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第108回世銀・IMF合同開発委員会 議長声明(仮訳)(2023年10月12日 於:モロッコ・マラケシュ)

開発委員会は、本日2023年10月12日にモロッコのマラケシュで開催された。

開発委員会のメンバーは、モロッコ及びリビアの人々並びに当局との連帯を表明するとともに、地震と洪水の被害に遭われた方の御家族に深い哀悼の意を表した。彼らは、世界銀行や国際通貨基金(IMF)を含む国際パートナーが、復興に必要な援助を提供するよう求めた。彼らは、このような困難な状況下で年次総会をホストしたモロッコ政府に最大限の謝意を表明した。

開発委員会は、世界が厳しい開発課題に直面しており、最も脆弱な人々に最も深刻な影響を与える複数の世界的な危機により課題が拡大していることを認識した。これらの危機は、数十年かけて苦労して得られた開発の成果を覆しており、開発コミュニティは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成、貧困の撲滅、繁栄の共有の促進及び地球規模課題への取組のため、ともに対応しなければならない。開発委員会のメンバーは、国際金融機関(IFIs)が、SDGsを達成し、持続可能な経済成長による便益が平等に分配されることを助け、世界の最貧困層及び最脆弱層への支援に焦点を当てるため、国連、政策立案者、官民のパートナーと協働することを奨励した。彼らは時間が重要であることを示した。

総務は、居住可能な地球で貧困の無い世界を創る、という世界銀行の新しいビジョンを支持した。彼らはまた、包摂性、強靭性及び持続可能性を強化することで、居住可能な地球で極度の貧困を撲滅し繁栄の共有を促進する、という新しいミッションも支持した。このビジョンとミッションは、国の優先課題に対する支援や複合的な地球規模課題に対する対応のための解決策により、新しいプレイブックを支え、迅速かつ大規模に効果的な開発を促進する。

開発委員会は、世界銀行の業務及び財務モデルの強化、8つの地球規模課題1への合意を含む国別支援モデルの強化、今後10年間で500億ドルの追加的な融資能力の拡大を含む、「世界銀行改革ロードマップ」の大きな進捗に勇気づけられた。彼らは、自己資本の十分性に関する枠組(CAF)レビューの提言を踏まえつつ、国際復興開発銀行(IBRD)における対融資資本比率の最低基準の19%への引下げ、協定上の法定貸出限度額の撤廃及び二国間株主保証上限額の引上げを歓迎した。開発委員会のメンバーは、借入国の債務不履行を保証するポートフォリオ保証プラットフォームやハイブリッド資本への株主の参加は、IBRDの融資能力を更に強化するものであることを認識した。彼らは、市場投資家からのハイブリッド資本調達の試行によっても、追加的なリソースが動員されることに留意した。開発委員会のメンバーは、国際金融公社(IFC)及び多数国間投資保証機関(MIGA)による取組を含め、国別民間セクター診断の向上や民間セクター投資ラボの開始といった、民間資金動員を増加させる追加的な提案を歓迎した。また、彼らは、新しい「財政レビュー(Public Finance Review)」等の国内資金動員を増加させる提案も歓迎した。開発委員会のメンバーは、最も脆弱な借入国向けの「気候変動に対する強靱性を取り入れた債務条項」の開始を含め、危機に対する備え、対応及び回復のための世界銀行の進行中の取組を認識した。彼らはまた、世界銀行が開発課題の解決を助けるため、より強化された効果的なパートナーシップにコミットしていることを支持した。

マラケシュ総会以降も、より良く、より大きく、より効果的な銀行になるため、世界銀行の財務及び業務能力を更に拡大しうるこれらの野心的な改革を完了させるための更なる取組が必要である。これには、官民のリソースを増加させることに加え、より効果的に知識を活用することが含まれる。開発委員会のメンバーは、新しいビジョンとミッションに沿って計測可能な成果や結果に焦点を当てつつ、大きな効果をもたらす行動を促す、世界銀行の新しいスコアカードの完成に期待している。彼らは、地球規模課題プログラム(Global Challenge Programs)の更なる開発を期待している。開発委員会のメンバーは、女性と女児のエンパワーメントがもたらす変革的な影響を認識し、改革の新フェーズでは、ジェンダー平等や人間開発に関して進捗を図る、世界銀行の役割により大きな重点を置くことに同意した。彼らは、国別パートナーシップ枠組を通じた支援対象国の関与の強化に向けた進捗や、国内資金動員の強化並びに民間セクター投資の促進に対するコミットを評価した。彼らは、IDA国への譲許的資金の活用を優先しながら、2024年の春季会合までに開発される明確な配分原則に基づき、国際公共財基金(GPG Fund)等を通じて、IBRD国が地球規模課題に取り組むための譲許性を含む金銭的インセンティブの枠組みに期待する。開発委員会のメンバーは、譲許的資金の活用の最適化に向けて、世界銀行が信託基金や金融仲介基金との協調の拡大を模索するよう求めた。また、彼らは、世界銀行が、強固な環境社会受託基準と説明責任メカニズムを通じて積極的にリスクを管理しつつ、全ての支援対象国により良いサービスを提供するために、そのスピード・規模・質を増加させる、業務面の効果と効率性を高めるための取組を支持した。開発委員会のメンバーは、新しい「行動のためのナレッジコンパクト」が開発され、開発効果のための知識の創出、提供及び活用が促進されることを期待する。彼らは、「グローバル新興国市場データベース(GEMs)2.0」を独立した組織として設立するため、世界銀行が他の国際開発金融機関(MDBs)と協働することを求めた。

開発委員会のメンバーは、IDAの強化の重要性、及びIDA国への支援を拡大する野心的なIDA21を支援するための国際コミュニティの必要性を認識した。彼らは12月のIDA20の中間レビューに期待する。彼らは、既存及び新規のドナーが、年末までにIDAの危機対応ウィンドウ・プラスへの貢献をプレッジすることを求めるとともに、既に貢献をプレッジした全てのドナーを称賛した。

総務は、IBRDの財務能力を強化する手法の更なる模索を奨励した。また、彼らは、インセンティブを改革に整合させ、全ての提案に関する人員や予算への影響を評価しつつ、人員と文化に関する取組を更に増強することを求めた。彼らは、2024年4月までに「改革ロードマップ」の実施に関する更新を求める。開発委員会のメンバーは、これらの課題の達成には、「1つの世界銀行(one World Bank)」として機能する、より良くより大きな銀行が必要であることを示した。

開発委員会のメンバーは、最近発表された、世界銀行総裁とIMF専務理事による両機関の協力強化に係る共同声明を歓迎した。また、彼らは、パートナーシップ憲章の開始を通じた、信託基金及び金融仲介基金並びに国連システムとのパートナーシップの強化を歓迎した。彼らは、協力を強化しより優れた結果を出すための米州開発銀行とのパートナーシップを称賛した。彼らは、他のMDBsとの同様のパートナーシップを期待する。

開発委員会のメンバーは、世界銀行とIMFが債務持続性に関して緊密に協働することを求めた。彼らは、適用国に対する共通枠組の実施や脆弱な中所得国に対するアドホックな債務再編プロセスを支援するため、パリクラブ及びG20の非パリクラブの債権者とともに、世界銀行とIMFがそれぞれの役割の下で協働していることを認識した。彼らは、債務の管理と透明性の向上に継続して取り組むため、民間債権者を含む全ての当事者による共同の取組の重要性を再確認した。

総務はまた、世界銀行が、気候変動への適応及び緩和並びに生物多様性を含む諸課題について主導し、対応し、知識の共有を行うため、パートナーや支援対象国との関与と協力を強化することを求めた。彼らは、最近開催されたパリサミット、アフリカ気候サミット、G20首脳会議、国連のSDG及び開発のための資金調達に関する首脳会談に続き、今後2023年にドバイで開催される国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)に期待する。

開発委員会のメンバーは、世界中の戦争及び紛争による甚大な人的被害及び悪影響を深い懸念とともに留意した。彼らは、世界銀行が、誰一人取り残さないことを確保しつつ、世界銀行の脆弱性・紛争・暴力(FCV)戦略に沿って、世界中のFCVの状況下での結集力として、決断力を持って行動することを要請した。

ほとんどの開発委員会のメンバーは、G20ニューデリー首脳宣言の「地球、人々、平和及び繁栄のために」の以下の文言を支持した。

我々は、世界中の戦争及び紛争による甚大な人的被害及び悪影響を深い懸念と共に留意する。

ウクライナにおける戦争に関し、バリでの議論を想起しつつ、我々は、各国の立場や国連安保理及び国連総会で採択された決議(ES-11/1及びES-11/6)を再確認し、全ての国が国連憲章の目的及び原則に全体として整合的な方法で行動しなければならないことを再確認する。国連憲章に沿って、全ての国は、いかなる国の領土一体性及び主権又は政治的独立に対しても、領土取得を追求するための武力による威嚇又は武力の行使は慎まなければならない。核兵器の使用又はその威嚇は許されない。

我々は、G20が国際経済協力のプレミア・フォーラムであることを再確認し、G20が地政学的及び安全保障問題を解決するためのプラットフォームではないことを認識しつつ、これらの問題が世界経済に重大な影響を与え得ることを認識する。

我々は、ウクライナにおける戦争の人的被害や更なる悪影響、特に新型コロナウイルスのパンデミック及びSDGsに向けた進捗を逸脱させた経済的混乱からいまだ回復途上にある途上国及び後発開発途上国(LDCs)といった国々の政策環境を複雑化させる、グローバルな食料及びエネルギー安全保障、サプライチェーン、マクロ金融の安定性、インフレ及び成長に関する悪影響を強調する。この状況について異なる見解及び評価があった。

我々は、世界市場へのロシア産の食品及び肥料の供給促進に関するロシア連邦と国連事務局との間の了解覚書及びウクライナの港からの穀物及び食料品の安全な輸送に関するイニシアティブ(黒海イニシアティブ)から成る、トルコ及び国連の仲介によるイスタンブール合意の取組を評価し、ロシア連邦及びウクライナからの穀物、食料品及び肥料/投入物の即時かつ妨害されない輸送を確保するために、これらの完全、適時かつ効果的な実施を求める。これは、特にアフリカにおける、途上国及びLDCsの需要を満たすために必要である。

この文脈で、食料及びエネルギー安全保障を維持することの重要性を強調し、我々は、関連のインフラに対する軍事的破壊又はその他の攻撃の停止を求める。我々はまた、紛争が市民の安全に対して悪影響を与え、それにより既存の社会経済的なもろさ及び脆弱性を悪化させ、また、効果的な人道面の対応を妨げる点について、深い懸念を表明した。

我々は、全ての国に対して、領土一体性及び主権を含む国際法の諸原則、国際人道法並びに平和と安定を守る多国間システムを堅持することを求める。紛争の平和的解決、危機に対処する取組、並びに外交及び対話が極めて重要である。我々は、世界経済に対する戦争の悪影響に対処するための取組において団結し、また、「一つの地球、一つの家族、一つの未来」の精神による国家間の平和的かつ友好的な善隣関係の促進のため、国連憲章の全ての目的及び原則を堅持する、ウクライナにおける包括的で、公正かつ恒久的な平和を支持する全ての関連する建設的なイニシアティブを歓迎する。

今日の時代は戦争の時代であってはならない。

次の開発委員会は、ワシントンD.C.において、2024年4月に開催する。

                           

1 (i)気候変動への適応及び緩和、(ii)脆弱性及び紛争、(iii)パンデミックの予防及び備え、(iv)エネルギーへのアクセス、(v)食料・栄養安全保障、(vi)水の安全保障及びアクセス、(vii)可能性を広げるデジタル化、(viii)生物多様性及び自然の保全