1.はじめに
この度、世銀・IMF 合同開発委員会において、議長に選任いただいたことを大変光栄に思います。これまで本委員会の議論を牽引いただいた、スウェーデンのスヴァントソン議長に敬意を表します。開発委員会の皆様のご協力を得て、闊達な議論を主導し、開発課題の解決に貢献してまいりたいと思います。
アフリカでのエボラ出血熱の流行、ベネズエラやコロンビアで発生した地震、ネパールと中国の国境付近で発生した洪水及び先月タイで発生した洪水をはじめ、世界各地での災害・危機によりお亡くなりになられた方々及びその御家族に心からの哀悼の意を表するとともに、影響を受けている方々にお見舞いを申し上げます。
世界は、中東情勢を含め、地政学的危機や世界経済の不確実性の高まりに直面し続けています。
また、足元の不確実性に加え、貧困の拡大、保健、債務問題、自然災害、サプライチェーンの強靱化などの長期的な開発課題についても対応が必要です。こうした状況の中で、日本として、途上国が直面する開発課題への対応のため世銀グループ(WBG)に期待する役割と、日本の貢献につき、以下申し上げます。
2.WBGの機能・役割強化
世界の直面する開発課題が多様化・複雑化する中、限られた資源で開発効果を最大化することが重要です。その観点から、One WBG アプローチの下でのWBG各機関の有機的な連携の進展を評価するとともに、WBG ナレッジバンクによる知見の共有・活用がなされ、各国での課題解決に貢献することを期待します。また、WBG のガバナンス向上も絶えず重要であり、今月新たに着任した慶長新副総裁の活躍に期待します。加えて、公的資金のみならず、民間資金動員により、効率的・効果的な支援を行うことが重要です。国際金融公社(IFC)及び多数国間投資保証機関(MIGA)が民間部門への支援を更に強化し、より高い開発効果を実現することを支持します。
開発課題に効果的かつ効率的に対応するためには、WBG を含む国際開発金融機関(MDBs)が一つのシステムとして機能することが重要です。MDBs の連携を通じた強靱なサプライチェーン構築の取組として、重要鉱物バリューチェーン及び肥料安定供給を支援する MDB 共同声明の締結を歓迎します。世銀がアジア開発銀行(ADB)に引き続き、本年 7月に米州開発銀行(IDB)とのFull Mutual Reliance Framework ( FMRF)を締結したことを歓迎し、これらの連携の下で具体的な案件形成が進むことを期待します。
品質評価を重視するRated Criteriaの導入や調達先の多様化推進など、調達制度改革の進展を歓迎します。ライフサイクルコストを踏まえた質重視の調達は、借入国における開発効果及び持続可能性の向上に資するものです。市場への積極的なアウトリーチや調達人材の能力強化等、更なる取組の推進とともに、WBG が他の MDBs との連携を強化し、調達制度改革において主導的な役割を果たすことを期待します。
効果的・効率的な開発支援のためには、WBG が途上国の声をその業務により良く反映することも重要であり、2025年株式保有見直しにおけるボイス改革の着実な実施に期待します。最小貧国をはじめとする途上国が 2018 年増資合意を履行するため、引受けに向けた課題分析と支援強化が必要です。
3.日本が重視する開発課題への対応
日本が重視する開発課題について、日本の取組や WBG に期待する点は以下のとおりです。
(1)重要鉱物
レアアースをはじめとした重要鉱物のサプライチェーンの多様化・強靱化は、途上国での質の高い雇用創出と持続的な経済発展に貢献するとともに、世界経済の強靭化に資する重要な課題です。
その観点から、WBG が国別戦略の策定などの取組を進めていることを歓迎します。今後は、具体的な投資案件の形成を直接支援することが重要です。そのため、日本は、本年6月にWBGの日本信託基金に新たな支援枠「RISE+(プラス)」を創設し、2,000 万ドルの資金貢献を行うことで、現在 WBGと案件形成を進めています。
RISE や RISE+を補完し、民間資金動員を促進するため、保証・リスク分担機能の強化も重要です。この観点から、MIGA の重要鉱物関連支援に関する保証機能の拡充に向けた取組が進められていることを歓迎します。日本はこの取組を積極的に後押ししており、各国にも協力を呼び掛けます。
(2)国際保健・高齢化への対応
世銀が世界保健機関(WHO)と共に、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組を着実に進めていることを歓迎します。世銀が掲げる「2030 年までに 15億人に対して質が高く手頃な保健サービスを届ける」という目標の達成に向けては、各国が自ら優先課題を特定し、財務・保健当局の連携の下で持続可能な保健財政を構築することが不可欠です。日本は各国のオーナーシップに基づく取組を引き続き後押ししていきます。
その一環として、日本が世銀及びWHOと共に昨年立ち上げた「UHCナレッジハブ」によって、財務・保健当局者による相互学習や知見共有の輪が広がり、各国の保健財政改革の取組が一層前進することを期待します。日本は、本年も12月12日に、東京で「UHCハイレベルフォーラム2026」を開催し、初年度研修対象国の成果・教訓や第 2 期研修対象国の研修へのコミットメントの発表の場とする予定です。
また、UHCの達成にあたっては、母子保健や栄養への投資を通じた人的資本の強化も重要です。この観点から、Global Financing Facility(GFF)の新たな5か年戦略の初年度である今年に、4000万ドルの拠出を表明します。今後、「UHC ナレッジハブ」との高い補完性を活かし、研修で得られた知見の国レベルでの実装に向けてGFFとUHCナレッジハブの連携を強化していきます。
将来のパンデミックに向けた予防・備え・対応(PPR)の強化も不可欠です。日本は、パンデミック基金のMid-Term Reviewの進展に期待するとともに、今後も関係機関と緊密に連携していきます。
高齢化は、経済成長、労働市場、財政の持続可能性及び社会保障制度に大きな影響を及ぼす世界共通の課題です。人口増加を前提として構築されてきた多くの制度の持続可能性を確保するため、各国において先見的な対応が求められています。一方で、高齢化は社会保障費や財政負担の増加といった「コスト」にとどまらず、適切な政策の下では、新たな民間セクターの発展、ひいては成長、雇用創出、生産性向上につながる機会ともなり得ます。この観点から、高齢化への対応を強化するWBGの取組を後押しします。
日本は、世界に先駆けて高齢化社会に直面する中で、制度改革、高齢者の就労促進、市場創出及び技術活用を一体的に進める「長寿社会モデル(Longevity Ecosystem)」を発展させてきました。今後、こうした経験と知見を共有し、制度改革、市場創出、民間投資の促進及び技術・イノベーションの活用を通じた実践的な政策の構築に貢献していきます。
(3)防災・インフラ・エネルギー
頻発する自然災害による大きな被害は、防災や強靱で質の高いインフラの重要性を再認識させるものです。日本は「日本―世銀共同防災プログラム」による自然災害に強いインフラの整備や、「東京開発ラーニングセンター(TDLC)」による日本の被災経験から得た知見を活かした都市開発を通じて、防災の主流化に努めており、引き続きこうした WBG との連携を推進します。
世界のエネルギー安全保障にとって、自由で透明なエネルギー貿易の確保、原油備蓄の強化に関する国際協調、そして生産国と消費国の連携強化が重要です。このため、日本は、中東の湾岸諸国の経済・エネルギー強靱化に向けて包括的な協力計画を現在取りまとめているほか、本年4月から「パワー・アジア(POWERR Asia)」の下で、JICAやJBICを活用しながら、アジアや太平洋諸国を中心に燃料不足に直面する国々への緊急支援とともに、原油備蓄の強化やエネルギー源の多様化といった構造的対応への支援を実施しています。この取組を補強するため、WBGとのDRIVE(Dynamic Response for Invigorating Value Chains and Energy Security)、ADBとの ACCEL(Action for Creating Energy Security for Long-term Resilience)を通じた連携を具現化しています。今回、DRIVE の第一号案件として、IFC と JICA の協調を通じて、南アジア・東南アジア地域におけるエネルギートランジションを支援するとともに、ACCEL の第一号案件として、インドのグリーンアンモニア事業を支援します。
(4)債務問題・国内資金動員
債務透明性の確保は、借入国が安定的なマクロ経済・財政運営を実現する上で重要な要素であり、G20において、世銀のDSE (Data Sharing Exercise)への参加国拡大に向けた議論が進展していることを歓迎します。データの秘匿性に関する懸念を払拭するため、世銀が機密保持に係る内部規定を整備したことを評価するとともに、日本は改めて、全G20メンバーのDSEへの参加を慫慂します。加えて、日本は、債務透明性の向上に資する技術支援を引き続き積極的に供与していきます。その一環として、世銀と日本がインドネシアで実施している、債権・債務データをリアルタイムで自動突合する取組が進展し、その成果が他国に普及していくことを期待します。
債務再編については、プロセスの迅速化に向け、二国間公的債権者が協調して取り組むべきであり、「共通枠組」の MoUテンプレートが公表されたことを歓迎します。今後は、更なる迅速化や債権者間の同等性確保の円滑化に向け、個別の債務措置で合意されたMoUも公表すべきです。また、中所得国への債務再編にあたっても、「共通枠組」に沿って再編を行うべきであり、こうした議論を世銀・IMFが主導することを期待します。
途上国が持続的な経済成長の基盤を整え、投資を促進するためには、途上国のオーナーシップを尊重しつつ国内資金動員(DRM)を強化することが喫緊の課題です。本年3月に東京で行われた DRM に焦点を当てた「税と開発カンファレンス」での議論も踏まえ、日本は、アジア太平洋地域を含む各国のニーズに即した継続的な支援を重視します。世銀・IMF が DRM 強化支援に取り組むに当たって、OECD・ADB をはじめとした各国際機関との連携を強化し、効果的な支援を提供することを慫慂します。
(5)太平洋島嶼国・小国戦略
太平洋島嶼国(PICs)における強靱で包摂的な経済発展の実現には、各国が抱える固有の課題を踏まえた支援が引き続き重要であり、WBG の「小国戦略」の具体化に向けた取組を歓迎します。
同地域におけるコルレス銀行関係(CBR)の維持は、金融包摂や経済活動のために重要な課題です。WBGのCBRプロジェクトに関して、日本は、中長期的な解決策となる太平洋決済メカニズム(Pacific Payment Mechanism(PPM))の設立に向けて、米国、オーストラリア及びニュージーランドとの議論を進めています。引き続き、WBG と共に、PICs や開発パートナー国、国際機関との議論を主導し、デジタル決済の活用検討も含め、解決策の早期具体化に向けた連携を促進していきます。
同地域では、近年自然災害が激甚化している中、被害が深刻化する傾向にあり、財政の強靱性強化の観点から、災害リスクファイナンスの推進が重要です。その一環として、本年7月、世銀及びADBと協調の上、日本としては初めて、「気候変動に強靱な債務条項(CRDC)」を組み込んだ円借款をソロモン諸島に供与しました。
4.ウクライナ
ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。一日も早く公正かつ永続的な平和を実現することが重要です。我が国は、同志国と連携し、今後もウクライナ支援を継続していきます。
IMF プログラムについては、次回レビューの成功に向け、VAT 改革を含む国内資金動員や反汚職対策をはじめとする各種改革が、今後も着実に実施されることを期待します。
また、ウクライナの復旧・復興需要は膨大であり、これに対応するためには、民間の資金・技術・知見の動員が不可欠です。WBG に対し、ウクライナの改革を引き続き後押ししつつ、保証や案件形成等を通じて、将来の復興に向けた取組を着実に進めることを期待します。
ウクライナにとどまらず、脆弱性・紛争・暴力(FCV)の影響を受ける国への支援は重要な課題であり、WBGによる継続的な取組を支持します。
5.結語
この度、世銀・IMF 合同開発委員会において、議長に選任いただいたことを大変光栄に思います。これまで本委員会の議論を牽引いただいた、スウェーデンのスヴァントソン議長に敬意を表します。開発委員会の皆様のご協力を得て、闊達な議論を主導し、開発課題の解決に貢献してまいりたいと思います。
アフリカでのエボラ出血熱の流行、ベネズエラやコロンビアで発生した地震、ネパールと中国の国境付近で発生した洪水及び先月タイで発生した洪水をはじめ、世界各地での災害・危機によりお亡くなりになられた方々及びその御家族に心からの哀悼の意を表するとともに、影響を受けている方々にお見舞いを申し上げます。
世界は、中東情勢を含め、地政学的危機や世界経済の不確実性の高まりに直面し続けています。
また、足元の不確実性に加え、貧困の拡大、保健、債務問題、自然災害、サプライチェーンの強靱化などの長期的な開発課題についても対応が必要です。こうした状況の中で、日本として、途上国が直面する開発課題への対応のため世銀グループ(WBG)に期待する役割と、日本の貢献につき、以下申し上げます。
2.WBGの機能・役割強化
世界の直面する開発課題が多様化・複雑化する中、限られた資源で開発効果を最大化することが重要です。その観点から、One WBG アプローチの下でのWBG各機関の有機的な連携の進展を評価するとともに、WBG ナレッジバンクによる知見の共有・活用がなされ、各国での課題解決に貢献することを期待します。また、WBG のガバナンス向上も絶えず重要であり、今月新たに着任した慶長新副総裁の活躍に期待します。加えて、公的資金のみならず、民間資金動員により、効率的・効果的な支援を行うことが重要です。国際金融公社(IFC)及び多数国間投資保証機関(MIGA)が民間部門への支援を更に強化し、より高い開発効果を実現することを支持します。
開発課題に効果的かつ効率的に対応するためには、WBG を含む国際開発金融機関(MDBs)が一つのシステムとして機能することが重要です。MDBs の連携を通じた強靱なサプライチェーン構築の取組として、重要鉱物バリューチェーン及び肥料安定供給を支援する MDB 共同声明の締結を歓迎します。世銀がアジア開発銀行(ADB)に引き続き、本年 7月に米州開発銀行(IDB)とのFull Mutual Reliance Framework ( FMRF)を締結したことを歓迎し、これらの連携の下で具体的な案件形成が進むことを期待します。
品質評価を重視するRated Criteriaの導入や調達先の多様化推進など、調達制度改革の進展を歓迎します。ライフサイクルコストを踏まえた質重視の調達は、借入国における開発効果及び持続可能性の向上に資するものです。市場への積極的なアウトリーチや調達人材の能力強化等、更なる取組の推進とともに、WBG が他の MDBs との連携を強化し、調達制度改革において主導的な役割を果たすことを期待します。
効果的・効率的な開発支援のためには、WBG が途上国の声をその業務により良く反映することも重要であり、2025年株式保有見直しにおけるボイス改革の着実な実施に期待します。最小貧国をはじめとする途上国が 2018 年増資合意を履行するため、引受けに向けた課題分析と支援強化が必要です。
3.日本が重視する開発課題への対応
日本が重視する開発課題について、日本の取組や WBG に期待する点は以下のとおりです。
(1)重要鉱物
レアアースをはじめとした重要鉱物のサプライチェーンの多様化・強靱化は、途上国での質の高い雇用創出と持続的な経済発展に貢献するとともに、世界経済の強靭化に資する重要な課題です。
その観点から、WBG が国別戦略の策定などの取組を進めていることを歓迎します。今後は、具体的な投資案件の形成を直接支援することが重要です。そのため、日本は、本年6月にWBGの日本信託基金に新たな支援枠「RISE+(プラス)」を創設し、2,000 万ドルの資金貢献を行うことで、現在 WBGと案件形成を進めています。
RISE や RISE+を補完し、民間資金動員を促進するため、保証・リスク分担機能の強化も重要です。この観点から、MIGA の重要鉱物関連支援に関する保証機能の拡充に向けた取組が進められていることを歓迎します。日本はこの取組を積極的に後押ししており、各国にも協力を呼び掛けます。
(2)国際保健・高齢化への対応
世銀が世界保健機関(WHO)と共に、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組を着実に進めていることを歓迎します。世銀が掲げる「2030 年までに 15億人に対して質が高く手頃な保健サービスを届ける」という目標の達成に向けては、各国が自ら優先課題を特定し、財務・保健当局の連携の下で持続可能な保健財政を構築することが不可欠です。日本は各国のオーナーシップに基づく取組を引き続き後押ししていきます。
その一環として、日本が世銀及びWHOと共に昨年立ち上げた「UHCナレッジハブ」によって、財務・保健当局者による相互学習や知見共有の輪が広がり、各国の保健財政改革の取組が一層前進することを期待します。日本は、本年も12月12日に、東京で「UHCハイレベルフォーラム2026」を開催し、初年度研修対象国の成果・教訓や第 2 期研修対象国の研修へのコミットメントの発表の場とする予定です。
また、UHCの達成にあたっては、母子保健や栄養への投資を通じた人的資本の強化も重要です。この観点から、Global Financing Facility(GFF)の新たな5か年戦略の初年度である今年に、4000万ドルの拠出を表明します。今後、「UHC ナレッジハブ」との高い補完性を活かし、研修で得られた知見の国レベルでの実装に向けてGFFとUHCナレッジハブの連携を強化していきます。
将来のパンデミックに向けた予防・備え・対応(PPR)の強化も不可欠です。日本は、パンデミック基金のMid-Term Reviewの進展に期待するとともに、今後も関係機関と緊密に連携していきます。
高齢化は、経済成長、労働市場、財政の持続可能性及び社会保障制度に大きな影響を及ぼす世界共通の課題です。人口増加を前提として構築されてきた多くの制度の持続可能性を確保するため、各国において先見的な対応が求められています。一方で、高齢化は社会保障費や財政負担の増加といった「コスト」にとどまらず、適切な政策の下では、新たな民間セクターの発展、ひいては成長、雇用創出、生産性向上につながる機会ともなり得ます。この観点から、高齢化への対応を強化するWBGの取組を後押しします。
日本は、世界に先駆けて高齢化社会に直面する中で、制度改革、高齢者の就労促進、市場創出及び技術活用を一体的に進める「長寿社会モデル(Longevity Ecosystem)」を発展させてきました。今後、こうした経験と知見を共有し、制度改革、市場創出、民間投資の促進及び技術・イノベーションの活用を通じた実践的な政策の構築に貢献していきます。
(3)防災・インフラ・エネルギー
頻発する自然災害による大きな被害は、防災や強靱で質の高いインフラの重要性を再認識させるものです。日本は「日本―世銀共同防災プログラム」による自然災害に強いインフラの整備や、「東京開発ラーニングセンター(TDLC)」による日本の被災経験から得た知見を活かした都市開発を通じて、防災の主流化に努めており、引き続きこうした WBG との連携を推進します。
世界のエネルギー安全保障にとって、自由で透明なエネルギー貿易の確保、原油備蓄の強化に関する国際協調、そして生産国と消費国の連携強化が重要です。このため、日本は、中東の湾岸諸国の経済・エネルギー強靱化に向けて包括的な協力計画を現在取りまとめているほか、本年4月から「パワー・アジア(POWERR Asia)」の下で、JICAやJBICを活用しながら、アジアや太平洋諸国を中心に燃料不足に直面する国々への緊急支援とともに、原油備蓄の強化やエネルギー源の多様化といった構造的対応への支援を実施しています。この取組を補強するため、WBGとのDRIVE(Dynamic Response for Invigorating Value Chains and Energy Security)、ADBとの ACCEL(Action for Creating Energy Security for Long-term Resilience)を通じた連携を具現化しています。今回、DRIVE の第一号案件として、IFC と JICA の協調を通じて、南アジア・東南アジア地域におけるエネルギートランジションを支援するとともに、ACCEL の第一号案件として、インドのグリーンアンモニア事業を支援します。
(4)債務問題・国内資金動員
債務透明性の確保は、借入国が安定的なマクロ経済・財政運営を実現する上で重要な要素であり、G20において、世銀のDSE (Data Sharing Exercise)への参加国拡大に向けた議論が進展していることを歓迎します。データの秘匿性に関する懸念を払拭するため、世銀が機密保持に係る内部規定を整備したことを評価するとともに、日本は改めて、全G20メンバーのDSEへの参加を慫慂します。加えて、日本は、債務透明性の向上に資する技術支援を引き続き積極的に供与していきます。その一環として、世銀と日本がインドネシアで実施している、債権・債務データをリアルタイムで自動突合する取組が進展し、その成果が他国に普及していくことを期待します。
債務再編については、プロセスの迅速化に向け、二国間公的債権者が協調して取り組むべきであり、「共通枠組」の MoUテンプレートが公表されたことを歓迎します。今後は、更なる迅速化や債権者間の同等性確保の円滑化に向け、個別の債務措置で合意されたMoUも公表すべきです。また、中所得国への債務再編にあたっても、「共通枠組」に沿って再編を行うべきであり、こうした議論を世銀・IMFが主導することを期待します。
途上国が持続的な経済成長の基盤を整え、投資を促進するためには、途上国のオーナーシップを尊重しつつ国内資金動員(DRM)を強化することが喫緊の課題です。本年3月に東京で行われた DRM に焦点を当てた「税と開発カンファレンス」での議論も踏まえ、日本は、アジア太平洋地域を含む各国のニーズに即した継続的な支援を重視します。世銀・IMF が DRM 強化支援に取り組むに当たって、OECD・ADB をはじめとした各国際機関との連携を強化し、効果的な支援を提供することを慫慂します。
(5)太平洋島嶼国・小国戦略
太平洋島嶼国(PICs)における強靱で包摂的な経済発展の実現には、各国が抱える固有の課題を踏まえた支援が引き続き重要であり、WBG の「小国戦略」の具体化に向けた取組を歓迎します。
同地域におけるコルレス銀行関係(CBR)の維持は、金融包摂や経済活動のために重要な課題です。WBGのCBRプロジェクトに関して、日本は、中長期的な解決策となる太平洋決済メカニズム(Pacific Payment Mechanism(PPM))の設立に向けて、米国、オーストラリア及びニュージーランドとの議論を進めています。引き続き、WBG と共に、PICs や開発パートナー国、国際機関との議論を主導し、デジタル決済の活用検討も含め、解決策の早期具体化に向けた連携を促進していきます。
同地域では、近年自然災害が激甚化している中、被害が深刻化する傾向にあり、財政の強靱性強化の観点から、災害リスクファイナンスの推進が重要です。その一環として、本年7月、世銀及びADBと協調の上、日本としては初めて、「気候変動に強靱な債務条項(CRDC)」を組み込んだ円借款をソロモン諸島に供与しました。
4.ウクライナ
ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。一日も早く公正かつ永続的な平和を実現することが重要です。我が国は、同志国と連携し、今後もウクライナ支援を継続していきます。
IMF プログラムについては、次回レビューの成功に向け、VAT 改革を含む国内資金動員や反汚職対策をはじめとする各種改革が、今後も着実に実施されることを期待します。
また、ウクライナの復旧・復興需要は膨大であり、これに対応するためには、民間の資金・技術・知見の動員が不可欠です。WBG に対し、ウクライナの改革を引き続き後押ししつつ、保証や案件形成等を通じて、将来の復興に向けた取組を着実に進めることを期待します。
ウクライナにとどまらず、脆弱性・紛争・暴力(FCV)の影響を受ける国への支援は重要な課題であり、WBGによる継続的な取組を支持します。
5.結語
日本は、バンガ総裁及びゲオルギエバ専務理事のリーダーシップの下、WBG と IMF の両機関が、他機関とも連携しつつ、複雑化する世界の開発課題に対処していることを高く評価しています。また、副総裁をご退任された西尾昭彦氏が、30年以上にわたり世銀の要職を歴任し、直近では三度にわたる国際開発協会(IDA)の増資を成功に導くなど、多大な貢献を果たしてこられたことに対し、深い敬意を表します。日本は、人材面も含め、両機関の取組を引き続き支援してまいります。今後、皆様のご協力も得て、議長として、両機関を通じた世界経済の更なる発展に尽力してまいります。
(以 上)

