(1 | ) 連結財務書類の作成目的 国の業務の一部は、特殊法人等を通じて行われている場合もあり、これらの特殊法人等を連結したところの財務情報の開示が必要である。 連結財務書類は、各省庁の業務と関連する事務・事業を実施している特殊法人等を連結することにより、特殊法人等を含めたところの各省庁の財務状況を開示し、より一層の説明責任の履行の向上及び予算執行の効率化・適正化に資する財務情報を提供することを目的として作成するものである。 なお、省庁別連結財務書類を合算することにより特殊法人等を連結したところの国の財務書類の作成が可能となる。 |
(2
| ) 連結の対象範囲 連結財務書類は、国の業務と関連する事務・事業を行っている法人を連結したところの財務情報を提供することを目的として作成するものであり、国から監督を受け、また、財政支出を受けている特殊法人等(法律により直接に設立される法人及び特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされる法人並びに特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政官庁の認可を要する法人、すなわち、いわゆる特殊法人、認可法人、独立行政法人、日本郵政公社及び国立大学法人がこれに該当する。)を連結対象とした。
|
| 
| 特殊法人及び認可法人 特殊法人及び認可法人は、その事務・事業の内容等から、必要な監督(法人の長及び監事の任命、予算の認可等)が行われ、出資や補助金等の財政支出がなされている場合が多いことから、国との業務の関連があり、その多くは連結対象となる。しかしながら、国の監督権限の内容や財政支出の内容は、各法人によって相当異なっていることから、法人ごとに連結の有無を判断し、連結対象となる法人を判断する必要がある。 |
|

| 独立行政法人 独立行政法人は、政策の企画立案機能と実施機能の分離、行政のスリム化並びに効率性及び透明性等を確保するため導入された独立行政法人制度に基づいて設立されるものである。 独立行政法人の設立の形態は、主務大臣が設立委員を任命し、必要な設立手続を行わせ、法人の長及び監事の任命等も行っている。また、その事務・事業を確実に実施するために必要な財政的基礎として出資がなされているほか、業務運営に必要な運営費交付金等が交付されていることから、国との業務の関連があり、連結対象となる。
|
|

| 日本郵政公社 日本郵政公社は、郵政事業を一体的に経営する国営の新たな公社としてこれまで特別会計が行っていた事業を総合的かつ効率的に行うために設立されたものである。 日本郵政公社に対しては、事務・事業に必要な運営費交付金等の交付は行われないものの、独立行政法人と同様の監督が行われ、設立に際しての国の出資や郵便貯金の払い戻し等に係る公社の債務に対する政府保証が付されていることから、国との業務の関連があり、連結対象となる。
|
|

| 国立大学法人 国立大学改革の一環として、国立大学等が国立大学法人に移行することとされた。 国立大学法人制度は、大学による自律的な運営が確保されるよう配慮されているが、基本的には独立行政法人制度と同様の仕組みとなっており、国からの監督権限のほか、出資や事務・事業実施の財源に充てるための必要な財源を交付されることとなっていることから、国との業務の関連があり、連結対象となる。
|
(3
| ) 連結の考え方 各省庁のより一層の説明責任の履行の向上及び予算執行の効率化・適正化に資する財務情報を提供するため、各省庁及び特別会計が所掌している業務と関連する事務・事業を行っている特殊法人等を連結することとし、業務関連性による連結を行うこととした。 業務関連性の具体的な判断は以下のとおりとした。
|
| 
| 省庁別連結財務書類における業務関連性の判断 特殊法人等の設立根拠法等に基づき、各省庁(主務大臣)から監督を受けるとともに、当該省庁から財政支出を受けている特殊法人等が、当該省庁の業務と関連する事務・事業を行っていると見られることから、各省庁が業務関連性により連結する特殊法人等は、「各省庁が監督権限を有し、各省庁から財政支出を受けている法人」とし、監督権限及び財政支出の有無により業務関連性を判断することとした。 ただし、各省庁の監督権限が限定されている場合や、財政支出がない場合等には、業務関連性が弱く、各省庁が連結を行うことにより一体として説明責任を果たす必要性は低いと考えられることから、連結の対象からは除外することができることとした。 |
|

| 特別会計連結財務書類における業務関連性の判断 特別会計が経理している業務の範囲は限定されており、特別会計との業務関係がより強い特殊法人等を連結すべきと考えられることから、財政支出が相当程度あるか否かを連結の要件とした。 また、特別会計としては、特殊法人等に対する直接の監督権限を有していないことから、監督権限に代わるものとして、特別会計の管理大臣と特殊法人等の主務大臣が同一であるか否かを連結の要件とした。
|
(4
| ) 持分法の適用 監督権限及び財政支出の観点等から、業務関連性が弱いとして連結対象から除外された特殊法人等について、全部連結するまでもないが、企業会計の連結の考え方に準じて、出資の評価方法として持分法を適用することが考えられる。 しかし、国の連結においては、企業会計の支配従属関係とは異なり、業務関連性がある特殊法人等を連結して一体として説明責任を果たすこととしており、連結対象から除外された特殊法人等について、連結財務書類において持分の評価でもって影響力を反映する必要はないと考えられることから、持分法の適用は行わないこととした。 なお、出資先の財政状態の悪化により、出資金の価値が著しく低下した場合には、強制評価減を行うこととしており、また、附属明細書において出資金の純資産額等を開示することとしており、これらにより特殊法人等に対する出資金に関する情報が開示されることとなる。
|
(5
| ) 共管特殊法人等の連結省庁 特殊法人等の中には、複数の省庁から、監督を受け、また、財政支出を受けている法人がある。連結財務書類において、このような法人を連結する省庁は、監督権限及び財政支出の状況等から最も業務関連が高いとみられる省庁において全部連結を行うこととした。 なお、勘定を有する共管特殊法人等については、勘定単位でもって連結省庁の判断を行い、連結することとした。
|
(6
| ) 特殊法人等の子会社の取扱い 特殊法人等は、子会社を有している場合があり、このような特殊法人等の子会社を連結対象とすべきかどうかについて検討を行った。 各省庁は、特殊法人等の子会社に対して直接的な監督権限を有しておらず、また、財政資金も直接流れているものではないことから、各省庁と特殊法人等の子会社の間の業務関連性は弱いと考え、特殊法人等の子会社は連結対象とはすべきでないとも考えられる。 一方、各省庁と特殊法人等との連結については、業務関連性により連結の判断を行っており、特殊法人等と支配従属関係にあり、特殊法人等と経済的一体性を有していると考えられる子会社は、各省庁とも業務関連性があるとも考えられる。 しかし、特殊法人等の子会社の事務・事業の内容等は多様であり、各省庁との業務関連性があると考えられるものもあり、全く連結対象としないことも適当でなく、また、特殊法人等と子会社の間の支配従属関係でもって、一律に各省庁等と特殊法人等の子会社の間にも特殊法人等と同様の業務関連性があるとみなすことも適当でない。 また、特殊法人等の子会社のうち、特殊法人等の手足として特殊法人等の事務・事業の一部を行っているものに限って、連結対象とすべきとも考えたが、各省庁と特殊法人等の子会社の間には直接的な監督権限や財政資金の流れもないことから、各省庁等との業務の関連性について、実質的な判断基準の設定は困難であった。 このため、特殊法人等の子会社のうち、特殊法人等から出資を受けているものについては、出資を介して特殊法人等の子会社に対する各省庁からの間接的な監督権限及び間接的な財政支出があり、各省庁等と一定の業務関連性を有していると考え、このような特殊法人等の子会社について連結対象とすることとした。
|
(7
| ) 連結の方法 連結財務書類の作成にあたっては、企業会計の連結の方法を準用して連結財務書類を作成することとしているが、業務関連性による連結の判断や資本連結の方法など、一部企業会計と異なる処理を行うこととしている。
|
| 
| 会計処理の統一 企業会計においては、連結に際しては同一の状況下での会計処理は統一されている必要があるが、国と特殊法人等では、その会計処理基準自体が異なっている。 連結に際しては、会計処理の統一が図られることが望ましいが、事務負担等の観点から困難であるため、特殊法人等の既存の財務諸表を利用し、特殊法人等に特有の会計処理について、連結に際して必要な修正を行うこととした。 |
|

| 特殊法人等の資産及び負債の時価評価 企業会計においては、連結に際して、子会社の資産及び負債の時価評価を行うこととしている。これは、子会社化を子会社の「取得」と考えることを前提とした処理である。 しかし、特殊法人等に対する出資を企業会計にいう支配権の獲得と同様に考えることはできず、また、国の連結財務書類においては、業務関連性がある特殊法人等を、連結することにより一体として説明責任を果たすべきものと位置付けており、特殊法人等の「取得」といった考え方を採ることは適当でないと考えられる。このため、連結に際しては、企業会計における支配獲得時の子会社の資産及び負債の時価評価と同様の処理を行うこととはしていない。
|
|

| 資産・負債差額の部の表示 国の資産・負債差額の部と特殊法人等の資本の部では、その位置付け及び内容が大きく異なっており、国においては、差額概念として一括表示されているのに対し、特殊法人等においては、その性格に応じて資本や剰余金等として区分表示されている。 しかし、連結貸借対照表において、性格が異なる両者の資産・負債差額の内訳を詳細に表示した場合には、かえってその性格が理解し難いものになると考えられることから、連結貸借対照表においては、資産と負債の差額を一括して「資産・負債差額」として表示することとした
|
|

| 少数株主持分 企業会計においては、子会社に対する出資割合が100%でない場合には少数株主持分が生じ、また、親会社説の考え方に基づき、少数株主持分は、連結固有の項目であることを考慮して、負債の部と資本の部の中間に独立の項目として表示することとされている。 国の連結財務書類は、各省庁の持分保有者のために作成されるといった親会社説的な考え方は採り得ず、国民全体に開示されるものであるから、他省庁、他会計及び民間企業等からの出資に相当する部分を負債又は独立の項目として表示する必要はないと考えられる。 また、特殊法人等の解散については別途法律が制定され、その残余財産等について必ずしも持分割合に応じた分配がなされるとは限らないことから、他会計等からの出資について、持分額で表示することは適当でないと考えられる。 さらに、資産・負債差額の部には特段の位置付けをしていないことから、特殊法人等に対して他会計等からの出資がある場合においても、連結貸借対照表の資産・負債差額の部に他会計等からの出資金額に相当する部分も含めることとした。 ただし、他会計等から特殊法人等に対する出資金額も含まれていることを明らかにするため、他会計等からの出資を内書きで表示することとした。
|
(8
| ) 連結財務書類の位置付け 省庁別財務書類は、予算執行の効率化・適正化等の目的のために作成されるものであることから、国の会計の財務書類を基本とすべきと考えられること、また、連結に際しては国と特殊法人等との会計処理統一の困難性等の技術的問題が存在していること等から、連結財務書類は参考情報として位置付けることとした。
|