1992年にMMF(マネー・マネジメント・ファンド)がスタートします*31。1997年に証券総合口座専用の商品としてMRF(マネー・リザーブ・ファンド)*32が設定されました。
もっとも、2000年代前半に、米国エネルギー会社のエンロン社の債券を組み込んでいたMMFがあったことから、同社の破綻により、我が国では早々にMMFの元本割れを経験しました*33。また、1990年以降、基本的には円金利は低下傾向にあり、米国のように金利が上昇しMMFが普及する環境は生まれませんでした。特に、2016年に日銀がマイナス金利政策を導入したことで、MMFの元本割れの危険性が生まれ、安定した収益の確保をめざすという運用目的の達成が困難になったことから、2017年までに各運用会社がMMFを償還することを決定しました(これにより現在、日本のMMFは存在していません)。現在、米国のMMFに近い商品としてMRFが残っており、残高は2021年末で13.9兆円存在します。日本のMMFの詳細について関心がある読者は杉田(2013)を参照してください。

参考文献
[1]岡田功太(2014)「米国のMMF最終規則の公表とその影響」『野村資本市場クォータリー』2014 Autumn
[2]宮内惇至(2015)「金融危機とバーゼル規制の経済学」勁草書房
[3]木下智博(2018)「金融危機と対峙する『最後の貸し手』中央銀行:破綻処理を促す新たな発動原則の提言:バジョットを超えて」勁草書房
[4]杉田浩治(2013)「日本の公社債投資の歴史と現状」『証券経済研究』第81号
[5]服部孝洋(2021a)「銀行勘定の金利リスク(IRRBB)入門―バーゼル規制からみた金利リスクと日本国債について―」『ファイナンス』6月号、60–69.
[6]服部孝洋(2021b)「金利指標改革入門―店頭(OTC)市場とLIBOR不正操作問題について―」『ファイナンス』11月号、10–19.
[7]服部孝洋(2022)「SOFR(担保付翌日物調達金利)入門-米国のリスク・フリー・レートおよび米国レポ市場について-」『ファイナンス』3月号、28–37.
[8]ニール・アーウィン(2014)「マネーの支配者:経済危機に立ち向かう中央銀行総裁たちの闘い」早川書房
[9]アナト・アドマティ, マルティン・ヘルビッヒ(2014)「銀行は裸の王様である」東洋経済新報社
[10]ジョン・アーマー, ダン・オーレイ, ポール・デイヴィス, ルカ・エンリケス, ジェフリー・ゴードン, コリン・メイヤー, ジェニファー・ペイン(2020)「金融規制の原則」きんざい
[11]ヒュン・ソン・シン(2015)「リスクと流動性:金融安定性の新しい経済学」東洋経済新報社
[12]ベン・バーナンキ(2012)「連邦準備制度と金融危機」一灯舎
[13]ベン・バーナンキ(2015)「危機と決断 前FRB議長ベン・バーナンキ回顧録」角川書店
[14]ジョセフ・ノセラ(1997)「アメリカ金融革命の群像」野村総合研究所情報リソース部
[15]Acharya, V., Schnabl, P., Suareze, G.(2013)“Securitization without risk transfer” Journal of Financial Economics 107(3), 250-269.
[16]Cipriani, M., La Spada, G.(2021)“Investors’ Appetite for Money-Like Assets:The Money Market Fund Industry after the 2014 Regulatory Reform” Journal of Financial Economics 140(1), 250-269.
[17]Mishkin, F., Eakins, S. (2018)“Financial Markets and Institutions” Pearson.

*1)本稿の意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織の見解を表すものではありません。本稿の記述における誤りは全て筆者によるものです。また本稿は、本稿で紹介する論文の正確性について何ら保証するものではありません。本稿につき、コメントをくださった多くの方々に感謝申し上げます。
*2)下記をご参照ください。
https://sites.google.com/site/hattori0819/
https://sites.google.com/site/hattori0819/
*3)企業が事業に必要な資金を調達するために発行する短期の無担保の約束手形を指します。
*4)アーマー等(2020)ではホールセール・ファンディングを短期調達であることを前提に記載しているほか、バーナンキ(2015)でも、「短期の、保険無しの資金調達(中略)は、主に大口顧客を対象としたホールセール・ファンディングと呼ばれ」(p.182、上巻)と記載しており、ホールセール・ファンディングといった場合、短期の資金調達を指すことが通常です。
*5)アーマー等(2020)では「ディーラーとその他の金融仲介業者にとって、ホールセール資金調達の二つの重要な供給源は、コマーシャル・ペーパーとレポである」(p.684)としています。
*6)ホールセール部門は通常、プライマリー・マーケットを担う投資銀行部門とセカンダリー・マーケットを担うマーケッツ部門に分かれます。なお、証券会社そのものを投資銀行という表現をすることがある点に注意してください(その意味で、投資銀行の中に、投資銀行部門とマーケッツ部門があるともいえます)。
*7)銀行は実際にはホールセール・ファンディングにも依存していますが、ここでは説明の関係上ここではその点は捨象しています。
*8)アーマー等(2020)ではFRBが当初、広義の定義を求めたことから「(完全にあるいは部分的に)通常の銀行システムの外にある主体や活動が関与する信用仲介」(p.673)と説明していますが、もう少し限定的な定義が必要である点についても言及しています。詳細はアーマー等(2020)の20章等を参照してください。
*9)ここでの記述はMishkin and Eakins(2018)、アドマティ・ヘルビッヒ(2014)などに基づいています。
*10)Ciprirani and Spada(2021)では「In contrast to other mutual funds, however, until the new SEC regulation came into effect in October 2016, all MMFs were allowed to keep their net asset value(NAV)at per share; they did so by valuing assets at amortized cost and distributing daily dividends as securities progress toward their maturity date.」と指摘しています。
*11)例えば、アーマー等(2020)ではデフォルトした有価証券などをスワップ・アウトなどの形で支援しており、20本以上のファンドを元本割れから救ったとしています。また、同書ではペニー・ラウンド・ルールと呼ばれる額面割れを回避するための措置が付されていたことも紹介しています。
*12)シン(2015)では「M2は、小口の預金とMMFの投資口保有額を含むことから、最終的債権者が金融仲介セクター全体に対して持つ流動債権の総残高を良く近似している」(p.202)としています。
*13)宮中(2015)では、「金融危機当時のトライパーティ・レポは、取引を夜に開始し、朝に終了していた。レポが行われていない日中の資金繰りについてはクリアリング・バンク2社(BONY、JPモルガン)が信用供与(貸出)していた。(中略)すべてのレポを毎朝unwind(終了)する商慣行だった。これは、様々な担保証券を当事者のニーズに合わせて、毎日、最適に差し替える作業を効率よく行うためである」(p.140)と説明しています。
*14)この数値は宮中(2015)に基づいています。
*15)ガイトナー(2015)ではカントリーワイドの事例を用いて、クリアリング・バンクであるBONYがカントリーワイドに対するクレジット・リスクを採ることを拒否したという事例を紹介しています。ガイトナー(2015)では「MMF(マネー・マーケット・ファンド)その他の投資家がカントリーワイドにひと晩貸し付けた現金を返さず、担保としてカントリーワイドが預けている証券を貸し手に与えるという脅しだった。(中略)さらに、同社に短期の貸し付けを行っていたMMFやその他の投資家は、ほしくもない証券を押し付けられる。その中には、すでに価格が急落した住宅ローン関連証券も含まれている。投資家たちはカントリーワイドに似た他の会社からも資金を引き揚げようとするかもしれない。そうなると、2兆3000億ドルのトライパーティ・レポ市場全体で取り付けが起きるだろう」(p.159)と説明しています。
*16)一方、普通の投資信託においては、投資家はリスクを受け入れて高いリターンを享受することを求めるため、損失を計上したら直ちに引き出すという行動はとりません。
*17)取り付けについて経済学では、Diamond–Dybvigモデルなどで説明されます。詳細は銀行論のテキストなどを参照してください。
*18)リザーブ・プライマリー・ファンドは1971年にMMFを開始したリザーブ・マネジメントが運営するMMFであり、他社より高いリスクをとることで高い利回りを提供することで成長したファンドとされています。このファンドがリーマン・ブラザーズのCPに7850億ドル投資しており、その実質的価値がゼロになるということが起こりました。このことは同ファンドの取り付けを誘引し、それが他のMMFへの取り付けへ拡大していったとされています(ここでの記述はバーナンキ(2015)のp.18などを参照しています)。
*19)ここでの説明はアーマー等(2020)を参照しています。
*20)ガイトナー(2015)によれば、当初MMFの払い戻しの保証をすることを検討したが、預金保険を脅かし、銀行システムで取り付けが起きる懸念があることから、この保証は金融危機以前にMMFに投資した分に限ったと説明しています。詳細は同書のp.258を参照してください。
*21)ここでボストン連銀が出てくる理由は、アーウィン(2014)によればニューヨークとワシントンのFRBのスタッフは金融危機の対応で手薄になっていたことや、ボストンには信託銀行などMMFに係るインフラが充実していたこと等を挙げています。
*22)このような間接的な方法が用いられた理由として、「連銀がファンドから直接証券を買うことを制限する法的制限が課されていたから」(バーナンキ 2015, p.45)という理由が挙げられます。
*23)この保証は為替安定基金(ESF)を通じてなされています。バーナンキ(2015)はこれを「連邦預金保険公社が一般の銀行口座を保証するようなもの」(p.46)としています。詳細はバーナンキ(2015)のp.45-46を参照してください。
*24)木下(2018)は「AMLF貸出は、ノンリコースの与信であり、その経済機能は、FRBが金融危機を経由してMMFからABCPを買い入れたのと実質的に同じである。(中略)AMLFは、スポンサー金融機関にABCPの流動性保証の履行を促し、ABCPに投資したMMFが資金払い戻しを円滑に進めることを後押しする仕組みと理解できる」(p.235)と説明しています。金融危機時には、これ以外にもTerm Auction Facility(TAF)など多くの流動性供給ファシリティが特設されました。詳細は木下(2018)などを参照してください。なお、次回の論文ではTAFなどを解説することを予定しています。
*25)下記を参照としています。
https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20180629.html
https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20180629.html
*26)2014年のMMFの改革についてはアーマー等(2020)や岡田(2014)を参照してください。
*27)MMFには、この二つ以外にMuni MMFがありますが、本稿ではガバメントMMFとプライムMMFに絞っています。本稿でこの二つに絞っている理由は、アーマー等(2020)などファイナンスのテキストでこの二つに絞った説明がされる傾向があるためです。
*28)投資信託の世界では、ファンドの時価総額を「Net Asset Value(NAV)」といいます。
*29)Blackrock(2018)「US Money Market Fund Reform:Assessing the Impact」を参照してください。なお、ブラックロック資料ではManipal/Tax Exemptが含まれていますが、本稿ではガバメントMMFとプライムMMFに絞っています。より詳細を知りたい読者は同資料を参照してください。本稿でこの二つに絞っている理由は、アーマー等(2020)などファイナンスのテキストでこの二つに絞った説明がされる傾向があるためです。
*30)中期国債ファンドの導入についても、その意図として米国のMMFの導入がありましたが、銀行の反対があったことから米国MMFと異なる商品性となりましたが、当時の中期国債の消化が必要であったことなどを背景に中期国債ファンドは実現しました。詳細は杉田(2013)などを参照してください。
*31)日本のMMFが米国MMFと異なり、(マネー・マーケット・ファンドではなく)「マネー・マネジメント・ファンド」とされた背景には、預金の競争相手となる商品であることから、銀行による根強い反対があったという意見があります。
*32)日本証券業協会のサイトではMRFは「証券総合口座で、投資資金を待機させておくための追加型公社債投資信託」であり、「元本は保証されていませんが、流動性と安全性を確保するため、運用対象を格付け・残存期間などで厳しく定めており、高格付けの債券のほか、コマーシャルペーパー、譲渡性預金証書などの短期金融商品で運用されています」と説明されています。詳細は日本証券業協会のサイトをご覧ください。
https://www.jsda.or.jp/jikan/word/171.html
https://www.jsda.or.jp/jikan/word/171.html
*33)「MMF元本割れの衝撃(上)安全神話崩れマネー迷走――運用の受け皿失う」(2001/12/05 日経金融新聞)などを参照してください。