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第110回世銀・IMF合同開発委員会 議長声明(仮訳)(2024年10月25日 於:ワシントンD.C.)

10月25日にワシントンD.C.で行われた第110回開発委員会において、いくつかの開発委員会メンバーは、ロシアとウクライナ、イスラエル、ガザ、レバノン、その他の場所についての現在の戦争及び紛争が世界的なマクロ経済・金融に与える影響について議論した。開発委員会メンバーは、全ての国が国連憲章の目的及び原則に全体として整合的な方法で行動しなければならないことを再確認した。開発委員会メンバーは、しかし、開発委員会が、他のフォーラムで議論されている地政学的及び安全保障問題を解決するフォーラムではないことを認識した。

途上国は引き続き資金調達の課題、長期化するインフレ圧力、食糧・栄養安全保障、財政余力の制約、貿易摩擦、自然災害、気候変動、大気汚染、水とエネルギーの不足、生物多様性の喪失に直面している。この状況は小国並びに脆弱性、紛争及び暴力(FCV)の影響を受けている国にとって特に深刻である。我々は、世界銀行グループ(WBG)及び国際通貨基金がこうした国と連携することで、制度・財政枠組を強化し、債務管理を改善し、資金動員を強化することを求める。さらに、我々は、重要なセクターへの投資促進、ジェンダー平等、人的資本、デジタル・イノベーションにおける成果の獲得、並びに国家間及び国内の格差縮小のためにWBGが引き続き政策立案者と協力することを求める。持続可能で、包摂的で、強靱な経済成長は支援対象国が開発目標を達成するために不可欠である。我々は、居住可能な地球で貧困の無い世界を作ることにコミットし、持続可能な開発目標を支持する。

我々は、WBGが、何年分もの開発の成果を後退させた複層的なショックに対処していることを称賛する。我々は、昨年度、WBGの融資プログラムが過去最大の1,330億ドルのコミットメント及び800億ドル以上の貸出に至ったことを認識する。我々は、WBGの業務及び財務モデルに関する進捗を歓迎する。我々は、ハイブリッド資本やポートフォリオ保証を含む「資金インセンティブのための枠組」による財務能力の強化の進展及び株主による支援を称賛する。我々は、「居住可能な地球基金」の設立を歓迎するとともに、追加的な貢献を求める。我々は、プロジェクト準備のためのグラント・ファシリティに関する議論に期待する。

我々は、我々の戦略的焦点を伝え、WBGの新しいミッションとビジョンから派生する開発成果を報告する、新しいWBGスコアカードの開始を歓迎する。また、我々はWBGアカデミーの開始並びにデータ及び水に焦点を当てた分散型のナレッジハブの設立を歓迎する。さらに、我々はプロジェクトの準備及び実施の加速化、One WBGアプローチの強化、並びに各カントリーオフィスにおけるWBG共同代表の設立のための取組を認識する。我々は、WBGがFCV及び低所得国における能力開発の取組に注力することを奨励する。我々は、「地球規模課題プログラム[1]」が成功裡に導入され、強化された国別関与モデルを補完することを期待する。結果の測定、知識の活用、及び財務能力の強化は、全てビジョンとミッションの達成の一環である。我々は、WBGに対し、業務の効率性と効果を向上させ、全ての支援対象国のためのより良くより大きな銀行になるための努力を継続することを求める。我々は、改革アジェンダ及びその成果をもたらした世界銀行の理事会及びマネジメントに感謝する。我々は、WBGの国際開発金融機関(MDBs)の中でのリーダーシップを称賛し、WBGに対し、MDBsが一つの仕組みとしてより良く機能するために関与し続けることを求める。

我々は、WBGジェンダー戦略2024-2030と、それに対応した、ジェンダー平等を加速させる目標を含む強靱な実施計画、及び国際開発協会(IDA)第21次増資におけるジェンダーに関する強力な政策コミットメントを歓迎する。我々は、理事会におけるジェンダー平等を促進するための継続的な努力とそのアジェンダを推進するための今後の取組を歓迎する。

我々は、IBRDとIDAが果たす重要な役割を含む、WBGによる気候資金目標とパリ合意の達成に係るリーダーシップとコミットメントを認識する。我々は、より多額の民間セクター資金を呼び込む必要性を強調する。我々は、IFCとMIGAがこれらの目標を達成するために引き続き民間投資を強化し、パートナーと協力することを求める。我々は、昨年度WBGの気候資金が融資全体の推定44%に到達したことに勇気づけられている。我々は、WBGが革新的な金融手法を主導し、危機への備えと対応、知識、適応と緩和をバランスの取れた形で支援するための資金源を拡大し、自然災害に対する強靱性を高め、生態系、自然及び生物多様性を支援し、連結性を高め、ミッション300の一環としての取組を含め、それらを最も必要とするコミュニティにおいてエネルギーと清潔な水への手頃なアクセスを向上し続けることを求める。我々は、WBGとIMFがそれぞれの役割の下で、i)気候変動における課題及び政策の優先分野を特定し、ii)パートナーとともに改革を実施し、iii)要請に基づく国主導のプラットフォームを支援するため、協力を深化させていることを歓迎する。この協力は、統合された国主導のアプローチを通じ、各国の気候戦略に対し重要な支援を提供する。我々は、「損失と損害」基金の暫定受託者及び運営者としてのWBGの役割を歓迎する。我々は、気候資金に関する議論が極めて重要となる国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)及び他の重要な国連の関与に期待する。

2030年には、世界の極度の貧困層の最大3分の2が、国際社会にとって国境を越えた重要課題であるFCVの影響下の国に居住しているだろう。我々は、紛争、避難、移民、経済の不安定性、人道危機により悪化している深刻な食糧不安を認識する。我々は、WBGに対し、危機に際して関与を継続し、国連との連携を含むパートナーシップを強化し続け、WBGのFCV戦略の支援のために(資金枠を含む)IDAによって支えられた資源を調整するため支援対象国と連携することを求める。

強固な組織の構築、民間セクター投資の促進、市場アクセスの提供、及び社会的セーフティネットの構築は、包摂性の強化及び生計の強化のために極めて重要である。我々は、FCV戦略の中間レビューによる提言の実施を歓迎する。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに向けた保健システムの強化、早期警報システムの強化、及び公衆衛生上の緊急事態におけるコミュニティ参画を含めた予防と備えに関する能力への投資のために、国際機関、政府、民間セクターの間でパートナーシップを構築し続けることは重要である。アフリカにおけるエムポックスの感染拡大は重大な懸念事である。我々は、重要な予防、備え、対応能力の拡大に関するパンデミック基金に対する高い需要を認識し、1回目及び2回目の募集における資金動員に感謝する。我々は、昨年の年次総会において提起された、パンデミックへの備えに関する優先分野を前進させるために実施したWBGの取組を歓迎する。また、我々は2030年までに保健サービスを15億人に拡大するとのWBGの野心、並びにWBG、IMF、及び世界保健機関(WHO)の間におけるパンデミックへの備えに関する協力の基本原則の最終化を歓迎する。我々は、最も脆弱な人々が未曾有の開発課題に立て続けに直面する中、国際金融機関(IFI)、国連機関、及び他の官民パートナーとの間で強固なパートナーシップを促進する重要性を強調する。来年予定されている第4回開発資金国際会議は、国際社会がこうした問題に取組む良い機会である。

多くの途上国は重い債務負担に直面している。我々は、国内資金動員の役割と、不正な資金の流れと闘いつつ財政支出の質を向上させる必要性を強調する。我々は、WBGとIMFがそれぞれのマンデートの範囲内で、債務持続性の問題に引き続き協働し、対象国のため共通枠組の適時かつ秩序立った実施を引き続き支援することを改めて求める。我々は、債務持続性枠組の見直しに期待する。我々は、債務の管理と透明性を向上し、将来の債務危機を防ぐための、民間債権者を含む全ての関係者による共同の取組の重要性を再確認する。我々は、国際社会に対し、債務は持続可能であるが足元で流動性の課題に直面する国に対する支援を強化することを求める。

民間セクターは、特に女性や若者にとって、雇用創出や経済転換にとって鍵となる。我々は、WBGが民間資金を呼び込むための取組を継続するとともに、IDA国及びFCVの影響を受ける国においてコミットメント全体の40%を展開するというIFCの2018年増資パッケージの目標達成に向けてさらに前進することを強く求める。我々は、民間セクター投資ラボとの協力とその提言に感謝する。我々は、保証業務の強化を含むWBG保証プラットフォームの実施、現地通貨、為替及び組成分配型(originate-to-distribute)の解決策の開発、GEMsに関する統計の公表、保管機能を活用した証券化プラットフォーム(Warehouse-Enabled Securitization Platform)の開始に関する進行中の取組を歓迎する。こうした取組が、One WBGアプローチを通じて、障壁を緩和し、資本を動員し、環境を整え、新たな市場を創り続けることを求める。我々は、雇用に関するWBGハイレベル諮問協議会の設立を歓迎する。

我々は、IDAへの強力な支援を再確認し、12月に強固かつ野心的なIDA第21次増資を完了することにコミットする。我々は、インパクトをもたらすことに焦点を当てた、IDAの戦略的方向性と提案された政策パッケージを歓迎する。我々は、成果重視及び結果測定枠組を含むIDAの政策パッケージと世銀改革の優先分野の整合性に勇気づけられる。我々は、自己資本の十分性に関する枠組の措置によるIDAの財務能力の向上に感謝する。また、我々は、国レベルの政策コミットメントを簡素化し、借入条件を統一する取組を歓迎する。我々は、全てのパートナーに対し、政策及び財務パッケージがIDA国を取り巻く様々な課題に対処するよう確保することを求める。我々は、新規のドナーに対し、IDAの長期的な持続可能性を守るため、IDA貢献国のコミュニティに参加することを求める。

我々は、IBRDのリスク管理をさらに強化するとともにトリプルA格を維持する「IBRD自己資本の十分性のための回復措置枠組」の設立、及びそれに関連したIBRDの自己資本の十分性政策の最低対貸出資本比率に対する調整を歓迎する。また、我々は、株主にIBRDの財務能力の拡大を支援するための別の方法を提供する、IBRDの「強化された請求払資本(ECC)」の創設を歓迎する。さらに、我々は、理事会及びマネジメントに対し、IBRDの財務能力とWBGのビジョン及びミッションとの整合性に関する分析を行うことを求める。我々は、その提供価値を強化することへのWBGのコミットメントを歓迎し、IBRDの金利体系の変更の承認を支持し、今後の議論に期待する。

WBGがより困難な環境での業務を拡大する中、我々は、開発効果を向上させ、組織としての学びとフィードバックを活性化させる説明責任のメカニズムの重要性を再確認する。WBGの環境社会基準の順守及びオーナーシップの確保、並びに強い成果重視は、組織が開発に貢献するために重要である。我々は、各国の能力構築にさらに焦点を当てることや、汚職防止の取組を拡大すること等を通じ、世銀の環境社会枠組を強化するための取組を歓迎する。

我々は、2025年の株式配分見直しに向けた技術的な準備についての総務への報告を歓迎し、その提言を支持する。我々は、リマ株式配分原則に則したこのような定期的な見直しを大変重視している。我々は、理事会が2025年の見直しに関する取組を進展させ、2025年の年次総会までに総務に報告することを期待している。

総務は、議長に感謝し、2024年11月から2026年10月までの間、開発委員会議長を務めるエリザベス・スヴァンテソン スウェーデン財務大臣を歓迎する。

次の開発委員会は、ワシントンD.C.において、2025 年4 月に開催する。


[1] (i)開発のための森林、気候変動及び生物多様性、(ii)エネルギーのアクセス及び移行、(iii)デジタル化の加速、(iv)食料及び栄養の安全保障、(v) 保健危機の備え及び対応の向上、(vi) 迅速な水の安全保障及び気候変動への適応