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ニセコ町

“ヨソモノ”が活躍するニセコ町~地域おこし協力隊の活動~

ニセコ町企画環境課 自治創生係長 川埜 満寿夫

1.ニセコ町の概要
ニセコ町は、北海道の南西部に位置し、国際スノーリゾートとして知名度を得ている観光業と多種多様な農畜産物の生産が特徴の農業を2大産業とする人口約5,000人の町です。2001年、全国で初めて「情報共有」と「住民参加」を町のあらゆる仕事を進める上での基本ルールとした「まちづくり基本条例」を制定し、町民一人ひとりが自ら考え、行動するまちづくりを続けています。また、観光業と農業を支える基盤は豊かな自然景観であるとの認識のもと、自然環境を基軸とした取組を進め、国から「環境モデル都市」や「SDGs未来都市」に選定されています。
移住者の多いニセコ町では、1980年の国勢調査から人口が増え続けており、その要因としては20~40代の子育て世代の転入が挙げられ、子どもの数も増加傾向にあります。外国人住民も300人弱と総人口の5%を超え、多様性が町の魅力にもなっています。

2.地域おこし協力隊
地域おこし協力隊(以下、「協力隊」という。)は、都市から地方へ生活の拠点を移し、地方で活動を行いながら地域への定住・定着を図り、地域の活性化につなげるために作られた制度です。創設された2009年度は全国で100名に満たない隊員数でしたが、現在は5,000人を超えるほどに増加しています。
ニセコ町でも2011年度から協力隊制度を活用し、これまでに55人の協力隊(卒隊者も含む)を受け入れており、現役の隊員数は29人と過去最大となっています。
最長3年の任期後、同じ地域に定住する割合は全国平均が約6割、ニセコ町では町内に定住する割合が7割を超えています。

写真:写真(1):自分たちで制作したロゴを掲げ集まる協力隊メンバー

3.ニセコ町の地域おこし協力隊
ニセコ町では、町の最上位計画である第5次総合計画さらには地方創生に関する総合戦略において、まちづくりの担い手、地方創生の推進役として協力隊を位置付けています。
それぞれの思いを持ち、都市部からニセコ町にやってくる“ヨソモノ”の協力隊は、新しい文化・考え・価値を地域にもたらしてくれる存在といえます。しかし、当然そこには考え方・価値観の違いがあり、摩擦が起こることもあります。協力隊は地域にしっかりと根差し周りから認めてもらう、地域もまた協力隊を受け入れ支援していく、そして相互に交流しその摩擦を乗り越えていくことで、町が活性化し、町の魅力・多様性は高まっていくものと考えています。
実際に、現在活動している29人の協力隊は、年代も20~50代と幅広く、夫婦で活動している方、子育てをしている方、任期中に出産をされた方、海外活動経験のある方、外国籍の方など多様で、活動分野も農業、林業、観光、教育、スポーツ、子育て支援、交通、交流、輸出、温泉、SDGsなど様々です。まさに協力隊は、ニセコ町の多様性を象徴するような存在であり、その推進役といえます。
加えて、ニセコ町は「町民一人ひとりが自ら考え、行動する」まちづくりを続けています。まちづくりの担い手たる協力隊にもこの実践を求めています。行政はあくまで後方支援の立ち位置です。

4.「自ら考え、行動する」地域おこし協力隊
ニセコ町の協力隊の活動内容は、大きく3つです。農業や観光といった各分野の配属先での活動、自身の卒業後の自立・定住に向けた活動、そして協力隊全体でのまちづくりの活動(以下、「全体活動」という。)です。
この全体活動の取組をいくつか紹介します。なお、全体活動の検討などのため、ニセコ町の協力隊は、毎週水曜日の午後に集まり、打合せ(全体ミーティング)を行っています。これは協力隊同士の交流・ネットワークづくり、といった意味もあります。

《まちの魅力PRプロジェクト》
スノーリゾートとしてだけでなく、多様なアクティビティ・グルメが楽しめるニセコエリアの魅力を伝えるため、協力隊が自ら体験し、その体験を動画配信も含めSNS等で発信する取組です。地元の観光協会とも連携して取り組み、40を超える体験・グルメの発信を行いました。コロナ禍により観光業が大きな影響を受けていることを受け、少しでも集客につながればとの思いから企画されたものです。

《オリジナル土産品開発》
ニセコ町では多種多様な農畜産物を生産しています。高級食材として扱われる「ゆり根」もその一つですが、コロナ禍により消費が減り、行き場を失ったゆり根をパイまんじゅうとして商品化しました。農家や加工事業者、町とも連携して進めたものですが、パッケージデザインを協力隊が担うなど、協力隊のスキルが生かされた取組となりました。

このほかにも、
・コロナ経済対策として町が行ったテイクアウト・デリバリー店支援策と連動し、そのお店や商品をPRする取組
・多くの行事が中止になる中、コロナ対策の工夫をしたうえで、子どもたち向けの夏休み企画やクリスマスイベントの実施
・自分たち協力隊の取組を発信し知ってもらい、今後の協力隊の応募者増加にもつなげるための独自WEBサイトの構築・オリジナルロゴの作成
など、協力隊が地域のために自分たちが今できることを自ら考え、企画・実践し、そして発信する取組が行われています。

写真:写真(2):全体ミーティングの様子
写真:写真(3):ラフティング体験の動画配信の様子
写真:写真(4):ゆりねパイまんじゅう

5.おわりに
ニセコ町では、まちづくりの担い手となる協力隊に、まずは行事のお手伝いなど町民に身近な支援を通じて町民のみなさんに知ってもらい、地域に根付いていくことを優先してお願いしています。町民が協力隊の一番の支援者であるとの考えからです。しかし、このコロナ禍により、町民と直接会い、お手伝いし、交流する機会が激減しました。そんな中でも協力隊は、上記のような取組を、みんなで議論しながら柔軟に実践しています。また、幸いなことにニセコ町には多くの協力隊OB・OGが残り、それぞれが連携していく環境もできつつあります。地域に新しい価値をもたらす、地方創生の担い手として、卒業後も含め協力隊の今後の活躍に期待しています。

「情報共有」と「住民参加」でまちの課題を解決する!

地方創生コンシェルジュ 北海道財務局小樽出張所長 島尻 諭

「住むことが誇りに思えるまちづくり」を基本構想に掲げ、「情報共有」と「住民参加」を2大原則としてまちづくりを進めているニセコ町。
スノーリゾートのイメージが強いが、リゾート開発にも自然との調和や住民の理解などが随所に感じられます。
2018年6月に「SDGs未来都市」に選定され、「地域経済循環」「資源循環」「地域コミュニティ形成」などを課題に取り組んでいるところであり、財務局としても可能な支援を行っていきたいと思っています。

八條キラリ時代に即して地域に貢献する財政融資資金

関東財務局融資課 調査官 坂倉 剛人
1.はじめに
「汚泥再生処理センター」という施設をご存知でしょうか。かねてから「し尿処理施設」とも呼ばれ、悪臭の発生などによる周辺住環境への負の影響などから、いわゆる「忌避施設」や「嫌悪施設」などとも言われた存在です。しかしながら、近年は「持続可能な開発目標」(SDGs)への取組の推進などの流れも受け、環境に配慮した、また資源循環に重点を置いた汚泥再生処理センターが建設されるようになりました。
今回は、埼玉県の南東部に位置する6市町(越谷市、草加市、八潮市、三郷市、吉川市、松伏町)のごみ処理やし尿処理等を担っている「東埼玉資源環境組合」(以下「同組合」)が整備した「第二工場汚泥再生処理センター」(愛称「八條キラリ」)についてご紹介します。

写真:写真(1)【八條キラリ全景】

2.「汚泥再生処理センター」とは
埼玉県は、人口規模が全国第5位の734万4,765人(令和2年度国勢調査確報値)である一方で、下水道処理人口普及率は82.4%と全国第13位に留まっています(「令和2年度末の汚水処理人口普及状況について」(国土交通省ほか)。全国平均は80.1%。)。
同組合のし尿等の処理対象地域である6市町は、人口増加が続いている地域が多く、特に八潮市、三郷市及び吉川市の3市は、埼玉県内における人口増加率が高い上位10市町村(それぞれ第2位、第4位及び第10位)に入っています(令和2年度国勢調査速報結果(埼玉県分))。これら6市町の下水道処理人口普及率をみると、草加市(98.0%)や三郷市(85.2%)などで埼玉県の平均を上回っている一方、松伏町では約69.1%、人口増加率が高い八潮市でも約77.7%など、全国平均を下回る市町もあり、地域差がみられます。
「汚泥再生処理センター」は、下水道による未処理地域のうち、非水洗化地域からの「し尿」や、水洗化地域における浄化槽利用者から排出される「浄化槽汚泥」などを受け入れ、これらを様々な工程で処理することにより、「汚泥」、「処理水」そして「臭気」へと分解させます。「処理水」や「臭気」については無害化のうえ外部環境へ放出し、「汚泥」については「脱水汚泥」として資源化します。

3.八條キラリ
八條キラリは、昭和56年に供用開始された前身の施設が、36年以上の時の経過で設備が老朽化したことなどに伴い、新たに整備されたもので、平成30年4月から本格稼働を始めました。
八條キラリは、「環境への配慮」、「自然エネルギーの有効活用」そして「資源の再利用」の観点から、最新の技術により運用されています。
「環境への配慮」の観点としては、上述のとおり、一般的に汚泥再生処理センターからは、「処理水」や「臭気」を外部環境へ放出する必要があります。八條キラリでは、近隣の地方公共団体が定める水質基準よりも厳しい独自基準を設け、より安全性の高い「処理水」を公共下水道に放流しています。また、「臭気」については、発生する臭気を3段階の濃度ごとに生物脱臭装置と活性炭吸着装置を組み合わせるなどして効率的に分解・吸着処理しているほか、処理施設の内部は負圧管理し、エアカーテンなども設置することで、外部へ臭気が漏れることを抑えた構造を採用しています。
「自然エネルギーの有効活用」の観点としては、八條キラリの屋上に太陽光発電設備を設置し、八條キラリで使用される電力の約5%を賄うことができる(残りの95%分については後述。)ほか、雨水貯留槽を設け、雨水を施設内のトイレ洗浄水として有効活用しています。
さらに、「資源の再利用」の観点としては、年間約3,300tが生成される脱水汚泥のほとんどを、隣接する同組合の「第二工場ごみ処理施設」へ搬入し、「助燃剤」として利用しています。また、「第二工場ごみ処理施設」から、ごみの燃焼の際に得られる高圧蒸気により発電される電力の一部を八條キラリへ供給することで、八條キラリにおける必要電力の約95%を賄うことが可能となっています。このように、同組合では、八條キラリを含めたエネルギー循環(再利用)の体制も構築されています。

写真:写真(2)【活性炭吸着装置】
写真:写真(3)【汚泥脱水機】

4.おわりに
この八條キラリの建設費は総額約26億円ですが、このうち約17億円に財政融資資金が活用されています。
財政融資資金は、今回ご紹介した八條キラリのような廃棄物処理事業のみならず、地方公共団体が進める学校教育施設の整備事業や上下水道の整備事業、さらには近年多発している災害による被災の復旧事業など様々な目的に活用されています。関東財務局では、これからも財政融資資金の供給を通じて、時代に即した地域貢献に努めてまいります。
(写真及び参考資料提供:東埼玉資源環境組合)

江田島市
小兵の挑戦~広島県江田島市のまちづくり~

江田島市企画部企画振興課 課長 畑河内 真

1.江田島市の概要
江田島市は広島県南西部の島の自治体です。
本土とは、航路で約20~30分の距離にあり、架橋でも繋がっています。
瀬戸内海で4番目に大きい島の面積は、約100km2で、約22千人が暮らしています。
人口は、年間約500名程度の厳しい減少に直面しており、市内全域が過疎地域に指定されています。
このため、様々な施策を展開し、人口問題に取り組んでいるところですが、本稿では、「しごとづくり」「縁づくり」「情報発信」に関する取組を中心に、いくつか御紹介したいと思います。

2.しごとづくり~新たな特産品「オリーブ」
「江田島市」という名前から想起するものとして、徐々に定着しつつあるオリーブ。でも、栽培の歴史としては、まだ十数年しか経過していません。
市内では、人口減少や高齢化に伴う離農や耕作放棄地が増加。その中で着目したのが、気候的に適地で、かつ、比較的栽培が容易なオリーブでした。2011年には、市民への苗木購入助成制度を創設。産地化への取組を開始します。
現在、市内に約1万5千本が植えられ、収穫量は10tに届くかという状況です。
2016年には、民間企業がオリーブオイルの製造所やレストランをオープン。市民、企業、行政が一緒になって、新たな特産品づくりに取り組んでいます。

写真:オリーブの六次化複合施設「江田島オリーブファクトリー」

3.しごとづくり~「しごと」の誘引
多くの過疎地と同様に、本市も、若い方が働く「しごとの場」が少ないことが課題です。
このため、近年は、島の環境をセールスポイントとした、サテライトオフィスの誘引に注力しています。
人の縁と時流が相まって、2021年には、首都圏のIT企業3社が、市内にオフィスを開設。
また、嬉しいことに、宿泊施設の開業や、水産物加工工場の進出が決定するなど、ここ最近は、島に新たな「しごとの場」が続けて生まれてきています。

写真:本市に進出したIT企業のオフィスの開所式

4.縁づくり~市民が手掛ける「観光商品」
本市は、政令指定都市などの都市圏に隣接する立地にあるものの、提供できる「島での過ごし方」メニューが不足しており、観光面で立ち遅れている感があります。
このため、体験型の観光コンテンツの発掘・商品化を目指し、市民が集客プログラムの提供者となるイベント「えたじま ものがたり 博覧会」を実施しています。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、2020年度の開催は延期。2021年度も、情勢を鑑みて、オンラインでの開催となりましたが、県内外から、約200名の方にご参加頂きました。
この博覧会は、令和3年度末にも開催を予定しており、準備を進めているところです。
手作り感のある観光商品の開発に向け、官民一体となって取り組んでいます。

写真:市民が主体となるイベント「えたじま ものがたり 博覧会」

5.縁づくり~遠隔地への「空き家案内」
地方への移住を検討する際に、恐らくネックになるのが、距離と時間の壁。遠方であればあるほど、気軽に下見に訪れるのは難しいと思います。
また、移住希望者が、せっかく来訪したのに「イメージと違った」となると、双方に残念な気持ちが生じてしまいます。このため、できるだけミスマッチが生じないよう、事前情報をしっかり提供したいと考えています。
2021年には、移住・定住ポータルサイトを作成。島の生活環境や移住体験談などを紹介するとともに、360°カメラで、空き家バンク物件のVR内覧ができるシステムを搭載しました。
IT技術を活用することで、遠方にあっても、本市への移住環境がイメージできるよう、試行錯誤を重ねています。

写真:360°カメラによる空き家物件のVR内覧

6.情報発信~元気な島のイメージづくり
広報部門では、まちの動きをメディア経由で積極的に発信することで、「豊かで活発な島」というイメージを意識的に造り出そうとしています。
2019年には、本市初の広報大使として、市出身のアイドルを登用したPRも開始。
様々な案件のPRを積み重ねてきた成果が多少は出てきたのか、市外の個人・企業から、「最近の江田島市は面白い」と言って、アプローチを頂くことが増えている気がします。

写真:アイドルを活用したイベントと情報発信

7.元気な恵み多き島を目指して
小規模自治体である本市は、財源もマンパワーも限られています。人口約22千人のまちにできることをやるしかありません。
瀬戸内の島の姿や恵みを活かした取組をコツコツと重ねつつ、人やコトに関する良いイメージを発信することで、新たな活力や価値を創出していきたいと考えています。
市内外の様々な人や企業と接点を持ち、フットワーク軽くチャレンジし、偶発的なイノベーションが発生する土壌を意識的に涵養する。
本市のような小兵は、手数で勝負です。
人口減少傾向の改善は容易ではありませんが、引き続き、パンチを数多く繰り出すことで、まちの勢いを生み出していこうと思います。

「元気な島」の取組を応援します。

地方創生コンシェルジュ 中国財務局総務部総務課長 大庭 敬之

江田島市は、気候や風景に恵まれた環境や、都市圏に近いという立地など、ポテンシャルが高い地域です。
「手数で勝負」とおっしゃっているように、豊かな島の環境で、人々が元気に楽しく活動できるよう、たくさんの取組を行っておられ、今後の展開にも期待しています。
中国財務局においても、地方創生、地域経済活性化の取組を支援していきたいと思います。