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第113回世銀・IMF 合同開発委員会における日本国ステートメント (2026年4月16日 於:ワシントンD.C.)

1.はじめに

世界は、地政学的危機や世界経済の不確実性の高まりに直面し続けています。現在の中東情勢は、世界経済や金融市場に大きな影響を与えており、各国の安定的な経済成長の阻害要因となりかねません。

足元の不確実性に加え、貧困の拡大、保健、債務問題、自然災害などの長期的な開発課題についても対応が必要です。このような状況において、途上国が直面する開発課題の対応に世銀グループ(WBG)が果たす役割への日本の期待、及び日本が果たす貢献につき、以下申し上げます。

2.WBGの機能・役割強化

世界の直面する開発課題が多様化・複雑化する一方、開発支援に向けたリソースは限られており、新興国・途上国のオーナーシップを促しつつ民間資金も動員しながら、効率的・効果的な支援を行うことが求められています。

WBGが国際開発金融機関(MDBs)の中核として効率的・効果的に機能し開発効果を最大化するためには、One WBGアプローチの下でWBGの各機関が有機的に連携することが重要です。本年1月からの機構再編により、WBGのナレッジ部局が統合されたことを歓迎します。WBGの知見を総括して、WBG全体のオペレーションに還元することで、ソヴリン・ノンソヴリン業務のシナジーが醸成されることに期待します。日本としても、国際保健や防災等の各分野でアカデミアを含め官民が有する人材と知見を最大限活用して貢献していきます。

効率的・効果的な開発支援のためには、WBGが途上国の声をオペレーションにより良く反映することも重要です。この観点から、2025年株式保有見直しにおけるボイス改革案への合意を歓迎するとともに、早期の実施に期待します。最小貧国をはじめとする途上国が2018年増資合意を履行するためには、株式引受にあたっての課題の解決が重要であり、解決策の検討の進展に期待します。

3.日本が重視する開発課題への対応

次に、日本が重視する開発課題について、日本の取組やWBGに期待する点は以下のとおりです

(1)重要鉱物

レアアースをはじめとした重要鉱物のサプライチェーンの強靱化は、鉱物産出国での質の高い雇用創出と持続的な経済発展に貢献するとともに、輸入国への安定的な供給にも資する喫緊の課題です。WBGが、「鉱物・金属戦略」の下、産出国等による国別の戦略の策定・実行を目指していることを高く評価します。また、今般の春会合において、日本が仏と共にバンガ総裁の協力を得て、MDBsや同志国代表の参加の下、重要鉱物に係るイベントを開催できることを喜ばしく思います。WBGには、アジア開発銀行(ADB)や米州開発銀行(IDB)等の地域開発金融機関(RDBs)や開発金融機関(DFI)と連携の下、重要鉱物のサプライチェーン関連の支援を強化していくことを期待します。

RISEパートナーシップは、途上国での重要鉱物のサプライチェーンの中・下流の多様化に向けた世銀の重要な取組です。ザンビアやマラウイ等においてカントリー・ロードマップの策定や、民間セクターと共にその実行に向けた取組が進んでいることを歓迎します。世銀と共にRISEを推進してきた日本としては、今後、RISEがレアアースのサプライチェーン強靱化にも貢献していくことを期待します。

(2)国際保健

世銀が、世界保健機関(WHO)と共に、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた取組を着実に進めていることを歓迎します。特に、各国における国家保健コンパクトの策定は、各国のオーナーシップのもと開発パートナーによる支援と連携してUHCを推進する上で、極めて重要な取組です。日本は、より多くの国における国家保健コンパクト策定や、それに基づく各国の具体的行動を後押ししていきます。

また、各国が国家保健コンパクトを策定し実行していくにあたっては、財保連携により持続可能な保健財政を構築することが不可欠です。こうした観点から、昨年12月のUHCハイレベルフォーラムで世銀がWHOと共に「UHCナレッジハブ」を正式に立ち上げたことを歓迎します。同ナレッジハブが進めている対面研修は、財務・保健当局者が経験を共有し合うピア・ラーニング形式での学び合いを通じて、各国での更なる財保連携の促進を目指すものです。今後は、世銀が中心となり、RDBsや国際協力機構(JICA)を含む他の開発パートナーと連携して支援を進めることで、研修の成果が各国における具体的な保健財政改革として結実することを期待します。

UHC達成に向けた取組に加え、将来のパンデミックに向けた予防・備え・対応(PPR)強化も進める必要があります。日本は、パンデミック基金や信託基金等を通じて、世銀と連携し引き続きPPR強化に貢献してまいります。

(3)防災・インフラ・デジタル

日本は、「日本―世銀共同防災プログラム」を通じて、自然災害に強いインフラ整備等、開発における防災の主流化に努めてきたほか、「東京開発ラーニングセンター(TDLC)」を通じて、途上国の行政官やWBG職員と日本の都市や有識者の連携を強化することで、被災経験の多い日本の知見を活かした都市開発や強靱で質の高いインフラの整備を後押ししてきました。WBGナレッジバンクの下で、このような知見が更に横展開され、活動が一層発展することを期待します。

質の高いインフラ投資の観点から、品質評価を重視する調達制度改革を歓迎します。インフラのライフサイクルコストを踏まえれば、品質の重視は価格面でも長期的に利益となります。世銀をはじめとするMDBsが、品質評価を重視した調達に向けて各国の能力構築を行っていくことが肝要です。また、多様な企業の質の高い技術や知見を活用できるよう、世銀による早期の市場関与等、企業へのアウトリーチに引き続き期待します。

電力インフラの開発は、電力アクセスを改善するとともに、あらゆるセクターのデジタル化にも寄与し、雇用創出・経済発展の基盤を整備するものです。この観点から、WBGによるミッション300の取組を歓迎します。日本は、多数国間投資保証機関(MIGA)の「再生可能エネルギー促進信託基金(RECTF)」への2.1百万ドルの拠出や、「日本開発政策・人材育成基金(PHRD)」を通じたエネルギー分野向けの18.4百万ドルの拠出を通じて、日本の技術も活用しながら、アフリカの電力普及に貢献していきます。また、各国がサイバーセキュリティやプライバシー保護を確保しながらデジタル化を進められるよう、日本は、昨年12月の「デジタル開発パートナーシップ(DDP)2.0」への5百万ドルの拠出に続いて、今後「サイバーセキュリティ能力構築信託基金」に4.2百万ドルを拠出します。

生物多様性保全、気候変動対策、化学物質・廃棄物対策、国際水域汚染防止等、地球規模課題への対応を支援する地球環境ファシリティ(GEF)の第9次増資交渉の妥結を歓迎します。GEFが後発開発途上国・小島嶼途上国への支援の強化、民間資金の動員等を進め、効率的・効果的に事業を推進することを期待します。

(4)債務問題・国内資金動員

債務透明性の確保は、安定的なマクロ経済・財政運営のための重要な要素です。日本は、債務透明性の向上に向け、世銀のデータ共有の取組(DSE: Data Sharing Exercise)への全G20メンバーの参加を改めて慫慂します。また、世銀と日本がインドネシアで実施している、リアルタイムでの債務データのデジタル突合の取組が、他国にも広がっていくことを期待します。債務透明性の向上には、債務国の能力強化も不可欠であり、世銀・IMFの債務管理ファシリティ(DMF)のフェーズ4が早期に効果を生み出していくことを期待します。

債務再編については、「共通枠組」のプロセスの迅速化が依然として課題です。こうした中、グローバル・ソブリン債務ラウンドテーブル(GSDR)において、債務再編のユーザーマニュアルの機能を果たす「プレイブック」が更新されたことを歓迎します。今後も、「共通枠組」の実施改善を含め、債務再編プロセスの更なる迅速化・円滑化に向けた、世銀・IMFの役割に期待します。

途上国が持続的な経済成長の資金を確保し、投資を呼び込むためには、国内資金動員(DRM)の強化が喫緊の課題です。税の分野において各国の専門家及び国際機関が共に対話を行い、途上国の課題を的確に把握し、支援の実効性・効率性を高めることが重要です。この観点で、世銀・IMFを含む「税に関する協働のためのプラットフォーム(PCT)」が、本年3月に東京でDRMに焦点を当てた「税と開発カンファレンス」を開催したことを歓迎します。今後、その成果文書を踏まえ、国際課税分野の支援強化や脆弱国・小島嶼途上国向け支援の必要性に留意しつつ、途上国のオーナーシップを尊重した形での人材育成・組織能力強化に向け、関係する国際機関が、それぞれの強みを活かして連携を強化していくことを期待します。

(5)太平洋島嶼国

太平洋島嶼国は、その地理的特性に由来する脆弱性を抱えており、プロジェクト規模の小ささやコストの課題に対応した支援が引き続き重要です。こうした観点を踏まえて、WBGの「小国戦略」の策定が進展していることを歓迎します。この戦略の下、WBGがRDBsや各国のDFI等とのパートナーシップを強化し、調達や協調融資に活かしていくことを期待します。

同地域からのコルレス銀行の撤退は、金融システムの健全性と包摂性を脅かし、経済成長のみならず、社会生活の安定にも悪影響を及ぼします。世銀の「コルレス銀行関係(CBR)プロジェクト」に関し、日本は、PHRDを通じて支援するとともに、CBR問題の中長期的な解決策となる集中決済機関(Pacific Payment Mechanism)の構築に向け、デジタルマネー活用の可能性の検討を含めた議論を主導しています。

同地域は、近年自然災害が激甚化する中、被害が深刻になりやすく、災害リスクファイナンスの推進が欠かせません。この観点から、世銀とADBと協調の上、日本としては初めて、「気候変動に強靱な債務条項(CRDC)」を組み込んだソロモン諸島向けの円借款を供与する方針です。

引き続き、太平洋島嶼国のオーナーシップを尊重しつつ、世銀、IMF、ADBや地域の主要ドナー国と連携し、効果的な支援を行っていきます。

4.ウクライナ

ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。一日も早い公正かつ永続的な平和の実現が重要であり、我が国としても、同志国と連携し、今後もウクライナ支援を継続していきます。

戦争が継続する厳しい状況下にもかかわらず、ウクライナ政府が積極的に改革に取り組み、IMFの新たな拡大信用供与措置(EFF)プログラムの承認を受けたことを歓迎します。

日本は、ウクライナの2026年前半の財政ニーズに対応するため、ロシアの凍結資産から生じる特別収益により返済される融資(ERAローン)を一部前倒して供与しました。また、ウクライナの継続的改革を後押しすべく、世銀融資に対する信用補完の45億ドル追加を決定しました。

WBGがまとめたウクライナの被害・ニーズ調査(RDNA5)によれば、同国の復興需要は膨大です。同国の復興には、民間の資金・技術・ノウハウの動員が不可欠であり、日本は、MIGAの「ウクライナ復興・経済支援(SURE)信託基金」に対し10百万ドルを追加拠出します。

5.結語

日本は、バンガ総裁及びゲオルギエバ専務理事のリーダーシップの下、WBGとIMFの両機関が、他機関とも連携しつつ、複雑化する世界の開発課題に対処していることを高く評価しています。両機関が世界経済の更なる発展において主導的な役割を果たし続けるよう、日本は、人材面も含め、両機関の取組を引き続き支援してまいります。

(以 上)