「資金調達のあり方についての論点整理」(座長メモ)
平成9年9月26日
資金運用審議会懇談会 座 長 貝塚啓明
座長代理 本間正明
1. 財投機関債(政府保証のない特殊法人債券)
(意義)
・ 特殊法人の財務に対する市場の評価を受けさせることにより、効率性の悪い機関を
浮かび上がらせることができる。
その結果、財務に対する市場の評価が低い法人は資金調達ができず、淘汰されるこ
とが期待される。
・ 市場からディスクロージャーを求められ、特殊法人の運営効率化へのインセンティ
ブとなる。
・ 非効率な特殊法人の淘汰や機関の運営効率化が実現すれば、補給金等の財政負担の
軽減に資する。
(問題点)
・ 特殊法人は、民間では実施できない収益性の低い事業を行っているため、一般的に
は市場での財務上の評価は低くなると考えられることから、政策として不可欠な事業
が、市場の評価が低いために資金調達コストが上昇するか、十分な資金調達ができず
に不可能となるおそれがある。
・ 特殊法人に自力での財投機関債の発行しか資金調達の手段を認めないこととすれば、
市場の評価を上げるために収益性志向が強くなり、現在よりも民業圧迫のおそれが大
きくなる。
・ 政府がバックにいることから、実質的には政府保証があると判断され、機関の肥大
化や財政規律の喪失をもたらす可能性がある。
・ 信用力、流動性や発行量から、資金調達コストは上昇し、補給金等の財政負担の増
大につながる。
2. 財投債(国の信用で市場原理に基づいて一括調達する債券)
(意義)
・ 必要な政策に対する資金需要を国の信用で一括して市場で調達するので資金調達コ
ストが低く、特殊法人に対する補給金等の財政負担を小さくできる。
・ 政策的必要性に応じた資源配分が可能であり、政策的に不可欠なサービスを提供し
ている特殊法人に対する資金供給が円滑に行われる。
・ 発行額について予算として国会の議決を受けることにより、資金調達に一定の歯止
めをかけられるので、特殊法人の肥大化を防ぐことが期待できる。
(問題点)
・ 特殊法人の財務に対する市場の評価を受けないことから、特殊法人の側か らは、
ディスクロージャーを進め、運営の効率化を推進するインセンティブがない。
・ 財務に対する市場の評価が低いと考えられる特殊法人についても、資金調達ができ
ないことによる淘汰が行われることはない。
したがって、特殊法人の存続の適否は政策上の判断で行われることとなるが、厳し
い判断は期待できない。
・ 財投債の発行が安易になれば、肥大化した財政投融資の改革につながるか疑問であ
り、財政負担の先送りに利用される可能性が残る。
・ 財投債は第2の国債ではないかとの見方もあり、その性格が明確でない。
3. 留意点
・ 財投機関債の発行のためには、市場の評価が適切に行われるための条件整備(破産、
補給金、ディスクロージャーの取扱い等)について、検討を進める必要がある。
また、現実の金融・資本市場の状況を十分に踏まえる必要がある。
・ 預託制度が変わる場合には、既に実行した財政投融資の円滑な継続のための資金確
保策など、移行期における適切な対応が必要である。
(以上)