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1.設立の経緯

国際通貨基金(IMF)は1944年7月に米国ニュー・ハンプシャー州のブレトン・ウッズで開催された連合国国際通貨金融会議において、44カ国により調印されたIMF協定に基づき、1945年12月に設立されました。我が国は、1952年8月13日、53番目の加盟国として加盟しました。現在の加盟国数は191カ国(2024年11月現在)と、IMFは世界のほぼ全ての国が加盟する国際機関となり、国際通貨・金融システムの中心的存在として、その期待される役割もますます大きくなっています。

IMFロゴマーク

2.目的・業務

IMFは①通貨に関する国際協力の推進、②国際貿易のバランスの取れた拡大の促進、③為替の安定の促進、加盟国間の秩序ある為替取極の維持、及び競争的為替減価の防止、④加盟国間の経常取引(輸出入や利子・配当の受け払い等)に係る多国間の支払制度の確立支援と、貿易の成長を阻害する為替制限の撤廃への貢献、⑤国際収支上の問題に直面した加盟国への資金の一時的提供による当該国への安心感の付与、を目的とし、主に以下のような業務を行っています。

  • 融資
     加盟国からの出資等を財源として、対外的な支払い困難(外貨不足)に陥った加盟国に、その要請に基づき、一時的な外貨貸付という形で支援を行い、その国の危機克服の手助けをします。
  • サーベイランス
     世界全体、各地域および各国の経済と金融の情勢をモニターし、加盟国に経済政策に関する助言を行います。なお、秩序ある為替取極を確保し、安定した為替相場制度を促進する観点から、サーベイランスへの協力はIMF協定上の加盟国の義務とされています。
  • 能力開発
       加盟国(低中所得国が中心)に対し、その要請に基づき、金融、財政、税政、統計、マネーロンダリング対策等の分野における、政策立案・遂行能力の向上を促すため、技術支援や研修を実施しています。
   

ゲオルギエヴァ専務理事とアルジャダーンサウジアラビア財務大臣(IMFC議長)

3.ガバナンス

IMFの最高意思決定機関は、各加盟国の代表である総務から構成される総務会であり、IMFの運営に関する重要事項の決定を行っています。また、この総務会に助言・報告を行う委員会として、国際通貨金融委員会、世銀・IMF合同開発委員会が設けられています。日本では財務大臣を総務、日本銀行総裁を総務代理とし、IMFの意思決定に参画するとともに、上記委員会での議論に貢献しています。

 IMFの予算や貸付プログラム等組織運営にかかる意思決定権限の多くは、総務会から、IMF本部に常駐する25人の理事からなる常設の理事会に委譲されています。理事会の監督の下、専務理事以下のIMF職員が業務の執行に当たっています。日本はIMFの第2位の株主として、理事会に単独の議席を有しており、IMFの日本理事及び理事を支える理事室スタッフが、IMFの幹部や職員と連携しつつ、運営や業務に関わる意思決定や議論に貢献しています。

 IMFにおける投票権は、1国1票ではないことが特徴です。IMFは、経済力の大きな加盟国に大きな出資を求め、基本的にはその出資割当額(クォータ)に比例して投票権が割り当てられています。クォータは5年を超えない間隔を置いて、見直されることとされています。直近では、2023年12月15日のIMF総務会決議で、議決権のシェアは現状を維持しつつクォータの総額を50%増加させる「第16次クォータ一般見直し」が合意されました。この見直しが発効した後は、IMFの出資総額は約4,800億SDRから、約7,200億SDRに増加する見込みです。なお、我が国では、IMF加盟措置法の改正案が、2024年4月に成立・施行され、増資に必要な国内手続を終えました。

  ※最新のSDRレートはこちら

IMF理事会室

4.国際通貨・金融システムの安定に向けたこれまでの取組

IMFはその設立以来、世界経済の変容に適応してその役割を進化させながら、国際通貨・金融システムの安定に貢献してきました。例えば、1971年の米国による金・ドル交換停止(いわゆる「ニクソン・ショック」)により、金・ドル本位の固定相場制が終焉し、主要通貨が変動相場制に移行したことを踏まえ、IMFは1978年の第二次協定改正により、加盟国の為替相場制度を自由としたほか、金の特殊な地位の廃止に伴いその取扱いについても変更を行う等して、新しい体制をスタートさせることとなりました。

   また、1980年代から90年代にかけて、高い経済成長期待のもと、国外から多くの資本を惹きつけながらも、金融・為替制度や財政政策等が脆弱であった新興国・途上国が、債務危機、金融危機、通貨危機に陥る事態が中南米やアジア地域で発生する中、IMFは危機対応で大きな役割を果すとともに、その融資のあり方の改革を進めました。

   さらに、2008年9月の米国証券会社リーマン・ブラザーズの破綻を契機とする世界金融危機、及び、2009年10月に発覚したギリシャの財政問題に端を発する欧州債務問題が深刻化する中にあって、IMFは、日本を含む有志の加盟国からの借入やクォータの倍増により、その資金基盤を大幅に増加させるとともに、低所得国向け支援に特化した低利・長期の融資制度(PRGT:貧困削減・成長トラスト)や、経済状況が強固な加盟国が危機に際して迅速かつ無条件に利用できる融資制度(FCL:フレキシブルクレジットライン)の創設等、様々な融資制度改革を実現しました。併せて、金融セクターに特化したサーベイランス(FSAP:金融セクター評価プログラム)や、金融安定理事会 (FSB)と共同した早期警戒演習(Early Warning Exercise)の導入等、金融危機の予防に資する様々な取組を進めました。

 2020年初に発生した新型コロナウィルスによるパンデミックに際しても、IMFは加盟国への緊急融資や、流動性供給強化の取組、債務救済等を通じて、加盟国が経済危機を克服する力となりました。2022年には、気候変動や将来のパンデミック等の中長期的な構造問題がもたらす国際収支上のリスクへの対応にむけて「強靭性・持続可能性トラスト (RST)」を創設し、世界銀行やWHOとの連携の下で、運用されています。また、2022年2月にロシアから侵攻されたウクライナに対しては、日本を含むG7と連携しつつ、支援プログラムを実施しています。

5.これからのIMF

気候変動や人口動態の変化、技術革新等による、世界経済の構造的変容が進む中で、IMFが引き続き国際金融セーフティネットの中心として役割を効果的に果たし、加盟国の持続的な経済成長に貢献できるよう、我が国としても積極的にその取組に関与・貢献していきます。とりわけ、IMFによる低所得国支援や脆弱国支援、能力開発の重要性は今後より一層増すと考えられることから、それらの取組の主要なドナーとして貢献している我が国のプレゼンスを発揮しながら、IMFのこうした機能の強化に関する議論に積極的に参画していきます。

(参考)過去のIMFCコミュニケ・日本国ステートメント等

6.IMFで活躍する日本人スタッフ

IMFでは、約70名の日本人がエコノミストを始めとした様々な職務に就き幅広い分野で活躍しています。一方、IMFにおける日本人スタッフの比率は3%程度に留まっており、出資に比して低迷している現状にあります。日本は、日本-IMF奨学金プログラム(JISP)への出資を通じて、IMFを志望する日本人学生を支援し、日本人の更なる活躍に向けた取組を進めています。

(参考)インタビュー・シリーズ「IMFで働く日本人」
    日本-IMF奨学金プログラム(JISP)

加藤財務大臣とゲオルギエヴァ専務理事