このページの本文へ移動

民間企業と同様の会計処理による財務諸表の作成と行政コストの開示(平成13年6月)


特殊法人等に係る行政コスト計算書作成指針

第1章 行政コスト計算書作成の趣旨等



.行政コスト計算書作成の趣旨

 行政コスト計算書とは、特殊法人等について、説明責任の確保と透明性の向上の観点から、最終的に国民負担に帰すべきコストを集約表示する書類である。特殊法人等が現在作成、開示している貸借対照表、損益計算書等の財務諸表は、個々の特殊法人等の特性から、一部企業会計原則と異なる会計処理が行われているが、行政コスト計算書は、説明責任、透明性の観点から、このような個々の特殊法人等の特性を捨象し、特殊法人等が民間企業として活動を行っていると仮定した場合の財務書類である。このため、通常コストとして認識されない、政府出資金や国有財産の無償使用等に係る機会費用についてもコストとして認識することとする。



.特殊法人等の範囲
 この指針の対象となる特殊法人等は、国民に対して国民の負担に帰すべきコストを毎年度財務情報の形で開示すべき法人であり、具体的には次に掲げる法人のうち、国の出資又は補助金等(業務の円滑な運営に資するための補助金等に限る。)の交付がなされている法人(株式会社を除く。)とする。

 

 1

 特殊法人 総務省設置法(平成11年法律第91号)第4条第15号に規定する法律により直接に設立される法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされる法人(独立行政法人を除く。)

 2

 認可法人 総務省設置法第4条第19号ハに規定する特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政官庁の認可を要する法人



.行政コスト計算書の体系
 行政コスト計算書は、以下の財務書類から構成されるものとする。なお、以下の計算書類の体系を「行政コスト計算財務書類」という。

 

 

 

行政コスト計算書
添 付

 

民間企業仮定貸借対照表
民間企業仮定損益計算書
キャッシュ・フロー計算書
民間企業仮定利益金処分計算書(又は、民間企業仮定損失金処理計算書)
附属明細書

   (注)

以下、「仮定貸借対照表」、「仮定損益計算書」等と略称する。



.行政コスト計算書の作成等

 

(1

) 現在作成、開示されている財務諸表の修正
 法人設立法、同財務会計省令、「特殊法人等会計処理基準(昭和62年10月2日財政制度審議会公企業会計小委員会)」等に基づき作成されている現行の貸借対照表、損益計算書について、企業会計原則と異なる会計処理がなされている部分について、企業会計原則に準拠した会計処理に則って修正を行い、仮定貸借対照表、仮定損益計算書等を作成する。
 なお、法人設立法の規定等に基づき区分経理を行い、各勘定ごとに決算財務諸表を作成している特殊法人等については、勘定ごとの仮定貸借対照表、仮定損益計算書等に加え、原則として全ての勘定を結合した仮定貸借対照表、仮定損益計算書等を作成する。


(2


) 機会費用の加算
 仮定損益計算書に計上された費用(損失)から、手数料収入等の特殊法人等の自己収入を控除し、これに政府出資や政府からの無利子貸付金、国有財産の無償使用等に係る機会費用を加算して、行政コストを算出する。


(3


) 現在作成されている財務諸表との関係
 行政コスト計算財務書類は、個々の特殊法人等の特性を捨象するとともに、近年の企業会計の動向をも踏まえた財務書類であり、その目的は、特殊法人等の説明責任の確保と透明性の向上を通じて、国民負担に帰すべきコストを網羅的に把握する点にある。他方、従来から各特殊法人等の設立法等に基づき開示されている財務諸表については、個々の特殊法人等の特性を踏まえたものであり、予算統制及びその執行結果の報告、法人設立法に規定されている各特殊法人等の業務の実施状況の把握等の観点から作成されているものである。したがって、行政コスト計算財務書類は、説明責任、透明性の観点から、現在作成されている財務諸表に添付される性格のものであって、両者は並列的に作成されることとなる。


(4


) 行政コスト計算書の公表
 行政コスト計算書は、特殊法人等について、説明責任の確保と透明性の向上の観点から、作成・開示される財務書類である。したがって、各特殊法人等は、本指針に従って作成した行政コスト計算財務書類を積極的に公表するよう努めなければならない。
 公表の時期については、行政コスト計算財務書類が特殊法人等設立法等に基づく法定の財務書類ではなく、現在作成されている財務諸表に添付される性格のものであることから、特殊法人等設立法等に基づく現行の財務諸表の公表と同時期に公表することとする。
 なお、公表の方法については、行政コスト計算財務書類を事務所に備え置くほか、インターネットによりその概要を公表する等、各特殊法人等において積極的な情報開示を行うことが期待される。

第2章 仮定貸借対照表、仮定損益計算書

 行政コスト計算書の前提となる仮定貸借対照表及び仮定損益計算書は、特殊法人等間の比較を可能ならしめる等のため、個々の特殊法人等の特性を捨象し、民間企業として活動をしているとの仮定に立って、企業会計原則に準拠して作成するものとなるが、特に以下の点に留意する。



.資産関係

 

(1

) 有価証券の評価
 有価証券については、「金融商品に係る会計基準(平成11年1月22日企業会計審議会)」第三の二に従い、次の方法により評価した金額を仮定貸借対照表価額とする。

 

 1

 売買目的有価証券 時価(評価差額は当期損益として処理)

 2

 満期保有目的の債券 償却原価

 3

 子会社株式及び関連会社株式 取得原価

 4

 その他有価証券 時価(評価差額は洗い替え方式に基づき、資本の部に計上する等の処理)


(2


) 販売用不動産等の評価
 販売用不動産等については、法人における予定保有期間(土地の造成等の工事期間を含め、当該不動産の取得日から販売日までの期間)の長短にかかわらず、棚卸資産に該当する。したがって、「企業会計原則」第三貸借対照表原則5Aただし書の規定の適用があり、時価が取得原価より著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって仮定貸借対照表価額としなければならない。なお、販売用不動産等の範囲、時価の概念、回復可能性に関する判断指針等については、「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い(平成12年7月6日日本公認会計士協会監査委員会報告第69号)」に定めるところによるほか、特に次の諸点に留意する。

 

1

 販売用不動産等の時価
 販売用不動産等のうち、正常な営業循環過程にある資産については、販売見込額から販売経費等見込額を控除した(開発後販売する資産については、完成後販売見込額から造成・建設工事原価の今後発生見込額及び販売経費等見込額を控除した)正味実現可能価額をもって時価とし、正常な営業循環過程から外れていると認められる資産(例えば、事業を中止した資産であって、方針未定資産や、経済状況等から相当期間売れ残りとなっているような資産)については、決算日における市場価格をもって時価とする。

2

 時価の著しい下落の判断基準
 「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い」では、時価が、取得価額に比べて、おおむね50%以上下落している場合には、販売用不動産等の時価が著しく下落しているものとして取り扱うこととされているが、国民負担に帰するコストを把握するという行政コスト計算財務書類の趣旨を踏まえ、時価の下落割合が50%未満であっても、(ア)当該不動産の時価が取得原価に比して相当程度下落しており、その評価減が財務諸表に重要な影響を与えると認められる場合、(イ)開発計画の中止等の方針変更があり、当該不動産が正常な営業循環過程から外れた場合で相当程度の下落が生じていると認められる場合等には、著しく下落している場合に該当することとする。ただし、販売用不動産等の時価の下落割合がおおむね30%未満の場合には、著しく下落している場合には該当しないものとする。

3

 時価の回復可能性に関する判断指針
 時価の回復可能性の具体的判断に当っては、日本経済や地域経済の状況、地価の動向等のマクロな要因だけでなく、対象資産の個別的な回復可能性の検討が必要である。例えば、当該不動産に関する土地利用規制の解除、開発計画の認可、計画道路や鉄道等の具体的計画が確認できるため、相当の期間内に時価がおおむね取得原価以上となる見込があることが必要である。

 


(注


) 「企業会計原則」第三貸借対照表原則5Aただし書の規定は、販売用不動産等に限らず、全ての棚卸資産に適用される基準である。したがって、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の棚卸資産について原価法を適用している場合であって、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって仮定貸借対照表価額としなければならないことに留意する。


(3


) 道路資産の減価償却
 減価償却が実施されていない道路関係4公団の道路資産については、次の方法により減価償却累計額及び未償却残高を算出する。

 

1

 現在供用中の道路の最も古い道路の供用時点まで遡り、投資額を新築事業費、改築(改良)事業費、維持修繕費(道路資産に計上されたものに限る。以下同じ。)、災害復旧事業費別に把握する。更に事業費については、工事費と用地費に区分整理する。

2

 事業費を工事費及び用地費に区分するに当たって、区分することが困難な工事雑費、建設附帯事務費等については、工事費及び用地費の投資額の割合で按分して計上する。(一般管理費を道路の原価に配賦している場合も同様の処理を行う。)
 また、補償費については、合理的な配賦基準(例えば直近数か年度の工事補償費と用地補償費との割合等)により工事費及び用地費に区分整理することを原則とするが、「用地及び補償費」を用地費と補償費に区分できない場合は、補償費の全額を用地費として処理することとする。

3

 建設費に係る借入金の利息(建設期間中に発生した部分に限る。)については、建設仮勘定から道路資産に振替整理を行った時の実投資額により工事費、用地費に按分整理する。

4

 改築(改良)事業費、維持修繕費については、新規投資に伴い除却されるべき道路資産(施設)の価額(7による減価償却実施前の取得原価)の割合を合理的な方法で推計し、当該割合を改築(改良)事業費、維持修繕費に乗じて得た額を、改築(改良)事業又は維持修繕事業に伴い除却された道路資産(施設)の価額(7による減価償却実施前の取得原価)とみなす。なお、除却額は最も古い投資に相当する額から、順次除却していくものとし、減価償却累計額及び減価償却後の資産価額を除却資産の減価償却の進捗状況に応じてそれぞれ減額して整理する。
 新規投資に伴い除却されるべき道路資産(施設)の推計については、例えば、(ア)直近数か年度の改築(改良)工事等について、新規投資額に占める除却資産の割合をサンプル調査により求める、(イ)改築(改良)費に占める更新費の割合を求める等の方法が考えられる。

5

 災害復旧事業費により取得した道路資産(施設)に見合う被災施設のうち、阪神・淡路大震災により倒壊した阪神高速道路のように大規模な被災については、災害に伴い除却すべき道路資産(施設)の価額(7による減価償却実施前の取得原価)を合理的な方法で推計する。その他の小規模な災害については、災害復旧事業費に相当する額を除却資産の価額(7による減価償却実施前の取得原価)とする。なお、除却の方法は、4の方式に準じ減価償却累計額及び減価償却後の資産価額を減額整理する。

6

 以上の投資額及び除却額の推計は、各公団で区分管理している路線ごと又は合理的なグループごとに行い、各路線毎に年度別の新規投資額及び除却額を土地及び施設の別に整理する。

7

 上記16により整理された施設への投資額及び施設の除却額に基づき、各路線ごと又は各グループごとに減価償却を実施する。減価償却を実施する場合の耐用年数は、各路線ごと又はグループごとに工事計画認可(指示)の際の予定総事業費等利用可能な資料を用い、総事業費に対する各構造区間別(土工区間、高架橋区間、トンネル区間、橋梁区間等の構造)の事業費の占める割合を求め、各構造区間ごとの耐用年数に当該割合を乗じて得た値の合計値とする。

8

 減価償却の方法は、定額法によるものとし、取得原価の90%の償却が完了した場合は、残存価額10%で据え置くこととする。

9

 上記18により難い事情(例えば、膨大な事務作業を必要とする、あるいは過去の資料が保存されてなく、必要なデータが入手できない等の事情)がある場合には、各公団の実情により、上記18の作業要領を適宜修正することができる。なお、この場合においても、上記18の作業要領によった場合に比して著しく精度が低下しないようにする必要がある。


(4


) 研究開発費等の繰延資産及びソフトウエアの会計処理
 研究開発費等の繰延資産及びソフトウエアの会計処理については、「研究開発費等に係る会計基準(平成10年3月13日企業会計審議会)」に準拠した会計処理を行うこととする。具体的な取扱いは次のとおり。

 

1

 研究開発費については、発生時に費用として処理することとし、資産計上は行わない。また、従来、調査費等の表示科目により繰延資産として計上されていたものについても発生時に費用として処理することとし、繰延資産としての計上は行わないこととする。ただし、当該調査費等のうち、固定資産の原価を構成するものと認められるものについては、建設仮勘定等の適切な資産科目に計上することとする。

2

 その他の繰延資産については、商法(明治32年法律第48号)が明示的に認めている次に掲げるものに限り、計上するものとし、その他の繰延資産については原則として資産計上は行わないこととする。なお、商法が認めている創立費及び開業費は、会社設立に際して発生する科目であり、特殊法人等が、宿泊施設や病院等を新たに設置する場合に、当該施設の開設経費を創立費や開業費として計上することは認められないので留意する。

 

 (ア)

 創立費(商法第286条)

 (イ)

 開業費(商法第286条の2)

 (ウ)

 開発費(商法第286条の3、鉱山の探鉱・試掘のための費用、市場の開拓等のため支出した費用などであって、「研究開発費等に係る会計基準」に規定する研究開発費に該当しないものに限る。)

 (エ)

 新株発行費(商法第286条の4、特殊法人等には該当がない)

 (オ)

 社債(債券)発行費(商法第286条の5)

 (カ)

 社債(債券)発行差金(商法第287条)

 (キ)

 建設利息(商法第291条、特殊法人等には該当がない)

3

 ソフトウエアについて

 

 (ア)

 ソフトウエアを用いて外部に業務処理等のサービスを提供する契約が締結されている場合のように、その提供により将来の収益獲得が確実であると認められる場合には、適正な原価を集計した上、当該ソフトウエアの製作に要した費用に相当する額を無形固定資産として計上する。

 (イ)

 法人内利用のソフトウエアについては、完成品を購入した場合のように、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、当該ソフトウエアの取得に要した費用に相当する額を無形固定資産として計上する。

 (ウ)

 機械装置等に組み込まれているソフトウエアについては、当該機械装置等に含めて処理する。


(5


) 国庫補助金等により固定資産を取得した場合の会計処理
 国庫補助金等により固定資産を取得した場合の会計処理については、「特殊法人等会計処理基準」15及び「同運用について」7~9に規定する会計処理による。
 具体的には、国庫補助金等の交付を受け償却資産の取得又は改良に充てた場合には、当該国庫補助金等に相当する額を資産見返補助金等として負債の部に計上し、翌年度以降、減価償却費に相当する額を取崩し、収益として整理する。また、国庫補助金等の交付を受けて土地等の非償却資産を取得した場合は、資本剰余金として資本の部に計上する。



.負債関係

 

(1

) 退職給付引当金

 

1

 退職手当及び厚生年金基金については、「退職給付に係る会計基準(平成10年6月16日企業会計審議会)」、「同注解」、及び「退職給付会計に関する実務指針(平成11年9月14日日本公認会計士協会会計制度委員会報告第13号)」に基づく会計処理による。

2

 特殊法人等では、役員についても退職手当支給基準が定められており、民間企業の役員慰労金とは性格が異なることから、役員分についても、上記1に従い適正に計上することとする。

3

 国家公務員及び地方公務員から特殊法人等に出向している者(出向時に退職金の支給を受けてなく、国家公務員共済組合法又は地方公務員共済組合法の継続長期組合員の身分を有する出向職員。)については、退職給付引当金の計上は行わないこととする。
 なお、公務員からの出向職員に係る退職給与引当金繰入額に相当する額については、別途行政コスト計算書に機会費用として計上する。


(2


) 貸倒引当金

 

1

 一般的に貸倒れのリスクが存在すると認められる全ての債権について、貸倒引当金の対象とすることとし、具体的には、「金融商品に係る会計基準」に準拠することとする。
 なお、科目の名称にかかわらず、その会計上の実態が金融資産であるものは、貸倒引当金の対象となる。例えば、事業資産の科目で貸借対照表に計上されている資産であっても、「〇〇割賦元金」や「〇〇貸付金」等については、当然に貸倒引当金の対象となり、貸倒れのリスクが存在する場合には、適切な額を貸倒引当金として計上しなければならない。

2

 貸倒引当金を計上する際の貸倒見積高の算定方法については、(ア)資金の貸付けを主たる業務として行っている特殊法人等については、金融庁作成の「「預金等受入金融機関に係る検査マニュアルについて」の整備について(平成12年5月1日金検第84号)」に定める基準に準じ、適切な額の引当金を計上することとし、(イ)資金の貸付けを主たる業務として行っている特殊法人等以外の法人にあっては、「金融商品に係る会計基準」第四に従い、適切な額の引当金を計上することとする。
 したがって、現行の会計処理で行われている告示及び通達あるいは特殊法人等の内規に従って、毎事業年度一定の引当率により貸倒引当金を計上する会計処理は認められない。
 「金融商品に係る会計基準」第四に規定する貸倒見積高の算定方法の概要は次のとおり。

 

(ア)

 債権の区分
 貸倒見積高の算定にあたっては、債務者の財政状況及び経営成績等に応じて、債権を次のように区分する。

 

(i

) 一般債権  経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権

(ii

) 貸倒懸念債権  経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権

(iii

) 破産更生債権等  経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権

(イ)

 債権の貸倒見積高は、その区分に応じてそれぞれ次の方法による。

 

(i

) 一般債権  債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する。

(ii

) 貸倒懸念債権  債権の状況に応じて、次のいずれかの方法により貸倒見積高を算定する。ただし、同一の債権については、債務者の財政状態及び経営成績の状況等が変化しない限り、同一の方法を継続して適用する。

 

 債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法

 債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることができる債権については、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法

(iii

) 破産更生債権等  債権額から、担保処分の見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする。

3

 貸倒引当金は、資産の控除項目として計上する。


(3


) 賞与引当金
 翌事業年度に支給される賞与(国家公務員の期末手当、勤勉手当に相当するものをいう。)であって、当期の勤務に係る部分については、賞与引当金として計上する。
 なお、民間企業にあっては、未払費用として計上されている場合も多いが、利用者の分りやすさを考慮し、賞与引当金として計上することとし、未払費用として計上する取扱いは行わないこととする。


(4


) その他の引当金

 

1

 退職給付債務に係る引当金、貸倒引当金及び賞与引当金以外の引当金については、将来の支出の増加又は収入の減少であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合に、当該金額を引当金として負債に計上するとともに、当期の負担に帰すべき金額を費用に計上する。

2

 引当金のうち、資産に係る引当金の場合は、資産の控除項目として計上する。

3

 発生する可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することができない。


(5


) 特別法上の引当金、準備金の取扱い

 

1

 「特殊法人等会計処理基準」16の(4)に規定する「特別の法律又はこれに基づく命令により引当金又は準備金の名称をもって計上しなければならないもの」(以下、「特別法上の引当金等」という。)のうち、特殊法人等の設立法又は同法に基づく政省令等(法人の内規を含む。)により、特殊法人等の特性等から引当て又は積み立てることとされている引当金等については、計上しないこととする。

2

 このような特別法上の引当金であっても、本来の引当金の要件を充たしているもの(上記(4)の1に示す引当金の計上基準に該当するもの。)については、負債性の引当金として計上することができる。この場合において、当該引当金への繰入額は、将来の支出の増加額又は収入の減少額を合理的に見積り、当期の負担に帰すべき金額であることが必要である。なお、仮定貸借対照表においても、引当金として計上し、特別法上の引当金等としては計上しないことに留意する。


(6


) 引当金の繰入に係る会計処理
 上記の各引当金の繰入に係る会計処理については、原則として差額繰入方式とし、洗替方式による会計処理は行わないこととする。

 

(注

) 賞与や退職手当を実際に支払う際の会計処理については、支払金額が前年度末の賞与引当金又は退職給付引当金の範囲内の部分については、当該引当金を直接減額して整理し、費用計上は行わないことに留意する。

 

(具体例)

 6月の賞与支払額600、前年度末の賞与引当金の額400の場合の会計処理
    (賞与引当金)400   (現金預金)600
    (賞     与)200



.その他の会計処理

 

(1

) 外貨建取引に係る会計処理
 外貨建取引に係る会計処理については、「外貨建取引等会計処理基準(平成11年10月22日企業会計審議会)」に準拠した会計処理を行うこととする。
 なお、同基準が規定する一般的な外貨建債権債務の換算基準は次のとおりであるが、換算差額の処理等についても同基準に準拠した会計処理を行うことに留意する。

 

 1

 外国通貨 決算時の為替相場により円換算した額

 2

 外貨建金銭債権債務(外貨預金を含む。) 決算時の為替相場により円換算した額

 3

 外貨建有価証券

 

 (ア)

 満期保有目的外貨建有価証券 決算時の為替相場により円換算した額

 (イ)

 売買目的有価証券及びその他有価証券 外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額

 (ウ)

 子会社株式及び関連会社株式 取得時の為替相場により円換算した額


(2


) リース取引に係る会計処理
 リース取引については、「リース取引に係る会計基準(平成5年6月17日企業会計審議会)」に準拠した会計処理を行うこととし、リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の2種類に分け、ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行い、オペレーティング・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うこととする。


(3


) 現行の財務諸表から仮定貸借対照表等への修正差額の会計処理
 上記会計処理に伴う修正差額(有価証券や販売用不動産等の評価額の修正、退職給付引当金や貸倒引当金の計上額の修正等により生ずる修正差額)のうち、企業会計原則に従った会計処理によれば当期の収益又は費用(損失)と認識される部分については、仮定損益計算書に計上することとし、前期以前の過去の会計処理の修正差額に相当する部分については、仮定損益計算書には計上せず、仮定貸借対照表の繰越利益金(欠損金)を直接加減することにより整理することとする。

 

(具体例)

 減価償却を実施していない固定資産の減価償却
 企業会計原則に従った会計処理によれば、計上されているべきであった減価償却累計額が、10年度末:5,000千円、11年度末:5,500千円の場合

 

1

 11年度の増加額に相当する500千円については、仮定損益計算書に費用として計上する。

2

 10年度末に計上されているべき減価償却累計額に相当する5,000千円については、11年度の仮定損益計算書には計上せず、繰越利益金(欠損金)を直接減額(加算)して整理する。



.表示科目と仮定貸借対照表等の様式

 

(1

) 表示科目
 表示科目については、次に掲げる事項を除き、原則として、現行の貸借対照表及び損益計算書の表示科目によることとする。

 

1

 現行の貸借対照表で用いられている事業資産の科目については、法人本来の事業目的・内容を明らかにするために設けられた表示科目であるが、法人によっては、事業資産の内容として、金融資産、棚卸資産、有形固定資産等が混在している場合もあり、適切な情報開示とは言い難い面がある。仮定貸借対照表においては、企業会計原則に従い金融資産、棚卸資産、有形固定資産等に区分して表示することとする。
 また、異なる性格の資産が混在していない場合であっても、事業資産の科目は特殊法人等特有の表示科目であり、分りづらい場合も多いことから、適切な内訳科目を設けることとする。

2

 事業資産以外の科目についても、例えば、費用科目として「〇〇建設費」等、資産科目と誤解を与えるような表示科目や、有形固定資産の科目として「社会資本整備〇〇」等、財源措置の内容を表しており当該資産の形態的な性格が不明な表示科目等が見られるところである。このような科目については、当該科目の性格や内容を適切に表示する科目の名称に改めることとする。

3

 上記1及び2以外の科目についても、行政コスト計算財務書類が、説明責任の確保と透明性の向上の観点から作成されるとの趣旨を踏まえ、特殊法人等に特有の表示科目であって、その性格や内容が分りづらい科目については、できる限り民間企業で用いられている表示科目の名称に改めることとし、法人の業務の特性等から困難な場合には、内訳科目を設ける、あるいは、注記において科目の説明を行う等、適切な工夫を行うこととする。


(2


) 仮定貸借対照表及び仮定損益計算書
 仮定貸借対照表及び仮定損益計算書の様式は報告式とし、その標準的な様式は次のとおりとする。なお、資金の貸付けを主たる業務として行っている特殊法人等については、銀行法施行規則(昭和57年大蔵省令第10号)別紙様式第六号によることとする。
 また、作成に当たっては、以下の点に留意する。

 

1

 減価償却累計額は、仮定貸借対照表の資産の部に、対応する科目ごとに当該資産の控除項目として計上し、注記とはしない。

2

 貸倒引当金は、仮定貸借対照表の資産の部に、対応する科目ごとに当該資産の控除項目として計上する。(「特殊法人等会計処理基準」16の(2)の規定は適用しないものとし、2以上の科目に係る貸倒引当金を一括して計上する方式は、原則として認められない。)
3 債務保証の取扱いについては、次のとおりとする。

 

(ア)

 資金の貸付けを主たる業務として行っている特殊法人等においては、負債の部に支払承諾を、資産の部に支払承諾見返を計上するとともに、支払承諾の履行によって損失が生じると見込まれる額については貸倒引当金に適切な額を計上する。

(イ)

 上記(ア)以外の法人においては、保証債務の総額を注記に記載するとともに、当該保証債務のうち、保証債務の履行によって損失が生ずると見込まれる額を債務保証損失引当金として負債の部に計上する(負債の部に保証債務を、資産の部に保証債務見返を計上する両建ての計上は行わない。)。
 

民間企業仮定貸借対照表を表す図
民間企業仮定貸借対照表を表す図
民間企業仮定貸借対照表を表す図
民間企業仮定貸借対照表を表す図
民間企業仮定貸借対照表を表す図
 

 
民間企業仮定損益計算書を表す図
民間企業仮定損益計算書を表す図
民間企業仮定損益計算書を表す図