国の債務管理に関する研究会(第7回)議事要旨 |
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.日時 令和6年10月18日(金)9:30~11:00 |
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.場所 財務省 国際会議室 / オンライン |
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.内容 |
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1.「議論の整理」を受けた今後の検討の方向性 2.最近の金融政策について(日本銀行 服部良太審議役) 3.今後の国債保有構造の見通し(日本経済研究センター 左三川郁子金融研究室長) |
まず、理財局より「『議論の整理』を受けた今後の検討の方向性」(資料1)について、説明が行われた。
▶理財局からの説明概要は以下のとおり。
・ 資料1ページ目は前回取りまとめていただいた「議論の整理」の概要。資料2ページ目は「議論の整理」を踏まえ、左側に「今後の取組の方向性」を、右側に「現在の検討状況」を示す形でまとめたもの。・ まず、銀行について、「議論の整理」において「銀行の国債保有を促進する観点から、発行年限の短期化や変動利付国債の発行等、市中に供給する金利リスク量の縮減を図る対応も必要。」とされたところ。
・ 発行年限の短期化に関しては、今後の市場動向や投資家等の意見も踏まえ、来年度発行計画策定等に際し年限別の発行額を検討していく。変動利付国債に関しては、市場関係者等へのヒアリングを行い、短期金利に連動したものに対しては、市場環境次第で一定のニーズがあることを確認できたため、発行する場合の商品性等に関して検討している。
・ 生保・年金については、中長期的に生保の国債保有額が大幅に増加していくという展望は見込み難いことを踏まえ、これまで発行額を増額あるいは維持してきた超長期債について、実際の投資動向を注視しつつ、来年度発行計画策定等に際し年限別の発行額を調整・検討していく。
・ 個人投資家等については、「議論の整理」において「投資信託への組込みを含め、いかに購入障壁の低い販売チャネルを整備し、個人が国債を購入する際の利便性を高めていくかが重要。」「他国では様々な購入促進策が講じられており、そうした事例も踏まえて今後の取組を考えていく必要がある。」としていただいた。
・ 個人による国債保有をさらに促進するという観点から、有効な購入促進策や国債を組み込んだ投資信託の動向について情報収集を行いながら、今後の取組について腰を据えて検討していきたい。
・ また、非営利法人や個人経営的な未上場法人等において元本割れしない国債へのニーズがあるという声も聴いているところ。これを踏まえ、個人以外の主体も購入可能な元本割れしない国債を発行する場合の商品性等に関して検討中。
・ 海外投資家については、6月のPD会合にて募集したクライメート・トランジション国債を含めた国債のIRに御協力いただける12社を「JGB・GXプロモーター」として7月末に公表している(資料3ページ)。各社と意見交換を実施の上、個別面談やセミナーといったIR活動を開始した。
・ 市場の流動性・機能度の維持・向上に関しては、「議論の整理」においていただいた御指摘を踏まえ、市場動向等について引き続き関係当局間で継続的に情報共有・意見交換を実施していく。
・ 国債先物取引が円滑に機能するよう、受渡適格銘柄の流動性に留意すべきといった御指摘も頂いたところ、流動性供給入札について、8月から残存5年超5年以下のゾーンの発行額を増額する形で調整しているほか、日本銀行金融市場局からも、10月16日に「チーペスト銘柄等に係る国債補完供給の要件緩和措置の継続について」という文書を発出して、対応いただいている。
次に、日本銀行の服部審議役より、「最近の金融政策について」(資料4)について説明が行われた。続いて、日本経済研究センター左三川金融研究室長より、「今後の国債保有構造の見通し」(資料5)について説明が行われた。その後、意見交換が行われた。
▶ メンバーからの意見の概要は以下のとおり。
・ 変動利付国債や非営利法人等のニーズを踏まえた商品性の国債について検討しているとのことだが、非営利法人の国債買入額は資金循環統計だけでは捉えられないものもあるだろう。そうした国債へのニーズはこれと比較してどの程度の規模感なのか、定量的な情報を概観として把握しておくとよいのではないか。
・ 個人投資家の国債保有促進に関して、投資家にとって魅力的な商品であれば「金利ある世界」において購入ニーズが高まると考えている。NISAで公社債投信を非課税にするというのも1つのやり方だろう。
・ 非営利法人等の国債保有を促進する上では、換金性があり、加えて将来のインフレにも対応できる商品であればニーズがあると見込まれており、そうしたニーズも踏まえ、準備を進めていくことも考えられるのではないか。
・ 「金利のある世界」になって、国内よりも海外勢からの注目度の上昇のほうが大きいと感じており、海外に対する説明やIRにも力を入れていく必要がある。
・ 「市場の流動性・機能度の維持・向上」という点について、量的・質的金融緩和の下で裁定取引が十分に働いたかどうかという観点から、国債流通市場の機能度について、改めて検証する必要があるのではないか。
・ ストックの年限構成がどのように変化していくかという点も重要。足下における民間の国債保有余力を考えることも重要だが、今後10年、20年という期間を見据えたときに国全体の国債消化能力がどう変容していくか、マクロ的・長期的な視点で考えていくことも大事であると思う。
・ 国債の年限構成によって財政状況の判断が変わりうると認識している。年限構成により国債の消化余力が大きく異なると、財政に対する見方も大きく変わって来るのではないか。
・ 長期金利の形成経路は大きく政策金利の将来期待とリスクプレミアムに分けられる。リスクプレミアムについて、需給以外の要因、例えばインフレの不確実性や地震等のショックなどがどう作用するかを検討することは債務管理政策においても重要。デュレーション・リスクの変化や将来金利のボラティリティが、どれくらいリスクプレミアムに効いてくるのかという点なども、考えてみてもよいのではないか。
・ 左三川氏からの説明においては、銀行の国債買入余力について約116兆円との試算を示していただいたが、こうした定量的なイメージを持っておくことは非常に重要。なお、今回は預金取扱機関(銀行)に主に焦点をあてたが、国債買入余力については、銀行以外の投資家主体について考えることも重要。
・ 左三川氏の試算においては、日銀の国債保有減少分がそのまま民間金融機関にシフトするという前提を置いている。実際は、需給が相対的に緩和する中で長期金利が上昇し、それにより投資家の需要が喚起されるという連続的な過程となるはずであり、今後の各主体の国債消化余力を検討する上では、イールドカーブの形状も考慮に入れることが必要と考える。
・ 国債消化という観点では、IRRBB規制による制約もあるが、レバレッジ比率規制による制約の方が厳しい条件となり得るケースもある。左三川氏の資料12ページに示されているとおり、仮に規制の特例がある日銀当座預金から資金を出して全て国債に振り替えた場合、レバレッジ比率が大きく低下してしまう。
・ コロナ禍以降の金利上昇局面において、大手銀行が1年以下、地銀が長期の国債保有を増やしてきたが保有量は従前に比べて少ない。環境がデフレからインフレへ変わり、金利先高観がある中では、有価証券含み損に対する懸念が生じ得るため、預金取扱金融機関による国債保有の制約になっている可能性が高い。
・ 預金が流動性預金から定期性預金に移るという銀行内のシフトに加え、銀行業界全体、あるいは他の金融商品との間での資金の動きが生じ得るが、その際、ネット銀行は資金の大きな受け皿として考えられる。金融業界全体における預金のシフトを捉えることも重要。
・ IRRBB規制への対応にあたって、実務においては、円債(円金利)だけでなく、外債、貸出、コア預金等、BSに内在する金利リスク全体が対象となっている。その中で、コア預金は金利感応度が低い預金を抽出して認定しており、金利上昇時に流動性預金から定期性預金にシフトする前提にはなっていない。但し、環境がデフレからインフレに変わっており、前提が変化しているため、今後コア預金の動向に影響が出てくると、国債の保有状況についても影響が生じる可能性がある。
(以上)
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