このページの本文へ移動

第103回世銀・IMF合同開発委員会 コミュニケ(ポイント)(令和3年4月9日)

  1. 開発委員会は、本日(2021年4月9日)、テレビ会議形式で開催された。

  2. 新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、かつてないほどの公衆衛生、経済、社会危機を引き起こし、多くの人々の生命と生計を脅かしている。経済的ショックは、貧困を増大させ、格差を拡大させ、開発成果を後退させている。世界経済が緩やかに回復しつつあるなか、短中期的な見通しは不確実性を孕んでいる。我々は、十分な政策対応のための持続的で多様かつ的を絞った資金的・技術的支援、二国間機関・多国間機関の間での強力な連携、そして、民間セクターへの更なる支援を求める。我々は、世界銀行グループ(WBG)と国際通貨基金(IMF)に対し、それぞれのマンデートに沿って、パンデミックの影響を抑制するため、互いに緊密に連携するとともに、他のパートナーと協力することを要請する。また、我々は、WBGに対して、極度の貧困の撲滅と繁栄の共有の促進という二大目標の達成に向けた各国への支援を継続するとともに、グリーンで強靭かつ包摂的な開発(GRID)と持続可能な開発目標(SDGs)に向けた支援を促進することを求める。

  3. 特に新たな変異株が発生するなか、パンデミックを終息させるためには、全ての国に対する安全かつ効果的なワクチンの迅速な配布が不可欠である。途上国は、ワクチン接種に向けた体制を強化し、脆弱な人々に行き渡らせるための調整された戦略を策定する必要がある。我々は、WBGによる、支援対象国のワクチンの調達及び配布への支援を称賛するとともに、公平で効率的な普及を確保するための強力なモニタリングと説明責任のメカニズムを奨励する。我々は、世銀が、世界保健機関(WHO)、COVAX、GAVI、国連児童基金(UNICEF)、及び、民間製造業者等と協力し、途上国がワクチンへの迅速で透明性が高く、手頃かつ公平なアクセスを確保できるよう支援することを歓迎する。我々は、WBGが現在行っているワクチン調達の基準の見直しを歓迎する。我々は、国際金融公社(IFC)に対して、途上国におけるワクチンやパンデミック関連の医療用品の製造能力向上を支援するための取組みを一層強化することを求める。パンデミックは広範囲に影響を及ぼしており、我々は、将来のパンデミックに対する世界的な備えを強化すると同時に、ユニバーサル・カバレッジを備えた強固な保健システムの構築を進めなければならない。

  4. 貧困国は、増大する資金不足、限られた財政余力、高まる公的債務水準といった危機に直面しており、小国を含め、より多くの国が財政へのストレスに対して脆弱となっている。債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)の下での迅速な初期対応は、国際開発協会(IDA)の支援対象国にとって強く必要とされる流動性を提供してきた。我々は、パンデミック関連の支出増加を支えるにあたり、DSSIによって達成された進捗を歓迎する。全ての公的な二国間債権者は、完全に、かつ、透明性高く、このイニシアティブを実施すべきである。G20の決定に沿って、我々は、2021年12月末まで6か月間の最後のDSSI延長を支持する。これは、パリクラブでも合意されている。我々は、民間債権者に対し、適格国から要請があった際には、同等の条件でDSSIに参加することを改めて要請する。この最後の延長は、受益国が危機の課題に立ち向かうにあたり更なる資金を動員し、適当な場合、IMFの高次クレジット・トランシュ支援プログラム等を通じた、債務脆弱性に対処するためのより構造的なアプローチに移行することを可能にする。この流れの中で、我々は、ケースバイケースで債務脆弱性に対処するため「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」を実施する進行中の取組みを歓迎するとともに、第1弾の債権者委員会の来る初回会合を期待する。また、それぞれのケースにおいて、我々は、参加する公的な二国間債権者の間の情報共有等を通じて、「共通枠組」を協調して実施することを歓迎する。債権者による合同の交渉は、開かれた形で透明性高く行われなければならず、全ての債権者及び債務国に何か特定の懸念がある場合には、主要条件の確定前に、適切に考慮されなければならない。この観点から、我々は、債務措置の必要性及び必要となる債務再編の大枠が、IMF・世銀の債務持続可能性分析及び参加する公的債権者による共同評価に基づくことに留意する。我々は、世銀とIMFが、それぞれのマンデートに沿って、「共通枠組」の実施をサポートすることを求める。我々は、民間債権者及び他の公的な二国間債権者が、措置の同等性の原則に沿って、「共通枠組」に基づく債務措置を少なくとも同程度の条件で提供することの重要性を強調する。我々は、債務脆弱性の観点から、「共通枠組」に示された国際開発金融機関(MDBs)の今後の作業を想起する。我々は、債務データの質及び整合性を強化し、債務の開示を改善するためのプロセスに係るIMFとWBGの提案に関する進捗に期待する。我々はまた、債務の透明性の向上に引き続き取り組むための、民間債権者を含む全ての関係者による協働の重要性を再確認する。 世銀とIMFによる支援は、債務の管理と透明性を向上させ、各国の国内資金動員と歳出の効率性を強化し、不正な資金の流れを根絶するために、依然として重要である。今後、我々は、世銀とIMFに対し、途上国が過剰かつ持続不可能な債務の根本的な原因に対処するための政策を立案し実施することを支援するよう求める。多くの中所得国も深刻な債務危機に直面しており、パンデミックへの対応能力が限られている。我々は、世銀とIMFに対し、教訓を見い出し、中所得国が直面する債務の課題にケースバイケースで対処するために、他の機関や政策当局者と引き続き緊密に連携することを求める。我々は、「G20持続可能な貸付に係る実務指針」の実施に関する第2回目の任意の自己評価の開始を歓迎する。我々は、国際金融協会の「債務透明性のための任意の原則」の実施に関する更なるアップデートを期待する。

  5. COVID-19危機の影響は、何年も残るだろう。移動制限やロックダウンは、特に女性や若者、脆弱な人々の失業を引き起こしており、社会包摂を損なう可能性がある。学校の閉鎖は、教育、特に女子の教育にかつてない混乱をもたらし、人的資本に損失を与え、長期に経済的な影響を与える。インフレと収入の激減は、家計の負債と食糧不安を高めている。我々は、WBGに対し、食糧不安のレベルの上昇に対処するための取組みを拡大し、SDG目標2(飢餓をゼロに)及び全ての人に十分な栄養をという目標を達成できるよう各国を支援することを要請する。WBGは、既に悪化している食糧安全保障の状況に迅速に対応するために各国を支援するとともに、食糧安全保障と栄養改善に関する中長期的な課題に、計画的に、かつ、他の多国間機関と協力して取り組むべきである。脆弱性・紛争・暴力(FCV)は多くの地域で悪化している。強制移住や難民と同様に、FCVの原因への対処は、緊急を要する。我々は、FCV戦略の実施を期待する。持続可能で包摂的な復興には、金融セクターの脆弱性に対処し、租税回避を撲滅し、必要な投資を喚起することが求められる。優先すべき投資分野は、質の高いヘルスケア・栄養・教育、社会的セーフティネット、デジタル及びその他の革新的技術、持続可能かつ質の高いインフラ、再生可能な資源を含むエネルギーへのアクセス、女性・女子の機会の拡大、中小零細企業へのファイナンスである。我々は、WBGに対し、全ての支援対象国における貿易の活性化、海外直接投資の支援、雇用の維持・創出を支援するよう要請する。我々は、新たなリスクや脆弱性が生じている多くの小国や中所得国におけるパンデミックの深刻な影響に留意し、WBGとIMFに対し、それぞれのマンデートに沿って、これらの国々を支援する取組みを強化することを要請する。我々は、GRIDアプローチを歓迎し、WBGが国別戦略やオペレーションを通じて効果的に実施することを求める。WBGは、糾合力、グローバルなリーチ、そして、官民双方に対する資金、技術支援、知見を動員する力を通じて、今後の課題に取り組むことができる特異な立場にある。

  6. 上国における気候変動関連投資への最大のマルチの資金源としての役割の継続、生物多様性の重視、適応・緩和・強靭化のための技術的及び資金的支援を称賛する。また、気候変動のマクロ経済及び金融の安定性への影響を評価するWBG とIMFの取組みを歓迎する。当面のインフラや経済のニーズに対処するため、我々は、WBGが支援対象国と協力して、購入可能で、よりクリーンなエネルギーへのアクセスを確保しつつ、気候変動、土地の劣化、生物多様性の喪失への対処を継続するよう要請する。我々は、世銀が、生物多様性に係る包摂的な取組みを強化し、コベネフィットの測定や生物多様性の主流化に適切に取り組むことを求める。更に、我々は、WBGとIMFが、各国の電力需要やエネルギーミックスを考慮し、最貧困層に対象を絞った支援を行いながら、低炭素経済への移行において目に見える効果につながる支援を行うよう慫慂する。こうした取組みには、非効率なエネルギー補助金やその他の歪曲的な財政政策を可能な限り段階的に廃止することが含まれる。FCVや小国を含む、最も貧困で脆弱な人々が、気候変動、生態系の破壊及び自然災害の影響を最も受ける。我々は、WBGが新たに掲げた、そのファイナンスの平均35%を気候変動に充てるという野心的な目標、世銀の気候変動ファイナンスの少なくとも50%を適応と強靭化に配分するというコミットメント、そして、糾合及び知見共有という重要な役割と、支援を必要とする各国に対する公正な移行への支援を支持する。WBGの2021‐2025年度の気候変動アクションプラン(Climate Change Action Plan)に期待するとともに、災害リスク管理、備え、そして対応に関する取組みを認識する。我々は、国別気候・開発報告書(Country Climate and Development Report)を作成するというWBGの提案を歓迎するとともに、国別貢献(Nationally Determined Contributions (NDCs) )が気候戦略の主要な焦点であるべきということを強調する。我々は、WBGの資金フローをパリ協定に適合させるとともに、NDCsや生物多様性国家戦略及び行動計画(National Biodiversity Strategies and Action Plans)等を通じて、引き続き、各国の気候目標達成を支援するとのWBGのコミットメントを称賛する。また、我々は、IFC及び多数国間投資保証機関(MIGA)がパリ協定に適合した民間セクターの投資を動員するための取組みを慫慂する。我々は、本年後半に行われる生物多様性条約第15回締約国会議、砂漠化対処条約第15回締約国会議、気候変動枠組条約第26回締約国会議の準備における、WBGとIMFの重要な役割を支持する。

  7. 支援対象国が復興し、雇用を創出し、経済変革を受け入れるためには活力ある民間セクターが不可欠である。我々は、WBGが、民間の資本と資金の取込みを支援するための取組みを継続し、引き続き民間セクターを支援することを要請する。これは、市場創出を行うためのIFC戦略3.0に基づくべきである。IFCは、企業による雇用の創出、存続可能な事業の維持、COVID-19によってもたらされた変化への適応、グリーンな復興の追求のための支援を継続すべきである。我々は、MIGAが、民間の投資家や債権者の短期及び長期の資金調達のニーズに引き続き対処することを求める。

  8. 我々は、最貧国のCOVID-19危機への足元の対応を支援するため、IDA第19次増資の資金を2023年度から2022年度に前倒しすることを支持する。また、我々は、IDA第20次増資の1年前倒しを歓迎する。2021年12月までに合意される野心的かつ成功裏のIDA増資は、強固な政策枠組みのもと、パンデミックの足元及び長期的な影響に対応するIDA国の、グリーンかつ強靭で包摂的な回復を支えるであろう。我々は、WBGに対し、AAA格付を維持しつつ、ドナーの貢献やIDAの資金を最大限活用するため、IDAのバランスシートを最適化する方法を提案することを求める。

  9. 次の開発委員会は、ワシントンD.C.において、2021年10月15日に開催する。